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尾形
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友達に誘われて半ば無理矢理興味のないK系アイドルグループのコンサートに連れられてきた夢主。
ほぼ前情報なしで来たためメンバーはもちろん曲も分からない。夢主は周りの熱気に押されて気まずい思いをしつつ、棒立ちでライブ鑑賞をするしかなかった。
ライブの最中、メンバーの中で一番愛想がなくて、ツーブロオールバックの髪型で両顎に傷跡のある強面の男性と、夢主は目が合ったような気がした。夢主が「あれ?」と思うより早く、その男性は夢主の真ん前に陣取り「BANG!」と指で作った鉄砲を撃つ動作をした。所謂ファンサというものだろう。
夢主の周りの女性たちは悲鳴のような歓声を上げていたが、夢主はどうにもその男の所作は自分に向けたような気がしていた。
(こんなにも大量のファンがいるんだから、自分なわけない。アイドルって凄いんだなぁ。自分に向けられてるように錯覚しちゃった)
そう考えて夢主は残りのライブもぼんやりと観賞した。
ライブ終了後にまだ興奮して熱の収まらない友達の感想を聞くために、少しの時間お茶をした。
友達の推しについて一方的に聞かされ続けていたが、夢主はどうしても指で撃つ動作をしたあの男のことばかり考えてしまっていた。友人にその動作をした男の話をすると「尾形」という名前であると教えてくれた。ついでにあの銃で撃つ所作は彼特有のファンサだが、いつもはあんなタイミングでやらないらしい。今回は完全なアドリブだろうし、知り合いでもいたのだろうかと友人は推理していた。友人は尾形が推しなのかとしきりに聞いてきたが、夢主はメンバーの名前が覚えられないだけだと笑って返して誤魔化した。
その後は友人とも解散し、夢主は一人帰路につく。
自宅に入った瞬間、夢主が鍵を閉める直前に玄関の扉を誰かに外側から引っ張られて勢いよく開けられた。驚いている間に家の中に男が押し入ってくる。
「きゃあぁ!……むぐ!」
悲鳴を上げて抵抗する夢主の口を押さえつけながら男は夢主に声をかける。
「落ち着け。俺だ」
「ぅ!?」
てっきり強盗か痴漢だと思っていたが、男は身につけていたマスクやサングラスをわざわざ外して素顔を見せてくる。顔を見られたくない犯罪者ではないのかと夢主は混乱しつつも、相手の顔へと視線を移した。
夢主は男の顔を見てもすぐには誰だかわからなかった。しかし、徐々に頭の中でその男の顔がまだ新しい記憶を呼び起こす。
「!?」
そこにいたのは先ほどライブ中に夢主にファンサのようなものをしたアイドルの男「尾形」だった。
夢主が驚きのあまり力が抜けて抵抗をやめるのを見た尾形は、夢主の口を自由にして優しく問いかけた。
「……夢主、俺たちのことは覚えているか?」
「だ、誰?人違いじゃないですか……?私はあなたのこと知らない……ライブも、今日初めて見たの……本当よ」
夢主は震える口で必死に答えるが、夢主の言葉に尾形が静かに目を見開き息を飲む。尾形はその独特な大きく暗い瞳に恐怖で怯える夢主を映したかと思えば、次の瞬間には頭を抱えてしまった。
圧倒的に怖い思いをしている夢主よりも苦痛の表情を浮かべた尾形は、今にも泣き出しそうな悲しげな声を上げる。
「そうか。覚えていないのか……」
「あ、あの、大丈夫ですか……?」
さすがに尾形の様子があまりに悲惨に見えたので夢主が心配して顔を覗き込もうとすると、尾形に腕を掴まれ引き寄せられたかと思えばそのまま腕の中へ閉じ込められた。まるで大切な宝物を抱え込むようにぎゅうと抱きしめられてしまい、夢主の思考が停止した。
ハッと我に返って再度暴れ出そうとする夢主に、尾形はポケットから取り出したナイフを突きつけながら言い放った。
「もういい……。これから俺がすべて教え込む。それで良いはずだ。思い出させてやるよ、前世のお前が俺のことをどんな風に愛していたか」
おわり