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「あ、隠神さん!こんにちは~!」
隠神が扉を開けると、にこやかに早希が出迎えた。
「早希ちゃん、こんにちは。今日は連れも一緒なんだ。ほら、入った入った」
隠神に促され、夏羽、織、晶、結も室内へと足を踏み入れる。
「わぁ~!ウッドハウスなんてボク初めて!オシャレ~!かわいい~!!」
晶はお洒落な室内の様子にキラキラと目を輝かせた。そんな晶の様子に、くすっと早希が微笑む。
「まぁまぁ、隠神さんのお仲間さんですか?たくさんのお客様、賑やかで嬉しいです!私、早希と申します。どうぞよろしくです!」
にっこりと早希は手を差し出し、握手を求める。夏羽達が彼女と握手を交わすが、結だけは応じなかった。
早希は結に差し出した手を引っ込めると、悲しい気持ちを隠すように無理に微笑んでみせた。
「あ、今お茶をご用意しますので!皆さんどうぞ席につかれて下さいね」
「ありがとう、早希」
「はいです!」
早希はルンルンとキッチンへ入っていく。夏羽は何かお手伝いできないかと彼女についてキッチンへと向かった。
「もー。兄さんってば、握手くらいしてあげたっていいのに!」
「…女は苦手だ」
結の返答に、晶はぷうと頬をふくらませた。
少しして、早希がティーカップの載ったトレイを運んでくる。夏羽もお菓子の載ったトレイを運んできた。
「お待たせしました~」
ティーカップには良い香りの紅茶が注がれており、可愛い大皿にはスコーンやクッキー、チョコレートといったお菓子が載せられていた。
「わあ!素敵~!!」
「どうぞ遠慮なく頂いて下さいね」
晶は上機嫌でお菓子に手を伸ばす。
「美味しい~!!」
「やっぱり早希のお茶会は最高だね」
「美味しいです」
呑気にお茶会を楽しむ三人に、織がイライラと隠神に視線を送る。
「隠神さん、呑気にお茶すすってる場合かよ。本題はいいのかよ?」
「そんなに焦らなくてもいいでしょ。ほら、織と結も頂きなさい」
はぁ、と織は溜め息をこぼしお茶をすする。
結はお茶もお菓子も口をつけなかった。
「えっと…お気に召しませんでしたか?」
おずおずと早希が結に話しかけるが、結は彼女を一瞥し、フンと瞳を閉じた。
「ご、ごめんね、早希さん。兄さん、女の人が苦手で。いつも女の人にはこういう態度なの。だから気にしないで!」
「そうですか…」
しょんぼりと早希は肩を落とした。
「おいしかったよ。御馳走様。さて、早希。結石について何か新しい情報はないか?」
「ふふっ、隠神さんのことですから、きっと結石の情報をお探しなのだろうと思っておりましたよ。そうですね、いくつかそれらしい情報は入ってきてはいますが、有力なのは長野ですね。長野にはいくつか有名な寺社がありますが、それらの寺社に祀られているとの噂をよく耳にします。あとは佐渡ですね。佐渡には美しい海がありますが、その海に棲息する怪物が何か水に関する結石を所持しているようですよ。」
「なるほどね。早速あたってみるよ。ありがとう、早希」
「いえいえ、隠神さんのお役に立てたなら何よりです!」
「情報をもらったんだ。お礼に…そうだなあ、結を置いていくよ。何かに役立ててくれ」
「はい?」
「どういうことだ」
結はギロリと隠神を睨みつける。
「早希は一人暮らしなんだよねぇ。何かと物騒だし、用心棒くらいいた方がいいでしょ。長野と佐渡をあたったら戻ってくるから、それまでの間頼むよ」
「断る。女の傍など不快だ」
「ふ、不快…!」
結の言葉にショックを受け、早希はズーンと沈み込んだ。
「うーん。そうそう、結。早希の傍にいるってことは結石の情報が得られる。つまり、夏羽や俺たちにとって有益なんだ。それでも嫌か?」
「夏羽殿の為…。わかった。それならば仕方ない。」
しぶしぶと結は承諾した。
「それじゃあ兄さん、行ってくるねー!」
晶は元気良く結に手を振って、隠神達とともに早希の家を出て行った。残された結はじろりと早希を睨む。
「何をすればいい?」
「えっと…、そうですねぇ。とりあえずお片付けを一緒にお願いできますか?」
「わかった」
結は隠神達が飲んだティーカップや菓子皿をキッチンに運び、食器を洗う。早希は結が洗った食器を拭いて食器棚へと戻していく。片付けを終えると早希は結に向き直った。
「これから少しの間お世話になりますし…結くんに私の力をお見せします。ついてきて下さいね。」
早希はそう言って家を出ると林の中へとどんどん入っていく。しばらく歩くとぴたりと歩みを止め、空を仰いだ。
バサリ、と音をたてて早希の背中から黒い翼が現れる。
「翼…!?」
驚く結に「私、鴉の怪物なんです」と早希が告げる。
早希は空に向かって鳴く。
するとバサリと一羽の鴉が近くの木にとまった。
「こんにちは。調子はどうですか?今日は何か変わったことはないでしょうか?」
早希が鴉に問えば、鴉はカァカァと鳴いた。
「うんうん。へー。そうなのですか。ええっ!?そうなのですね!うん、わかりました。ありがとう!」
早希は鴉と何やら話しはじめ、会話を終えるとバサリと鴉は羽ばたいて大空へと消えていった。早希の背中の黒翼もスッと消える。
「…何を話していたんだ?」
「えっとね。今日は○○スーパーで魚が特売日だから夕飯は魚にした方が良いそうですよ」
「………そうか」
有力情報を期待していた結は、がっくりと肩を落とした。
「うん。あとですね、結くんたち狐に狙われてませんか?狐の怪物が結くんたちを探しているそうです」
「!?」
血相を変えた結に慌てて早希が口を開く。
「大丈夫ですよ。近くにはいませんから。まだあなたたちの居場所までは割り出せていないみたいです。」
早希の言葉に結は、ほっと胸をなで下ろした。
「ところで結くんは何の怪物なのか、お伺いしても良いでしょうか?」
「ああ。俺は雪男子だ」
結は落ちていた葉を拾い上げると瞬時に葉を凍らせてみせる。
「わあ!凄いです、結くん!」
「別にどうということはない。お前も凄い」
「ふふっ、ありがとうございます!早希って呼んで下さい」
「………」
「えっ、駄目ですか?」
「………早希殿」
「殿?」
結は何か文句があるのかとばかりに早希を睨みつけた。
「わわっ、な、何でもないですよ。殿なんて呼ばれたことありませんでしたから、ちょっと吃驚しただけです。さあさあ、結くん行きましょう」
「どこに?」
「決まってるじゃないですか!○○スーパーですよ!!」
結が呆れた眼差しで早希を見るが、早希はそんな結の様子には全く気づいていなかった。
「わ~!本当にお魚安いですねぇ。結くん、どのお魚が良いですか?」
「どれでもいい」
「そうですか?じゃあコレとアレと、あとお野菜と牛乳と…」
次から次へと買い物かごに商品を放り込む早希に結が口をはさむ。
「おい、そんなに買うのか?」
「はい。今まで一人暮らしでしたが、これから少しの間結くんも一緒ですし。結くんは男の子ですから食事もたくさんご用意しないとです!」
にっこりと楽しそうに語る早希に結は少しだけ警戒心を緩めた。
会計を済ませ、商品を袋に詰め込む。ずっしりした大袋は結が持った。
「持って頂いてありがとうございます」
「別に構わない」
「…結くんは、優しいですね」
「別に…優しいわけではない。重い物は俺が持つ。女に持たせるのは気分が悪い。それだけだ」
結がそう答えると早希は「そうですか」と嬉しそうに微笑んだ。
帰宅するとすぐに早希は調理にとりかかった。結も他にやることがないからと彼女を手伝う。早希の言うとおりに野菜を切っていく結だが、ふとその手が止まった。
「おい、いくらなんでもこれは多すぎないか?」
「えっ?そうですか?結くんたくさん召し上がりそうですし、三人前くらい作った方が良いかなって」
「減らそう」
「あう…はいです」
結の指示通りに量を減らし、調理を続けること数十分。料理が完成し、テーブルに並べられる。
焼きサンマをメインに味噌汁、大根の煮物、かぼちゃの煮付けといった和食メニューだ。
「お前は洋食好きなのかと思ったから、和食は意外だった」
「あはは、家の内装が洋建築ですから似合わないかもしれませんけど。洋食も和食も好きですよ。でも、なんとなくですけど、結くんは和食の方が好きかなって」
「特にこだわりはないが、和食の方が馴染みはある」
「ふふっ、それなら和食にして良かったです」
席につき、いただきますの挨拶をしてから料理を口に運ぶ。結は黙々と食べ進めた。
「良かった。結くん、食べてくれなかったらどうしようって思っていたんです」
「何故だ?」
「だって、お菓子と紅茶は手をつけていなかったじゃないですか」
「ああ。あの時は警戒していたからな。今はそれほどではない。かといって信用はしていないが」
「まあ、そうですよね…。でもそれで良いですよ。結くん、女の人が苦手だって聞きましたし、ちょっとやそっとで変わるものじゃないですもの。ここでの生活が結くんにとって苦痛にならないように考えますから。何か不便なことがあったら遠慮なく言って下さいね」
「ああ、助かる」
一呼吸置いてから、結が口を開く。
「…お前は、なんというか、普通だな」
「はい?」
「一緒に居て嫌な気はしない」
「本当ですか!?」
「ああ。良い気もしないが」
「そうですか…」
パッと喜んだかと思えば、今度はズーンとショックを受ける早希の様子にフッと結が笑った。
「早希殿」
「はい」
「明日からもよろしく頼む」
結の言葉に早希は満面の笑顔で答える。
「こちらこそ。よろしく、結くん!」
隠神が扉を開けると、にこやかに早希が出迎えた。
「早希ちゃん、こんにちは。今日は連れも一緒なんだ。ほら、入った入った」
隠神に促され、夏羽、織、晶、結も室内へと足を踏み入れる。
「わぁ~!ウッドハウスなんてボク初めて!オシャレ~!かわいい~!!」
晶はお洒落な室内の様子にキラキラと目を輝かせた。そんな晶の様子に、くすっと早希が微笑む。
「まぁまぁ、隠神さんのお仲間さんですか?たくさんのお客様、賑やかで嬉しいです!私、早希と申します。どうぞよろしくです!」
にっこりと早希は手を差し出し、握手を求める。夏羽達が彼女と握手を交わすが、結だけは応じなかった。
早希は結に差し出した手を引っ込めると、悲しい気持ちを隠すように無理に微笑んでみせた。
「あ、今お茶をご用意しますので!皆さんどうぞ席につかれて下さいね」
「ありがとう、早希」
「はいです!」
早希はルンルンとキッチンへ入っていく。夏羽は何かお手伝いできないかと彼女についてキッチンへと向かった。
「もー。兄さんってば、握手くらいしてあげたっていいのに!」
「…女は苦手だ」
結の返答に、晶はぷうと頬をふくらませた。
少しして、早希がティーカップの載ったトレイを運んでくる。夏羽もお菓子の載ったトレイを運んできた。
「お待たせしました~」
ティーカップには良い香りの紅茶が注がれており、可愛い大皿にはスコーンやクッキー、チョコレートといったお菓子が載せられていた。
「わあ!素敵~!!」
「どうぞ遠慮なく頂いて下さいね」
晶は上機嫌でお菓子に手を伸ばす。
「美味しい~!!」
「やっぱり早希のお茶会は最高だね」
「美味しいです」
呑気にお茶会を楽しむ三人に、織がイライラと隠神に視線を送る。
「隠神さん、呑気にお茶すすってる場合かよ。本題はいいのかよ?」
「そんなに焦らなくてもいいでしょ。ほら、織と結も頂きなさい」
はぁ、と織は溜め息をこぼしお茶をすする。
結はお茶もお菓子も口をつけなかった。
「えっと…お気に召しませんでしたか?」
おずおずと早希が結に話しかけるが、結は彼女を一瞥し、フンと瞳を閉じた。
「ご、ごめんね、早希さん。兄さん、女の人が苦手で。いつも女の人にはこういう態度なの。だから気にしないで!」
「そうですか…」
しょんぼりと早希は肩を落とした。
「おいしかったよ。御馳走様。さて、早希。結石について何か新しい情報はないか?」
「ふふっ、隠神さんのことですから、きっと結石の情報をお探しなのだろうと思っておりましたよ。そうですね、いくつかそれらしい情報は入ってきてはいますが、有力なのは長野ですね。長野にはいくつか有名な寺社がありますが、それらの寺社に祀られているとの噂をよく耳にします。あとは佐渡ですね。佐渡には美しい海がありますが、その海に棲息する怪物が何か水に関する結石を所持しているようですよ。」
「なるほどね。早速あたってみるよ。ありがとう、早希」
「いえいえ、隠神さんのお役に立てたなら何よりです!」
「情報をもらったんだ。お礼に…そうだなあ、結を置いていくよ。何かに役立ててくれ」
「はい?」
「どういうことだ」
結はギロリと隠神を睨みつける。
「早希は一人暮らしなんだよねぇ。何かと物騒だし、用心棒くらいいた方がいいでしょ。長野と佐渡をあたったら戻ってくるから、それまでの間頼むよ」
「断る。女の傍など不快だ」
「ふ、不快…!」
結の言葉にショックを受け、早希はズーンと沈み込んだ。
「うーん。そうそう、結。早希の傍にいるってことは結石の情報が得られる。つまり、夏羽や俺たちにとって有益なんだ。それでも嫌か?」
「夏羽殿の為…。わかった。それならば仕方ない。」
しぶしぶと結は承諾した。
「それじゃあ兄さん、行ってくるねー!」
晶は元気良く結に手を振って、隠神達とともに早希の家を出て行った。残された結はじろりと早希を睨む。
「何をすればいい?」
「えっと…、そうですねぇ。とりあえずお片付けを一緒にお願いできますか?」
「わかった」
結は隠神達が飲んだティーカップや菓子皿をキッチンに運び、食器を洗う。早希は結が洗った食器を拭いて食器棚へと戻していく。片付けを終えると早希は結に向き直った。
「これから少しの間お世話になりますし…結くんに私の力をお見せします。ついてきて下さいね。」
早希はそう言って家を出ると林の中へとどんどん入っていく。しばらく歩くとぴたりと歩みを止め、空を仰いだ。
バサリ、と音をたてて早希の背中から黒い翼が現れる。
「翼…!?」
驚く結に「私、鴉の怪物なんです」と早希が告げる。
早希は空に向かって鳴く。
するとバサリと一羽の鴉が近くの木にとまった。
「こんにちは。調子はどうですか?今日は何か変わったことはないでしょうか?」
早希が鴉に問えば、鴉はカァカァと鳴いた。
「うんうん。へー。そうなのですか。ええっ!?そうなのですね!うん、わかりました。ありがとう!」
早希は鴉と何やら話しはじめ、会話を終えるとバサリと鴉は羽ばたいて大空へと消えていった。早希の背中の黒翼もスッと消える。
「…何を話していたんだ?」
「えっとね。今日は○○スーパーで魚が特売日だから夕飯は魚にした方が良いそうですよ」
「………そうか」
有力情報を期待していた結は、がっくりと肩を落とした。
「うん。あとですね、結くんたち狐に狙われてませんか?狐の怪物が結くんたちを探しているそうです」
「!?」
血相を変えた結に慌てて早希が口を開く。
「大丈夫ですよ。近くにはいませんから。まだあなたたちの居場所までは割り出せていないみたいです。」
早希の言葉に結は、ほっと胸をなで下ろした。
「ところで結くんは何の怪物なのか、お伺いしても良いでしょうか?」
「ああ。俺は雪男子だ」
結は落ちていた葉を拾い上げると瞬時に葉を凍らせてみせる。
「わあ!凄いです、結くん!」
「別にどうということはない。お前も凄い」
「ふふっ、ありがとうございます!早希って呼んで下さい」
「………」
「えっ、駄目ですか?」
「………早希殿」
「殿?」
結は何か文句があるのかとばかりに早希を睨みつけた。
「わわっ、な、何でもないですよ。殿なんて呼ばれたことありませんでしたから、ちょっと吃驚しただけです。さあさあ、結くん行きましょう」
「どこに?」
「決まってるじゃないですか!○○スーパーですよ!!」
結が呆れた眼差しで早希を見るが、早希はそんな結の様子には全く気づいていなかった。
「わ~!本当にお魚安いですねぇ。結くん、どのお魚が良いですか?」
「どれでもいい」
「そうですか?じゃあコレとアレと、あとお野菜と牛乳と…」
次から次へと買い物かごに商品を放り込む早希に結が口をはさむ。
「おい、そんなに買うのか?」
「はい。今まで一人暮らしでしたが、これから少しの間結くんも一緒ですし。結くんは男の子ですから食事もたくさんご用意しないとです!」
にっこりと楽しそうに語る早希に結は少しだけ警戒心を緩めた。
会計を済ませ、商品を袋に詰め込む。ずっしりした大袋は結が持った。
「持って頂いてありがとうございます」
「別に構わない」
「…結くんは、優しいですね」
「別に…優しいわけではない。重い物は俺が持つ。女に持たせるのは気分が悪い。それだけだ」
結がそう答えると早希は「そうですか」と嬉しそうに微笑んだ。
帰宅するとすぐに早希は調理にとりかかった。結も他にやることがないからと彼女を手伝う。早希の言うとおりに野菜を切っていく結だが、ふとその手が止まった。
「おい、いくらなんでもこれは多すぎないか?」
「えっ?そうですか?結くんたくさん召し上がりそうですし、三人前くらい作った方が良いかなって」
「減らそう」
「あう…はいです」
結の指示通りに量を減らし、調理を続けること数十分。料理が完成し、テーブルに並べられる。
焼きサンマをメインに味噌汁、大根の煮物、かぼちゃの煮付けといった和食メニューだ。
「お前は洋食好きなのかと思ったから、和食は意外だった」
「あはは、家の内装が洋建築ですから似合わないかもしれませんけど。洋食も和食も好きですよ。でも、なんとなくですけど、結くんは和食の方が好きかなって」
「特にこだわりはないが、和食の方が馴染みはある」
「ふふっ、それなら和食にして良かったです」
席につき、いただきますの挨拶をしてから料理を口に運ぶ。結は黙々と食べ進めた。
「良かった。結くん、食べてくれなかったらどうしようって思っていたんです」
「何故だ?」
「だって、お菓子と紅茶は手をつけていなかったじゃないですか」
「ああ。あの時は警戒していたからな。今はそれほどではない。かといって信用はしていないが」
「まあ、そうですよね…。でもそれで良いですよ。結くん、女の人が苦手だって聞きましたし、ちょっとやそっとで変わるものじゃないですもの。ここでの生活が結くんにとって苦痛にならないように考えますから。何か不便なことがあったら遠慮なく言って下さいね」
「ああ、助かる」
一呼吸置いてから、結が口を開く。
「…お前は、なんというか、普通だな」
「はい?」
「一緒に居て嫌な気はしない」
「本当ですか!?」
「ああ。良い気もしないが」
「そうですか…」
パッと喜んだかと思えば、今度はズーンとショックを受ける早希の様子にフッと結が笑った。
「早希殿」
「はい」
「明日からもよろしく頼む」
結の言葉に早希は満面の笑顔で答える。
「こちらこそ。よろしく、結くん!」