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逆ハー・複数キャラ
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10オンライン会議
間もなく到着した救急車に乗り込んで月島と尾形と勇作は病院へ向かった。
残された夢主と杉元は指示された通りに会議室へ向かう。道中状況を知らない杉元に夢主は事情を簡単に説明をしてあげた。杉元は「ええ、俺の部屋で?やだなぁ。なんか不吉じゃあん。」と女子のようなリアクションを取っていた。
会議室に入ると部長の門倉が座学を行ったときと同じように前方の机に座っており、正面のスクリーンには門倉のノートパソコンの画面が不自然な角度で映し出されていた。宇佐美もすぐそばにいて、門倉の代わりにモニタのセッティングを行っている。
「し、失礼します」
夢主が声をかけると門倉と宇佐美がこちらを見た。
「あ、ちょうどいいところに。夢主~ちょっと手伝って。このオッサン何にもしないんだよ」
「仮にも俺部長よ?オジサンの世代に機械のことは難しすぎるって」
宇佐美がうんざりした様子で夢主を手招きする。宇佐美の言い草に門倉はぎょっとしつつも強くは言えないのか、ごにょごにょと愚痴のような言葉をつぶやいている。
「分かりました」
夢主が前に出てプロジェクターの設定をしている間、席についた杉元は頬杖をついてぼんやりと夢主を見ていた。杉元からすれば自分の部屋で勇作が殴られたことで夢主と一緒に遊べる時間が削られてしまったため、この状況はただの迷惑なイベントでしかなかった。
一緒に部屋を出たはずの鯉登が遅れて会議室へ登場した。
「遅いぞ鯉登」
門倉が文句を言うが、鯉登はどこ吹く風である。
「鶴見社長と画面越しとはいえお会いするのだから身だしなみを整えるのは当然じゃないか」
涼しい顔をした鯉登はどっしりと偉そうに門倉の隣の席に足を組んで座る。門倉は何も言えないのかしみじみと一人呟いた。
「俺って部長としての威厳ないなぁ。わかってたけど」
宇佐美はセッティングをしながらこそっと夢主に話しかける。
「勇作さんがケガしたってほんと?」
「ええ、杉元さんの部屋で誰かに頭を殴られたって言ってましたよ。今月島さんと尾形さんが付き添って病院へ行っています」
「ふぅん。百之助もなんだかんだ過保護だなぁ。じゃあ、犯人捜しはこれからだね」
「そうですね」
そんな会話をしているとちょうどプロジェクタの調整がうまくいき、画面がきれいに映し出された。夢主はそれを確認すると門倉と鯉登に一礼してから自分も後方の杉元の隣の座席に移動した。そんな夢主の態度に「いい娘だなぁ」と呟いた門倉。隣にいる鯉登がまるで不審者を見るような目つきで門倉を見ていた。
門倉と鯉登のやり取りを完全に無視して宇佐美は手早く会議用のアプリを立ち上げると鶴見社長の登場を待つ。画面を独り占めするかのように鼻息荒く最前列の机を陣取った。
しばらくしてオンライン会議用のアプリが立ち上がり、画面には社長の鶴見が映し出された。その瞬間鯉登と宇佐美が「はぁぁ♡」とまるで示し合わせたかのように同じようなリアクションを取っており、門倉がため息をついた。
『あー、あー……聞こえているかね?』
モニター内の鶴見が話し始めると鯉登がこちら側のカメラの前に立ちはだかり、力いっぱい叫んだ。
「鶴見社長!お久しぶりでごわす!ちょかっ呼び出してすみもはん!」
『近い近い、画面が真っ暗だ。この声は音之進クンだね、声も大きすぎて音が割れてしまっているよ』
「す……すみもはん!」
鯉登が席に座ると、鶴見がゴホンと咳ばらいをしてから話し始めた。
『月島課長から話は簡単にだが聞いているぞ。詳しい話をしてくれないか』
「状況をちゃんと知っているのは誰だ?」
門倉がこちらを見渡す。杉元に小声で「夢主さんが第一発見者だよね?」と話しかけられると夢主はびくっと肩を震わせた。
「社長とお話するなんて、緊張します……」
そう小声で囁き返したとき、門倉が夢主を指名した。
「夢主、そういえばお前の悲鳴を聞いて他の奴らが駆け付けたって言ってたな。説明してくれないか」
「はっ、はいいぃ!」
ガタガタッと音を立てて立ち上がると、夢主は説明を始める。所々噛んでしまったりつっかえてしまったが、状況をきちんと説明することができた。
座席について夢主がふうっと一息つくと杉元が「お疲れ様」と笑いかけてくれる。夢主は微笑み返しながら「ありがとうございます」と返したものの、どっと疲れていた。鶴見や門倉たちはすでに今回の件について推理を始めている。
『フロアにカメラはないのかね?外部犯の可能性は?』
門倉がメモを取りながら返答する。
「宿の関係者にこれから確認取ります。そういえば月島課長が言っていたんですが、今回我々が泊まる部屋のあるフロアは貸し切りで、他の客たちは別の階になるそうです」
鶴見は髭を撫でつける。まるで独り言のように小さく零した言葉も高性能なマイクは音を拾っていた。
『ふむ。隠れて犯行に及ぶことは可能でも、フロアで誰か社員と鉢合わせるリスクがあるのか……社内の犯行かな?』
その言葉に一瞬だけシンと静まり返る会議室。鶴見はおもむろにカメラに視線をやった。
『宇佐美』
「はい。鶴見社長」
画面越しだというのに宇佐美はうっとりとした表情を浮かべる。数秒間ではあるがまるで二人の世界で見つめ合うような時間が流れていて、鯉登が悔しそうに歯ぎしりしていた。
『やれ』
「ハイ、喜んで」
二人の会話だけでは何が何やら周囲はわからない。しかし宇佐美には通じているらしく、宇佐美は鼻息荒く興奮した様子で会議室を飛び出していった。
『では何かわかったらいつでも連絡してくれ』
鶴見はそう言って通話を切った。画面が暗くなり、会議室は静まり返る。
その時突然門倉が何か閃いた様子で立ち上がった。
「なるほど。この事件は……迷宮入りだ!」
そんな門倉の言葉を皮切りに、鯉登や杉元は無言で立ち上がり撤収の準備を始める。夢主も門倉の頼りなさに呆気に取られていた。
鯉登から最後に犯人が身内の可能性が高い以上、危険な目に遭わないためにもなるべく一人で出歩かないようにとお達しが出て解散となった。
11推理
鯉登と門倉に会議室を片付けるように言われた夢主と杉元は二人会議室に残っていた。
夢主は緊張のせいか先ほど報告する際に、勇作から預かった写真の切れ端について説明するのを忘れてしまったことに後から気が付いた。
「あっ」
「どうしたの夢主さん?」
「これ、勇作さんが倒れた時に握りしめてたらしいんです」
杉元に問われて夢主は会議用のテーブルの上に写真の切れ端を置いて見せた。
「なるほど、手がかりになるかもしれない写真だね。のり持ってる?」
杉元が会議用に持ってきていたルーズリーフを一枚取り出した。
「は、はい。確かペンケースの中に」
夢主がのりを取り出すと、杉元はパズルのように写真を並べてルーズリーフに糊付けをする。細かくちぎれている写真の切れ端をつなぎ合わせると、少しだけ写真の色合いが浮かび上がる。
「あれ?これ社内報だ」
作り終わった途端に杉元が声を上げた。
「え?」
杉元の言葉に夢主が首をかしげる。確かに第七商事では定期的に売上報告や社長のコラムなどを掲載した社内報は発行しているが、夢主にはどうにもこの写真と社内報が結びつかない。
「今回社内報の一部に営業部のページを作ってもらったんだ。だから見覚えがある。この写真、営業部のページに載っていた写真だ」
「そうだったんですか」
「社内報、俺ここに持ってきてると思う。多分リュックに入れっぱなしだ。一旦部屋に戻ろう。」
杉元の部屋に二人が到着すると、扉が不自然に開いていた。部屋の中は明かりがついていない。
「あれ?開いてる」
「えっ」
不安そうな顔を浮かべる夢主に、杉元は真剣な表情で囁く。
「夢主さんは俺が守るからね。俺が先に入るから、夢主さんは後ろからついてきて」
「は、はい……。」
慎重に部屋に入る杉元。夢主は杉元の洋服の裾を控えめに握って、恐る恐るといった様子で後に続いた。
二人が部屋に入ると部屋の真ん中に宇佐美がいた。
「うわっ……なんだよ宇佐美じゃん」
杉元が声をかけると宇佐美がビクッと震えた。様子がおかしいと感じた杉元が部屋の明かりをつけると、そこには自身の下半身を扱き上げる宇佐美の姿があった。
「ぎゃああ!何してんだお前!」
杉元が悲鳴を上げながらも咄嗟に宇佐美の姿を見せないように、後ろにいる夢主を背中に隠した。
「な、なになにどうしたんですか?」
夢主が不安そうな声を上げる中、宇佐美が「ヒヒイン」と一鳴きして白濁を放つ。
「こいつっ!俺のベッドにかけやがった!最悪だ!お、おい続けるな!止まれ!」
宇佐美はそのまま行為を続行しようとしているようだ。杉元は宇佐美を止めたいが、夢主に宇佐美による惨劇を見せたくないため動けない。
「な、なにしてるんですか?」
夢主は杉元の悲痛な叫び声に思わず背中から顔を出した。夢主と目が合ったタイミングで宇佐美が再度声を上げて膝がカクンと折れる。
「えっ夢主?ヒヒィン!……しまった、これじゃあただの自慰だ」
「ちょっと!宇佐美さん!」
夢主がたまらず声を上げると宇佐美はため息をついた。達する瞬間を同期に見られているにも関わらず宇佐美は落ち着いている。
「聞いてたでしょ。鶴見さんに言われたから推理してるんだよ」
「どこが推理よ!「ただの自慰だ」って今自分で言ったじゃないですか!」
思わず夢主がツッコミを入れる。杉元は宇佐美の状態と夢主の勢いにただただ驚いていて何も言えない。宇佐美は渋々といった様子で身支度を整えると自分の周囲を指さした。
「あーあ、あとちょっとで全部分かりそうだったんだけどな。僕は精子探偵だからね。とりあえず分かったところを言うよ。犯人は後ろからこうやって勇作さんを殴ってる。それで倒れた勇作さんの顔を覗き込んでから、左腕を触って何かしてる。ここまではわかったよ」
「なんでコイツ自慰はなかったことにしてるんだ?」
「精子探偵って何でしょうか……?」
「もー!ちゃんと話聞いてよ!」
杉元と夢主は怪訝そうに二人で顔を見合わせる。推理をちゃんと聞いてくれないことにプンプンしながら宇佐美はあちらこちらにある自分のまき散らした液体をティッシュでふき取り、ごみ箱に投げ捨てていた。
夢主は自分の手元のルーズリーフに気が付くとハッとした様子で宇佐美に言う。
「そうだ宇佐美さん、これ勇作さんが左手に持っていたものなんです。つなぎ合わせたんですけど」
「左手?なるほど。じゃあこれを持っていることは犯人も知ってるってことだ。左腕を触っていたのはそういうことか」
「でも、この写真を持たせたのが犯人なのか、勇作さんが殴られた後に握ったのかはわかりません」
「恐らく後者だろうね。これが犯人に繋がるものなら、犯人が痕跡を残すわけがない。勇作さんが自分で握り込んだんだろうね」
夢主が宇佐美にルーズリーフに貼り付けた写真を見せている間、杉元が自分のリュックから社内報を取り出す。
「この写真、社内報に載せたやつでさ。営業部が書いたコーナーの写真だってわかったから、部屋へ見に戻ったんだ」
パラパラとページをめくって営業部が書いたコーナーを見せる杉元。そこには鶴見社長と多数の社員も写っていた。この社員旅行に参加しているメンバーの中では一人だけがその写真に写っていて、三人はバッと顔を見合わせた。
「勇作さんはまだ狙われているってことですか?」
夢主の不安げな声が部屋に響いた。
最終章 犯人発覚
夢主・杉元・宇佐美の中では勇作を殴った犯人が確定した。
宇佐美は鶴見社長へ報告するために「門倉部長を叩き起こしてくる」と鼻息荒く部屋を飛び出していった。
残された杉元と夢主は部屋で呆然と社内報に載っている犯人の姿を見ていた。
「本当にこいつが犯人なのかな?」
「どうでしょうか。話してみるまでわかりませんが……可能性は高いかと。」
廊下を歩く複数の足音がして、早くも門倉たちがやってきたのかと思って杉元が扉の外を見ると、そこには病院から帰ってきた月島・尾形・勇作の姿があった。勇作が元気良く挨拶する。
「お待たせしました!只今戻りました!」
「大丈夫でしたか?」
勇作に夢主が駆け寄り心配そうに話しかける。自然と上目遣いになっている夢主を間近で見たせいで奥にいた尾形と月島が照れた様子でほぼ同時に顔を伏せたのを見て、杉元がプッと噴き出し笑いをこらえている。勇作はそんな周りの態度に気付かず夢主に微笑みかける。
「検査してもらいましたが問題ありませんでした。ご心配をおかけしました」
「良かったぁ」
夢主がほっとした様子を見せる。勇作の後ろにいた尾形が前髪をなで上げながら口を開いた。
「ところで、なんで夢主はまだ杉元の部屋にいるんだ」
尾形の言葉には杉元と二人っきりで部屋にいることに対しての抗議の意味合いがあったが、夢主はそんなことには気がつかない。それどころか夢主は難しい表情をしている。
「それなんですけど……勇作さんを殴った犯人が分かりました」
「なに?」
尾形が驚いた様子で声を上げる。夢主は険しい表情でこくりと頷いた。
「とりあえず中へどうぞ」
門倉と鯉登と、その二人を呼びに行った宇佐美を除く五人は、部屋の中で立ったまま向かい合った。
夢主は緊張した面持ちで深呼吸をすると、スッと腕を上げてある人物を指さす。
「犯人は、あなたです」
指をさされた先にいるのは月島だった。全員の視線が月島に集中する。
「俺ですか?」
「はい。月島さんが勇作さんを殴ったんです」
夢主はまっすぐに月島を見て頷く。勇作や尾形は驚いた様子で固まっている。しかし月島はいつも通りの厳しい顔つきのまま微動だにしない。
「なぜ俺を疑うんですか。証拠はあるんですか」
夢主を半ば睨むような目つきで月島は視線を返す。普段の夢主ならたじろいでしまうだろうが、今回ばかりは引くわけにはいかないと自分を奮い立たせる。
「証拠はこれです。勇作さんが握り込んでいたという社内報の写真です」
それを目にした瞬間、月島は諦めたようにフッと笑った。
「ああ、それか。全部捨てたつもりだったんだがな。残ってたのか」
「じゃ、じゃあ本当に月島課長が勇作さんを殴ったのか?」
事前に犯人だとわかっていても認められない部分があったのだろう。杉元が動揺を隠さずに問いかける。月島は諦めた様子で自嘲していた。
「ええそうですよ。俺がやりました」
ちょうどその時宇佐美の報告を受けて門倉と鯉登が部屋へやってきた。
「犯人がわいって本当か!?ないごてそげんこっをした!?」
開口一番鯉登が叫ぶように言いながら月島の胸倉を掴む。
月島は視線を下げて恐ろしく暗い表情で言い放つ。
「私は鶴見社長をかぶりつきで見たいんです。なのに勇作さんや鯉登さんが幹部候補として入ってきてからは全然お近づきになれない。俺はどんな汚れ仕事だってこなすつもりだ。だからまず邪魔者を消したくて……」
その場にいた全員が静まり返る。月島は暗い表情をそのままにつづけた。
「それに、あなたたちは救われたじゃないですか」
雰囲気に飲まれて全員が黙っている中、鯉登が言葉を発した。
「あ、お前また!やめろその顔!」
「は?なんのことでしょう」
月島は器用にパッと表情を変えていつもの仏頂面をして見せる。鯉登はムキになって叫ぶ。
「キエエ!気に入らないことがあるといつもその顔する!どっちが子供かわからんな!」
「ちょ、ちょっと待ってください」
子供の言い争いみたいになっている状況に混乱気味に夢主が割って入った。
「じゃあつまり、月島さんは勇作さんに嫉妬して犯行に及んだってことですか?」
「そうなりますね」
月島が肯定するとしばらく沈黙が流れた。
沈黙の後、それまでずっと黙っていた勇作が口を開く。
「月島課長だったんですねぇ、びっくりしましたよ。でも犯人が分かってスッキリしました!」
場違いなほど明るい声が部屋に響いた。勇作の反応にどうリアクションするべきか困惑したその場の全員が顔を見合わせる。
「特にケガもありませんし!一件落着ですね!」とニッコリ笑っている勇作に、一番はじめに宇佐美がプッと笑い出した。
「なーんだ月島課長だったのか~。人騒がせだなぁ」
宇佐美が涼しい顔で言い放つ。それに夢主もつられてクスッと笑った。
「この部屋汚れちゃいましたし、私の部屋でバスでやったゲームの続きしましょう」
それに対して杉元が「恋バナもしようよ!」と声を上げたが、尾形が「お前の恋バナなど興味ねえ」と辛辣に言ってのける。更に勇作が割り込んで「兄様の恋バナが聞きたいです!」とウキウキで返すと、宇佐美がニヤニヤしながら「百之助の恋バナは現在進行形だよ~」と意味深に呟く。夢主が「気になりますぅ」と悪ノリすれば、尾形が「やめろ!」と叫び、そんな会話をしながら彼らは部屋を出て行った。
門倉・月島・鯉登はワイワイガヤガヤと楽しそうな声が遠ざかって行くのを無表情で見送った。
少し遠くで聞こえる夢主たちの笑い声を聞いて鯉登が「ぐぬぬ」と羨ましそうにしていると、月島が「部屋でトランプしましょう」と憑き物が落ちたような表情で言い、鯉登と共に部屋を出て行く。
部屋に一人残された門倉が小さく呟いた。
「若い子って皆こうなの?怖ぁ」
おわり