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愛される君は前世を知らない



注意⚠

腐向けです。
女体化善逸です。
善逸愛されです。
獪岳が善逸に激甘です。






善逸愛され 現パロ





俺の前世の記憶が戻ったのは、生まれて半年のことだった。
我妻獪岳が生まれて半年、寝ている間に前世の記憶が戻った。
起きたときは赤ん坊になっていたことや、死んでからのたくさんの思いが溢れて大泣きした。
母と父は優しい人だった。大泣きしていた俺を心配し、病院にまで連れて行った。
体には異常がなかったので、不思議そうにされていたが、無事なら良かったと笑ってくれた。
俺は思うように動かない体や、授乳などの羞恥の日々を乗り越え、5歳になったときだった。


「獪岳、あなたお兄ちゃんになるのよ」


弟か妹が生まれると言われた。俺は直感でアイツだ、善逸だと思った。
名字が我妻であることから最初はまさか父がと思ったが、父の名前は善逸ではなかった。
俺の名前が同じなのだから、アイツもきっと同じ名前だろうと思った。
俺の思いは、歓喜だった。

死んでからわかったことだが、俺の善逸への憎しみは愛情の裏返しだった。
本当は善逸を愛してやりたかったが、あの頃の俺はいろいろとこじらせていたせいでできなかった。
だから、今度はちゃんと心から愛してやろうと決めた。
善逸も記憶を思い出したら気持ち悪がられるかもしれないが、その時はその時だ。
俺は母の腹に向かって何度も善逸、善逸と呼びかけた。
父と母はもう名前を決めたのかと驚いていたが、男の子なら善逸にしようと言ってくれた。
少しづつ大きくなっていく母の腹に胸が高鳴るのを感じていた。
毎日が長く感じた。時間が許す限り母の腹に向かって話しかけていた。
初めて母の腹を蹴ったアイツに果てしない感動を覚えた。

母は予定日より少し早く陣痛によって病院に運ばれた。
俺はずっと待っていたその時を期待して待っていた。
仕事から急いで帰ってきた父と祈るように待っていた。


おぎゃあ、おぎゃあ


父と俺が待っていると産声が聞こえた。
母が生まれたときのお楽しみだと、性別を聞かなかった。
生まれた子供は女の子だった。
俺がずっと善逸善逸と呼びかけていたから、女の子だったら俺が悲しむんじゃないかと思ったようだ。


「善逸……、善逸だ……」


女だったが、間違いなかった。
生まれた妹は善逸だった。
俺にはわかった。なぜわかったのかと聞かれば直感だとしか言いようがない。
周りの人が女の子に善逸?と不思議そうにしていたのを横目に俺はやっと会えた妹に笑いかけた。


「善逸……、俺が守るからな」


結局、俺がどうしてもと聞かなかったために、妹の名前は善逸になった。


小さな手、足、体。真っ黒な髪の毛は幼い頃の善逸と同じ。
幼稚園に行くのすら嫌がって俺は善逸のそばにいたがった。
善逸が生まれて半年、俺の小学校入学の準備のために車でデパートに行ったときだった。
交通事故で俺と善逸を残して、両親が死んだ。



あんなに優しかった両親が死んだなんて、信じられなかった。
車に衝撃が走り、とっさにチャイルドシートに乗せられていた善逸を庇った。
目を開けたら、母が俺と善逸に覆いかぶさって死んでいた。
父は運転席で即死だったらしい。
両親の葬式が終わって、俺と善逸をどうするかと話をすることになった。
両親は優しかったのに、両親の親戚はクズが多かった。
葬式中ずっと泣いていた善逸をうるさいと叱りつけるやつもいた。
聞こえてないとでも思ったのか、それとも聞こえるように言っているのか、俺たちのことを煩わしく思っていることを小声で話していたし。

一日目は親戚たちがいろいろ理由をつけて、俺たちを押し付けあっていた。
善逸は両親が亡くなったことがわかるのか、泣き続けている。
俺は両親を失ったことと、善逸が泣き止まないことが辛くて静かに泣いた。
だが、俺が泣き始めると、善逸はぴたりと泣き止んだ。


「どうした、善逸」


俺が涙を拭いながらそう聞くと、善逸はひっくひっくとしながら俺に抱きついてぺちぺちと手を額にやった。
まるで、俺を慰めるみたいに。


「……善逸、ごめん……」

「……あぅ……」

「俺が絶対守るから……泣かないで、頑張るからな……」

「……うぅ」


善逸をぎゅっと抱きしめて俺は誓った。
どんなやつの元にいても、善逸だけは守ってやると。


「……にぃ」

「!……今、俺のこと……?」


善逸はまた泣きながらにぃ、にぃ、と俺にぎゅっとしがみついた。



二日目は、弁護士がやってきて、父が俺たちの将来のためにとそれなりに貯金をしていたことが明らかになって、親戚たちは手のひらを返したように態度が変わった。
誰が俺たちを引き取るか、つまり、父の金を手に入れるかを言い争っている。
醜いやつら、信じられるのは善逸だけ。
そう思っていた。


「ちょっといいか」

「あなたは?」

「亡くなられた我妻夫妻の世話になった者じゃ」


声が、した。

聞き慣れた、声。

杖をつく音と片足が義足のための少し違う足音。


「わしは、桑島慈悟郎。その子たちを引き取りたい」


師範だ。

俺と善逸の、前世の師匠。

俺が、死なせてしまった師範。


「わしは金なぞいらん。その子たちを引き取れるならな」

「本当によろしいのですか?」

「わしは年寄りだが、それなりの貯金もある。剣道道場もやっておるし、審査などもやってくれて構わん」


師範が、助けてくれた。


「その子たちの幸せのために、ここにいる奴らに引き取らせるのはやめた方がいいじゃろ」


弁護士は頷き、二人の子供を引き取るための審査をしてもらうが、親戚たちの態度を鑑みて、まず間違いなく師範が引き取ることになるだろうと言って帰っていった。
師範、桑島慈悟郎は俺たちに近づいた。


「し、師範……」

「?……わしはお前の師範じゃないが……まぁ好きに呼ぶといい。もうすぐ家族じゃ、獪岳、善逸」


師範には記憶がないのか……。
ほっとした。前世で俺が死なせてしまったことを覚えていないことに。
どうしようもない、クズだな、俺は。
善逸は泣きそうになりながら俺の服を離さない。


「ありがとう、師範……」


俺と善逸を、師範のしわしわの手が撫でてくれた。



それからしばらくして、俺と善逸の名字が我妻から桑島に変わった。

















生まれ変わって5年の獪岳くんの視点です。
実はあんまり獪学の口調わかんないんですけど、合ってますかね?
善逸愛されなのに善逸セリフがほとんどない……
赤ちゃんだから、しょうがないよね?
出番が雷一門だけですみません。
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