傷跡
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歩くたびに裾をひきずってしまうほどに
その身体には大きすぎる着流しを纏い、ヒタヒタと小さな足音を立てる少女。
傷はまだ癒えてはいない。
動くごとに淡く 少しずつではあるが包帯を赤く染めていく。
それでも少女は動きを止めない。
素足で夜更けの屯所の庭を
のんびり、ゆっくりとした足取りで歩き回っていた。
辺りをうかがうように
興味が向いたものへとコロコロと視線を投げ掛ける。
何気無い行動。
しかしそれが
なぜだか怯えているのだと思わせた。
その様はまるで行き場を無くした小鳥のよう。
ずっと鳥籠に閉じ込められているはずだった。
けれどその籠の鍵は突如、開け放たれてしまった。
きっと
どうすれば良いのかわからないのだ。
突然手にしてしまった自由。
望んだはずではあった。
けれどこんな形ではなかった。
―――また
あの時のように
彼が・・・・・・―――
少女は相変わらず興味深そうに、それでいて不安そうに辺りを見渡した。
池をのぞきこんで
風に木々が揺らめくと弾かれたように見やり
月が雲に覆われて 辺りが陰ると空を見上げて
月が姿を現すと今度は正面を見る。
――何度繰り返すのか…
少女の様子を見ていた土方は煙草の煙を噴かせながらぽつりと思った。
突然変わってしまった環境に戸惑っているのか…。
否、少女はただ恐ろしいだけなのだ。
現状が
この場所が
この地球(ほし)が
人間が…そして自分が……。
恐ろしくて恐ろしくてたまらないのだ。
だからこそ素性の知れぬ男の部屋でじっとはしていられない。
ましてや眠れるはずがない。
例え、傷が悪化しようとも。
――こわい コワイ 恐い
視界に入る全てのものが
鼓膜を震わせる全てのものが
嗅覚を刺激する全てのものが
肌を撫でる空気も
髪を揺らす風も
こちらへ見定めるかのように投げ掛けてくる視線も
全てが煩わしく不快で恐怖でしかない。
――こわい コワイ 恐い
心許せるものが何一つ無い。
自分が知っているものが何一つ無い。
どんなに小さなものでもいい…
せめて何か一つでもあれば……。
少女はただただ繰り返す。
自分の知っているものを見つけるため。
安心できる場所を探すため。
「いい加減に寝ろ」
そういう土方の言葉を無視して
同じような動作をひたすらに繰り返す…。
その身体には大きすぎる着流しを纏い、ヒタヒタと小さな足音を立てる少女。
傷はまだ癒えてはいない。
動くごとに淡く 少しずつではあるが包帯を赤く染めていく。
それでも少女は動きを止めない。
素足で夜更けの屯所の庭を
のんびり、ゆっくりとした足取りで歩き回っていた。
辺りをうかがうように
興味が向いたものへとコロコロと視線を投げ掛ける。
何気無い行動。
しかしそれが
なぜだか怯えているのだと思わせた。
その様はまるで行き場を無くした小鳥のよう。
ずっと鳥籠に閉じ込められているはずだった。
けれどその籠の鍵は突如、開け放たれてしまった。
きっと
どうすれば良いのかわからないのだ。
突然手にしてしまった自由。
望んだはずではあった。
けれどこんな形ではなかった。
―――また
あの時のように
彼が・・・・・・―――
少女は相変わらず興味深そうに、それでいて不安そうに辺りを見渡した。
池をのぞきこんで
風に木々が揺らめくと弾かれたように見やり
月が雲に覆われて 辺りが陰ると空を見上げて
月が姿を現すと今度は正面を見る。
――何度繰り返すのか…
少女の様子を見ていた土方は煙草の煙を噴かせながらぽつりと思った。
突然変わってしまった環境に戸惑っているのか…。
否、少女はただ恐ろしいだけなのだ。
現状が
この場所が
この地球(ほし)が
人間が…そして自分が……。
恐ろしくて恐ろしくてたまらないのだ。
だからこそ素性の知れぬ男の部屋でじっとはしていられない。
ましてや眠れるはずがない。
例え、傷が悪化しようとも。
――こわい コワイ 恐い
視界に入る全てのものが
鼓膜を震わせる全てのものが
嗅覚を刺激する全てのものが
肌を撫でる空気も
髪を揺らす風も
こちらへ見定めるかのように投げ掛けてくる視線も
全てが煩わしく不快で恐怖でしかない。
――こわい コワイ 恐い
心許せるものが何一つ無い。
自分が知っているものが何一つ無い。
どんなに小さなものでもいい…
せめて何か一つでもあれば……。
少女はただただ繰り返す。
自分の知っているものを見つけるため。
安心できる場所を探すため。
「いい加減に寝ろ」
そういう土方の言葉を無視して
同じような動作をひたすらに繰り返す…。