人と怪物の辿る道
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それからほどなくして、結莉達のもとに連絡が入る。織と晶が目を覚ましたらしい。
結莉達が医務室に駆けつけると、織と晶の話し声が扉の向こうから聞こえてきた。
「織くん!晶くん!」
思いきり結莉が扉を開けると織が振り向いた。
「っ!結莉、さん。…って、うわっ!!」
結莉は勢いよく織に抱きつく。
「織くん…!良かった…!私、ずっと会いたかったのよ」
嬉しさに涙をこぼす結莉。
「結莉さん…。無事で良かった…!すっげー心配してた。どこも怪我とかしてないよな?」
「私は大丈夫。でも織くんが…」
「俺?こんなの全然へーきだって!心配すんな」
織はニカッと笑って、結莉の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「…あのー、そろそろいいかな?」
申し訳なさそうに隠神が声をかけると、織は顔を真っ赤にして慌てて結莉から離れた。
「隠神さん!?夏羽も!いいいいつからそこに!?」
「ずっといたけど…」
「結莉さ~ん!皆~!ボクのことも忘れないで~!」
クスンクスンとすすり泣く晶に、結莉も慌てて晶に駆け寄る。
「晶くん!目が覚めて良かった。ごめんね、忘れたりなんてしてないのよ」
なでなでと晶の頭を撫でると、晶は嬉しそうにするが全身が筋肉痛で痛いのだと訴えた。
「大丈夫。きっと、じきに良くなるわ」
「うん~」
「隠神さん、ごめん。失敗した…」
「いいさ」
「生きてて良かった」
「全員揃ったところで良いだろうか」
そう前置いて、女木島は渡辺について語り始めた。連絡がつかず、在籍していた記録も消え、代わりに『USBはもらった』という画面のノートパソコンが置かれていたという。
「渡辺は社長がどこからかスカウトしてきたんだ。勤めて日も浅く、俺もドローンの姿しか見たことがない。スパイだったのだろうが…、工場のことが外に…人間に漏れたら大変なことになる。もう狐の助けは得られないし…」
「でも、あいつ『会社の機密はオレが守る』って言ってたぜ。てゆーか俺らそのせいで襲われてるし。けど…気になることも言ってた。『オレは狐とは関係ない』『意外だった』『もっと人間のこと雑に扱ってると思ってた』どういう立場からの発言だと思う?スパイなんだぜ」
「まあ………人間だな」
「でも外に漏らすつもりはないと思うんだ。さっきも言ったけど、あいつにはハッカーとしての矜持があるから、おたくのこと探ってるのは個人的な理由なんじゃないかな」
「な、なるほど…」
「鬼を探る人間か。気になる存在ではあるが…、こっちから用があるわけでもない。とりあえず様子見にしておこう」
「では、お世話になりました。」
「こちらこそ。渡辺のことが何かわかったら連絡します」
工場を後にした一行。
「で。次何するか、もー決めてんの?つーか、結莉さんは俺達といたら危ないだろ。屋島にでも…」
「そのことだが…、結莉ちゃんは俺達と同行することにした」
「「えっ!?」」
夏羽も驚き、隠神を見上げる。てっきり屋島に行かせるのだと思っていたのだ。
「何言ってんだよ!危険すぎる!結莉さんを巻き込んだらどーすんだよ!怪物同士の戦いだってあるんだぞ!!」
「それがどうした」
「は?な、何言って…」
「何だ、結莉ちゃんを守りきる自信がないのか?」
ジロと厳しい視線を隠神は二人に向ける。
「んなこと言ってねー!!結莉さんは守る!絶対!!」
「なら問題ないだろ」
「で…でも」
「私がお願いしたんです。私を使ってほしいって。織くん達も聞いて。私はきっと飯生さんに利用される。だけど、そのことでさえ逆手にとって利用してほしいの。人間の私にできることも、きっとあるから。それに…飯生さんは私のこと切り札だと思ってる。だから私に危害を加えようとはしないと思うの。でも、万が一のこともある。その時は…迷惑をかけてしまうけど、守ってほしい。…お願いします」
深々と頭を下げる結莉に織は言葉を失った。
いち早く答えたのは夏羽だった。
「わかった。必ず守る」
「夏羽!!」
咎めるように織は夏羽を見る。
「織は?結莉さんのこと守らないの?」
「~~~っ!!わかったよ!結莉さんは絶対守る!!当然だろ!」
「ボクも結莉さんのこと守るから~…!」
「ありがとう、皆…」
嬉しそうに結莉が微笑んだ。
三人の答えに隠神も満足そうに微笑む。
「そうだ。次のことだけど、俺は隠神さんに稽古をつけてもらうのがいいと思うのだけど」
夏羽の提案に織は「なにそれめっちゃいいじゃん」と賛成する。
「教えられることがないわけじゃないが今は時間がなさすぎる。気持ちはわかるが現実的じゃ…いや…待てよ。あいつの力を借りれば…」
隠神は携帯電話を取り出し、誰かと電話をし始めた。
それを見ていた結莉が「あっ!」と声をあげる。
「結莉さん、どうかした?」
「いけない、両親に連絡してなかったわ。でもどうしよう。私、携帯電話を壊してしまったの。」
オロオロとする結莉に織は自分の携帯電話を差し出した。
「俺の使っていいから!話してきなよ」
「うん!!」
「…もしもし、お母さん?ご、ごめんね!心配かけて。うん…うん…。今は隠神さん達と一緒。まだしばらく帰れないの。携帯も壊れちゃったから、今は織くんのを借りてるの。大丈夫。元気よ。どこも怪我してないから。また連絡するから。うん…。ありがとう。またね」
「…大丈夫だった?」
「うん…。すごく心配させて、お母さん泣かせちゃって申し訳ないけれど、でも大丈夫。織くん、携帯貸してくれてありがとう」
「またいつでも貸すから。こまめに連絡入れた方が良いだろ?」
「うん!ありがとう、織くん」
隠神も電話を終えたようで、次の目的地は群馬だと告げた。電車を乗り継いでやってきたのは渋川駅だ。歩き続ける一行。険しい山道を登り続ける隠神に痺れを切らせた織が話しかける。
「なあ…。ずっと山じゃん。仙人の家にでも行くわけ?」
「まあまあ…」
「結莉さん平気か?疲れてない?」
後ろをついてくる結莉に織が声をかける。
「ええ、大丈夫よ」
ニコリと結莉が笑ってみせると織はホッとしてまた歩みを進めた。
「あっ。建物がある」
建物へと近づいていくと何やら人の声がしてきた。和服に身を包んだ大柄な男性と美しい女性が、何やら言い争っているようだが、隠神はその二人に声をかけた。
「多郎太。ヨシヱ」
「なんでしょう!?うどん処いよちゃんは年中無休。朝は9時から夜は10時まで営ぎょ…、隠神!!?さま!!?」
二人は吃驚し、男性のほうは狸に変化した。
それを目の当たりにした結莉は驚きのあまりぽかんとしてしまう。
「えっ、たぬき…?」
「もしかして、伊予姫と全吉の…」
一行は二人に導かれ、うどん屋いよちゃんにやってきた。
「元気そうだな隠神!わざわざ俺を尋ねてくるとは、ついに身を固める気になったのか?」
「隠神ちゃん久しぶりぃ~」
お店には伊予姫の父、多郎太と母の福姫。
全吉の母、ヨシヱと父の満吉がいた。
「こんにちは」
「うむ!お前の子にしては礼儀正しいな!」
「ぜ…全員母親が違いませんか?やんちゃな御方だとは思っていましたが…」
「諸々違う」
様子を見ていた織が「地元の同級生ってやつ?」と尋ねると「まあそんなとこだ」と隠神が返した。
「お前こそなんで群馬にいるんだよ」
「むろん修業だ!伊予にうまいうどんを食わせてやりたくてな」
「? うどんなら屋島にあるだろ」
「ま…まさかお前…群馬の水沢うどんを知らんのか!?」
「香川の讃岐、秋田の稲庭に並ぶ日本三大うどんを!?子供でも知ってる常識ですよ!」
多郎太とヨシヱの剣幕にやや圧倒されるが、織が口を開く。
「で?俺たちはうどんを食いに来たの?」
「そうだった。多郎太は今でこそうどん屋の大将なんざやってるが、元は四国狸の四代目頭領だったんだ」
「辞退したがな!俺は狸のくせに変化がめっぽう苦手なのだ!」
「その代わりといっちゃなんだが、特別な力がある」
真剣な眼差しになる隠神にヨシヱ達は息を呑んだ。
「…隠神。お前俺に会いたくて群馬まで来たのではないのか?」
「会いたくて来たよ。助けてくれ多郎太」
ひょうひょうと言う隠神に多郎太ははぁとため息をつく。
「現金なところは変わっていないようだな。だが、まあいいだろう。外ならぬお前の頼みだしな。ただしこの借りは返してもらうぞ。屋島に帰ってこい隠神。四代目にはお前の力が必要だ」
「わかったよ。請けてる依頼が終わってからでいいか?」
すんなりと承諾する隠神に、織と夏羽が慌てる。
「えっ…ちょ隠神さん!事務所は!?いいのかよそんな約束して!」
「なんだ今更。稽古をするんだろ?飯生を倒せるくらいに」
その一言を聞いた夏羽は「はい」と力強く返した。
「ちょ…待って待って。隠神さんにそこまでさせんのさすがに悪いよ。頼んのあの人じゃないとダメなわけ?」
「はっはっは!確かめてみるがいい。隠神、何年欲しいんだ?」
「そうだな…ひとり一年。多郎太。お前の三年をこいつらに一年ずつやってくれ」
結莉達が医務室に駆けつけると、織と晶の話し声が扉の向こうから聞こえてきた。
「織くん!晶くん!」
思いきり結莉が扉を開けると織が振り向いた。
「っ!結莉、さん。…って、うわっ!!」
結莉は勢いよく織に抱きつく。
「織くん…!良かった…!私、ずっと会いたかったのよ」
嬉しさに涙をこぼす結莉。
「結莉さん…。無事で良かった…!すっげー心配してた。どこも怪我とかしてないよな?」
「私は大丈夫。でも織くんが…」
「俺?こんなの全然へーきだって!心配すんな」
織はニカッと笑って、結莉の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「…あのー、そろそろいいかな?」
申し訳なさそうに隠神が声をかけると、織は顔を真っ赤にして慌てて結莉から離れた。
「隠神さん!?夏羽も!いいいいつからそこに!?」
「ずっといたけど…」
「結莉さ~ん!皆~!ボクのことも忘れないで~!」
クスンクスンとすすり泣く晶に、結莉も慌てて晶に駆け寄る。
「晶くん!目が覚めて良かった。ごめんね、忘れたりなんてしてないのよ」
なでなでと晶の頭を撫でると、晶は嬉しそうにするが全身が筋肉痛で痛いのだと訴えた。
「大丈夫。きっと、じきに良くなるわ」
「うん~」
「隠神さん、ごめん。失敗した…」
「いいさ」
「生きてて良かった」
「全員揃ったところで良いだろうか」
そう前置いて、女木島は渡辺について語り始めた。連絡がつかず、在籍していた記録も消え、代わりに『USBはもらった』という画面のノートパソコンが置かれていたという。
「渡辺は社長がどこからかスカウトしてきたんだ。勤めて日も浅く、俺もドローンの姿しか見たことがない。スパイだったのだろうが…、工場のことが外に…人間に漏れたら大変なことになる。もう狐の助けは得られないし…」
「でも、あいつ『会社の機密はオレが守る』って言ってたぜ。てゆーか俺らそのせいで襲われてるし。けど…気になることも言ってた。『オレは狐とは関係ない』『意外だった』『もっと人間のこと雑に扱ってると思ってた』どういう立場からの発言だと思う?スパイなんだぜ」
「まあ………人間だな」
「でも外に漏らすつもりはないと思うんだ。さっきも言ったけど、あいつにはハッカーとしての矜持があるから、おたくのこと探ってるのは個人的な理由なんじゃないかな」
「な、なるほど…」
「鬼を探る人間か。気になる存在ではあるが…、こっちから用があるわけでもない。とりあえず様子見にしておこう」
「では、お世話になりました。」
「こちらこそ。渡辺のことが何かわかったら連絡します」
工場を後にした一行。
「で。次何するか、もー決めてんの?つーか、結莉さんは俺達といたら危ないだろ。屋島にでも…」
「そのことだが…、結莉ちゃんは俺達と同行することにした」
「「えっ!?」」
夏羽も驚き、隠神を見上げる。てっきり屋島に行かせるのだと思っていたのだ。
「何言ってんだよ!危険すぎる!結莉さんを巻き込んだらどーすんだよ!怪物同士の戦いだってあるんだぞ!!」
「それがどうした」
「は?な、何言って…」
「何だ、結莉ちゃんを守りきる自信がないのか?」
ジロと厳しい視線を隠神は二人に向ける。
「んなこと言ってねー!!結莉さんは守る!絶対!!」
「なら問題ないだろ」
「で…でも」
「私がお願いしたんです。私を使ってほしいって。織くん達も聞いて。私はきっと飯生さんに利用される。だけど、そのことでさえ逆手にとって利用してほしいの。人間の私にできることも、きっとあるから。それに…飯生さんは私のこと切り札だと思ってる。だから私に危害を加えようとはしないと思うの。でも、万が一のこともある。その時は…迷惑をかけてしまうけど、守ってほしい。…お願いします」
深々と頭を下げる結莉に織は言葉を失った。
いち早く答えたのは夏羽だった。
「わかった。必ず守る」
「夏羽!!」
咎めるように織は夏羽を見る。
「織は?結莉さんのこと守らないの?」
「~~~っ!!わかったよ!結莉さんは絶対守る!!当然だろ!」
「ボクも結莉さんのこと守るから~…!」
「ありがとう、皆…」
嬉しそうに結莉が微笑んだ。
三人の答えに隠神も満足そうに微笑む。
「そうだ。次のことだけど、俺は隠神さんに稽古をつけてもらうのがいいと思うのだけど」
夏羽の提案に織は「なにそれめっちゃいいじゃん」と賛成する。
「教えられることがないわけじゃないが今は時間がなさすぎる。気持ちはわかるが現実的じゃ…いや…待てよ。あいつの力を借りれば…」
隠神は携帯電話を取り出し、誰かと電話をし始めた。
それを見ていた結莉が「あっ!」と声をあげる。
「結莉さん、どうかした?」
「いけない、両親に連絡してなかったわ。でもどうしよう。私、携帯電話を壊してしまったの。」
オロオロとする結莉に織は自分の携帯電話を差し出した。
「俺の使っていいから!話してきなよ」
「うん!!」
「…もしもし、お母さん?ご、ごめんね!心配かけて。うん…うん…。今は隠神さん達と一緒。まだしばらく帰れないの。携帯も壊れちゃったから、今は織くんのを借りてるの。大丈夫。元気よ。どこも怪我してないから。また連絡するから。うん…。ありがとう。またね」
「…大丈夫だった?」
「うん…。すごく心配させて、お母さん泣かせちゃって申し訳ないけれど、でも大丈夫。織くん、携帯貸してくれてありがとう」
「またいつでも貸すから。こまめに連絡入れた方が良いだろ?」
「うん!ありがとう、織くん」
隠神も電話を終えたようで、次の目的地は群馬だと告げた。電車を乗り継いでやってきたのは渋川駅だ。歩き続ける一行。険しい山道を登り続ける隠神に痺れを切らせた織が話しかける。
「なあ…。ずっと山じゃん。仙人の家にでも行くわけ?」
「まあまあ…」
「結莉さん平気か?疲れてない?」
後ろをついてくる結莉に織が声をかける。
「ええ、大丈夫よ」
ニコリと結莉が笑ってみせると織はホッとしてまた歩みを進めた。
「あっ。建物がある」
建物へと近づいていくと何やら人の声がしてきた。和服に身を包んだ大柄な男性と美しい女性が、何やら言い争っているようだが、隠神はその二人に声をかけた。
「多郎太。ヨシヱ」
「なんでしょう!?うどん処いよちゃんは年中無休。朝は9時から夜は10時まで営ぎょ…、隠神!!?さま!!?」
二人は吃驚し、男性のほうは狸に変化した。
それを目の当たりにした結莉は驚きのあまりぽかんとしてしまう。
「えっ、たぬき…?」
「もしかして、伊予姫と全吉の…」
一行は二人に導かれ、うどん屋いよちゃんにやってきた。
「元気そうだな隠神!わざわざ俺を尋ねてくるとは、ついに身を固める気になったのか?」
「隠神ちゃん久しぶりぃ~」
お店には伊予姫の父、多郎太と母の福姫。
全吉の母、ヨシヱと父の満吉がいた。
「こんにちは」
「うむ!お前の子にしては礼儀正しいな!」
「ぜ…全員母親が違いませんか?やんちゃな御方だとは思っていましたが…」
「諸々違う」
様子を見ていた織が「地元の同級生ってやつ?」と尋ねると「まあそんなとこだ」と隠神が返した。
「お前こそなんで群馬にいるんだよ」
「むろん修業だ!伊予にうまいうどんを食わせてやりたくてな」
「? うどんなら屋島にあるだろ」
「ま…まさかお前…群馬の水沢うどんを知らんのか!?」
「香川の讃岐、秋田の稲庭に並ぶ日本三大うどんを!?子供でも知ってる常識ですよ!」
多郎太とヨシヱの剣幕にやや圧倒されるが、織が口を開く。
「で?俺たちはうどんを食いに来たの?」
「そうだった。多郎太は今でこそうどん屋の大将なんざやってるが、元は四国狸の四代目頭領だったんだ」
「辞退したがな!俺は狸のくせに変化がめっぽう苦手なのだ!」
「その代わりといっちゃなんだが、特別な力がある」
真剣な眼差しになる隠神にヨシヱ達は息を呑んだ。
「…隠神。お前俺に会いたくて群馬まで来たのではないのか?」
「会いたくて来たよ。助けてくれ多郎太」
ひょうひょうと言う隠神に多郎太ははぁとため息をつく。
「現金なところは変わっていないようだな。だが、まあいいだろう。外ならぬお前の頼みだしな。ただしこの借りは返してもらうぞ。屋島に帰ってこい隠神。四代目にはお前の力が必要だ」
「わかったよ。請けてる依頼が終わってからでいいか?」
すんなりと承諾する隠神に、織と夏羽が慌てる。
「えっ…ちょ隠神さん!事務所は!?いいのかよそんな約束して!」
「なんだ今更。稽古をするんだろ?飯生を倒せるくらいに」
その一言を聞いた夏羽は「はい」と力強く返した。
「ちょ…待って待って。隠神さんにそこまでさせんのさすがに悪いよ。頼んのあの人じゃないとダメなわけ?」
「はっはっは!確かめてみるがいい。隠神、何年欲しいんだ?」
「そうだな…ひとり一年。多郎太。お前の三年をこいつらに一年ずつやってくれ」