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宇佐美
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イジられキャラ/宇佐美
入学式から早一か月が経った頃。
高校ではある程度グループができて、部活や学業、遊びに各々勤しんでいる時期。
それは夢主という女子生徒が登校しているときのことであった。
「おはよ、ブス。」
夢主に雑に声をかけたのは「宇佐美時重」という男子生徒だった。
宇佐美と夢主は家が近いことから同じ学区で、小学校から高校までずっと同じ学校に通っている。
元々宇佐美は口や態度が悪い性格ではあったが幼馴染という間柄もあって、最近では夢主を呼ぶときに「ブス」と言うことがあった。
夢主の名誉のために弁解すると、夢主の容姿は平均的であった。
特別目を惹くほどではないし、かといって不快感を抱くようなものでもなかった。
好みにもよるが中の中~中の上といったところだろうか。
「おはよう、時重。」
夢主はブスと呼ばれているにも関わらず、宇佐美に対してにっこりと挨拶をする。
たとえ人前であっても宇佐美からこんな風に呼ばれるのは、もう慣れっこだった。
それに、夢主は宇佐美が本当は優しい男であることを小さい頃から知っている。
中学生の頃は思春期なこともあってさすがにやや疎遠になりつつあったが、そんな時期でも顔を合わせれば律儀に挨拶をしてくれるような男だったからだ。
そっけない態度をとりつつも、いつも夢主を見守ってくれている。
恋愛感情を持っているわけではなかったが、宇佐美の不器用な優しさが夢主は好きだった。
宇佐美は夢主に挨拶を返されると、満足そうに笑いながら夢主の頭を撫でた。
「ブスのくせに寝ぐせつけて余計ダメだろ。」
「え、うそ。」
はねていた髪の毛を押さえた夢主が鏡を見ながら歩いているうちに、学校に到着した。
夢主と宇佐美は隣のクラスで、「じゃあね」と夢主が手を振って先に教室に入った。
夢主を見送ると、宇佐美は1つ隣の扉から自分のクラスに入っていった。
平均的な見た目、平均的な成績、やや劣る運動神経を持った夢主は教室では、派手な女子グループや男子グループとも用事があれば話すことはあるが、基本的にはやや大人しい女子のグループに属していた。
最近の夢主には小さな悩みがあった。
まだ高校に入って1か月。
数人の中学からの知り合い以外は夢主のことを知らない生徒がほとんどだ。
そのことが災いしてか、ある時クラスのお調子者の男子グループが、宇佐美が夢主のことを「ブス」と呼びつけているのを聞いたらしい。
夢主が宇佐美にそう呼ばれても全く気にしていない様子なことを見て、「イジられキャラ」と勘違いしたのかもしれない。
最近はクラスの一部の男子が夢主のことを「ブス」と言い始めた。
男子グループの中にもカーストのようなものがあるのかもしれない。
一番目立つ男子生徒が言い出したことで、同じグループの複数人の男子たちから暴言を受けることが増えた。
夢主の友人たちは怒ってくれたが、それがまた相手を助長させてしまったようで、止まる気配もないどころか頻繁にイジりに来る始末だった。
宇佐美が夢主をそう呼んだところで気にしないのは、それだけ年月の積み重ねがあるからである。
信頼関係が築かれているし、宇佐美だって真面目な話をするときはきちんと名前で呼んでくれている。
どのようにリアクションを取れば良いのか分からなくて男子生徒にブスと呼ばれても、夢主は曖昧に笑うか無視を貫くくらいしかできなかった。
やめてほしいことに変わりはないが、おふざけのイジリに対して過剰に反応するのもいかがなものかと、夢主はこのところ頭を悩ませていたのだった。
授業が終わって教室の大半が出てから夢主が廊下に出ると、宇佐美も隣の教室から出てくるところだった。
先に気が付いた夢主が「時重……」と呼びかけ、宇佐美の視線が夢主を見つけたときだった。
「おーブスじゃん」「ブスだ」と夢主が出てきた扉とは反対側の扉からいつもの男子グループの声がした。
騒がしい廊下であったが、宇佐美にも聞こえたらしい。
宇佐美は目を丸くして硬直した。
夢主は自分がこのように他の人からも呼ばれていることを、正直宇佐美には知られたくなかった。
夢主は宇佐美に現場を目撃されたことにショックを受けて、なにか言い訳をしようと言葉を探すうちにパニックになってしまい、焦りで涙が浮かんできてしまった。
夢主が言葉を発する前に、夢主の表情を見た宇佐美が夢主の横を素通りして物凄い勢いで走って行った。
夢主が振り返ると次の瞬間には宇佐美が持っていた荷物を振り上げていて、ボコッと鈍い音が廊下に響いた。
夢主が驚いて目を見開き息をのむ。
宇佐美は男子グループ相手に飛び蹴りを食らわせたり、倒れこんだ生徒を黙々とタコ殴りにしていた。
幼いころからずっと柔道を習っていた宇佐美は、相手が複数人いたにも関わらずあっという間に全員を制圧した。
まだ気持ちが収まらないのか、宇佐美はブツブツと何かを呟きながら抵抗出来ない相手にドスドスと重い音を立てて拳を叩き込む。
夢主が慌てて止めに入ろうとすると、宇佐美の独り言が聞こえた。
「あ~ぁ、失敗しちゃったな。ブスって言っとけば誰も寄り付かないと思ったのに。こんな虫けらみたいなのが付くくらいならとっとと手籠めにしちゃえばよかったんだ。夢主は可愛いだろ?うん?なんとか言ってみろよ。僕の夢主に何してくれてんの?僕以外傷つけちゃだめなんだよ。僕の夢主だから。僕のだ。僕のだ。」
ところどころ言葉の切れ目にゴッゴッと鈍い嫌な音が間に入る中、宇佐美は念仏のように呟いている。
夢主は宇佐美のその歪んだ告白に絶句してしまったが、周囲の生徒たちが異変に気づき悲鳴を上げ、半狂乱で教師を呼びに行く姿を見て我に返った。
夢主はなんとか駆け寄ると、震える手で宇佐美の腕にしがみついた。
「と、と、時重……。もうやめて。お願い。」
宇佐美が手を離すと、ちょうど教師が来たところだった。
倒れた生徒たちは全員救急車送りになってしまったが、骨折や打撲がほとんどで命に別状はないとのことだった。
宇佐美も教師たちに連れていかれたが、夢主のクラスメイトたちが日ごろ夢主がしつこくブスと呼ばれていたこと、今回もそれがきっかけだったことを証言してくれたことで何とか退学は免れ数日の謹慎となった。
悪ふざけした生徒たちの親はまともだったらしく、後日保護者が夢主の元に謝罪に来て、夢主も夢主の両親も恐縮しつつ和解となった。
宇佐美家とは昔から家族ぐるみで仲良くしていたため、宇佐美の両親が事件を知ってすぐに大慌てで謝罪に来たが、夢主の両親も宇佐美が守ってくれたのだとお礼を言って、むしろぺこぺこと頭を下げて謝罪合戦をしていた。
宇佐美の謹慎が明ける日。
夢主は少し早く家を出ると、いつもの通学路から逸れて遠回りして宇佐美の家に向かった。
ちょうど玄関から宇佐美が出てくるところで、夢主を見つけるとヘラッといつものように笑った。
「おはよ、夢主。」
名前を呼ばれた。
夢主がびっくりした表情を浮かべると、宇佐美は気まずそうに頬を掻いた。
「僕のせいで、夢主がブスって言われたんだ。本当にごめん。」
驚いた夢主だったが、すぐに首を横に振った。
「ううん、いいの。……だって、時重の気持ち、知れたし。」
ぼそり、と付け加えるように言うと、夢主は自分が宇佐美に好かれていたことを思い出して嬉しそうにはにかんだ。
宇佐美が驚いて目を丸くした。
夢主は照れ隠しなのか宇佐美の方を見ることなくそのまま先に歩き出す。
「え!待ってよ」
宇佐美は夢主を小走りに追いかけ、追いつくと夢主の手を握った。
手をつなぐのは幼少期以来だった。
手を繋いだまま会話もなく歩く2人。
夢主が恥ずかしそうに顔を背けていると、その様子を見た宇佐美は自分が夢主に嫌われるどころか好かれているとわかったのか、嬉しそうに笑った。
「僕のだからね。僕から逃げようなんて思わないでね。あと他の男にも近づいちゃだめだよ。」
心底浮かれた様子で宇佐美が夢主の手を握りしめる。
夢主が顔を赤らめて、「うん」と答えると宇佐美は握っていた夢主の手を持ち上げ、手の甲にキスを落とした。
おわり。
【あとがき:最初尾形で書こうかと思ったんですが、モブ男をボコボコにするシーンはやっぱり宇佐美が似合うなって思いました☻】
入学式から早一か月が経った頃。
高校ではある程度グループができて、部活や学業、遊びに各々勤しんでいる時期。
それは夢主という女子生徒が登校しているときのことであった。
「おはよ、ブス。」
夢主に雑に声をかけたのは「宇佐美時重」という男子生徒だった。
宇佐美と夢主は家が近いことから同じ学区で、小学校から高校までずっと同じ学校に通っている。
元々宇佐美は口や態度が悪い性格ではあったが幼馴染という間柄もあって、最近では夢主を呼ぶときに「ブス」と言うことがあった。
夢主の名誉のために弁解すると、夢主の容姿は平均的であった。
特別目を惹くほどではないし、かといって不快感を抱くようなものでもなかった。
好みにもよるが中の中~中の上といったところだろうか。
「おはよう、時重。」
夢主はブスと呼ばれているにも関わらず、宇佐美に対してにっこりと挨拶をする。
たとえ人前であっても宇佐美からこんな風に呼ばれるのは、もう慣れっこだった。
それに、夢主は宇佐美が本当は優しい男であることを小さい頃から知っている。
中学生の頃は思春期なこともあってさすがにやや疎遠になりつつあったが、そんな時期でも顔を合わせれば律儀に挨拶をしてくれるような男だったからだ。
そっけない態度をとりつつも、いつも夢主を見守ってくれている。
恋愛感情を持っているわけではなかったが、宇佐美の不器用な優しさが夢主は好きだった。
宇佐美は夢主に挨拶を返されると、満足そうに笑いながら夢主の頭を撫でた。
「ブスのくせに寝ぐせつけて余計ダメだろ。」
「え、うそ。」
はねていた髪の毛を押さえた夢主が鏡を見ながら歩いているうちに、学校に到着した。
夢主と宇佐美は隣のクラスで、「じゃあね」と夢主が手を振って先に教室に入った。
夢主を見送ると、宇佐美は1つ隣の扉から自分のクラスに入っていった。
平均的な見た目、平均的な成績、やや劣る運動神経を持った夢主は教室では、派手な女子グループや男子グループとも用事があれば話すことはあるが、基本的にはやや大人しい女子のグループに属していた。
最近の夢主には小さな悩みがあった。
まだ高校に入って1か月。
数人の中学からの知り合い以外は夢主のことを知らない生徒がほとんどだ。
そのことが災いしてか、ある時クラスのお調子者の男子グループが、宇佐美が夢主のことを「ブス」と呼びつけているのを聞いたらしい。
夢主が宇佐美にそう呼ばれても全く気にしていない様子なことを見て、「イジられキャラ」と勘違いしたのかもしれない。
最近はクラスの一部の男子が夢主のことを「ブス」と言い始めた。
男子グループの中にもカーストのようなものがあるのかもしれない。
一番目立つ男子生徒が言い出したことで、同じグループの複数人の男子たちから暴言を受けることが増えた。
夢主の友人たちは怒ってくれたが、それがまた相手を助長させてしまったようで、止まる気配もないどころか頻繁にイジりに来る始末だった。
宇佐美が夢主をそう呼んだところで気にしないのは、それだけ年月の積み重ねがあるからである。
信頼関係が築かれているし、宇佐美だって真面目な話をするときはきちんと名前で呼んでくれている。
どのようにリアクションを取れば良いのか分からなくて男子生徒にブスと呼ばれても、夢主は曖昧に笑うか無視を貫くくらいしかできなかった。
やめてほしいことに変わりはないが、おふざけのイジリに対して過剰に反応するのもいかがなものかと、夢主はこのところ頭を悩ませていたのだった。
授業が終わって教室の大半が出てから夢主が廊下に出ると、宇佐美も隣の教室から出てくるところだった。
先に気が付いた夢主が「時重……」と呼びかけ、宇佐美の視線が夢主を見つけたときだった。
「おーブスじゃん」「ブスだ」と夢主が出てきた扉とは反対側の扉からいつもの男子グループの声がした。
騒がしい廊下であったが、宇佐美にも聞こえたらしい。
宇佐美は目を丸くして硬直した。
夢主は自分がこのように他の人からも呼ばれていることを、正直宇佐美には知られたくなかった。
夢主は宇佐美に現場を目撃されたことにショックを受けて、なにか言い訳をしようと言葉を探すうちにパニックになってしまい、焦りで涙が浮かんできてしまった。
夢主が言葉を発する前に、夢主の表情を見た宇佐美が夢主の横を素通りして物凄い勢いで走って行った。
夢主が振り返ると次の瞬間には宇佐美が持っていた荷物を振り上げていて、ボコッと鈍い音が廊下に響いた。
夢主が驚いて目を見開き息をのむ。
宇佐美は男子グループ相手に飛び蹴りを食らわせたり、倒れこんだ生徒を黙々とタコ殴りにしていた。
幼いころからずっと柔道を習っていた宇佐美は、相手が複数人いたにも関わらずあっという間に全員を制圧した。
まだ気持ちが収まらないのか、宇佐美はブツブツと何かを呟きながら抵抗出来ない相手にドスドスと重い音を立てて拳を叩き込む。
夢主が慌てて止めに入ろうとすると、宇佐美の独り言が聞こえた。
「あ~ぁ、失敗しちゃったな。ブスって言っとけば誰も寄り付かないと思ったのに。こんな虫けらみたいなのが付くくらいならとっとと手籠めにしちゃえばよかったんだ。夢主は可愛いだろ?うん?なんとか言ってみろよ。僕の夢主に何してくれてんの?僕以外傷つけちゃだめなんだよ。僕の夢主だから。僕のだ。僕のだ。」
ところどころ言葉の切れ目にゴッゴッと鈍い嫌な音が間に入る中、宇佐美は念仏のように呟いている。
夢主は宇佐美のその歪んだ告白に絶句してしまったが、周囲の生徒たちが異変に気づき悲鳴を上げ、半狂乱で教師を呼びに行く姿を見て我に返った。
夢主はなんとか駆け寄ると、震える手で宇佐美の腕にしがみついた。
「と、と、時重……。もうやめて。お願い。」
宇佐美が手を離すと、ちょうど教師が来たところだった。
倒れた生徒たちは全員救急車送りになってしまったが、骨折や打撲がほとんどで命に別状はないとのことだった。
宇佐美も教師たちに連れていかれたが、夢主のクラスメイトたちが日ごろ夢主がしつこくブスと呼ばれていたこと、今回もそれがきっかけだったことを証言してくれたことで何とか退学は免れ数日の謹慎となった。
悪ふざけした生徒たちの親はまともだったらしく、後日保護者が夢主の元に謝罪に来て、夢主も夢主の両親も恐縮しつつ和解となった。
宇佐美家とは昔から家族ぐるみで仲良くしていたため、宇佐美の両親が事件を知ってすぐに大慌てで謝罪に来たが、夢主の両親も宇佐美が守ってくれたのだとお礼を言って、むしろぺこぺこと頭を下げて謝罪合戦をしていた。
宇佐美の謹慎が明ける日。
夢主は少し早く家を出ると、いつもの通学路から逸れて遠回りして宇佐美の家に向かった。
ちょうど玄関から宇佐美が出てくるところで、夢主を見つけるとヘラッといつものように笑った。
「おはよ、夢主。」
名前を呼ばれた。
夢主がびっくりした表情を浮かべると、宇佐美は気まずそうに頬を掻いた。
「僕のせいで、夢主がブスって言われたんだ。本当にごめん。」
驚いた夢主だったが、すぐに首を横に振った。
「ううん、いいの。……だって、時重の気持ち、知れたし。」
ぼそり、と付け加えるように言うと、夢主は自分が宇佐美に好かれていたことを思い出して嬉しそうにはにかんだ。
宇佐美が驚いて目を丸くした。
夢主は照れ隠しなのか宇佐美の方を見ることなくそのまま先に歩き出す。
「え!待ってよ」
宇佐美は夢主を小走りに追いかけ、追いつくと夢主の手を握った。
手をつなぐのは幼少期以来だった。
手を繋いだまま会話もなく歩く2人。
夢主が恥ずかしそうに顔を背けていると、その様子を見た宇佐美は自分が夢主に嫌われるどころか好かれているとわかったのか、嬉しそうに笑った。
「僕のだからね。僕から逃げようなんて思わないでね。あと他の男にも近づいちゃだめだよ。」
心底浮かれた様子で宇佐美が夢主の手を握りしめる。
夢主が顔を赤らめて、「うん」と答えると宇佐美は握っていた夢主の手を持ち上げ、手の甲にキスを落とした。
おわり。
【あとがき:最初尾形で書こうかと思ったんですが、モブ男をボコボコにするシーンはやっぱり宇佐美が似合うなって思いました☻】