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沖縄のオバー食堂で、結は一人アルバイトを続けていた。晶達が交通費を店主のお婆さんに借りたため、その分を返済すべく真面目にバイトに打ち込んでいたのである。
しかし、結は無口なため接客はてんで駄目だった。接客は店主に任せ、料理を運んだり焼きそばを作ったり皿洗いをしたり…そんな日々を送っていたとある日。
新しいアルバイトがやってきた。
どうやら店主がスカウトしてきたらしい。
黒髪のボブヘアーの少女で、年齢は結より一つ下らしい。
「はじめまして。早希です。よろしくお願いします!」
早希という名の少女は結に挨拶し、ぺこりと頭を下げた。
女性が大嫌いな結だが、店主の手前、自分の名前だけ名乗り自己紹介を済ませた。
彼女は晶の代わりといった立場で主に接客を担当した。注文をとったり、料理を運んだり、素直で真面目な働きぶりに常連客も気に入った様子だった。
働くうちに結も少しずつ彼女に慣れてきて、必要最低限の会話は交わすようになった。
客の話を聞くと、早希は『可愛い』らしい。外見もそうだが、素直で真面目なところが可愛いのだと言う。
最近は早希を目当てに来る客も多くなった。人気の看板娘といったところだろうか。
仕事が終わると、結と早希はいつもお婆さんのまかない料理を頂く。沖縄そばや、チャンプルー料理といった郷土料理がほとんどだ。
美味しいまかない料理に舌鼓をうちながら、早希は結に話しかける。結はほとんど相槌をうつだけだが、それでも彼女は楽しいらしい。いつもニコニコと楽しそうに話しかけてくる。
自分にもしも妹がいたらこんな感じなのだろうか。どことなく雰囲気が晶に似ていなくもない。ここに晶がいたら、きっと二人で話が盛り上がっただろう。
晶のことを思い出して、ふっと結の表情が緩む。
「あっ!結さん、今笑いましたよね!」
「む…、そうか?」
「そうです、そうです!えへへ、良かった~。結さん、今まであまり笑うところ見たことありませんでしたから。いつも私ばっかりお話して、すみません」
「別に…構わない」
「えへへ、ありがとうございます。そうだ、お話してなかったですよね。私、実は東京に進学したいんです。でも、東京に進学すると生活費も学費もかかりますから、少しでも足しになればと思って。だから、ここで働かせてもらっているんです。結さんは?」
「…俺か?俺は旅をしているから…、旅費を稼ぐためだ」
「そうなんですか。…どれくらい、ここにいるんですか?」
「わからない。旅費が溜まり次第、ここを発つ」
すると早希はしょんぼりした顔をすると、そうだとポンと手を叩いた。
「結さん、連絡先交換しましょう!」
「…何故?」
「だって、せっかく仲良くなれたのにお別れなんて寂しいじゃないですか」
「…別に」
「あー!ひどい!ひどいです!じゃあ、もういいですよーだ!」
ぷぅっと頬を膨らませて彼女は怒った。結はそんな彼女の様子に思わずフッと笑った。
「笑い事じゃないですよ、もう!」
「すまん」
それから、少しずつ結と早希は仲良くなっていった。少し会話もするようになった。
ある日、隠神探偵事務所から晶達の旅費代がオバー食堂に振り込まれた。結がここを離れる日もそう遠くないかもしれない。途端に結は寂しさを感じた。早希と離れるのが寂しかった。
「早希どの」
仕事が終わり、思い切って彼女に声をかける。
「結さん。何ですか?」
彼女は振り向き、不思議そうに結を見つめてくる。
「その…、連絡先、…教えてもらいたい」
結の言葉に早希はパッと明るく微笑んだ。
「本当ですか?嬉しい!」
連絡先の交換の仕方がわからず、結が戸惑っていると早希が手際よくやってくれた。
早速早希は結にメッセージを送信する。
『結さん、こんにちは。よろしくお願いします!(*^^*)』
早希のメッセージを読み、結も返信する。
『よろしく頼む』
お互い携帯電話から視線を離して、顔を合わせる。
そして、穏やかに二人は微笑んだ。
結にとって、彼女はひとひらの欠片だった。
彼女が結の拒絶心を溶かすことになるとは、この時は微塵も思っていなかった。
しかし、結は無口なため接客はてんで駄目だった。接客は店主に任せ、料理を運んだり焼きそばを作ったり皿洗いをしたり…そんな日々を送っていたとある日。
新しいアルバイトがやってきた。
どうやら店主がスカウトしてきたらしい。
黒髪のボブヘアーの少女で、年齢は結より一つ下らしい。
「はじめまして。早希です。よろしくお願いします!」
早希という名の少女は結に挨拶し、ぺこりと頭を下げた。
女性が大嫌いな結だが、店主の手前、自分の名前だけ名乗り自己紹介を済ませた。
彼女は晶の代わりといった立場で主に接客を担当した。注文をとったり、料理を運んだり、素直で真面目な働きぶりに常連客も気に入った様子だった。
働くうちに結も少しずつ彼女に慣れてきて、必要最低限の会話は交わすようになった。
客の話を聞くと、早希は『可愛い』らしい。外見もそうだが、素直で真面目なところが可愛いのだと言う。
最近は早希を目当てに来る客も多くなった。人気の看板娘といったところだろうか。
仕事が終わると、結と早希はいつもお婆さんのまかない料理を頂く。沖縄そばや、チャンプルー料理といった郷土料理がほとんどだ。
美味しいまかない料理に舌鼓をうちながら、早希は結に話しかける。結はほとんど相槌をうつだけだが、それでも彼女は楽しいらしい。いつもニコニコと楽しそうに話しかけてくる。
自分にもしも妹がいたらこんな感じなのだろうか。どことなく雰囲気が晶に似ていなくもない。ここに晶がいたら、きっと二人で話が盛り上がっただろう。
晶のことを思い出して、ふっと結の表情が緩む。
「あっ!結さん、今笑いましたよね!」
「む…、そうか?」
「そうです、そうです!えへへ、良かった~。結さん、今まであまり笑うところ見たことありませんでしたから。いつも私ばっかりお話して、すみません」
「別に…構わない」
「えへへ、ありがとうございます。そうだ、お話してなかったですよね。私、実は東京に進学したいんです。でも、東京に進学すると生活費も学費もかかりますから、少しでも足しになればと思って。だから、ここで働かせてもらっているんです。結さんは?」
「…俺か?俺は旅をしているから…、旅費を稼ぐためだ」
「そうなんですか。…どれくらい、ここにいるんですか?」
「わからない。旅費が溜まり次第、ここを発つ」
すると早希はしょんぼりした顔をすると、そうだとポンと手を叩いた。
「結さん、連絡先交換しましょう!」
「…何故?」
「だって、せっかく仲良くなれたのにお別れなんて寂しいじゃないですか」
「…別に」
「あー!ひどい!ひどいです!じゃあ、もういいですよーだ!」
ぷぅっと頬を膨らませて彼女は怒った。結はそんな彼女の様子に思わずフッと笑った。
「笑い事じゃないですよ、もう!」
「すまん」
それから、少しずつ結と早希は仲良くなっていった。少し会話もするようになった。
ある日、隠神探偵事務所から晶達の旅費代がオバー食堂に振り込まれた。結がここを離れる日もそう遠くないかもしれない。途端に結は寂しさを感じた。早希と離れるのが寂しかった。
「早希どの」
仕事が終わり、思い切って彼女に声をかける。
「結さん。何ですか?」
彼女は振り向き、不思議そうに結を見つめてくる。
「その…、連絡先、…教えてもらいたい」
結の言葉に早希はパッと明るく微笑んだ。
「本当ですか?嬉しい!」
連絡先の交換の仕方がわからず、結が戸惑っていると早希が手際よくやってくれた。
早速早希は結にメッセージを送信する。
『結さん、こんにちは。よろしくお願いします!(*^^*)』
早希のメッセージを読み、結も返信する。
『よろしく頼む』
お互い携帯電話から視線を離して、顔を合わせる。
そして、穏やかに二人は微笑んだ。
結にとって、彼女はひとひらの欠片だった。
彼女が結の拒絶心を溶かすことになるとは、この時は微塵も思っていなかった。
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