傷跡
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「気長に待ってやろう
彼女が心を開くまで……」
筆を握って数分も経たぬうちに
午前中、近藤が言っていた言葉を思い出す。
――気長にって どれくらいだ?
寛大な心の持ち主の近藤はそう言うが
残念ながら土方は彼ほど心は広く無い。
あの日から四日
寧ろ四日も待ったのだ。
もう充分だろうと思う。
つまりもう限界だった。
この硬直状態
どんなに声をかけても返事は無し。
何か行動を促しても無視。
あの日以来
少女は言葉すら発していない。
これ以上は耐えられない。
土方は徐に立ち上がると襖の方へ
その正面で足を止めると気配を察知したのか
中から息を殺すような
緊張しているような雰囲気がうかがえる。
それでも構わず襖を開け放てば
押し入れの下段から
やっとそれらしい表情がうかがえた。
眉を上げ 瞼を大きく開き
戸惑いに瞳を揺らす。
身を強張らせているのだろう
細い肩は上がり 唇をきゅっと結んでいた。
少女が表情を変えたのは久しぶりだった。
「いつまでそうしているつもりだ」
その声は少女にとって酷く低く響いた。
しかし少女は何も答えず
ただクルクルとした瞳で見上げるばかり。
そんな少女に痺れをきらし
土方は少女と目線を合わせるようにゆっくりとしゃがみこんだ。
微かに少女の肩がピクリと震えるが構わず口を開く。
「いつまで…そうしているつもりだ」
そして再び同じ質問。
けれど先程とは意味合いが違うように思うのは
微妙に変わった声色のせいだろうか。
幾分か柔らかくなったように思うのは気のせいだろうか。
そんなとき
彼女の中で数年前に会った彼の姿がフラッシュバックし
土方とダブって見えて ハッとした。
――何してんの? こんなとこで…
――来いよ 行く所無ぇんだろ?
――守ってみせるさ…何がなんでもな
フワフワと揺れる白銀
気だる気で、それでいて強い意志が輝く赤褐色の瞳
刀を握る逞しい腕や仲間をかばう大きな背中
――名前を紡ぐ低い声
優しく笑むその表情
鼻孔を擽る太陽のようなあたたかい匂いも
全て…全て……
私に安堵をもたらせる
ぎ ん と き―――
『……っ………ん…』
やっと少女が何かを発した。
しかしあまりにか細い声に何を言ったかは聞き取れない。
もう一度うかがおうと
耳をすませるも 少女は再び唇を開くことは無く
抱えていた膝に顔を埋めてしまう。
泣いているわけではないようだが…
これ以上は無理か……
土方は襖を開け放ったままため息をこぼして
その場から離れると また書類仕事に取りかかった。
彼女が心を開くまで……」
筆を握って数分も経たぬうちに
午前中、近藤が言っていた言葉を思い出す。
――気長にって どれくらいだ?
寛大な心の持ち主の近藤はそう言うが
残念ながら土方は彼ほど心は広く無い。
あの日から四日
寧ろ四日も待ったのだ。
もう充分だろうと思う。
つまりもう限界だった。
この硬直状態
どんなに声をかけても返事は無し。
何か行動を促しても無視。
あの日以来
少女は言葉すら発していない。
これ以上は耐えられない。
土方は徐に立ち上がると襖の方へ
その正面で足を止めると気配を察知したのか
中から息を殺すような
緊張しているような雰囲気がうかがえる。
それでも構わず襖を開け放てば
押し入れの下段から
やっとそれらしい表情がうかがえた。
眉を上げ 瞼を大きく開き
戸惑いに瞳を揺らす。
身を強張らせているのだろう
細い肩は上がり 唇をきゅっと結んでいた。
少女が表情を変えたのは久しぶりだった。
「いつまでそうしているつもりだ」
その声は少女にとって酷く低く響いた。
しかし少女は何も答えず
ただクルクルとした瞳で見上げるばかり。
そんな少女に痺れをきらし
土方は少女と目線を合わせるようにゆっくりとしゃがみこんだ。
微かに少女の肩がピクリと震えるが構わず口を開く。
「いつまで…そうしているつもりだ」
そして再び同じ質問。
けれど先程とは意味合いが違うように思うのは
微妙に変わった声色のせいだろうか。
幾分か柔らかくなったように思うのは気のせいだろうか。
そんなとき
彼女の中で数年前に会った彼の姿がフラッシュバックし
土方とダブって見えて ハッとした。
――何してんの? こんなとこで…
――来いよ 行く所無ぇんだろ?
――守ってみせるさ…何がなんでもな
フワフワと揺れる白銀
気だる気で、それでいて強い意志が輝く赤褐色の瞳
刀を握る逞しい腕や仲間をかばう大きな背中
――名前を紡ぐ低い声
優しく笑むその表情
鼻孔を擽る太陽のようなあたたかい匂いも
全て…全て……
私に安堵をもたらせる
ぎ ん と き―――
『……っ………ん…』
やっと少女が何かを発した。
しかしあまりにか細い声に何を言ったかは聞き取れない。
もう一度うかがおうと
耳をすませるも 少女は再び唇を開くことは無く
抱えていた膝に顔を埋めてしまう。
泣いているわけではないようだが…
これ以上は無理か……
土方は襖を開け放ったままため息をこぼして
その場から離れると また書類仕事に取りかかった。