モブサイコ長編(律)
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それから少しして、校内に一つの噂が広がった。
女子のリコーダーを不良が盗んだらしい。そしてその事件の解決をしたのが生徒会長と生徒会役員の影山律なのだという。
「ねぇねぇ千冬。リコーダー事件聞いた?気持ち悪いよね~」
「うん」
「生徒会長と影山くん、かっこいいよね~!」
「うん」
「千冬、ちょっと話ちゃんと聞いてる?」
「うん」
「千冬ちゃん?おーい」
「うん」
麻紀と恵は友人の様子に顔を見合わせる。
千冬は噂を聞いて、考えた。考えてすぐに気が付いた。リコーダー事件は不良を締め上げる為に仕組まれたもの。そしてそれを仕組んだのは生徒会長と影山律の二名であること。
「…なんでだろう」
ボソリと千冬が独り言を呟く。生徒会長がどういう人かは知らないが、律は真面目で優しい。そんな律が悪事に荷担するとは思えなかった。
(もしかして、生徒会長に何か弱みを握られているとか?もしくは脅されて…?)
千冬は思い切ってガタンと席から立ち上がった。
スタスタと千冬は斜め後ろの席に座る律の隣まで歩いていく。千冬は屈んで律の顔を覗き込んだ。
「逢瀬さん。何か用…?」
力なく自分を見る律に、胸が苦しくなった。
「影山くん。大丈夫ですか?その…私に何かできることがあったら言ってください」
「………大丈夫、何もないよ」
律はそう言って笑った。
笑った律の瞳は、全く笑っていなかった。
『助けて』
千冬には彼がそう訴えているように見えた。
「…わかりました」
千冬は立ち上がると、そのまま教室を出て行った。
「千冬どうしちゃったの?」
「変なの~」
友人二人は不思議そうに彼女が出て行った扉を見つめるが、特に気にすることもなく他愛のない話をはじめた。
千冬は教室を出て、階段を上がる。一つ上の階は二年生の学級だ。
茂夫に律のことを伝えなくては。
しかし、千冬は茂夫のクラスが何組かまで知らなかった。
仕方ない、こうなったら…端からあたるしかない。
「すみません、こちらのクラスに影山茂夫先輩はいますか?」
千冬の言葉に学級の生徒達がいっせいに千冬の方を見る。
(うっ、視線が痛い)
「影山ってモブのことだろ?一年生じゃん。あー、何かの罰ゲーム?案内してやるよ。モブのクラスはあっち」
よくわからないが男子生徒が茂夫のクラスまで親切に案内してくれた。
案内されたクラスを覗き込むと、茂夫が自分の席で本を読んでいるところだった。
「あの…、茂夫先輩!」
突然声をかけられ、ビクッと茂夫の肩が跳ねる。
「あれ?千冬ちゃん?」
茂夫は席を立って千冬の方へ歩いていく。
「どうしたの?僕に何か用事?」
「実は、影山くんのことで相談したいことが…」
「律がどうかしたの?」
「少し様子が変なんです。何か…悩んでいるみたいで。私では力になれなくて。だから、茂夫先輩に助けてあげてほしくて」
リコーダー事件の犯人のことは千冬の推測でしかない。もし推測が正しかったとしても律を責めたくなかったし、律が犯人なんじゃないかと言って茂夫を傷つけたくもなかった。
「そうなんだ…。教えてくれてありがとう。家で少し話してみるよ」
「お願いします」
ぺこりと頭を下げて千冬は自分のクラスに戻った。
それから日ごとに律の様子は変わっていった。攻撃的になり、まるで別人のようだった。
「影山くん、何か雰囲気変わったよね。ああ、でもちょい悪な雰囲気の影山くんもカッコイイ!!」
「わかるわかる!!千冬もそう思うよね?」
「私は…全然わかりません。以前の影山くんの方が良いと思います」
すると友人二人がキラキラと目を輝かせて自分を見つめてくる。
「何ですか?」
「千冬!あんた、ようやく影山くんの良さに気付いたのね!」
「照れなくていいって!千冬ちゃんも影山くんが好きなんでしょ?」
「はあ?何を言っているんですか?」
「千冬は私の最大のライバル!でも私の大事な友人でもあるわ!千冬の恋を応援するべきか否か…」
「私は見てるだけで満足だから、千冬ちゃんの恋を応援するよ!頑張って!千冬ちゃん!」
「いや、何か激しく勘違いされているのですが…」
「あ、噂の主が来たわよ!」
「ほらほら、千冬ちゃん!頑張って!」
恵は千冬の手を掴んで立たせると、自分の席に座らせた。
律が席に着く。律は千冬に一瞥もくれなかった。
「千冬ちゃん、自分から話しかけなきゃ駄目だってば」
恵がコソコソと耳打ちしてくるが、それどころではなかった。
律は冷たかった。彼の眼差しは冷たく鋭いナイフのようで、誰も寄せ付けない雰囲気だった。千冬は俯いた。俯いたまま小さく呟く。
「助けてあげられなくて、ごめんなさい」
泣きたい気持ちを必死にこらえた。
千冬の言葉に律は彼女を見る。
千冬は優しい。優しくて賢い。だからきっと彼女は気付いている。僕が何をしたのか。それでも彼女は僕を責めずに寄り添ってくれている。
「………ごめん」
ボソリと呟いた律の言葉に、ハッと千冬が顔をあげる。律と千冬の目が合った。千冬が何かを言おうと口を開いた時、チャイムが鳴り休み時間が終わってしまった。
(影山くん、辛そうだったな…)
千冬はぼーっと律のことを考えていた。最後に謝罪の言葉を口にした律は、なんだか消えてしまいそうな追い詰められた表情をしていた。
「千冬ー!いったよー!」
「あ!千冬ちゃん!危ない!!」
ガンッ!!!!!
千冬はバレーボールのアタックを顔面で思い切り受け止めていた。
ぱた…。
千冬は静かにその場に倒れ、気を失った。
「千冬ー!!死なないでー!!しっかりしてー!!」
「こら、遠藤。ふざけてないで、逢瀬を保健室まで運んでやれ」
「麻紀ちゃん、私も千冬ちゃん運ぶの手伝うよ」
千冬は麻紀と恵に担がれ、保健室へと運ばれていった。
「影山ー!どうしたんだよ、女子の方なんか見て」
「あれ、今運ばれていったのって逢瀬?」
「逢瀬ってスポーツもできたよな?貧血か?」
ざわざわとどよめく男子生徒達を教員が「こら!お前たち、授業に集中しろ!」と注意する。
「…エクボ」
律は他の生徒には見えていない自分にまとわりつく霊体に声をかける。
「わかったよ。様子見てくればいいんだろ?俺様に任せとけ!」
エクボは律から離れ、千冬の方へと飛んでいった。
千冬は保健室に寝かされ、目を覚ましたのは一時間後だった。もう下校時間になっており、ベッドの横には友人達が持ってきてくれたのであろう、千冬の通学鞄が置いてあった。養護教諭に礼を言い、千冬は鞄を持って家路についた。エクボはそこまで見届けると、律の元へと戻り報告する。
「お嬢ちゃんなら、目を覚まして家に帰ったぜ。まー、大事ないだろ。なんかボーッとしてるけどな」
「そうか」
律はエクボの報告にホッと安堵のため息をつく。
それからまもなくして、律は不良に囲まれ大きな事件に巻き込まれていくのだった。
女子のリコーダーを不良が盗んだらしい。そしてその事件の解決をしたのが生徒会長と生徒会役員の影山律なのだという。
「ねぇねぇ千冬。リコーダー事件聞いた?気持ち悪いよね~」
「うん」
「生徒会長と影山くん、かっこいいよね~!」
「うん」
「千冬、ちょっと話ちゃんと聞いてる?」
「うん」
「千冬ちゃん?おーい」
「うん」
麻紀と恵は友人の様子に顔を見合わせる。
千冬は噂を聞いて、考えた。考えてすぐに気が付いた。リコーダー事件は不良を締め上げる為に仕組まれたもの。そしてそれを仕組んだのは生徒会長と影山律の二名であること。
「…なんでだろう」
ボソリと千冬が独り言を呟く。生徒会長がどういう人かは知らないが、律は真面目で優しい。そんな律が悪事に荷担するとは思えなかった。
(もしかして、生徒会長に何か弱みを握られているとか?もしくは脅されて…?)
千冬は思い切ってガタンと席から立ち上がった。
スタスタと千冬は斜め後ろの席に座る律の隣まで歩いていく。千冬は屈んで律の顔を覗き込んだ。
「逢瀬さん。何か用…?」
力なく自分を見る律に、胸が苦しくなった。
「影山くん。大丈夫ですか?その…私に何かできることがあったら言ってください」
「………大丈夫、何もないよ」
律はそう言って笑った。
笑った律の瞳は、全く笑っていなかった。
『助けて』
千冬には彼がそう訴えているように見えた。
「…わかりました」
千冬は立ち上がると、そのまま教室を出て行った。
「千冬どうしちゃったの?」
「変なの~」
友人二人は不思議そうに彼女が出て行った扉を見つめるが、特に気にすることもなく他愛のない話をはじめた。
千冬は教室を出て、階段を上がる。一つ上の階は二年生の学級だ。
茂夫に律のことを伝えなくては。
しかし、千冬は茂夫のクラスが何組かまで知らなかった。
仕方ない、こうなったら…端からあたるしかない。
「すみません、こちらのクラスに影山茂夫先輩はいますか?」
千冬の言葉に学級の生徒達がいっせいに千冬の方を見る。
(うっ、視線が痛い)
「影山ってモブのことだろ?一年生じゃん。あー、何かの罰ゲーム?案内してやるよ。モブのクラスはあっち」
よくわからないが男子生徒が茂夫のクラスまで親切に案内してくれた。
案内されたクラスを覗き込むと、茂夫が自分の席で本を読んでいるところだった。
「あの…、茂夫先輩!」
突然声をかけられ、ビクッと茂夫の肩が跳ねる。
「あれ?千冬ちゃん?」
茂夫は席を立って千冬の方へ歩いていく。
「どうしたの?僕に何か用事?」
「実は、影山くんのことで相談したいことが…」
「律がどうかしたの?」
「少し様子が変なんです。何か…悩んでいるみたいで。私では力になれなくて。だから、茂夫先輩に助けてあげてほしくて」
リコーダー事件の犯人のことは千冬の推測でしかない。もし推測が正しかったとしても律を責めたくなかったし、律が犯人なんじゃないかと言って茂夫を傷つけたくもなかった。
「そうなんだ…。教えてくれてありがとう。家で少し話してみるよ」
「お願いします」
ぺこりと頭を下げて千冬は自分のクラスに戻った。
それから日ごとに律の様子は変わっていった。攻撃的になり、まるで別人のようだった。
「影山くん、何か雰囲気変わったよね。ああ、でもちょい悪な雰囲気の影山くんもカッコイイ!!」
「わかるわかる!!千冬もそう思うよね?」
「私は…全然わかりません。以前の影山くんの方が良いと思います」
すると友人二人がキラキラと目を輝かせて自分を見つめてくる。
「何ですか?」
「千冬!あんた、ようやく影山くんの良さに気付いたのね!」
「照れなくていいって!千冬ちゃんも影山くんが好きなんでしょ?」
「はあ?何を言っているんですか?」
「千冬は私の最大のライバル!でも私の大事な友人でもあるわ!千冬の恋を応援するべきか否か…」
「私は見てるだけで満足だから、千冬ちゃんの恋を応援するよ!頑張って!千冬ちゃん!」
「いや、何か激しく勘違いされているのですが…」
「あ、噂の主が来たわよ!」
「ほらほら、千冬ちゃん!頑張って!」
恵は千冬の手を掴んで立たせると、自分の席に座らせた。
律が席に着く。律は千冬に一瞥もくれなかった。
「千冬ちゃん、自分から話しかけなきゃ駄目だってば」
恵がコソコソと耳打ちしてくるが、それどころではなかった。
律は冷たかった。彼の眼差しは冷たく鋭いナイフのようで、誰も寄せ付けない雰囲気だった。千冬は俯いた。俯いたまま小さく呟く。
「助けてあげられなくて、ごめんなさい」
泣きたい気持ちを必死にこらえた。
千冬の言葉に律は彼女を見る。
千冬は優しい。優しくて賢い。だからきっと彼女は気付いている。僕が何をしたのか。それでも彼女は僕を責めずに寄り添ってくれている。
「………ごめん」
ボソリと呟いた律の言葉に、ハッと千冬が顔をあげる。律と千冬の目が合った。千冬が何かを言おうと口を開いた時、チャイムが鳴り休み時間が終わってしまった。
(影山くん、辛そうだったな…)
千冬はぼーっと律のことを考えていた。最後に謝罪の言葉を口にした律は、なんだか消えてしまいそうな追い詰められた表情をしていた。
「千冬ー!いったよー!」
「あ!千冬ちゃん!危ない!!」
ガンッ!!!!!
千冬はバレーボールのアタックを顔面で思い切り受け止めていた。
ぱた…。
千冬は静かにその場に倒れ、気を失った。
「千冬ー!!死なないでー!!しっかりしてー!!」
「こら、遠藤。ふざけてないで、逢瀬を保健室まで運んでやれ」
「麻紀ちゃん、私も千冬ちゃん運ぶの手伝うよ」
千冬は麻紀と恵に担がれ、保健室へと運ばれていった。
「影山ー!どうしたんだよ、女子の方なんか見て」
「あれ、今運ばれていったのって逢瀬?」
「逢瀬ってスポーツもできたよな?貧血か?」
ざわざわとどよめく男子生徒達を教員が「こら!お前たち、授業に集中しろ!」と注意する。
「…エクボ」
律は他の生徒には見えていない自分にまとわりつく霊体に声をかける。
「わかったよ。様子見てくればいいんだろ?俺様に任せとけ!」
エクボは律から離れ、千冬の方へと飛んでいった。
千冬は保健室に寝かされ、目を覚ましたのは一時間後だった。もう下校時間になっており、ベッドの横には友人達が持ってきてくれたのであろう、千冬の通学鞄が置いてあった。養護教諭に礼を言い、千冬は鞄を持って家路についた。エクボはそこまで見届けると、律の元へと戻り報告する。
「お嬢ちゃんなら、目を覚まして家に帰ったぜ。まー、大事ないだろ。なんかボーッとしてるけどな」
「そうか」
律はエクボの報告にホッと安堵のため息をつく。
それからまもなくして、律は不良に囲まれ大きな事件に巻き込まれていくのだった。