決闘
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治療にあてた数日が過ぎ
先日の土方の言葉通り,スノウは真選組隊士として
まず、事務仕事をさせられた…
が、地球の字を書く事も読む事もままならない彼女はまず字の読み書きの練習からさせられた。
それ以外にも早朝から土方とマンツーマンでの剣術の特訓を行ったり、体力の無いスノウのための
スノウだけの基礎体力アップトレーニング行ったり
頓所内でのルールや真選組の主な仕事の説明を受けたりなど…
突如かわってしまった環境にスノウはぐったり。
夜眠ることを嫌っていたスノウも
さすがに疲れているのか 相変わらず押し入れの中ではあるが
それなりに眠れる日々を過ごしていた。
規則正しい生活を送っていたおかげだろうか…あれほど酷かった傷ももう痛む事はなく
体を動かすのに支障をきたす様子はまったくみられなかった。
そして…
――チョキン…チョキン……
朝一番頓所の庭にて
スノウは山崎に前髪を切ってもらっていた。
後ろ髪はともかく
いくらなんでも前髪が長いのは戦闘中に危険が及ぶことがあるから、と土方に切るように言われたためである。
地面に落ちた白銀の髪
数年間、伸ばしっぱなしにしていたせいで
その長さはかなりある。
「なんか
このまま捨てちゃうのは勿体ないくらい 綺麗な髪だね」
何気無く言った山崎の言葉に
スノウは少しずつ鮮明になっていく視界をボンヤリと見ながら『そうかな?』と胸中で小首を傾げた。
確かに山崎の言う通り
切り落とされた髪はまるで絹糸のように美しかった。
が、スノウは良くも悪くもあまり容姿について何か言われるのが好きではなく、その言葉を流すように短くなった前髪を一つまみ掴むとクルクルと捩った。
久方ぶりに前髪が短くなったせいで落ち着かないようだ。
「一応、少しくらいは目にかかるようにしてあるからね」
と、笑う山崎に
スノウはコクンと頷き
傍にあった箒でかき集められている
切り落とされた髪を見る。
そして誓った。
――もう逃げたりしない と…
姉の死を受け入れられず現実逃避を続けてきた日々
あげくにはたくさんの人間を殺した。
誰のせいでもないのにも関わらず…
――けれど
今度は間違えることのないように
今度は過ちを犯さないように…
――そして…
自分と姉を助けてくれた彼らの力になるのだ と……。
まだまだ信用したわけではない。
ここにいることにも未だ納得できない部分はある。
――けれど……
『ありがとう…』
無意識に口をついて出た言葉に
片付けをしていた山崎は一度は不思議そうな顔をしてスノウを見るが
すぐさま少女の言葉の心意を悟ると
ニッコリと人懐っこい笑みを浮かべ
「どういたしまして」と、かき集めた髪を袋に詰めた。
「おっ 終わったか」
そこにタイミング良く
庭の奥からひょっこりと顔出す近藤。
前髪が短くなったスノウを見て ニッと歯を見せて笑うと満足げに頷く。
「うんうん
やっぱスノウちゃんは別嬪さんだからな
顔を出したほうが絶対良い」
と、スノウの頭をポンポンと撫でた。
その動作にはずいぶん慣れたのかスノウはもう全く怯えることは無く
当たり前のように受け入れていた。
次いで、今度は土方が縁側からやってくる。
「終わったか?」
「はい、いましがた終えた所です」
土方の問いに山崎が答えれば
土方は縁側に置いてある草履に足を通すと
煙草の煙をその身に纏いながら一同の元へとやってくる。
と、以前よりも幾分かスッキリしたスノウを見て
「ほぉ…」と小さく感嘆の声を漏らした。
今まで長い長い前髪に覆われていた白い顔
そして深紅の瞳を ハッキリと捕らえることができるからだ。
あの廃墟にいた時のスノウは とにかく小汚かった。
身体は血まみれの泥まみれ
纏う服は ボロ雑巾のような布きれで
髪も手入れしていなかったためか痛んでいたようで
まさに 野良猫のような状態。
しかし今はどうだろう。
廃墟にいた時と比べ
ずっと小綺麗になった少女の姿は
まるで精密に作られた人形かのように整っている。
日差しを浴びて
シルクのような光沢を宿す白銀の髪
宝石のように無機質で
それでいて煌々と
燃ゆるような輝きを放つ深紅の瞳
それらを縁取り
頬に影を落とす白く長い睫毛に
ラインの美しい輪郭
闇夜の中でも栄える青白い肌
幼いながらも
どこか色香漂わす華奢な身体。
頭のてっぺんから足の先まで
何から何まで一寸の狂いも無く
まさに"完璧"の一言。
ただ、難をあげるのであれば
幼い…と言った所だろうか。
これには土方だけではなく
山崎や近藤までもが
まるで意外な物を見たと 言わんばかりに少女に見入った。
そして脳を過ぎるのは猫鬼族について
僅かだが記されていた古く、薄っぺらい書物。
少しでも猫鬼族について知っておこうと
拝見した本にはこんなことが書かれていた。
【戦闘兵器として価値が高く
その美しい容姿ゆえに
観賞用としても高値で取引されていた】
と。
この事実に 三人はわからなくもないなと それぞれ胸中で頷く。
当の本人は
ほけぇ~ と空を眺めていたが…。