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黛黒




そのセリフを言うために




オレが東京に来ることはなかなかない。
通っている高校は京都の洛山だし、遠征もあった部活だって引退している。
だからよっぽどのことがないと東京には来ないつもりだった。


「黛さん、これ、面白かったです」

「お前がラノベに興味持つとは思わなかったけどな」


オレが東京に来たのは、とある知り合いに会うためだ。


「メールでさんざん感想は言い合ったのに、会ってくれるとは思いませんでした」

「本を返してほしかっただけだ」

「貸してくれたときみたいに郵送で良かった気もします」

「……会いたくなかったのか?」


そう言うと、黒子はいつも無表情な顔を少し顰めた。


「意地悪ですね」

「別に」


ちなみにオレたちが今いるのはマジバ。
存在感の薄い二人のためか、誰かが座りそうになって驚かれるのがたびたびあるのが腹が立つ。
黒子はマジバのバニラシェイクを吸いながら、やはり不機嫌そうな顔をしている。


「このシリーズで好きなシーンは話したが……」

「メールで話しましたね」

「このシリーズで好きなセリフはあるか?」


好きなシーンはメールで話していたが、好きなセリフだ。


「……そうですね、ヒロインが主人公に『あなたに会えなくなる日が来るのが何より怖い』ってセリフでしょうか」

「なんでだよ」

「遠距離恋愛って、そういう日が来たら怖いって思うときがありますから、印象に残りました」

「……」


遠距離恋愛。
しかも学生。
なかなかに厳しいだろう。
毎日連絡するような性格でもない。
お互い、なんとなく電話やメールをして、眠くなったり区切りがつくまで話す。
短いときもあれば長いときもある。
ただ、黒子からは電話もメールも少ない。
受験生のオレを気遣っているらしい。
話したいなら電話でもメールでもすりゃいいのに。


「黛さんは、あるんですか?好きなセリフ」

「まあな」

「なんですか?」


オレは机を挟んで向かいにいる黒子に顔を近づけた。
驚いた黒子の顔は面白い。


「『お前に今キスができるなら、何でもする』」


オレたちの唇が重なる。
こういうとき、存在感が薄いのは便利だ。
男同士のキスも、誰も気づかない。

オレが離れると、黒子の顔が赤い。
なんだか優越感を感じる。


「……もしかして、このために好きなセリフの話したんですか?」

「そのセリフを言うためにお前にそのシリーズ貸したって言ったら?」

「……」


ムカついてる。
負けず嫌いなこいつだから、オレとオレの思い通りに動いてしまった自分にムカついてるんだろう。
ついつい楽しくてニヤニヤしてしまう。


「腹が立ちます……ニヤニヤしないでください」

「いいだろう、このくらい」


オレがドリンクを飲んだ。


「負けたままなのは嫌です」

「なら、お前から連絡してこいよ。オレの度肝を抜いてみろ」


黒子が少し目を見開いた。


「びっくりしすぎて、勉強できなくなりますよ」

「やってみろよ」


そのくらいの勢いで、連絡すればいい。
会えなくなるのを恐れる暇などなくなるくらいに。














黛黒初めて書くんですけどこれでいいんですかね?
まったくもって自信がないです……。
パッと浮かんだ内容を文章にしただけなのでかなり拙いです。
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