打ちつける雨
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「綺麗な人だな…」
少女の傍に辿り着き、隣に立つ近藤。
張り付けにされている女性を見ては本当に綺麗だと言わんばかりの表情を浮かべる。
少女は一度、近藤を横目で見てまたゆっくりと自分の姉を見た。
その様子を見て、近藤はこちらが手出ししなければ害は無いのだと胸中で思いながら笑った。
「君にそっくりだ」
とても、優しく…
少女はまた近藤を見てパチクリと瞼を繰り返し、僅かに頬を染めた。
その様子から全く言葉がわからないというわけではないことがうかがえた。
「そんな君たちがこんな暗く汚い所にいちゃいけない…わかるな?」
少女は俯いた。
少女からの返事は無い…
静まり返る空間
変わりにポタリと
少女の足元に広がる鮮血に一滴の水が零れ小さな波紋が広がる。
血とは違う 透明なそれ。
そしてゆっくり顔をあげた少女の右目からは、涙が溢れていた。
無機質な表情から生まれる一つの感情。
「しってる…」
そして初めて少女から発せられた言葉。
鈴を転がしたような音。
まだ幼く舌足らずな言葉でポツリ、ポツリと話始める。
「しぬってことは、よくわからない…でも…アクアがもうおきないのは、しってた」
近藤は悲しげに表情を歪めた。
幼くも悲痛な少女の言葉にシンクロしているようだった。
「…まえまでは、あんなにやわらかかったアクアのカラダがこんなにもかたい…
あんなにワタシに笑いかけてくれたのに目、あけてくれない…
あんなにワタシのなまえ、よんでくれたのに、息すらしてない…
あたたかかった肌がこんなにもつめたい…」
少女は呟くようにポツポツと語る。
その声はあまりにもか細いが、ハッキリと近藤…そして少し距離のある土方、沖田にも聞こえていた。
『もう、うごかない…ずっと…きづいてた
でも、死ぬってことしらない…どーしたらいーのかわからなくて……もしかしたら、また起きるかもって…だから……』
右目から溢れ出す涙は まるで止まる事を知らないかのように次々に流れ、頬を伝っては顎から地面へと落ちてゆく。
けれど、左目からはまったく涙が流れてこない。
右目よりはるかに色素の薄い左目、それはもう彼女の左目が使い物にならないことを示していた。
『でも・・・それじゃあどうして・・・』
まるで絞り出すような悲痛な声。
『どうして私は死ねないの・・・?』
傷よりも何よりもその事実が痛いと言わんばかりの苦しげな表情に近藤は何も答えることができない。
本人さえ知り得ないことを知るよしもないのだから・・・。
それでもどうにかして少女をこの暗闇から開放してやりたいと
色の無い左目と、涙を流す右目。
双方で見つめられる近藤は今、一体何を想い 何を感じているのか…土方、沖田には長年連れ添ってきた勘により、大方検討はついていた。
「アクアちゃんをここから出してやろう。そして君も…ここから出るんだ
アクアちゃんをゆっくり眠らせてあげよう。君はその分長く生きて…それが今、君がアクアちゃんにしてやれることだ」
真っすぐに少女を見つめかえす近藤。
少女の視線に合わせるように膝を折り、しゃがみ込んでニコリと笑いかける。
「俺達が君達をここから、出してやる
だから、アクアちゃんのことは俺達に任せてくれないか?」
そして、そっと少女の血まみれの右手を手にとれば、それを優しく両手で包み込む。
手から伝わる
じんわりと暖かい近藤の体温。
『…ぅ、ん……うん』
その瞬間、今まで表情を変えることなく ただ涙を流していただけだった少女の表情が初めて歪んだ。
まるで泣きじゃくる小さな子供のように。
それを見た近藤は まるでホッとしたような笑みを浮かべる。
その近藤の後ろで土方、沖田もやっと頬を緩めた。
『アクアを…タスケテ
ここからだして……』
そう言って近藤の首に腕を回ししがみつく少女を 優しく受け止める。
「あぁ、もう大丈夫だ。
もう我慢することはない。
痛かったろう…?
苦しかったろう…?
寂しかったろう…?
もっと早く見つけてやれんで、すまなんだ」
申し訳なさそうに謝る近藤。
しかし、少女はフルフルと首を振り 更に強くしがみつく。
それを近藤は黙って包み込んだ。
しばらく嗚咽をもらしていた少女のそれは
次第に穏やかな寝息へとかわっていった…。
近藤は少女が眠った事を確認すると、彼女を横抱きにし土方の元へ歩み寄る。
「この子を…」
そして、少女を土方へ差し出すと土方は黙って受け取った。
その瞬間、土方は驚いたように目を見開いた。
それに近藤も自分の上着を少女にかけてやりながら真剣な表情で少女を見つめる。
あまりにも軽すぎるのだ。
見た目から 少女の身体はあまりに細い。
しかし、触れてみることによって再度認識させられる少女の華奢さと、肌の白さに二人は顔をしかめる。
そして腰に備え付けている
少女が使うにしては少々長い刀。
先程、浪士達を斬っている時は決して使おうとしなかった…
大切な物なのだろうか?
「俺はアクアちゃんを…」
そう思案していると
少女の姉と思われる女性を 十字架から解放し終えた近藤が、彼女もまた 壊れ物を扱うように優しく横抱きに抱え上げた。
「あとはザキに任せよう」
近藤の言葉に二人は黙って頷くと、三人は誰からともなく地上へと向かって歩きはじめた………。
・Fin・
少女の傍に辿り着き、隣に立つ近藤。
張り付けにされている女性を見ては本当に綺麗だと言わんばかりの表情を浮かべる。
少女は一度、近藤を横目で見てまたゆっくりと自分の姉を見た。
その様子を見て、近藤はこちらが手出ししなければ害は無いのだと胸中で思いながら笑った。
「君にそっくりだ」
とても、優しく…
少女はまた近藤を見てパチクリと瞼を繰り返し、僅かに頬を染めた。
その様子から全く言葉がわからないというわけではないことがうかがえた。
「そんな君たちがこんな暗く汚い所にいちゃいけない…わかるな?」
少女は俯いた。
少女からの返事は無い…
静まり返る空間
変わりにポタリと
少女の足元に広がる鮮血に一滴の水が零れ小さな波紋が広がる。
血とは違う 透明なそれ。
そしてゆっくり顔をあげた少女の右目からは、涙が溢れていた。
無機質な表情から生まれる一つの感情。
「しってる…」
そして初めて少女から発せられた言葉。
鈴を転がしたような音。
まだ幼く舌足らずな言葉でポツリ、ポツリと話始める。
「しぬってことは、よくわからない…でも…アクアがもうおきないのは、しってた」
近藤は悲しげに表情を歪めた。
幼くも悲痛な少女の言葉にシンクロしているようだった。
「…まえまでは、あんなにやわらかかったアクアのカラダがこんなにもかたい…
あんなにワタシに笑いかけてくれたのに目、あけてくれない…
あんなにワタシのなまえ、よんでくれたのに、息すらしてない…
あたたかかった肌がこんなにもつめたい…」
少女は呟くようにポツポツと語る。
その声はあまりにもか細いが、ハッキリと近藤…そして少し距離のある土方、沖田にも聞こえていた。
『もう、うごかない…ずっと…きづいてた
でも、死ぬってことしらない…どーしたらいーのかわからなくて……もしかしたら、また起きるかもって…だから……』
右目から溢れ出す涙は まるで止まる事を知らないかのように次々に流れ、頬を伝っては顎から地面へと落ちてゆく。
けれど、左目からはまったく涙が流れてこない。
右目よりはるかに色素の薄い左目、それはもう彼女の左目が使い物にならないことを示していた。
『でも・・・それじゃあどうして・・・』
まるで絞り出すような悲痛な声。
『どうして私は死ねないの・・・?』
傷よりも何よりもその事実が痛いと言わんばかりの苦しげな表情に近藤は何も答えることができない。
本人さえ知り得ないことを知るよしもないのだから・・・。
それでもどうにかして少女をこの暗闇から開放してやりたいと
色の無い左目と、涙を流す右目。
双方で見つめられる近藤は今、一体何を想い 何を感じているのか…土方、沖田には長年連れ添ってきた勘により、大方検討はついていた。
「アクアちゃんをここから出してやろう。そして君も…ここから出るんだ
アクアちゃんをゆっくり眠らせてあげよう。君はその分長く生きて…それが今、君がアクアちゃんにしてやれることだ」
真っすぐに少女を見つめかえす近藤。
少女の視線に合わせるように膝を折り、しゃがみ込んでニコリと笑いかける。
「俺達が君達をここから、出してやる
だから、アクアちゃんのことは俺達に任せてくれないか?」
そして、そっと少女の血まみれの右手を手にとれば、それを優しく両手で包み込む。
手から伝わる
じんわりと暖かい近藤の体温。
『…ぅ、ん……うん』
その瞬間、今まで表情を変えることなく ただ涙を流していただけだった少女の表情が初めて歪んだ。
まるで泣きじゃくる小さな子供のように。
それを見た近藤は まるでホッとしたような笑みを浮かべる。
その近藤の後ろで土方、沖田もやっと頬を緩めた。
『アクアを…タスケテ
ここからだして……』
そう言って近藤の首に腕を回ししがみつく少女を 優しく受け止める。
「あぁ、もう大丈夫だ。
もう我慢することはない。
痛かったろう…?
苦しかったろう…?
寂しかったろう…?
もっと早く見つけてやれんで、すまなんだ」
申し訳なさそうに謝る近藤。
しかし、少女はフルフルと首を振り 更に強くしがみつく。
それを近藤は黙って包み込んだ。
しばらく嗚咽をもらしていた少女のそれは
次第に穏やかな寝息へとかわっていった…。
近藤は少女が眠った事を確認すると、彼女を横抱きにし土方の元へ歩み寄る。
「この子を…」
そして、少女を土方へ差し出すと土方は黙って受け取った。
その瞬間、土方は驚いたように目を見開いた。
それに近藤も自分の上着を少女にかけてやりながら真剣な表情で少女を見つめる。
あまりにも軽すぎるのだ。
見た目から 少女の身体はあまりに細い。
しかし、触れてみることによって再度認識させられる少女の華奢さと、肌の白さに二人は顔をしかめる。
そして腰に備え付けている
少女が使うにしては少々長い刀。
先程、浪士達を斬っている時は決して使おうとしなかった…
大切な物なのだろうか?
「俺はアクアちゃんを…」
そう思案していると
少女の姉と思われる女性を 十字架から解放し終えた近藤が、彼女もまた 壊れ物を扱うように優しく横抱きに抱え上げた。
「あとはザキに任せよう」
近藤の言葉に二人は黙って頷くと、三人は誰からともなく地上へと向かって歩きはじめた………。
・Fin・