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早希とメールのやりとりをしたり、アルバイトをしているうちに、結は大分彼女と打ち解けてきた。
『友達』
そう言える仲だった。
ある日のこと。結はいつものようにアルバイトを黙々とこなしていた。今日は食堂内でのアルバイトで、結は洗い物、早希は料理運びの仕事に専念していた。
店主のオバーちゃんが調理を担当していたが、注文が多く入ったため、早希に調理補助に回るよう声をかけてきてほしいと結は頼まれた。
結は厨房を出て早希に声をかける。
「早希どの、調理補助に来てほしい」
「はーい!今行きます!」
すぐに早希が返事をして、厨房に入ろうとした時だった。
ある男性客がクスクスと笑い始めた。
「『どの』だって。いつの時代だよ?」
他の客にも聞こえるような大きな声で結の呼称のことをからかってきたのだ。
「ちょっと!!」
早希はムッとして、その男性客にツカツカと近づく。
「別に呼び方なんて何だって良いでしょ!!結さんをからかうのはやめてください!!」
強い口調で咎めると、男性客は早希を睨みつけてきた。
「こっちは客だぞ。なんだその態度は?」
早希は男性客の態度にカチンときて口を開こうとしたが、後ろから口を抑えられた。
「申し訳ない」
ぶっきらぼうに男性客に謝罪の言葉を口にする。
早希の口を抑え、謝罪したのは結だった。
そのままズルズルと彼女を厨房へと引きずっていく。
早希が抗議するも、口を抑えられているので言葉にはならなかった。
厨房内へ入り、結がやっと手を離す。
「結さんっ!!」
納得いかないという目で早希が結を睨む。
「からかわれても別に構わない」
「構わなくないっ!!大切な友達に酷いことを言うなんて、許せないの!!」
結は早希の言葉を聞いて、フッと微笑む。
「なんで笑うの!?笑い事じゃないから!!」
「いや…嬉しくて」
早希はきょとんと目を丸くする。
そんな彼女の頭を結は優しく撫でた。
「俺は大切な友達が傷つけられたら許せない」
「で、でも…!」
「早希どの。オバーどのが調理補助に回ってほしいそうだ」
トンと早希の肩を促すように軽く押すと、彼女はしぶしぶと調理補助の仕事についた。
代わりに結が店内に立つ。淡々と仕事をこなし、先ほどの男性客の会計も嫌な顔ひとつせず済ませた。
男性客が店から出て行くと、他の客が結に声をかけてきた。
「アンタ、偉いねぇ。早希ちゃん、よく守ったなあ。立派な彼氏だ」
「カレシ?」
「付き合ってるんだろ?」
「???」
「結さーん!お料理できてるよ!3番さんね」
早希に声をかけられ、慌ててキッチンカウンターへと結は戻った。
仕事が終わると早希が結に話しかけてきた。
「結さん、お疲れ様です。今日はありがとうございました」
ぺこりと彼女がお辞儀する。
「構わない。早希どのに何もなくて良かった」
ジッと早希が結を見つめてくる。
「?」
「ねぇ、結さん。これからは早希って呼び捨てで呼んで下さい」
「何故?」
「だって、結さんがまたからかわれたら嫌なんだもの!」
「別に構わないと言ったが…」
「私が嫌なの!」
ムスッとした彼女に結は困ったように笑う。
「わかった。早希」
「えへへ、ありがとう結さん」
にっこりと彼女が微笑む。
「ところで、早希。聞きたいことがある」
「なぁに?結さん」
「カレシとは何だ?」
「へ?」
「早希も知らないのか」
「いや、わかるけど何で結さんがそんなこと」
「ある客にカレシとか、付き合ってるとか言われたが」
「ええっ!?えっとね…好きな人同士だと、もっと仲良くなるためにお付き合いをするの。お付き合いをすると、男の人の方を彼氏、女の人の方を彼女っていうんだよ。多分、そのお客さん…多分だけど、結さんと私が付き合ってるって勘違いしたんじゃないかな?恋仲って言ったらわかる?」
「なるほど」
「うん。それだけ仲良しに見えたのかな?でも、ちゃんと違いますって今度から言わないと駄目だよ。勘違いされちゃうから」
「そうか、わかった」
「うん。それじゃあ、またね!」
早希と別れたあと、結は考え事をしていた。
『恋仲』
自分と早希はそんな風に見えるのだろうか。
「…恋、か」
自分とは縁遠い言葉だ。
早希と自分は恋仲ではない。
何より自分は女性が大嫌いだ。
…でも、早希は嫌いではない。彼女は好感が持てる。
彼女は晶に似ている。
そう、妹のような友達。
友達。
それでいい。
俺は、誰かを愛する資格なんてないから。
『友達』
そう言える仲だった。
ある日のこと。結はいつものようにアルバイトを黙々とこなしていた。今日は食堂内でのアルバイトで、結は洗い物、早希は料理運びの仕事に専念していた。
店主のオバーちゃんが調理を担当していたが、注文が多く入ったため、早希に調理補助に回るよう声をかけてきてほしいと結は頼まれた。
結は厨房を出て早希に声をかける。
「早希どの、調理補助に来てほしい」
「はーい!今行きます!」
すぐに早希が返事をして、厨房に入ろうとした時だった。
ある男性客がクスクスと笑い始めた。
「『どの』だって。いつの時代だよ?」
他の客にも聞こえるような大きな声で結の呼称のことをからかってきたのだ。
「ちょっと!!」
早希はムッとして、その男性客にツカツカと近づく。
「別に呼び方なんて何だって良いでしょ!!結さんをからかうのはやめてください!!」
強い口調で咎めると、男性客は早希を睨みつけてきた。
「こっちは客だぞ。なんだその態度は?」
早希は男性客の態度にカチンときて口を開こうとしたが、後ろから口を抑えられた。
「申し訳ない」
ぶっきらぼうに男性客に謝罪の言葉を口にする。
早希の口を抑え、謝罪したのは結だった。
そのままズルズルと彼女を厨房へと引きずっていく。
早希が抗議するも、口を抑えられているので言葉にはならなかった。
厨房内へ入り、結がやっと手を離す。
「結さんっ!!」
納得いかないという目で早希が結を睨む。
「からかわれても別に構わない」
「構わなくないっ!!大切な友達に酷いことを言うなんて、許せないの!!」
結は早希の言葉を聞いて、フッと微笑む。
「なんで笑うの!?笑い事じゃないから!!」
「いや…嬉しくて」
早希はきょとんと目を丸くする。
そんな彼女の頭を結は優しく撫でた。
「俺は大切な友達が傷つけられたら許せない」
「で、でも…!」
「早希どの。オバーどのが調理補助に回ってほしいそうだ」
トンと早希の肩を促すように軽く押すと、彼女はしぶしぶと調理補助の仕事についた。
代わりに結が店内に立つ。淡々と仕事をこなし、先ほどの男性客の会計も嫌な顔ひとつせず済ませた。
男性客が店から出て行くと、他の客が結に声をかけてきた。
「アンタ、偉いねぇ。早希ちゃん、よく守ったなあ。立派な彼氏だ」
「カレシ?」
「付き合ってるんだろ?」
「???」
「結さーん!お料理できてるよ!3番さんね」
早希に声をかけられ、慌ててキッチンカウンターへと結は戻った。
仕事が終わると早希が結に話しかけてきた。
「結さん、お疲れ様です。今日はありがとうございました」
ぺこりと彼女がお辞儀する。
「構わない。早希どのに何もなくて良かった」
ジッと早希が結を見つめてくる。
「?」
「ねぇ、結さん。これからは早希って呼び捨てで呼んで下さい」
「何故?」
「だって、結さんがまたからかわれたら嫌なんだもの!」
「別に構わないと言ったが…」
「私が嫌なの!」
ムスッとした彼女に結は困ったように笑う。
「わかった。早希」
「えへへ、ありがとう結さん」
にっこりと彼女が微笑む。
「ところで、早希。聞きたいことがある」
「なぁに?結さん」
「カレシとは何だ?」
「へ?」
「早希も知らないのか」
「いや、わかるけど何で結さんがそんなこと」
「ある客にカレシとか、付き合ってるとか言われたが」
「ええっ!?えっとね…好きな人同士だと、もっと仲良くなるためにお付き合いをするの。お付き合いをすると、男の人の方を彼氏、女の人の方を彼女っていうんだよ。多分、そのお客さん…多分だけど、結さんと私が付き合ってるって勘違いしたんじゃないかな?恋仲って言ったらわかる?」
「なるほど」
「うん。それだけ仲良しに見えたのかな?でも、ちゃんと違いますって今度から言わないと駄目だよ。勘違いされちゃうから」
「そうか、わかった」
「うん。それじゃあ、またね!」
早希と別れたあと、結は考え事をしていた。
『恋仲』
自分と早希はそんな風に見えるのだろうか。
「…恋、か」
自分とは縁遠い言葉だ。
早希と自分は恋仲ではない。
何より自分は女性が大嫌いだ。
…でも、早希は嫌いではない。彼女は好感が持てる。
彼女は晶に似ている。
そう、妹のような友達。
友達。
それでいい。
俺は、誰かを愛する資格なんてないから。