打ちつける雨
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ーーーーーーーザアァァァァァァァ・・・
強く降り注ぐ雨
大粒のそれは痛いくらいに肌を打ち、あらゆるものの熱を奪う。
焼けた野原
散乱する錆びたあらゆる武器
転がるいくつもの死体
鼻孔を刺激する腐敗と焦げた臭い
それらを洗い流すように雫が落ち続けているのに・・・
・・・なぜなのだろう?
両手にまとわりついた赤い・・・赤い血が落ちないのは・・・
乾いてしまったのか
それとも実はそんなものはなくて幻覚が見えているのか
いな、確実にある
命の雫・・・
戦は終わった。
負けたのは侍・・・
でも。そんなことはどうでもよくて
ただ目の前の大切なものを
すぐ、そばに在る大切な人を守れさえすればそれでよかった・・・
けど・・・その大切な人はもう動かない
地に伏したまま
白い髪をその身から溢れ出る赤に染め
長い四体を地に投げ出している。
その傍で立ち尽くす少女の実の姉
その命を奪ったのは仲間だったはずの者・・・
種族を越え、ともに戦ってきたのに・・・
一瞬だった。
ずっと守り続けてきたものが奪われる瞬間というのは・・・。
まさに、瞬きの合間に起きた出来事で
判断が遅れた少女は手を伸ばす間もなく
姉を失った今でも状況が理解できずにただ、姉の身体を眺めている。
ーーーどうして・・・?
少女はぼんやりと思った。
でもなんでそう思ったのかわからず
その疑問の答えもみえない
ただ・・・ただ・・・
なんの感情も映し出さない虚無の瞳で姉の亡骸を見つめる。
まさかこんなことになるなんて、思っていなかったものだから
どんな反応をしめせばいいのかわからない
それよりも、姉の身に何が起こったのか
現状を目の当たりにしても把握しきれずにいたのだ。
そんな立ち尽くす少女と地に伏せる女性
まるで切り取られた一枚の絵のように不気味で儚げな光景を見ていた男は少女に声をかけることごできずにいた。
せめて、少女が悲しみ
嘆き
泣き叫びでもすれば
すぐ駆け寄って抱きしめてやれるのに・・・
あまりに痛々しく哀れな姿
少しして
少女は崩れるように膝をついた
そして姉に手を伸ばすとそっと上体を抱き上げ優しく抱きしめる。
呼吸音も聞こえないだろう
その体に温もりもないだろう
知らなくても
直感でわかる
その体が動くことは二度とないことを
それでも少女はいつまでも
いつまでも
表情を変えることなく
数日間、姉の亡骸から離れなかった。
・・・そして少女は姉と共に忽然と姿を消した。
男、坂田銀時をはこのとき激しく後悔する。
どうしてあのとき
たとえ‘死’を知らない少女にそれを諭すことになっても
少女の傍にいてやらなかったのか と・・・。