第1話/映画鑑賞
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「吉野君…今日日直当番なの…知らなかった?」
鈴を転がしたような声が降ってきて僕は慌ててノートから顔をあげた。
周りを見ると僕と目の前の女の子しか教室には誰もいないみたいだ。
名前なんて言ったっけ?
「あ…ごめん」
「ううん。あと教卓のプリントと、ノート職員室に届けたら終わりなの…あ。黒板も消していかなきゃ……手伝ってくれる?」
「もちろん」
僕はそう言って席をたった。
当番をすっぽかしたことを咎める事もなく黒板のところへ行ってチョークで書かれた数式を消していく女の子。
黒板の上の方の文字が届かないのか背伸びをして消そうとしてるけど無理みたい。
「上は僕が消すよ」
高いところの獲物を取る猫みたいにぴょんぴょん飛ぶ彼女の隣に行って、余ってた黒板消しを持った。
「ありがとう!たすかるよ!」
飛び跳ねたせいで乱れた髪を耳に掛けて、眉をさげ目を細めて笑う彼女に、僕は少し、ほんの少しだけ耳の先が熱くなった…
気がした。
二人で黒板をきれいにして、自分たちの荷物を持った。
それから、教卓においてあったノートを僕、プリントは彼女が持って職員室に届けに行く。
「失礼します。1年の名代咲桜です。提出物持ってきました」
あぁ、この子。
そんな名前だったんだ。
名代さんの声に反応したのはクラスの担任外村先生。
「おぉ。名代か。そこの棚においといてくれ」
「わかりました。…吉野君ここおいとこ」
「あ…うん」
言われた場所にノートとプリントを置いた。
「「失礼しました」」
職員室を出ると名代さんとは一言も話さずに下駄箱に着いた。
家に帰ってこの前見た映画の続編かな。
いややっぱり内容忘れちゃうから昨日みた映画の続きかな。
そんなこと考えながら下駄箱から靴をだして履き替えていると、靴を履き終えた名代さんが僕の傍に来て声をかけてきた。
「吉野君って…このあと何かあったりする?」
「へ?…ぁ…いや…特に…ないけど」
「じゃぁさ…一緒に映画見に行かない?…映画…好きなんでしょ?吉野君」
「映画?なんの?」
「み………ん」
なんて言った?
声が小さくて聞き取れないや。
肩まである髪から時々みえる耳が少し赤くなってる。
名代さんどうしたんだろ?
「えーっと?…いま」
「だから…ミ…」
「ミ?」
「ミミズ人間!」
思ったより大きな声でいった名代さんは手で口を覆って僕から目をそらした。
凄く顔の赤い彼女。
へぇ、あの映画。
名代さんみたいな大人しそうな子も見てるんだ。
というか。
あの映画今また映画館でしてたんだ。
僕はなんだか嬉しくなって思わず笑みがこぼれた。
「なっ…なんで笑うのっ」
「ごめん…なんだか意外で…」
「意外って…」
「いいよ。行こう映画」
名代さんに誘われて着いた映画館は、駅から離れたこじんまりしたところだった。
チケットを二枚買ってシアターの後ろのから3列目のセンターの席に名代さん。
その右手に僕が座る。
周りは僕ら以外に3人観客がいるくらい。
しかもみんな男子、女の子は名代さんだけ。
まぁこの映画自体コアだから仕方ないか。
ブザー音がなり、照明が徐々に落とされた。