その特異点、混沌につき
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「彼は…私?いや…違う…違うけど同じ…なんか不思議な感じだったなぁ」
目が覚めると何故か私は城にいた。
そして何故かメイドさんや執事さんたちから立香様、と頭を下げられお世話をしてもらい…本当にどうなっているの?彼は?マシュは?ふたりは無事なのだろうか…と頭を抱えながらもこの特異点修復の為に情報を集めなければ、と気持ちを切り替えた。
*** *** ***
時を同じくして立香がたどり着いた国の隣国で美しき女王が鏡に問いかける。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは…わかっているわね?」
「はい!メイヴちゃんサイコー!!」
「ふふ!そうよねそうよね!」
「あー、でも台本通りに言わなきゃいけないなぁ…。白雪姫…そう、美しき妖精のお姫様…台本上はキミの娘!オベロン姫!彼…じゃなかった、彼女こそ!この世で一番美し」
「せいやっ!!!!!」
バギィ!!!!!という激しく鏡を殴りつけた音が部屋に響き、そこからパキパキと哀れな音を立てて鏡が砕け落ちていく。台本通りにって言っただろう!?と白い夢魔の声がするも女王メイヴちゃんはにっこりと、美しい微笑みを携えて鏡の間から立ち去った。
「あの子さえいなくなれば、この世で一番美しいのは私……そうでしょう?」
うふふ、と可憐に笑いながら呟いた言葉。
しかし彼女の目は全く笑っていなかった。
*** *** ***
「なんで僕が姫なわけ?」
オベロン・ヴォーティガーンは静かにブチギレていた。レイシフト適正サーヴァントはっけーん!という少女の声が聞こえたと同時に飛んできた謎のバズーカによって知らない場所へ飛ばされた挙句メイドやら執事を自称する人間たちに囲まれた。奴等は自分の事を「白雪姫」「美しき姫君」などと呼び美しいだの可憐だのといった賞賛の言葉を並べたてながら女性もののドレスを着せてきやがった。
カルデアに居た時点では奈落の虫の姿をしていたはずなのに、いつのまにか冬の王子の姿になっていたからついプリテンダーとしてのプライドと妖精王特有のお茶目なノリでこいつらが求めているであろう「お姫様」を演じてしまった自分に対しても気持ち悪くて気持ち悪くてぶん殴りたいと苛立っていた。
「というかなんなの…姫姫言われてたかと思えば突然狩人を名乗るロビンフットから女王様から命狙われてますぜ、妖精王。俺の役はあんたを逃さなきゃいけないんで森にどうぞ、女王サマには色々と誤魔化しとくんで、って…」
そもそも「役」ってなんだ、ふざけるな。心の中で本心を口にする。舞台なんてうんざりなんだけど…本当に勘弁してほしい、と考えながらも大して険しくない森(普通の女性にとっては険しいかもしれない)を進んでいると一軒の犬小屋…おっと、小さな家、に辿り着いた。
何も分からない状態では動きようがないし、命狙われてるっぽいし、とりあえずは隠れながら情報収集しなきゃな…なんて思考を巡らせていると家のドアが開いて中からきゃっきゃとはしゃぎながらミニ妖精サイズバージョンの僕がわらわらと……、え?
……わらわらと?なにが?出てきた?
思考が停止し、宇宙が見えた。
僕の見間違いでなければミニサイズの僕が7匹…7人?もいる…5人が白い僕の姿、2人が黒い俺の姿っぽいけど全員色違いの衣装を身に纏い、なんだかよく分からないというか分かりたくもないがご機嫌な感じで歌いながら行進して出掛けようとしている。見るからに楽しげな雰囲気だが歌の音程もタイミングもバラバラすぎて見事なまでに不協和音が爆誕している。あ、ひとりこけた。泣くなよ!ミニ妖精の姿とはいえ奈落の虫バージョンで無様な言動しないでくれるかなぁ!?
つい咄嗟に身体が動いた。僕は見間違いであってくれというか幻覚とか悪い夢であれ、いや、そうに違いないと自分に言い聞かせながらもぴええ、と泣いているミニ妖精ヴォーティガーンに手を差し伸べる。
「大丈夫かい?」
「ぴゃっ!」
ぺちん、と瞬時に手を払いのけられる。
そして気付く、こいつ…嘘泣きじゃねぇか…!
ふるふると震える僕に何騙されてんの?と言いたげな視線を送ってくる7人の…小人。そう、こいつらは小人らしい。何故か分からないけれど謎の確信でストンと腑に落ちるのがまた気持ち悪い。
いつのまにか囲まれている。というかこいつら全員鎌やらスコップやら金属製の鋭利な道具を持っている。…しまった、とバレないように武器を出そうとすると白い小人で妙にニコニコと愛想を振る舞うやつが僕のドレスの端をくいくい、と引っ張って小さな家を指差した。
「なに?」
「ぴ!」
「7兄弟の末っ子に手を差し伸べてくれたお礼がしたい?…というか…そのぴ、ってなに?鳴き声?もしかして喋れないの?」
妖精眼ではきちんと言いたいことが視えるけれど先程からこの小人たちは「ぴ」「ぴゃ」などの鳴き声のような声しか発していない。
妖精眼あってよかった、なんて思いたくないが今だけ、1秒くらいなら感謝しよう。
他の小人たちもぐいぐいと僕のドレスの裾を引っ張って家に招待しようとしてくるので溜息を吐きながらその好意?に応える為重い足を動かすのだった。
*** ***