モブサイコ長編(茂夫)
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翌日。
茂夫は登校し、自分の席につく。
同じクラスに陽葵はいた。
陽葵は茂夫に話しかけてこなかったし、茂夫も陽葵に話しかけなかった。もとい、茂夫に自分から話しかける勇気などなかった。
時間は瞬く間に過ぎていき、お昼休みになった。
昨日の出来事は夢だったのではないだろうか?
『友達』と思っているのは自分だけなのかもしれない。
茂夫がそんなことを考えていると、隣の席に陽葵が座った。
茂夫が吃驚して陽葵を見ると、陽葵は不思議そうな顔をして「何?」と茂夫に言った。陽葵はランチバッグからお弁当と水筒を取り出し、机の上に広げた。
クラスの生徒は皆陽葵に注目していた。
「お昼ご飯、食べないの?」
クラス中の視線を気にする素振りは全くなく、陽葵は茂夫にそう尋ねてくる。
「た、食べるけど。神木さん、何で?いつものお友達と食べないの?それに、みんな神木さんのこと見てるよ?」
「ああ、友達には今日から影山くんとお昼ご飯食べるからって言ってきたよ。なんか見られてるけど、私は別に気にしないし」
お弁当の蓋を開け、箸を取り出して陽葵はおかずをつつく。
それから、ピタリと動きを止めた。
「あ。もしかして、嫌だった?ごめんね」
「そんなことないよ!」
慌てて茂夫が否定すると陽葵は嬉しそうに笑った。
「嫌なんかじゃないけど、神木さん凄く見られてるし。僕なんかとお昼ご飯食べてたら皆にからかわれるかもしれないから。だから…」
一緒に食べない方が良い、そう言おうとした。
「別にいいよ」
「え…?」
「別に見られてもいいし、からかわれてもいいよ。私は影山くんと一緒にお昼ご飯食べたいし、お喋りしたいから」
陽葵の言葉は茂夫にとってとても嬉しいものだった。茂夫が何も言えないでいると「えい」と陽葵が箸を使って茂夫の口に何かを放り込んだ。
「○△□~!!??」
「あはは、特別にからあげあげる。美味しい?」
笑って陽葵は茂夫の顔を覗き込んできた。悪戯っぽい笑顔が可愛かった。
顔を真っ赤にしながら、口に放り込まれたからあげを飲み込んで「美味しい」と言うと陽葵は満面の笑顔を浮かべた。
茂夫も鞄からお弁当を取り出して食べ始める。友達と一緒に食べるご飯はとても美味しかった。隣に陽葵が居てくれて嬉しかった。故に茂夫は陽葵に何でも喋った。
家族のこと。師匠のこと。除霊バイトのこと。茂夫はお喋りに夢中になり、話を聞いた彼女が何を言うかなど想像もしていなかった。
「その除霊バイト、私も手伝うよ」
話を聞き終えた陽葵は茂夫にそう言った。
「え。だ、駄目だよ!危ないよ!」
「大丈夫だよ。影山くん、私の力知ってるでしょ?」
「知ってる、けど…。そ、そうだ。神木さん、霊感ないでしょ?霊感がなかったらお手伝いのしようもないよね?」
「幽霊なら見えるよ」
駄目だ。
自分では陽葵を説得できない。
そこで茂夫は考えた。
頼みの綱はあの人しかいない。
あの人、ー師匠ならばきっと陽葵を止めてくれる。
そう考えた茂夫は陽葵を師匠に引き合わせることにした。
「…わかったよ。それなら、師匠に神木さんを紹介するね。でも、師匠が駄目って言ったら駄目だからね」
「うん、わかった」
放課後。
茂夫と陽葵は『霊とか相談所』を訪れた。
茂夫の師匠ー霊幻新隆は、茂夫が連れてきた陽葵をジロジロ見ると「なんだ、もしかして相談者か?」と尋ねた。
茂夫は違う、と首を横に振る。
「同じクラスの神木さん。除霊バイトのお手伝いをしたいって。…駄目ですよね?」
「神木陽葵です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる陽葵を見て、霊幻は考えた。茂夫から除霊バイトの話を聞いた同級生が興味本位で手伝いたいと言っているのだろう。そう思った霊幻は「駄目だ」と陽葵に言った。
「これは仕事だ。遊びじゃねーんだ」
「わかっています。興味本位で言っているのではありません。影山くんのお手伝いがしたいんです。お願いします」
「…なんだモブ、お前コイツと友達なのか?」
「は、はい」
霊幻は、はぁーと溜め息を吐いて頭をかいた。陽葵の外見は可愛かった。モブと陽葵。どう見ても釣り合わない。
「お前、コイツに騙されてるんじゃないのか?」
霊幻がハッキリ疑問を口にすると、茂夫は衝撃を受けた顔をした。
「ち、違う。騙されてなんて…、神木さんは…」
「騙してません」
陽葵は霊幻の言葉を力強く否定した。
「影山くんは私の友人です。彼を騙してなんていません」
まっすぐ霊幻を見据えて話す陽葵に嘘を吐いているような素振りはなかった。
「ふーん。…まぁ、いいや。それで?お前は何ができるの?」
手伝いたいというからには、それなりの力があるのだろうな。霊幻はそういう目をしていた。
「…幽霊が見えます」
え?それだけ?
「見えるだけじゃあ話にならん!他に何かないのか?こっちにメリットがないのに雇う気はない!」
「師匠…!」
やっぱり師匠は凄い。このまま陽葵をあしらってほしい。そう願いを込めて茂夫は霊幻を見つめた。
「………私、生まれつき特殊な力があって」
「ほぅ」
「干渉されない、っていうのかな。危害を加えられないっていうか。相手が人間だろうと霊体だろうと関係なく、彼らの攻撃は私には通用しません。だから…、うーん、たとえば心霊現象が起きている地域の現地調査とかに貢献できるかと」
「なるほど」
陽葵の話を聞き終えた霊幻は少し考えると陽葵にこう言った。
「それならばテストしよう。実際、除霊の現場に立ち合ってもらう。あんたが役に立つと俺が判断すれば採用。駄目なら不採用だ」
「わかりました」
「師匠…!」大丈夫なのかと茂夫が不安そうに霊幻に声をかけると「どうせ泣いて帰るだろ」と霊幻は言った。霊幻は陽葵の力をこれっぽっちも信じていないようだった。
霊幻は茂夫と陽葵を連れて依頼された現場に向かった。現場に着くやいなや「よし。じゃあお前、ちょっと偵察してこい」と陽葵を一人で奥に行かせようとした。
「駄目ですよ!」
茂夫が霊幻に反対の意を伝える。
「奥に大きいのがいます!神木さんを一人で行かせるなんて危険すぎる!」
「モブ、これは試験なんだ。一人で行かせないと意味がない」
「でも!」
「大丈夫ですよ。行ってきます」
陽葵は言い合う茂夫と霊幻に声をかけ、一人で奥へと進んでいった。
「ふむ。度胸はあるようだな」
「神木さん…」
陽葵は一人で奥へと進んでいき、やがて茂夫達からその姿は見えなくなった。
「………」
「………」
「神木さん、帰ってきませんね」
「いや、まだ5分も経ってないだろ!」
「……僕、ちょっと様子見てきます」
「駄目だ。どうせすぐに戻ってくる」
「………」
「………」
「…僕、やっぱり様子見てきます」
「モブ!」
咎める師匠に茂夫は否を唱える。
「神木さんの力は知ってる。それでも、嫌なんだ。女の子を…、大切な友達を危険な所に一人で行かせるなんて、やっぱり駄目だよ!」
そう言って茂夫は駆け出した。
「モブ!」
後ろから師匠が自分を呼ぶ声がした。それでも茂夫は構わず走った。
走って、走って、走って。
走り続けてようやく陽葵の姿を捉えた。陽葵の前には強い力を持った霊体が一体。霊体は陽葵を攻撃していた。しかし、陽葵の力で攻撃はすべて反れており、彼女に当たる様子はない。
「神木さん!!」
茂夫が彼女の名前を呼ぶと、陽葵は吃驚した様子で茂夫の方を振り返った。茂夫は力を使い、瞬時に陽葵に近付くと彼女の手を掴んで一気に霊体から距離をとる。
「影山くん、どうしてここに?」
「神木さんを一人で危険な所に行かせるなんて嫌だったから、追いかけてきたんだ」
「…そっか」
すると陽葵は茂夫を庇うように彼の前に立った。
「私、除霊ってできないから。影山くんの盾になるよ。私の後ろにいれば攻撃当たらないから」
「駄目だよ!」
茂夫は陽葵に声を荒げた。
「友達を盾にするなんて嫌だ!!」
そして茂夫は陽葵の前に出る。彼女をその背に庇って。
「…うん、そうだね。友達を盾にするのは嫌だよ」
「神木さん?」
陽葵は茂夫の隣に並んだ。並んで茂夫の手を握る。
「だから、半分こしよう」
そう言って陽葵は自身の力を茂夫に注いだ。注がれて茂夫はようやくわかった。陽葵の力は『無効化・不干渉』。その力は茂夫の超能力を邪魔することはなく、茂夫と陽葵を覆った。それは陽葵が作った強力なバリアだった。霊体が茂夫達を攻撃する。しかし、その攻撃は当たらない。
茂夫は陽葵と繋いでいない方の左手を霊に向かってかざす。そして霊に力を叩き込んだ。霊は苦しみながら徐々にその形を崩していき、ついに跡形もなく消えてしまった。
茂夫と陽葵が二人で除霊したのである。
除霊を終えた二人は霊幻の元に戻った。
「あー、モブ!それと女子!どうやら無事に戻ったようだな。除霊は終わったのか?」
「はい、終わりました」
「そうか、よくやった」
「師匠、神木さんは…?」
霊幻に陽葵のことを問うと「モブ、お前はどうしたい?」と逆に尋ねられた。
「僕は…反対でした。神木さんを危険な目に合わせたくない。だけど…、だけど…、これからは半分こするんだ。僕と神木さんで。神木さんの力は本物です。僕が保証します。だから、神木さんを採用してください。お願いします!」
そう言って茂夫は師匠に頭を下げた。
「お願いします」
陽葵も霊幻に頭を下げる。
霊幻は困ったように頭をかいて「わかったよ」と言った。
喜ぶ茂夫と陽葵に「ただし!」と霊幻は言葉を続ける。
「雇うからには役にたってもらう!不要だと思ったら即クビだ。いいな?」
「はい!よろしくお願いします!」
「良かったね、神木さん!」
こうして陽葵は『霊とか相談所』の助手になった。
茂夫は登校し、自分の席につく。
同じクラスに陽葵はいた。
陽葵は茂夫に話しかけてこなかったし、茂夫も陽葵に話しかけなかった。もとい、茂夫に自分から話しかける勇気などなかった。
時間は瞬く間に過ぎていき、お昼休みになった。
昨日の出来事は夢だったのではないだろうか?
『友達』と思っているのは自分だけなのかもしれない。
茂夫がそんなことを考えていると、隣の席に陽葵が座った。
茂夫が吃驚して陽葵を見ると、陽葵は不思議そうな顔をして「何?」と茂夫に言った。陽葵はランチバッグからお弁当と水筒を取り出し、机の上に広げた。
クラスの生徒は皆陽葵に注目していた。
「お昼ご飯、食べないの?」
クラス中の視線を気にする素振りは全くなく、陽葵は茂夫にそう尋ねてくる。
「た、食べるけど。神木さん、何で?いつものお友達と食べないの?それに、みんな神木さんのこと見てるよ?」
「ああ、友達には今日から影山くんとお昼ご飯食べるからって言ってきたよ。なんか見られてるけど、私は別に気にしないし」
お弁当の蓋を開け、箸を取り出して陽葵はおかずをつつく。
それから、ピタリと動きを止めた。
「あ。もしかして、嫌だった?ごめんね」
「そんなことないよ!」
慌てて茂夫が否定すると陽葵は嬉しそうに笑った。
「嫌なんかじゃないけど、神木さん凄く見られてるし。僕なんかとお昼ご飯食べてたら皆にからかわれるかもしれないから。だから…」
一緒に食べない方が良い、そう言おうとした。
「別にいいよ」
「え…?」
「別に見られてもいいし、からかわれてもいいよ。私は影山くんと一緒にお昼ご飯食べたいし、お喋りしたいから」
陽葵の言葉は茂夫にとってとても嬉しいものだった。茂夫が何も言えないでいると「えい」と陽葵が箸を使って茂夫の口に何かを放り込んだ。
「○△□~!!??」
「あはは、特別にからあげあげる。美味しい?」
笑って陽葵は茂夫の顔を覗き込んできた。悪戯っぽい笑顔が可愛かった。
顔を真っ赤にしながら、口に放り込まれたからあげを飲み込んで「美味しい」と言うと陽葵は満面の笑顔を浮かべた。
茂夫も鞄からお弁当を取り出して食べ始める。友達と一緒に食べるご飯はとても美味しかった。隣に陽葵が居てくれて嬉しかった。故に茂夫は陽葵に何でも喋った。
家族のこと。師匠のこと。除霊バイトのこと。茂夫はお喋りに夢中になり、話を聞いた彼女が何を言うかなど想像もしていなかった。
「その除霊バイト、私も手伝うよ」
話を聞き終えた陽葵は茂夫にそう言った。
「え。だ、駄目だよ!危ないよ!」
「大丈夫だよ。影山くん、私の力知ってるでしょ?」
「知ってる、けど…。そ、そうだ。神木さん、霊感ないでしょ?霊感がなかったらお手伝いのしようもないよね?」
「幽霊なら見えるよ」
駄目だ。
自分では陽葵を説得できない。
そこで茂夫は考えた。
頼みの綱はあの人しかいない。
あの人、ー師匠ならばきっと陽葵を止めてくれる。
そう考えた茂夫は陽葵を師匠に引き合わせることにした。
「…わかったよ。それなら、師匠に神木さんを紹介するね。でも、師匠が駄目って言ったら駄目だからね」
「うん、わかった」
放課後。
茂夫と陽葵は『霊とか相談所』を訪れた。
茂夫の師匠ー霊幻新隆は、茂夫が連れてきた陽葵をジロジロ見ると「なんだ、もしかして相談者か?」と尋ねた。
茂夫は違う、と首を横に振る。
「同じクラスの神木さん。除霊バイトのお手伝いをしたいって。…駄目ですよね?」
「神木陽葵です。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる陽葵を見て、霊幻は考えた。茂夫から除霊バイトの話を聞いた同級生が興味本位で手伝いたいと言っているのだろう。そう思った霊幻は「駄目だ」と陽葵に言った。
「これは仕事だ。遊びじゃねーんだ」
「わかっています。興味本位で言っているのではありません。影山くんのお手伝いがしたいんです。お願いします」
「…なんだモブ、お前コイツと友達なのか?」
「は、はい」
霊幻は、はぁーと溜め息を吐いて頭をかいた。陽葵の外見は可愛かった。モブと陽葵。どう見ても釣り合わない。
「お前、コイツに騙されてるんじゃないのか?」
霊幻がハッキリ疑問を口にすると、茂夫は衝撃を受けた顔をした。
「ち、違う。騙されてなんて…、神木さんは…」
「騙してません」
陽葵は霊幻の言葉を力強く否定した。
「影山くんは私の友人です。彼を騙してなんていません」
まっすぐ霊幻を見据えて話す陽葵に嘘を吐いているような素振りはなかった。
「ふーん。…まぁ、いいや。それで?お前は何ができるの?」
手伝いたいというからには、それなりの力があるのだろうな。霊幻はそういう目をしていた。
「…幽霊が見えます」
え?それだけ?
「見えるだけじゃあ話にならん!他に何かないのか?こっちにメリットがないのに雇う気はない!」
「師匠…!」
やっぱり師匠は凄い。このまま陽葵をあしらってほしい。そう願いを込めて茂夫は霊幻を見つめた。
「………私、生まれつき特殊な力があって」
「ほぅ」
「干渉されない、っていうのかな。危害を加えられないっていうか。相手が人間だろうと霊体だろうと関係なく、彼らの攻撃は私には通用しません。だから…、うーん、たとえば心霊現象が起きている地域の現地調査とかに貢献できるかと」
「なるほど」
陽葵の話を聞き終えた霊幻は少し考えると陽葵にこう言った。
「それならばテストしよう。実際、除霊の現場に立ち合ってもらう。あんたが役に立つと俺が判断すれば採用。駄目なら不採用だ」
「わかりました」
「師匠…!」大丈夫なのかと茂夫が不安そうに霊幻に声をかけると「どうせ泣いて帰るだろ」と霊幻は言った。霊幻は陽葵の力をこれっぽっちも信じていないようだった。
霊幻は茂夫と陽葵を連れて依頼された現場に向かった。現場に着くやいなや「よし。じゃあお前、ちょっと偵察してこい」と陽葵を一人で奥に行かせようとした。
「駄目ですよ!」
茂夫が霊幻に反対の意を伝える。
「奥に大きいのがいます!神木さんを一人で行かせるなんて危険すぎる!」
「モブ、これは試験なんだ。一人で行かせないと意味がない」
「でも!」
「大丈夫ですよ。行ってきます」
陽葵は言い合う茂夫と霊幻に声をかけ、一人で奥へと進んでいった。
「ふむ。度胸はあるようだな」
「神木さん…」
陽葵は一人で奥へと進んでいき、やがて茂夫達からその姿は見えなくなった。
「………」
「………」
「神木さん、帰ってきませんね」
「いや、まだ5分も経ってないだろ!」
「……僕、ちょっと様子見てきます」
「駄目だ。どうせすぐに戻ってくる」
「………」
「………」
「…僕、やっぱり様子見てきます」
「モブ!」
咎める師匠に茂夫は否を唱える。
「神木さんの力は知ってる。それでも、嫌なんだ。女の子を…、大切な友達を危険な所に一人で行かせるなんて、やっぱり駄目だよ!」
そう言って茂夫は駆け出した。
「モブ!」
後ろから師匠が自分を呼ぶ声がした。それでも茂夫は構わず走った。
走って、走って、走って。
走り続けてようやく陽葵の姿を捉えた。陽葵の前には強い力を持った霊体が一体。霊体は陽葵を攻撃していた。しかし、陽葵の力で攻撃はすべて反れており、彼女に当たる様子はない。
「神木さん!!」
茂夫が彼女の名前を呼ぶと、陽葵は吃驚した様子で茂夫の方を振り返った。茂夫は力を使い、瞬時に陽葵に近付くと彼女の手を掴んで一気に霊体から距離をとる。
「影山くん、どうしてここに?」
「神木さんを一人で危険な所に行かせるなんて嫌だったから、追いかけてきたんだ」
「…そっか」
すると陽葵は茂夫を庇うように彼の前に立った。
「私、除霊ってできないから。影山くんの盾になるよ。私の後ろにいれば攻撃当たらないから」
「駄目だよ!」
茂夫は陽葵に声を荒げた。
「友達を盾にするなんて嫌だ!!」
そして茂夫は陽葵の前に出る。彼女をその背に庇って。
「…うん、そうだね。友達を盾にするのは嫌だよ」
「神木さん?」
陽葵は茂夫の隣に並んだ。並んで茂夫の手を握る。
「だから、半分こしよう」
そう言って陽葵は自身の力を茂夫に注いだ。注がれて茂夫はようやくわかった。陽葵の力は『無効化・不干渉』。その力は茂夫の超能力を邪魔することはなく、茂夫と陽葵を覆った。それは陽葵が作った強力なバリアだった。霊体が茂夫達を攻撃する。しかし、その攻撃は当たらない。
茂夫は陽葵と繋いでいない方の左手を霊に向かってかざす。そして霊に力を叩き込んだ。霊は苦しみながら徐々にその形を崩していき、ついに跡形もなく消えてしまった。
茂夫と陽葵が二人で除霊したのである。
除霊を終えた二人は霊幻の元に戻った。
「あー、モブ!それと女子!どうやら無事に戻ったようだな。除霊は終わったのか?」
「はい、終わりました」
「そうか、よくやった」
「師匠、神木さんは…?」
霊幻に陽葵のことを問うと「モブ、お前はどうしたい?」と逆に尋ねられた。
「僕は…反対でした。神木さんを危険な目に合わせたくない。だけど…、だけど…、これからは半分こするんだ。僕と神木さんで。神木さんの力は本物です。僕が保証します。だから、神木さんを採用してください。お願いします!」
そう言って茂夫は師匠に頭を下げた。
「お願いします」
陽葵も霊幻に頭を下げる。
霊幻は困ったように頭をかいて「わかったよ」と言った。
喜ぶ茂夫と陽葵に「ただし!」と霊幻は言葉を続ける。
「雇うからには役にたってもらう!不要だと思ったら即クビだ。いいな?」
「はい!よろしくお願いします!」
「良かったね、神木さん!」
こうして陽葵は『霊とか相談所』の助手になった。