相容れない
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最初こそ
少女は恐れていた。
優しく笑いかける近藤も
真っ直ぐに見据えてくる土方も
人懐こい笑みを浮かべる山崎も
それだけでは無い。
外に出れば
街を歩く人々の視線が集中する。
その容姿に
その雰囲気に
天人である少女に。
それら全てが
少女にとっては不快感の対象でしかなかった。
しかし
それもいつしか
次第に和らいでいく。
街を住まう人々の視線は相変わらず慣れるものでは無かったが
頓所内
つまり隊士達にだけは大分気を許せるようになっていた。
決闘をした原田もスノウの実力と日頃の土方とのキツイ訓練の努力を認めてくれている様子で
とくに山崎だけは最初からスノウのことを天人とか関係なく別け隔てなく
寧ろまるで妹のように接してくれていたため、それなりに素で接することができた。
ただ一人を除いて…。
彼は滅多に少女の前に姿を見せない。
たまたま廊下ですれ違っても
土方のように見据えるわけでなく
近藤や山崎のように笑いかけるでも無く
なんの感情も映し出しはしない…
虚無の瞳で一瞥するだけ。
ジッと
唇を少しも動かすことなく…。
それが
少女にとっては
何よりも不快だった。
視線だけでわかるのだ。
彼…沖田総悟が
スノウのことをあまり好きでは無いことを…
否、寧ろ嫌われているような気さえしてくる。
それくらいに
沖田が少女を見る目は
あまりにも冷たい…。
その割には何が興味を引くのか
好奇心によるものなのか
何かを探るように見てくるような気がする。
そんな視線に・・・
彼が傍にいるだけで
空気が重苦しくなり
呼吸が乱れる。
無言の圧力をかけられているようだった。
――相容れない
総じて言うのであれば
そういうことなのだろうが…。
恐らく彼は近藤の事が好きだ。
そういうことには聡いスノウはすぐに理解する。
近藤にやたら可愛がられている自分が羨ましいのか
あるいは妬ましいのだろうか。
そして何よりも
彼は言った。
「つまんねぇ」
ポツリと 独り言のように
一言だけ。
それは
少女が頓所にやってきて
目覚めてからしばらく経った時の事だった。
スノウが洗面所に向かうため廊下を歩いている時のこと。
その途中
廊下の隅で壁にもたれかかり
昼寝をしている彼の姿を見つけた。
一度は戸惑い
足を止めたスノウだが
洗面所に向かうためには
沖田の傍を通り抜けるしかない。
意を決して
沖田の正面を横切ろうとした
その時……
―――ガッ――
『っ!?』
沖田は計ったように
立てていた膝を伸ばし
スノウの足を引っ掛けたのだ。
突然の事に
反応しきれなかったスノウは足をからめ取られ
膝からその身を前方へ倒した。
ゴチッと
鈍く痛々しい音が響く。
膝を強く打ったようだった。
見れば
真っ白な膝の一部が赤黒く変色し
薄皮一枚程度の皮膚が擦りむけていた。
本来ならば
膝を抱え 痛みに悶える所…。
しかし
スノウは違った。
やや、一瞬だけ 痛みからか眉を寄せる仕種を見せたものの
痛みにもがくでも無く
痛いと歎くでも無く
一声も発すること無く
まるで 何事も無かったかのように
スッと流れるような動作で立ち上がり
軽く両手を払ってから
再び スタスタと廊下を歩き進めたのだ。
その日からだった。
沖田の嫌がらせがエスカレートしたのは。
ある時は
片付けた書類を散らかされていたり
またある時は
バズーカーで打ってきたり
突如切り掛かってきたり
とにかく
悪質で危険きわまりないものばかり。
普通ならば
近藤のように泣き叫んだり
土方のように怒り狂ったり
山崎のように落ち込んだりするものなのだが
彼女は
どんなに痛め付けられようと
どんなに驚かされようと
瞬間的に瞳をパチクリさせることはあっても
叫び声やら悲鳴やらを 上げることは一切なく
普段通りに過ごすのだ。
それらの対応が沖田ののぞむリアクションじゃなかったのか
それが余計に沖田の気に障ったらしく
今日と言う日まで
嫌がらせが続いていた。
ちなみに今朝の嫌がらせはと言うと……
昨晩、遅くまで事務仕事に追われていた土方。
スノウは少しでも長く眠れるようにと
土方の目覚ましを止めて時間ギリギリまで眠らせていた。
そうしてやっとこさ彼を起こそうかと
部屋にやってきて
肩を揺するがためにそっと手を伸ばした時
開け放たれた部屋の障子の向こう側。
つまり背後から感じた殺気に
スノウは
咄嗟にその身を部屋から外へ転がした。
刹那
―――ドカンッ―――
とんでもない爆発音と爆風。
その衝撃で部屋の障子は吹き飛ばされ
庭にいたスノウの足元にまで届く。
これには流石のスノウも腰を抜かしたのかヘタリとその場に座り込み
ボンヤリと爆発した部屋を見つめた。
が、すぐ傍に感じた人の気配とわずかな足音に
ビクリと肩を震わせてから
弾かれたように振り返る。
見ればその背にバズーカーを抱えた沖田の姿。
悪びれた様子も無く
その出で立ちは飄々としている。
沖田はスノウと目が合うと意地の悪そうな笑みを浮かべ
その表情をみた少女はやや不愉快そうな表情を浮かべた。
煌々と燃える真紅の瞳と
澄んだような赤褐色の瞳
お互い混じり合った視線に火花が散ったような気がした。
少女は恐れていた。
優しく笑いかける近藤も
真っ直ぐに見据えてくる土方も
人懐こい笑みを浮かべる山崎も
それだけでは無い。
外に出れば
街を歩く人々の視線が集中する。
その容姿に
その雰囲気に
天人である少女に。
それら全てが
少女にとっては不快感の対象でしかなかった。
しかし
それもいつしか
次第に和らいでいく。
街を住まう人々の視線は相変わらず慣れるものでは無かったが
頓所内
つまり隊士達にだけは大分気を許せるようになっていた。
決闘をした原田もスノウの実力と日頃の土方とのキツイ訓練の努力を認めてくれている様子で
とくに山崎だけは最初からスノウのことを天人とか関係なく別け隔てなく
寧ろまるで妹のように接してくれていたため、それなりに素で接することができた。
ただ一人を除いて…。
彼は滅多に少女の前に姿を見せない。
たまたま廊下ですれ違っても
土方のように見据えるわけでなく
近藤や山崎のように笑いかけるでも無く
なんの感情も映し出しはしない…
虚無の瞳で一瞥するだけ。
ジッと
唇を少しも動かすことなく…。
それが
少女にとっては
何よりも不快だった。
視線だけでわかるのだ。
彼…沖田総悟が
スノウのことをあまり好きでは無いことを…
否、寧ろ嫌われているような気さえしてくる。
それくらいに
沖田が少女を見る目は
あまりにも冷たい…。
その割には何が興味を引くのか
好奇心によるものなのか
何かを探るように見てくるような気がする。
そんな視線に・・・
彼が傍にいるだけで
空気が重苦しくなり
呼吸が乱れる。
無言の圧力をかけられているようだった。
――相容れない
総じて言うのであれば
そういうことなのだろうが…。
恐らく彼は近藤の事が好きだ。
そういうことには聡いスノウはすぐに理解する。
近藤にやたら可愛がられている自分が羨ましいのか
あるいは妬ましいのだろうか。
そして何よりも
彼は言った。
「つまんねぇ」
ポツリと 独り言のように
一言だけ。
それは
少女が頓所にやってきて
目覚めてからしばらく経った時の事だった。
スノウが洗面所に向かうため廊下を歩いている時のこと。
その途中
廊下の隅で壁にもたれかかり
昼寝をしている彼の姿を見つけた。
一度は戸惑い
足を止めたスノウだが
洗面所に向かうためには
沖田の傍を通り抜けるしかない。
意を決して
沖田の正面を横切ろうとした
その時……
―――ガッ――
『っ!?』
沖田は計ったように
立てていた膝を伸ばし
スノウの足を引っ掛けたのだ。
突然の事に
反応しきれなかったスノウは足をからめ取られ
膝からその身を前方へ倒した。
ゴチッと
鈍く痛々しい音が響く。
膝を強く打ったようだった。
見れば
真っ白な膝の一部が赤黒く変色し
薄皮一枚程度の皮膚が擦りむけていた。
本来ならば
膝を抱え 痛みに悶える所…。
しかし
スノウは違った。
やや、一瞬だけ 痛みからか眉を寄せる仕種を見せたものの
痛みにもがくでも無く
痛いと歎くでも無く
一声も発すること無く
まるで 何事も無かったかのように
スッと流れるような動作で立ち上がり
軽く両手を払ってから
再び スタスタと廊下を歩き進めたのだ。
その日からだった。
沖田の嫌がらせがエスカレートしたのは。
ある時は
片付けた書類を散らかされていたり
またある時は
バズーカーで打ってきたり
突如切り掛かってきたり
とにかく
悪質で危険きわまりないものばかり。
普通ならば
近藤のように泣き叫んだり
土方のように怒り狂ったり
山崎のように落ち込んだりするものなのだが
彼女は
どんなに痛め付けられようと
どんなに驚かされようと
瞬間的に瞳をパチクリさせることはあっても
叫び声やら悲鳴やらを 上げることは一切なく
普段通りに過ごすのだ。
それらの対応が沖田ののぞむリアクションじゃなかったのか
それが余計に沖田の気に障ったらしく
今日と言う日まで
嫌がらせが続いていた。
ちなみに今朝の嫌がらせはと言うと……
昨晩、遅くまで事務仕事に追われていた土方。
スノウは少しでも長く眠れるようにと
土方の目覚ましを止めて時間ギリギリまで眠らせていた。
そうしてやっとこさ彼を起こそうかと
部屋にやってきて
肩を揺するがためにそっと手を伸ばした時
開け放たれた部屋の障子の向こう側。
つまり背後から感じた殺気に
スノウは
咄嗟にその身を部屋から外へ転がした。
刹那
―――ドカンッ―――
とんでもない爆発音と爆風。
その衝撃で部屋の障子は吹き飛ばされ
庭にいたスノウの足元にまで届く。
これには流石のスノウも腰を抜かしたのかヘタリとその場に座り込み
ボンヤリと爆発した部屋を見つめた。
が、すぐ傍に感じた人の気配とわずかな足音に
ビクリと肩を震わせてから
弾かれたように振り返る。
見ればその背にバズーカーを抱えた沖田の姿。
悪びれた様子も無く
その出で立ちは飄々としている。
沖田はスノウと目が合うと意地の悪そうな笑みを浮かべ
その表情をみた少女はやや不愉快そうな表情を浮かべた。
煌々と燃える真紅の瞳と
澄んだような赤褐色の瞳
お互い混じり合った視線に火花が散ったような気がした。