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「ただいま~」
「あ!隠神さん、おかえり~!!」
仕事から帰ってきた隠神に晶達が声をかける。
すると、隠神は困ったように頬をかき、少し気まずそうに口を開いた。
「あー、ちょっと話があるんだけど。」
「話?なになに?」
「どうせまためんどくせー話だろ」
「?」
隠神は晶達3人を前に一呼吸置くと、意を決して告げた。
「ごめん。連れてきた」
「「「は?」」」
そう言った隠神の後ろでゴソゴソと何かが動く。それは隠神の背中から恐る恐る顔を出した。
晶達の様子を伺う怯えた瞳の少女は、着物を着ていた。
少女の黒髪は何故か肩の辺りでバラバラに切りそろえられている。
「この子は、座敷童なんだ。晶と年は同じだし、仲良くしてやってくれ。」
「え!?座敷童!?すごーい!ホントにいるんだ!」
キャッキャッとはしゃぐ晶とは対照的に、織はジトーッと険しい視線を彼女に送る。
「座敷童ぃー?うさんくせー」
織と目があった少女は逃げるように隠神の背中に隠れてしまった。
「あー!!ちょっとシキ!いじわる言わないの!可哀想じゃん!!」
晶は織を咎めると、隠神の背に隠れた少女を覗き込む。
「ボク、晶。よろしくね!」
にっこり笑う晶に、おずおずと少女が視線を向ける。
「ねぇねぇ、名前はなんていうの?」
「……………………早希」
ポソリと彼女が囁く。
「は?声ちっさ!聞こえねーんだけど」
「だからシキはいじわる言わないの!早希ちゃんっていうんだね。ごめんね、早希ちゃん。シキは口ではいじわる言うんだけど、ホントは優しいんだよ。だからシキのこと嫌いにならないであげてね」
晶の言葉に「そんなんじゃねえ!」などと織が抗議するものの、晶は構わず言葉を続ける。
「で、こっちは夏羽クン!夏羽クンは口数少ないけどとっても優しいんだよ~!」
「よろしく、早希」
ぺこりと夏羽は早希に向かってお辞儀する。
早希はそんな彼らの様子をじーっと見つめていたが、夏羽にならってぺこりと頭を下げた。
「…早希は幸運を呼ぶ座敷童。だから早希はある屋敷にずっと閉じこめられていたんだ。その幸運を得たい人間によって、な。早希の扱いは酷いものだった。だから俺が連れてきた。…髪もろくに切ってもらえず、食事もほとんど与えられていなかった。放っておけないでしょ。」
隠神の話を聞いた晶はボロボロと涙を流した。
「うっ…、うっ…、早希ちゃん、可哀想~!」
「そーだったのかよ。隠神さんもそーゆー大事なことは早く言えよな」
夏羽は早希を慰めるように頭を優しく撫でてやった。
「んじゃー、まあとりあえずピザ取ろうぜ、ピザ。勿論隠神さんの金で」
「あ、いいねーピザ!早希ちゃんの歓迎会やろうやろう!」
「…ジュース買ってくる」
織、晶、夏羽の様子に隠神は嬉しそうに微笑んだ。
「よし、じゃー早希、座って座って」
隠神に促され、ちょこんと早希がソファに腰掛ける。
「………ふわふわ」
早希はソファの感触を確かめると立ち上がり、床に正座する。
「………こっちの方が落ち着く」
「「「!?」」」
ジュースを買いに外出した夏羽以外の三人は早希の様子に驚愕した。
「ダメだよ、早希ちゃん!ほらほらソファに座って!ソファの感触もすぐに慣れるから!」
「そうだ、早希。喉渇いてるだろ?おじさんがお茶を入れてあげよう!」
「ピザ届くまで暇だろ?一緒にゲームでもしようぜ!」
早希はソファになんて座ったことがなかった。ピザもジュースもゲームも知らなかった。誰かに優しくしてもらったことなんてない。彼女が受けてきた仕打ちがどんなものだったのか痛いくらいに一同はわかってしまった。
それからほどなくして。不思議なことが次々と起きた。
夏羽が自販機で買ったジュースは当たりが出た。
隠神の淹れたお茶は茶柱が立った。
織が始めたゲームではレアアイテムが次々と出た。
これは。
もしかして。
座敷童の。
幸運?
「いやでもそれにしては小さすぎねぇ?なんつーか、こう…億万長者?みたいなもんじゃねぇの?座敷童って」
織が口にした疑問に早希が答える。
「…それは、私がまだ未熟だから。…大人になってもっと力をつければ、大きな幸運が呼べる…」
そう言って早希は悲しそうに目を伏せた。
しーん…とその場が静まり返る。
「シキ!!」
晶が織を責めるように怒鳴りつけるが、まあまあと隠神が宥めた。
ピンポーン。
そんな時、玄関のチャイムが鳴り響く。どうやら宅配ピザが届いたらしい。
「受け取ってきます」
夏羽がピザを受け取りにいき、すぐに戻ってきた。
「オマケでナゲットがつきました」
またか。
「とにかく皆で食べよーぜ!ほら、早希。オマエ何飲むんだよ?」
「…………水」
「ダメダメダメダメ!そーだ、早希ちゃんオレンジジュースにしよ!おいしいよ!!」
有無を言わさずドンと早希の前に晶がオレンジジュースを置く。
「それじゃあ、皆でかんぱーい!!」
ニコニコとはしゃぐ皆の様子に早希がようやく僅かに微笑んだ。
「…………………ありがとう」
小さく呟かれたお礼の言葉は、しっかりと全員の耳に届いていた。
翌日。
「晶、頼みたいことがあるんだが」
「なぁに?隠神さん」
隠神は晶に茶封筒を手渡すと、早希の生活に必要な身支度品を彼女と一緒に買いに行ってほしいのだと頼み込んだ。
「勿論いいよ!行く行く!わー、早希ちゃんにお洋服見立ててあげるの楽しみ♪」
ルンルンと機嫌良く晶は茶封筒を開ける。封筒の中には一万円が収められていた。
「は?一万円?」
ピシリと晶が固まる。
「ん?どうした晶?」
「こんなんじゃ全然足りないよ!!早希ちゃん女の子だよ!?お洋服とか靴とかバッグとか!アクセサリーも必要だよね~。タオルとか歯ブラシとか生活必需品だって買わなきゃいけないんだし!」
「そ、そうか?」
晶の剣幕に押され気味の隠神に、ずいっと晶が詰め寄り三本指を立てる。
「最低、三万は必要だから!!」
はあっと隠神はため息をつき、「わかった、わかった」と封筒に資金を足してやる。
「無駄遣いはするなよ?」
「はーい!早速早希ちゃん誘って行ってこよーっと!」
晶はスキップしながら早希の元へ行き、声をかける。
「早希ちゃん!一緒にお買い物行こー!」
「………お買い物?」
「そ。いーから、こっち来て!そうだなあ…、流石に着物は目立つから…ボクの服貸してあげる!レディースの服とかお洒落だから色々持ってるんだよね~」
晶は早希の手を引いて自室へ行くとゴソゴソとクローゼットを引っ掻き回した。
「よし!これにしよう!早希ちゃん、これとかどう?」
早希に洋服を差し出すと、早希は困った表情を見せた。
「………これ、着るの?」
「うん!おねが~い!新しいお洋服買うまでの間だけでいいから!着物だと目立っちゃうんだもん。早希ちゃんとお買い物楽しみたいし!でも…どうしても嫌なら、無理にとは言わないけど…」
しょんぼりとした様子の晶を見て、早希は慌てて承諾した。
「………大丈夫。…着てみる」
「ホント!?良かったー!!じゃあ向こうの部屋で着替えてきてね。」
コクリと早希は頷いて、晶の部屋から出て行った。
しばらく経ったあと早希が晶の元へと戻ってきた。
ショートパンツにTシャツ、パーカーといったラフなカジュアルファッションに身を包んだ早希はすっかり『街中の女の子』という装いだった。
「うんうん、似合ってるよ早希ちゃん!和服も良いけど洋服姿もとっても可愛いよ!じゃあ、一緒にお出かけしよ♪」
戸惑う早希の手を引いて揚々と晶は事務所を出て行った。
まず早希達がやってきたのは1000円カットの美容院だ。
「オシャレなサロンも憧れるけど、買いたい物色々あるし、ここで我慢してね」
美容師さんは手早く早希の毛先を整えてくれた。バラバラだった毛先を綺麗に切りそろえてもらい、それだけで早希は充分喜んだ。
その後はショッピングセンターへ行き、日用品から服飾品までたくさん買い揃えた。
晶とのショッピングは早希にとってとても楽しいものだった。
楽しいなんていう感情はいつ以来だろうか。
時間はあっという間に過ぎ、二人は大きなバッグをいくつもぶら下げて帰路へとついた。
「あー、楽しかった!早希ちゃん、また一緒にお出かけしようね!」
コクリと早希が頷くと晶はえへへ、と嬉しそうに笑った。
「…………ありがとう、晶」
早希が初めて晶の名前を呼ぶと、晶は目を丸くして驚いたが、すぐに繋いでいた早希の手をギュッと握った。
「どういたしまして。ボクが楽しいこと、これからいっぱい教えてあげるからね!」
「…………うん!」
早希はにっこりと微笑んだ。
「あ!隠神さん、おかえり~!!」
仕事から帰ってきた隠神に晶達が声をかける。
すると、隠神は困ったように頬をかき、少し気まずそうに口を開いた。
「あー、ちょっと話があるんだけど。」
「話?なになに?」
「どうせまためんどくせー話だろ」
「?」
隠神は晶達3人を前に一呼吸置くと、意を決して告げた。
「ごめん。連れてきた」
「「「は?」」」
そう言った隠神の後ろでゴソゴソと何かが動く。それは隠神の背中から恐る恐る顔を出した。
晶達の様子を伺う怯えた瞳の少女は、着物を着ていた。
少女の黒髪は何故か肩の辺りでバラバラに切りそろえられている。
「この子は、座敷童なんだ。晶と年は同じだし、仲良くしてやってくれ。」
「え!?座敷童!?すごーい!ホントにいるんだ!」
キャッキャッとはしゃぐ晶とは対照的に、織はジトーッと険しい視線を彼女に送る。
「座敷童ぃー?うさんくせー」
織と目があった少女は逃げるように隠神の背中に隠れてしまった。
「あー!!ちょっとシキ!いじわる言わないの!可哀想じゃん!!」
晶は織を咎めると、隠神の背に隠れた少女を覗き込む。
「ボク、晶。よろしくね!」
にっこり笑う晶に、おずおずと少女が視線を向ける。
「ねぇねぇ、名前はなんていうの?」
「……………………早希」
ポソリと彼女が囁く。
「は?声ちっさ!聞こえねーんだけど」
「だからシキはいじわる言わないの!早希ちゃんっていうんだね。ごめんね、早希ちゃん。シキは口ではいじわる言うんだけど、ホントは優しいんだよ。だからシキのこと嫌いにならないであげてね」
晶の言葉に「そんなんじゃねえ!」などと織が抗議するものの、晶は構わず言葉を続ける。
「で、こっちは夏羽クン!夏羽クンは口数少ないけどとっても優しいんだよ~!」
「よろしく、早希」
ぺこりと夏羽は早希に向かってお辞儀する。
早希はそんな彼らの様子をじーっと見つめていたが、夏羽にならってぺこりと頭を下げた。
「…早希は幸運を呼ぶ座敷童。だから早希はある屋敷にずっと閉じこめられていたんだ。その幸運を得たい人間によって、な。早希の扱いは酷いものだった。だから俺が連れてきた。…髪もろくに切ってもらえず、食事もほとんど与えられていなかった。放っておけないでしょ。」
隠神の話を聞いた晶はボロボロと涙を流した。
「うっ…、うっ…、早希ちゃん、可哀想~!」
「そーだったのかよ。隠神さんもそーゆー大事なことは早く言えよな」
夏羽は早希を慰めるように頭を優しく撫でてやった。
「んじゃー、まあとりあえずピザ取ろうぜ、ピザ。勿論隠神さんの金で」
「あ、いいねーピザ!早希ちゃんの歓迎会やろうやろう!」
「…ジュース買ってくる」
織、晶、夏羽の様子に隠神は嬉しそうに微笑んだ。
「よし、じゃー早希、座って座って」
隠神に促され、ちょこんと早希がソファに腰掛ける。
「………ふわふわ」
早希はソファの感触を確かめると立ち上がり、床に正座する。
「………こっちの方が落ち着く」
「「「!?」」」
ジュースを買いに外出した夏羽以外の三人は早希の様子に驚愕した。
「ダメだよ、早希ちゃん!ほらほらソファに座って!ソファの感触もすぐに慣れるから!」
「そうだ、早希。喉渇いてるだろ?おじさんがお茶を入れてあげよう!」
「ピザ届くまで暇だろ?一緒にゲームでもしようぜ!」
早希はソファになんて座ったことがなかった。ピザもジュースもゲームも知らなかった。誰かに優しくしてもらったことなんてない。彼女が受けてきた仕打ちがどんなものだったのか痛いくらいに一同はわかってしまった。
それからほどなくして。不思議なことが次々と起きた。
夏羽が自販機で買ったジュースは当たりが出た。
隠神の淹れたお茶は茶柱が立った。
織が始めたゲームではレアアイテムが次々と出た。
これは。
もしかして。
座敷童の。
幸運?
「いやでもそれにしては小さすぎねぇ?なんつーか、こう…億万長者?みたいなもんじゃねぇの?座敷童って」
織が口にした疑問に早希が答える。
「…それは、私がまだ未熟だから。…大人になってもっと力をつければ、大きな幸運が呼べる…」
そう言って早希は悲しそうに目を伏せた。
しーん…とその場が静まり返る。
「シキ!!」
晶が織を責めるように怒鳴りつけるが、まあまあと隠神が宥めた。
ピンポーン。
そんな時、玄関のチャイムが鳴り響く。どうやら宅配ピザが届いたらしい。
「受け取ってきます」
夏羽がピザを受け取りにいき、すぐに戻ってきた。
「オマケでナゲットがつきました」
またか。
「とにかく皆で食べよーぜ!ほら、早希。オマエ何飲むんだよ?」
「…………水」
「ダメダメダメダメ!そーだ、早希ちゃんオレンジジュースにしよ!おいしいよ!!」
有無を言わさずドンと早希の前に晶がオレンジジュースを置く。
「それじゃあ、皆でかんぱーい!!」
ニコニコとはしゃぐ皆の様子に早希がようやく僅かに微笑んだ。
「…………………ありがとう」
小さく呟かれたお礼の言葉は、しっかりと全員の耳に届いていた。
翌日。
「晶、頼みたいことがあるんだが」
「なぁに?隠神さん」
隠神は晶に茶封筒を手渡すと、早希の生活に必要な身支度品を彼女と一緒に買いに行ってほしいのだと頼み込んだ。
「勿論いいよ!行く行く!わー、早希ちゃんにお洋服見立ててあげるの楽しみ♪」
ルンルンと機嫌良く晶は茶封筒を開ける。封筒の中には一万円が収められていた。
「は?一万円?」
ピシリと晶が固まる。
「ん?どうした晶?」
「こんなんじゃ全然足りないよ!!早希ちゃん女の子だよ!?お洋服とか靴とかバッグとか!アクセサリーも必要だよね~。タオルとか歯ブラシとか生活必需品だって買わなきゃいけないんだし!」
「そ、そうか?」
晶の剣幕に押され気味の隠神に、ずいっと晶が詰め寄り三本指を立てる。
「最低、三万は必要だから!!」
はあっと隠神はため息をつき、「わかった、わかった」と封筒に資金を足してやる。
「無駄遣いはするなよ?」
「はーい!早速早希ちゃん誘って行ってこよーっと!」
晶はスキップしながら早希の元へ行き、声をかける。
「早希ちゃん!一緒にお買い物行こー!」
「………お買い物?」
「そ。いーから、こっち来て!そうだなあ…、流石に着物は目立つから…ボクの服貸してあげる!レディースの服とかお洒落だから色々持ってるんだよね~」
晶は早希の手を引いて自室へ行くとゴソゴソとクローゼットを引っ掻き回した。
「よし!これにしよう!早希ちゃん、これとかどう?」
早希に洋服を差し出すと、早希は困った表情を見せた。
「………これ、着るの?」
「うん!おねが~い!新しいお洋服買うまでの間だけでいいから!着物だと目立っちゃうんだもん。早希ちゃんとお買い物楽しみたいし!でも…どうしても嫌なら、無理にとは言わないけど…」
しょんぼりとした様子の晶を見て、早希は慌てて承諾した。
「………大丈夫。…着てみる」
「ホント!?良かったー!!じゃあ向こうの部屋で着替えてきてね。」
コクリと早希は頷いて、晶の部屋から出て行った。
しばらく経ったあと早希が晶の元へと戻ってきた。
ショートパンツにTシャツ、パーカーといったラフなカジュアルファッションに身を包んだ早希はすっかり『街中の女の子』という装いだった。
「うんうん、似合ってるよ早希ちゃん!和服も良いけど洋服姿もとっても可愛いよ!じゃあ、一緒にお出かけしよ♪」
戸惑う早希の手を引いて揚々と晶は事務所を出て行った。
まず早希達がやってきたのは1000円カットの美容院だ。
「オシャレなサロンも憧れるけど、買いたい物色々あるし、ここで我慢してね」
美容師さんは手早く早希の毛先を整えてくれた。バラバラだった毛先を綺麗に切りそろえてもらい、それだけで早希は充分喜んだ。
その後はショッピングセンターへ行き、日用品から服飾品までたくさん買い揃えた。
晶とのショッピングは早希にとってとても楽しいものだった。
楽しいなんていう感情はいつ以来だろうか。
時間はあっという間に過ぎ、二人は大きなバッグをいくつもぶら下げて帰路へとついた。
「あー、楽しかった!早希ちゃん、また一緒にお出かけしようね!」
コクリと早希が頷くと晶はえへへ、と嬉しそうに笑った。
「…………ありがとう、晶」
早希が初めて晶の名前を呼ぶと、晶は目を丸くして驚いたが、すぐに繋いでいた早希の手をギュッと握った。
「どういたしまして。ボクが楽しいこと、これからいっぱい教えてあげるからね!」
「…………うん!」
早希はにっこりと微笑んだ。