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愛される君は前世を知らない



⚠注意

腐向けです。
善逸女体化です。
善逸愛されです。
獪岳が善逸に激甘です。







炭治郎side


俺は竈門炭治郎。
竈門ベーカリーの長男で、今年中高一貫キメツ学園の中等部に入学する。

俺と妹の禰豆子には、前世の記憶がある。
大正時代、鬼によって家族を殺され、禰豆子も鬼にされた。
禰豆子を人間に戻すために鬼殺隊として戦った前世の記憶が俺にはある。
禰豆子も前世の人間であった頃も鬼であった頃も記憶がある。

今は家族全員揃って、前世で早くに亡くなっていた父も、医療の発達のおかげで病弱ではあるが生きている。
幸せだ。幸せのはずだ。
でも、足りないんだ。
彼が。善逸が足りない。

我妻善逸は前世の俺の同期。
すぐ泣くし、自信が無いし、よく叫ぶやつだった。
会ってばかりの俺が鬼の禰豆子を連れていると分かっていても、禰豆子の入っていた箱を傷だらけになっても守ってくれた。
禰豆子を一人の女の子として見てくれた。
俺のことを優しいといって信じてくれた。
俺は間違いなく、善逸に救われた。

俺が前世の記憶が戻ったのは生まれてから八ヶ月くらい。
とんでもない情報量と凄惨な情景に高熱が出た。
俺がちゃんと意識を持った時、両親がいたことに赤ん坊らしくない泣き方をしたことは両親には驚きだったらしい。
その後禰豆子が生まれた時も泣いた。
禰豆子が記憶を取り戻した時も高熱が出たので、俺はもしかしたらと「ねずこ、おぼえてるか?」と聞いたら、赤ん坊の禰豆子が頷いたのだ。
確信した。あれは夢じゃない。俺たちの過去だと。
後々生まれた弟妹たちや両親には前の記憶がないことに安心した。

小学校入学式の時、教室で突然後ろから頭突きをされた。


「炭治郎!」

「伊之助?」


前世の俺の同期、嘴平伊之助だった。
伊之助も前世を覚えていたらしく、幼い頃から俺と善逸を探していたらしい。
ついに名前を覚えてくれたのかと思ったが、あれが八回に一回の正しく名前を呼べる時だったようで、やっぱり間違われる。
伊之助とはそれからずっと同じクラスで、家のパンも美味しそうに食べてくれたのも良い思い出だ。

でも、小学校六年間探したが善逸は見つからなかった。
中学校では見つかるかもしれないと、伊之助と頑張る約束をした。
もうさすがに善逸不足だ。
俺は善逸に会いたくて仕方がなかった。
会って、また一緒にいたい。
そんな思いが長い時間で膨れ上がって破裂しそうだ。


キメツ学園中等部の入学式。
俺と伊之助はまた同じクラスだ。
式典も終わり、教室で担任の先生の自己紹介やこれからの授業の話、教科書を配られたりして、教室を出られるようになった。
伊之助はお母さんに服を脱ぎそうになるのを止められながら写真を撮っていた。
俺も母さんに写真を撮ってもらった。
俺と伊之助が今世で出会ってから俺たちの母親同士も仲良くなった。
伊之助のお母さんの琴葉さんは歌が上手くて綺麗な人だ。
伊之助のお父さんとは色々あって離婚しているらしい。
今は家事手伝いをしてくれるひささんと3人で暮らしているそうだ。
ある程度写真を撮ったり動画を録画した母たちに許可をとり、伊之助と少し校内を見てくることにした。


「広い校舎だな」

「走っても大丈夫そうだな!」

「いや、走ったら怒られるだろう、小学校の時みたいに」


伊之助に注意すると、チラリと目立つ色が見えた。
たんぽぽのような綺麗な色。
俺は思わず走ってその色を追いかけた。
伊之助の権八郎!という声を聞きながら。

廊下を走ってしまったのは申し訳ないが、今はそれどころではない。
あんな鮮やかな金色の髪はどうしても彼以外考えられなくて追いかけた。


「善逸!!」

「え?」


振り向いたその人は、善逸だった。
金の髪は二つの三つ編みにしていて、女子の制服を着ていた。


「えっと……」

「ぜ、善逸!いつから女装に目覚めたんだ!?」

「じょ、女装!?」

「いくら女の子が好きでも女の子の格好をするほどなんて……いや、それでも俺はお前のことを見捨てたりしないぞ!」

「ちょ、ちょっと……」

「前のように、俺が責任もって守ってやる!」

「ストーーーップ!!!君何言ってんのさっきから!!俺は確かに男みたいな名前だし、男みたいな喋り方だけど正真正銘女なんだけど!?そもそも俺と君初対面だよね!?前って何!?責任って何!?もしかして俺が忘れてるだけ!?だったらすみません!でも覚えてないですすみませんんんん!!」


硬直。
その言葉が正しいだろう。
善逸が女?
覚えてない?
思考を整理しようとするが、目の前にいる善逸(女子)が気になって集中できない。
俺が固まったのが心配なのかちょっとおろおろし始めた。可愛い。


「えっと、大丈夫?もしかして、本当に俺と知り合いだった?」

「……我妻善逸、ですか?」


戸惑ってつい敬語になってしまった。


「あ、俺は桑島善逸。我妻は前の苗字だって獪にぃが言ってたけど……」

獪にぃ?
桑島って確か善逸の師匠の苗字だったはず。
苗字が我妻ではなかったとは盲点だった!


「君よく見たら新入生じゃん。俺は二年生の先輩だよ。よろしくね」

「……」


覚えていないんだ。
彼、いや彼女は前世を覚えていない。
俺の事も、禰豆子のことも、伊之助のことも。
それでも俺はやっと会えた善逸と一緒にいたい!


「……俺は竈門炭治郎!よろしくな善逸!」

「まさかの呼び捨てタメ口!?俺先輩だって言ったよね!?俺に敬語なんか使えないってことおおお!!?」


やっと会えたんだ。
しかも善逸は女の子になってる。
なら、善逸をお嫁さんにしてもいいはずだ。
昔から結婚結婚騒いでたし、俺が幸せにしてやるぞ!







ちょっと炭治郎暴走気味
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