人と怪物の辿る道
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結莉が眠りにつくと、ほどなくして精神世界にアクセスする。
見慣れた彼の姿に安堵して、彼の名を呼ぶ。
「織くん!!」
結莉の声に織が振り返る。結莉は思い切り織に抱きついた。
「っ結莉さん!?」
織は驚きながらも優しく抱き留めてくれた。
涙がこぼれて止まらない。
「織くん、わたし、皆のもとに帰ってこられたの。目が覚めたら会えるわ。精神世界じゃない現実世界で織くんに会えるの」
織は結莉の言葉に驚き、目を丸くする。
「結莉さんが、帰ってきた…?現実世界で…、本当に?」
信じられないといった様子の織。
「本当よ。だけど、私、皆に何をするかわからない。私…きっと飯生さんに使われてしまうの。私を解放したのは何か飯生さんの思惑があるのよ。隠神さんも夏羽くんも、そうならないように私のことを守ってくれるって言ってくれたけれど…私、怖い。怖いの」
織は結莉の言葉を聞き、優しく彼女の背中を撫でた。
「大丈夫。大丈夫だって。俺が何とかする。飯生なんかに結莉さんを操らせたりしない。悲しい想いをさせたりしない。俺が守るよ。絶対、守るから」
「…ありがとう、織くん。ありがとう。…大好き」
「は!?え!?結莉さん、今なんて…」
「…好き。大好き。私、織くんが好きよ」
ぎゅっと結莉は甘えるように織を抱きしめた。ボッと織の顔が真っ赤になる。結莉の言葉が頭にこだまする。
「え、な、す、好きって。ど、どういう意味で?」
「私、ずっと織くんのことが好きだった。ずっと織くんのそばにいたい。離れたくない。織くんを傷つけるようなこと、私したくない」
突然の告白に織の頭が真っ白になる。
戸惑いながらも結莉を抱きしめた。
腕の中から結莉が織を見上げてくる。
「…織くんは?私の想い…迷惑かな…?」
悲しそうな結莉の瞳に、「迷惑なんかじゃない!」と思わず大きな声が出た。
「迷惑なわけないだろ!俺も、俺だって、結莉さんのこと好きだから!ずっと好きだった。俺、結莉さんが好きだ。」
「…嬉しい」
しばらく抱き合ったあと、そっと織が身を離す。
照れくささを紛らわすように慌てて言葉を紡いだ。
「そうだ。結莉さん、暗号解いたよ。結莉さんの親に連絡した。すげー心配してた。現実世界に戻ったら、親に連絡入れような」
「解いてくれたのね!ありがとう、織くん。うん、目が覚めたらすぐに連絡を入れるわ。…ねぇ、織くん。『私が私でなくなっても、私は私よ』…忘れないで」
「…そんなこと言うなって。結莉さんは結莉さんだろ。忘れないよ」
「うん!」
満足そうに結莉が笑う。
「おかえり、結莉さん。」
「ただいま、織くん。」
仮眠室で結莉は目を覚ます。
自分が飯生に操られるという大きな恐怖心は和らいでいた。
「織くんのおかげね。織くん…」
身支度を整え、そっと仮眠室を出ると、隠神がもう起きていた。
「案内するよ。…医務室だろ?」
隠神に連れられ、医務室を訪れる。
医務室では織と晶が眠っていた。
点滴をしている織は、上半身に包帯が巻かれており痛々しい姿だった。晶も青白い顔で眠っている。
二人の様子を目の当たりにした結莉の顔は一気に青ざめた。
「…あ、私…」
「結莉ちゃん?大丈夫か?顔色が…」
隠神が結莉の異変に気づき声をかける。
「私…なんてこと…」
震える声で結莉が言葉を紡ぐ。
「怖いとか、私、そんなの皆…!」
ボロボロと結莉の瞳から涙が溢れ出す。
「…場所を変えよう」
隠神は休憩室に結莉を通し、椅子に座らせた。
結莉は青ざめた顔で俯いている。
隠神は何も言わず結莉のことを見守っていた。
しばらくして結莉が口を開く。
「隠神さんと夏羽くんは、昨日私を守ってくれると言ってくれました。織くんも。
きっと晶くんも、綾ちゃんや組さん、結さん、それに紺ちゃん。…皆が、守ってくれると思うんです。
それなのに。
それなのに私は、怖いだなんて…。」
「…怖いと感じることは悪いことじゃないさ。まして結莉ちゃんは人間だ。怪物じゃない。」
「………私を使ってくれませんか?」
「使う?」
唐突な結莉の発言に隠神は不思議そうに彼女を見つめる。
結莉は先ほどの弱々しい様子はなく、力強く隠神を見つめ返した。
「飯生さんに使われるのではなく、隠神さん達に私を使ってほしいんです。いえ、飯生さんに使われてもなお、私を使ってほしいんです。」
「結莉ちゃんを利用しろっていうのか」
隠神は厳しい目を結莉に向ける。
「はい。隠神さんも夏羽くんも、私を守ってくれると言いました。絶対に守ってくれると、信じています。だから私が動けるんです。
他のヒトはわからないけれど、赤城さんなら私の話を聞いてくれます。赤城さんを味方につけることだって出来るはずです。」
「島根の狐か」
「ええ。それに、飯生さんは私を切り札のように思っているのではありませんか?それならば私に手出しはできないはずです。だからこそ、私を使える部分があると思うんです」
「…結莉ちゃんの負担が大きすぎる。万が一のこともある。さっきも言っただろう。結莉ちゃんは怪物じゃない。俺達とは違う」
「人間だからできることもあります。万が一、は皆さんも同じでしょう?それに、必ず皆さんが守ってくれます。だから大丈夫です」
「本気か?」
「本気です」
隠神が鋭い目で見つめるが彼女が怯む様子はない。しばらくして、隠神は大きくため息をついた。
「…わかったよ。」
「ありがとうございます。」
にっこりと結莉は微笑んだ。
「隠神さん。それから、伝えておきたいことがあります。隠神さんには知っておいてほしいんです。」
「なんだ?」
「実は…、私と織くんは精神世界で繋がることができます。ミハイさんが作成した透明なピアスのおかげで。仕組みはわかりませんが、おそらく睡眠または気絶…お互いの意識がない時に繋がると思われます。この状況もきっと何かに使えるかと」
「なんだって!?身体は何ともないのか?」
「今のところは、大丈夫です」
隠神は額を手でおさえ、再び大きなため息をこぼす。
「ミハイの奴、帰ったらよく注意しておくから。…すまないね。結莉ちゃんをこちらのことに巻き込みすぎた」
「いいえ、構いません。隠神さん、お話を聞いてくださってありがとうございました。」
「いや、話してくれてありがとう。結莉ちゃんのおかげで大分状況が変わる。…頼りにしてるよ」
ぽんぽんと、隠神は優しく結莉の頭に触れる。
「はい」
恥ずかしそうに結莉が笑った。
隠神はフッと笑みをこぼす。
彼女は、本当に怪物たちの希望。
それに、たくましいというかなんというか。
たいしたものだ。
「まあ、あれだ。織と晶もそろそろ目を覚ますだろ。それまで夏羽の側にいてやるといい。夏羽もずいぶん心配していたからな。」
「夏羽くんが…。はい、わかりました。」
休憩室を出ると夏羽が通路をウロウロとしていた。
「夏羽くん!」
「! 結莉さん!」
結莉が声をかけると、驚きと嬉しさが混ざったような顔で夏羽が見つめてくる。かと思うと、急に視線を外してモジモジとしはじめた。
「? どうしたの?」
「あ…えっと…昨日…」
「昨日?ああ、」
クスッと結莉は笑って、夏羽と目を合わせる。
「大丈夫。気にしてないわ。でも、ごめんね。赤城さんのことは譲れないの」
「………結莉さんが言うなら、きっと、島根の狐も…そういう部分があるんだと思う」
「…ありがとう。」
ぎゅっと結莉は夏羽を優しく抱きしめた。
「あたたかい」
心地よいぬくもりに、夏羽は嬉しそうだ。
「夏羽くんは優しいのね。」
「いや、俺は別に。優しいのは結莉さんの方だ」
恥ずかしそうに結莉は微笑むと夏羽の手を握る。夏羽は結莉の手を握り返すと、医務室へと彼女を引っ張っていった。
「織と晶が待ってる。二人とも結莉さんのこと、すごく心配していた。まだ寝てるけど」
「そうね。早く会いたいわ。会って話したいことたくさんあるのよ。」
先ほどは、見ていて辛くなってしまった結莉だったが今は大丈夫だった。
夏羽がいる。隠神もいる。皆がいるから大丈夫。
力強く結ばれた手は、人と怪物を繋いでいた。
これからも、きっと。
見慣れた彼の姿に安堵して、彼の名を呼ぶ。
「織くん!!」
結莉の声に織が振り返る。結莉は思い切り織に抱きついた。
「っ結莉さん!?」
織は驚きながらも優しく抱き留めてくれた。
涙がこぼれて止まらない。
「織くん、わたし、皆のもとに帰ってこられたの。目が覚めたら会えるわ。精神世界じゃない現実世界で織くんに会えるの」
織は結莉の言葉に驚き、目を丸くする。
「結莉さんが、帰ってきた…?現実世界で…、本当に?」
信じられないといった様子の織。
「本当よ。だけど、私、皆に何をするかわからない。私…きっと飯生さんに使われてしまうの。私を解放したのは何か飯生さんの思惑があるのよ。隠神さんも夏羽くんも、そうならないように私のことを守ってくれるって言ってくれたけれど…私、怖い。怖いの」
織は結莉の言葉を聞き、優しく彼女の背中を撫でた。
「大丈夫。大丈夫だって。俺が何とかする。飯生なんかに結莉さんを操らせたりしない。悲しい想いをさせたりしない。俺が守るよ。絶対、守るから」
「…ありがとう、織くん。ありがとう。…大好き」
「は!?え!?結莉さん、今なんて…」
「…好き。大好き。私、織くんが好きよ」
ぎゅっと結莉は甘えるように織を抱きしめた。ボッと織の顔が真っ赤になる。結莉の言葉が頭にこだまする。
「え、な、す、好きって。ど、どういう意味で?」
「私、ずっと織くんのことが好きだった。ずっと織くんのそばにいたい。離れたくない。織くんを傷つけるようなこと、私したくない」
突然の告白に織の頭が真っ白になる。
戸惑いながらも結莉を抱きしめた。
腕の中から結莉が織を見上げてくる。
「…織くんは?私の想い…迷惑かな…?」
悲しそうな結莉の瞳に、「迷惑なんかじゃない!」と思わず大きな声が出た。
「迷惑なわけないだろ!俺も、俺だって、結莉さんのこと好きだから!ずっと好きだった。俺、結莉さんが好きだ。」
「…嬉しい」
しばらく抱き合ったあと、そっと織が身を離す。
照れくささを紛らわすように慌てて言葉を紡いだ。
「そうだ。結莉さん、暗号解いたよ。結莉さんの親に連絡した。すげー心配してた。現実世界に戻ったら、親に連絡入れような」
「解いてくれたのね!ありがとう、織くん。うん、目が覚めたらすぐに連絡を入れるわ。…ねぇ、織くん。『私が私でなくなっても、私は私よ』…忘れないで」
「…そんなこと言うなって。結莉さんは結莉さんだろ。忘れないよ」
「うん!」
満足そうに結莉が笑う。
「おかえり、結莉さん。」
「ただいま、織くん。」
仮眠室で結莉は目を覚ます。
自分が飯生に操られるという大きな恐怖心は和らいでいた。
「織くんのおかげね。織くん…」
身支度を整え、そっと仮眠室を出ると、隠神がもう起きていた。
「案内するよ。…医務室だろ?」
隠神に連れられ、医務室を訪れる。
医務室では織と晶が眠っていた。
点滴をしている織は、上半身に包帯が巻かれており痛々しい姿だった。晶も青白い顔で眠っている。
二人の様子を目の当たりにした結莉の顔は一気に青ざめた。
「…あ、私…」
「結莉ちゃん?大丈夫か?顔色が…」
隠神が結莉の異変に気づき声をかける。
「私…なんてこと…」
震える声で結莉が言葉を紡ぐ。
「怖いとか、私、そんなの皆…!」
ボロボロと結莉の瞳から涙が溢れ出す。
「…場所を変えよう」
隠神は休憩室に結莉を通し、椅子に座らせた。
結莉は青ざめた顔で俯いている。
隠神は何も言わず結莉のことを見守っていた。
しばらくして結莉が口を開く。
「隠神さんと夏羽くんは、昨日私を守ってくれると言ってくれました。織くんも。
きっと晶くんも、綾ちゃんや組さん、結さん、それに紺ちゃん。…皆が、守ってくれると思うんです。
それなのに。
それなのに私は、怖いだなんて…。」
「…怖いと感じることは悪いことじゃないさ。まして結莉ちゃんは人間だ。怪物じゃない。」
「………私を使ってくれませんか?」
「使う?」
唐突な結莉の発言に隠神は不思議そうに彼女を見つめる。
結莉は先ほどの弱々しい様子はなく、力強く隠神を見つめ返した。
「飯生さんに使われるのではなく、隠神さん達に私を使ってほしいんです。いえ、飯生さんに使われてもなお、私を使ってほしいんです。」
「結莉ちゃんを利用しろっていうのか」
隠神は厳しい目を結莉に向ける。
「はい。隠神さんも夏羽くんも、私を守ってくれると言いました。絶対に守ってくれると、信じています。だから私が動けるんです。
他のヒトはわからないけれど、赤城さんなら私の話を聞いてくれます。赤城さんを味方につけることだって出来るはずです。」
「島根の狐か」
「ええ。それに、飯生さんは私を切り札のように思っているのではありませんか?それならば私に手出しはできないはずです。だからこそ、私を使える部分があると思うんです」
「…結莉ちゃんの負担が大きすぎる。万が一のこともある。さっきも言っただろう。結莉ちゃんは怪物じゃない。俺達とは違う」
「人間だからできることもあります。万が一、は皆さんも同じでしょう?それに、必ず皆さんが守ってくれます。だから大丈夫です」
「本気か?」
「本気です」
隠神が鋭い目で見つめるが彼女が怯む様子はない。しばらくして、隠神は大きくため息をついた。
「…わかったよ。」
「ありがとうございます。」
にっこりと結莉は微笑んだ。
「隠神さん。それから、伝えておきたいことがあります。隠神さんには知っておいてほしいんです。」
「なんだ?」
「実は…、私と織くんは精神世界で繋がることができます。ミハイさんが作成した透明なピアスのおかげで。仕組みはわかりませんが、おそらく睡眠または気絶…お互いの意識がない時に繋がると思われます。この状況もきっと何かに使えるかと」
「なんだって!?身体は何ともないのか?」
「今のところは、大丈夫です」
隠神は額を手でおさえ、再び大きなため息をこぼす。
「ミハイの奴、帰ったらよく注意しておくから。…すまないね。結莉ちゃんをこちらのことに巻き込みすぎた」
「いいえ、構いません。隠神さん、お話を聞いてくださってありがとうございました。」
「いや、話してくれてありがとう。結莉ちゃんのおかげで大分状況が変わる。…頼りにしてるよ」
ぽんぽんと、隠神は優しく結莉の頭に触れる。
「はい」
恥ずかしそうに結莉が笑った。
隠神はフッと笑みをこぼす。
彼女は、本当に怪物たちの希望。
それに、たくましいというかなんというか。
たいしたものだ。
「まあ、あれだ。織と晶もそろそろ目を覚ますだろ。それまで夏羽の側にいてやるといい。夏羽もずいぶん心配していたからな。」
「夏羽くんが…。はい、わかりました。」
休憩室を出ると夏羽が通路をウロウロとしていた。
「夏羽くん!」
「! 結莉さん!」
結莉が声をかけると、驚きと嬉しさが混ざったような顔で夏羽が見つめてくる。かと思うと、急に視線を外してモジモジとしはじめた。
「? どうしたの?」
「あ…えっと…昨日…」
「昨日?ああ、」
クスッと結莉は笑って、夏羽と目を合わせる。
「大丈夫。気にしてないわ。でも、ごめんね。赤城さんのことは譲れないの」
「………結莉さんが言うなら、きっと、島根の狐も…そういう部分があるんだと思う」
「…ありがとう。」
ぎゅっと結莉は夏羽を優しく抱きしめた。
「あたたかい」
心地よいぬくもりに、夏羽は嬉しそうだ。
「夏羽くんは優しいのね。」
「いや、俺は別に。優しいのは結莉さんの方だ」
恥ずかしそうに結莉は微笑むと夏羽の手を握る。夏羽は結莉の手を握り返すと、医務室へと彼女を引っ張っていった。
「織と晶が待ってる。二人とも結莉さんのこと、すごく心配していた。まだ寝てるけど」
「そうね。早く会いたいわ。会って話したいことたくさんあるのよ。」
先ほどは、見ていて辛くなってしまった結莉だったが今は大丈夫だった。
夏羽がいる。隠神もいる。皆がいるから大丈夫。
力強く結ばれた手は、人と怪物を繋いでいた。
これからも、きっと。