傷跡
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜になって
本日少女に向かって三言目の言葉を紡ぐ。
「どけ 布団を敷く」
普段ならば反応しないのだが
この時ばかりは素直に従う少女。
赤ん坊がハイハイするように押し入れから出ると
その傍らで膝を抱えて土方が動くのを待った。
そして土方が中から布団一式を取り出し それを畳の上に敷くのを確認すると
またノソノソと押し入れの中へ。
今夜はここで過ごすようだ。
もはや土方は何も言わなかった。
閉めるのであれば勝手にするだろう と襖に手をかけることなく布団の中へ。
実を言うと
眠らない少女に神経をすり減らしていたため
土方自身もあまり睡眠を取れていない。
今日一日ずっと机に向かっていたこともあり
グッタリと疲れているのか掛け布団をかけるとすぐに
瞼が重くなるのを感じた。
が、眠る前に と
丁度頭の上にいる少女へと視線を投げ掛ける。
相変わらず動きはない。
ただ、今日だけは座り込むような形では無く
ぐちゃぐちゃに押し込んだ布団の上で背中を丸め、横たわっていた。
それでも、まるで自分の殻に閉じ籠るように膝を抱えたままではあったが…。
土方はそれを視認すると
また視線を天井へ
今度こそ抗うことなく瞼を閉じた。
翌朝。
少女が気になったせいか
はたまた、たまたまなのか
いつより随分早く目覚めた土方。
障子越しの朝日も弱い。
それでも深い眠りにつけたのだろう
やけにスッキリとした頭を上体ごと起こした。
次いで早々
これまたハッキリとした視界で少女の方へと顔を向ける。
昨夜はあれから襖を閉めなかったのか
丸まった細い背中が見えた。
ほんの小さくではあるが寝息のようなものも聞こえる。
浅い呼吸にともなって肩が上下するのを見て
まず一つ 問題が解消されたな・・・と寝起きの一服と言わんばかりに傍に置いてある煙草と灰皿を寄せた。
そこでふ、と強いにおいを感じた。
慣れ親しんでいるようで遠いにおい。
土方はハッとして慌てて少女の元へ
少女の肩を掴むと 突然の衝撃に相当驚いたのかビクッと肩を震わせながら弾かれたように土方を振り返った。
「お前……」
その少女の顔を見て
土方は無意識に低く唸るような声を絞り出した。
日に日に悪くなっていた顔色。
それをより一層際立たせるのはその口許の赤。
もう渇きはじめているのか ドロリとした粘液状になっている。
しかし少女の向こう側に投げ出されている右手首にはまだ真新しい傷。
まるで蛇や吸血鬼などに噛みつかれたかのような傷跡を見て
また少女の顔を見る。
赤く染まった唇。
その唇からうっすら除く赤く染まった牙。
そして底光りする紅の瞳。
少女は自分で自分の手首に噛みついたのだ。
そして
その深い傷口のわりに少ない出血量はその鮮血を啜ったことを表す。
鼻をついたにおいはまさにそれ・・・。
――まさかコイツ…
土方は信じられないと言った様子で目を見開いた。
それもそうだろう。
あれだけ食事に手をつけようとしなかった少女が
よもや腹を満たすがために吸血をするなど誰が思おうか。
本日少女に向かって三言目の言葉を紡ぐ。
「どけ 布団を敷く」
普段ならば反応しないのだが
この時ばかりは素直に従う少女。
赤ん坊がハイハイするように押し入れから出ると
その傍らで膝を抱えて土方が動くのを待った。
そして土方が中から布団一式を取り出し それを畳の上に敷くのを確認すると
またノソノソと押し入れの中へ。
今夜はここで過ごすようだ。
もはや土方は何も言わなかった。
閉めるのであれば勝手にするだろう と襖に手をかけることなく布団の中へ。
実を言うと
眠らない少女に神経をすり減らしていたため
土方自身もあまり睡眠を取れていない。
今日一日ずっと机に向かっていたこともあり
グッタリと疲れているのか掛け布団をかけるとすぐに
瞼が重くなるのを感じた。
が、眠る前に と
丁度頭の上にいる少女へと視線を投げ掛ける。
相変わらず動きはない。
ただ、今日だけは座り込むような形では無く
ぐちゃぐちゃに押し込んだ布団の上で背中を丸め、横たわっていた。
それでも、まるで自分の殻に閉じ籠るように膝を抱えたままではあったが…。
土方はそれを視認すると
また視線を天井へ
今度こそ抗うことなく瞼を閉じた。
翌朝。
少女が気になったせいか
はたまた、たまたまなのか
いつより随分早く目覚めた土方。
障子越しの朝日も弱い。
それでも深い眠りにつけたのだろう
やけにスッキリとした頭を上体ごと起こした。
次いで早々
これまたハッキリとした視界で少女の方へと顔を向ける。
昨夜はあれから襖を閉めなかったのか
丸まった細い背中が見えた。
ほんの小さくではあるが寝息のようなものも聞こえる。
浅い呼吸にともなって肩が上下するのを見て
まず一つ 問題が解消されたな・・・と寝起きの一服と言わんばかりに傍に置いてある煙草と灰皿を寄せた。
そこでふ、と強いにおいを感じた。
慣れ親しんでいるようで遠いにおい。
土方はハッとして慌てて少女の元へ
少女の肩を掴むと 突然の衝撃に相当驚いたのかビクッと肩を震わせながら弾かれたように土方を振り返った。
「お前……」
その少女の顔を見て
土方は無意識に低く唸るような声を絞り出した。
日に日に悪くなっていた顔色。
それをより一層際立たせるのはその口許の赤。
もう渇きはじめているのか ドロリとした粘液状になっている。
しかし少女の向こう側に投げ出されている右手首にはまだ真新しい傷。
まるで蛇や吸血鬼などに噛みつかれたかのような傷跡を見て
また少女の顔を見る。
赤く染まった唇。
その唇からうっすら除く赤く染まった牙。
そして底光りする紅の瞳。
少女は自分で自分の手首に噛みついたのだ。
そして
その深い傷口のわりに少ない出血量はその鮮血を啜ったことを表す。
鼻をついたにおいはまさにそれ・・・。
――まさかコイツ…
土方は信じられないと言った様子で目を見開いた。
それもそうだろう。
あれだけ食事に手をつけようとしなかった少女が
よもや腹を満たすがために吸血をするなど誰が思おうか。