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勇作
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幽霊と私/勇作
初めまして。私はオタク女の夢主といいます。
金カムにハマってはや〇年。
公式グッズはもちろん、同人誌やSNSなどでも色んなものを買い漁っています。
推しは「尾形百之助」です、と言えば、同志なら色々察してくれると思います。
尾形を推して人生がそこそこ狂いましたが、大変充実しております。
そんな私はここ最近幽霊が見えるようになった。
今までそんなもん見たことなかったし、心霊現象なんてデマだと思っていたのだが、自分の身に起こると疑う余地がない。
でもね、オタクの私はピンと来たの。
私の家に出る幽霊、「勇作さん」じゃない?って……。
最初は軍人さんの幽霊だー!?ってなって怖くて直視できなかったんだけど、落ち着いて見てみると軍人は軍人でも服装から判断するに、例の聯隊旗手様のようだ。
幽霊の勇作さんは原作の通り、目元が隠れているものの溢れ出る高貴な雰囲気と「眉目秀麗、成績優秀、品行方正」が似合う外見をしていた。
ちょっと、ちょっとだけなんだけど、どうせ出会うなら尾形が良かった……と思ってしまった私の業の深さが自分でもヤバイと思う。
気が付くと家の様々なところで勇作さんの幽霊に出会う。
その度にあまりにまじまじと私が見ているせいか、私が勇作さんの存在に気が付いていることに、勇作さんも気が付いたようだ。
『もしかして、私が見えるのでしょうか?』
ああ、こんな声だったのね。
実際に直接聞くと、眩しさを感じるような声だった。
「……見えてます。花沢勇作さんですよね?」
『私を知っておられるのですか!?』
動揺と嬉しさが入り混じったような声だった。
相変わらず目元は見えないが、綺麗な形をした唇が口角を上げていた。
「うーん、知っているというか、なんというか……。」
どう表現したものか、と困ってしまって首をひねる。
悩んだ末に私が出した結論は、雑なものだった。
『こ、これは……。』
私は勇作さんに金カム全巻セットを差し出したのだった。
実体がない勇作さんは漫画を持てないらしく、私と一緒に漫画を読むことになった。
そこそこ距離が近いが幽霊なのでぶつからない。
なんだろう、実体がないはずなのに勇作さんからはちょっと良い匂いが漂ってくる気がする。
これが美形のオーラかしら。
勇作さんははじめは漫画の読み方がわからない様子だったが、なるほど頭が良いだけのことはある、彼は漫画の読み方をすぐに理解した。
一気にがっつり全巻読み終わったところで、勇作さんは涙をこぼした。
「だ、大丈夫ですか?」
ティッシュを差し出そうとするが、実体がないため無意味だった。
勇作さんは、涙を袖口で拭うと私に頭を下げた。
『兄様は、お辛い思いをされていたのですね。読ませてくださってありがとうございます。』
「いえ……その、勇作さんはどうして私の家にいらっしゃるんでしょう?」
私が問うと、勇作さんは少し気まずそうに言った。
『私ははじめは暗闇の中にいました。きっかけは分かりませんが、気が付くと「尾形」「尾形」と言っている声が聞こえて、そちらに兄様がいるのかと思って歩いて行くと、こちらにいたのです。』
「その声絶対私じゃん……。」
恥ずかしくなって顔を覆う。
私のように自他ともに認めるオタクであっても、同じ趣味の人以外にあまり深くまで知られたくない様子というものはある。
その後は勇作さんに励まされて、私はなんとか立ち直った。
さて、これからどうしようか、という話になる。
成仏してもらいたいが、まずは共同生活?を営む上で多少の意識のすり合わせは必須だろう。
まずはこの時代、この世界について知ってもらおうと色んなことを説明することになった。
明治時代にはないであろう文明の利器・電子機器の説明、生活の仕方や私の仕事を含めたライフワークなどを一つ一つ丁寧に教えた。
先ほども思ったことだが、勇作さんは原作にある通り本当に理知的な人だった。
理解力の高さと飲み込みの早さがすさまじく、私の拙い説明であってもわからないところは的確に質問して適宜納得してくれた。
この時代の生活を覚えた彼は、早くも生活になじんだ。
それどころか、どういう仕組みかは分からないが遠隔でテレビをつけたり家電も弄れるようになったようで、私が留守の間はテレビを見て過ごしているらしい。
はじめは高貴な身分の彼に現代日本の庶民の暮らしを見せつけることに罪悪感があったが、彼自身あまり家から動けないらしく他に行く当てもないのだからどうしようもなかった。
ペットのようなものだと私も受け入れて共同生活をしていた。
ある朝、私が眠りから覚めると勇作さんがベッドの横に立っていた。
「うーおはよう、勇作さん……。」
「おはようございます。夢主さん。」
幽霊とはいえ、朝から近くにイケメンがいるのは心臓に悪い。
おかげであまり二度寝することは少なくなったと思う。
今日はなんだか勇作さんの声もハッキリと聞こえる。
それでもやや眠い状態で目をこすり、視線を勇作さんの方へ向けると私はぎょっとした。
「どうしましたか、夢主さん。」
驚いた様子で私の顔を覗き込んだ勇作さんに、私は上半身を起こすと失礼だろうが構わず彼の顔を指さした。
「勇作さんの、お顔が見える……!」
正しくは「目元が見える」なのだが、私は動揺していた。
目元が見えなくても高貴なオーラが漂う勇作さんだったが、目元が見えるようになった今は更なる気品を感じた。
圧倒的な美のオーラに目を細めていると、勇作さんが驚いたように自分の顔をぺたぺたと触っている。
しばらくそうしていた彼だったが、ふと自分の掌を見て固まった。
「どうかしたの?」
何かあったのかとベッドから出ようとしたら、彼に肩を掴まれた。
――え。掴まれた?
私はそのまま動けなくなった。
実体のない勇作さんは、私の家のものはもちろん、私自身にも触れることはなかった。
「夢主さん!私、身体があります……!」
勇作さんは興奮しながら私の肩を抱き寄せて自分にぎゅうと押し付けた。
軍服の装飾がほっぺたに当たる感覚、今までほのかにしか感じなかった勇作さんの香り、そして温かさ。
常々彼は、実体が欲しいと言っていた。
私のように働きたいし、何かお手伝いをしたいと。
私は彼の腰に腕を回し、そのままぎゅうと抱きしめ返した。
「よかった、よかったねえ。」
「はい、夢主さんのおかげです!」
「え?私?」
一旦離れてきょとん、とした顔をしているだろう私に勇作さんは説明をつづけた。
「今までの私は例えるなら空っぽの魂だけの状態だったようです。私の主観的な話になりますが、夢主さんと一緒に暮らすうちに魂が満たされて、実体が手に入りました。」
そういうものなの?
スピリチュアルな世界に何一つ興味のない私はポカンとすることしかできなかった。
そんな私と対照的に勇作さんはやや興奮気味に続ける。
「これで、私は今後も夢主さんのお傍でお役に立ち、貴女をお守りすることができます!」
「え、えへへ。そんなそんな……。」
私はイケメンの頼もしい言葉にニヤニヤしてしまった。
なんだか少女漫画のヒロインになったかのようだ。
最も、こんな色気のないリアクションではヒロイン失格だろうが。
勇作さんは気持ちの悪い笑みをこぼす私に臆することなく言葉をつづけた。
「それに、この時代ですから、もう父上の言いつけなど関係ありませんしね。」
そう朗らかに笑った勇作さんの手が、私の肩に触れ、力強く押した。
私はベッドにぼすんと押し倒されたところで、ようやく不穏な空気に気が付いた。
「ぇ、それってどういう意味……?」
「今はもう、私は童貞を捨てても良い立場ということです。」
「!?」
おしまい。
【あとがき:実体が手に入って一番にヤることヤる品行方正とは……。】
初めまして。私はオタク女の夢主といいます。
金カムにハマってはや〇年。
公式グッズはもちろん、同人誌やSNSなどでも色んなものを買い漁っています。
推しは「尾形百之助」です、と言えば、同志なら色々察してくれると思います。
尾形を推して人生がそこそこ狂いましたが、大変充実しております。
そんな私はここ最近幽霊が見えるようになった。
今までそんなもん見たことなかったし、心霊現象なんてデマだと思っていたのだが、自分の身に起こると疑う余地がない。
でもね、オタクの私はピンと来たの。
私の家に出る幽霊、「勇作さん」じゃない?って……。
最初は軍人さんの幽霊だー!?ってなって怖くて直視できなかったんだけど、落ち着いて見てみると軍人は軍人でも服装から判断するに、例の聯隊旗手様のようだ。
幽霊の勇作さんは原作の通り、目元が隠れているものの溢れ出る高貴な雰囲気と「眉目秀麗、成績優秀、品行方正」が似合う外見をしていた。
ちょっと、ちょっとだけなんだけど、どうせ出会うなら尾形が良かった……と思ってしまった私の業の深さが自分でもヤバイと思う。
気が付くと家の様々なところで勇作さんの幽霊に出会う。
その度にあまりにまじまじと私が見ているせいか、私が勇作さんの存在に気が付いていることに、勇作さんも気が付いたようだ。
『もしかして、私が見えるのでしょうか?』
ああ、こんな声だったのね。
実際に直接聞くと、眩しさを感じるような声だった。
「……見えてます。花沢勇作さんですよね?」
『私を知っておられるのですか!?』
動揺と嬉しさが入り混じったような声だった。
相変わらず目元は見えないが、綺麗な形をした唇が口角を上げていた。
「うーん、知っているというか、なんというか……。」
どう表現したものか、と困ってしまって首をひねる。
悩んだ末に私が出した結論は、雑なものだった。
『こ、これは……。』
私は勇作さんに金カム全巻セットを差し出したのだった。
実体がない勇作さんは漫画を持てないらしく、私と一緒に漫画を読むことになった。
そこそこ距離が近いが幽霊なのでぶつからない。
なんだろう、実体がないはずなのに勇作さんからはちょっと良い匂いが漂ってくる気がする。
これが美形のオーラかしら。
勇作さんははじめは漫画の読み方がわからない様子だったが、なるほど頭が良いだけのことはある、彼は漫画の読み方をすぐに理解した。
一気にがっつり全巻読み終わったところで、勇作さんは涙をこぼした。
「だ、大丈夫ですか?」
ティッシュを差し出そうとするが、実体がないため無意味だった。
勇作さんは、涙を袖口で拭うと私に頭を下げた。
『兄様は、お辛い思いをされていたのですね。読ませてくださってありがとうございます。』
「いえ……その、勇作さんはどうして私の家にいらっしゃるんでしょう?」
私が問うと、勇作さんは少し気まずそうに言った。
『私ははじめは暗闇の中にいました。きっかけは分かりませんが、気が付くと「尾形」「尾形」と言っている声が聞こえて、そちらに兄様がいるのかと思って歩いて行くと、こちらにいたのです。』
「その声絶対私じゃん……。」
恥ずかしくなって顔を覆う。
私のように自他ともに認めるオタクであっても、同じ趣味の人以外にあまり深くまで知られたくない様子というものはある。
その後は勇作さんに励まされて、私はなんとか立ち直った。
さて、これからどうしようか、という話になる。
成仏してもらいたいが、まずは共同生活?を営む上で多少の意識のすり合わせは必須だろう。
まずはこの時代、この世界について知ってもらおうと色んなことを説明することになった。
明治時代にはないであろう文明の利器・電子機器の説明、生活の仕方や私の仕事を含めたライフワークなどを一つ一つ丁寧に教えた。
先ほども思ったことだが、勇作さんは原作にある通り本当に理知的な人だった。
理解力の高さと飲み込みの早さがすさまじく、私の拙い説明であってもわからないところは的確に質問して適宜納得してくれた。
この時代の生活を覚えた彼は、早くも生活になじんだ。
それどころか、どういう仕組みかは分からないが遠隔でテレビをつけたり家電も弄れるようになったようで、私が留守の間はテレビを見て過ごしているらしい。
はじめは高貴な身分の彼に現代日本の庶民の暮らしを見せつけることに罪悪感があったが、彼自身あまり家から動けないらしく他に行く当てもないのだからどうしようもなかった。
ペットのようなものだと私も受け入れて共同生活をしていた。
ある朝、私が眠りから覚めると勇作さんがベッドの横に立っていた。
「うーおはよう、勇作さん……。」
「おはようございます。夢主さん。」
幽霊とはいえ、朝から近くにイケメンがいるのは心臓に悪い。
おかげであまり二度寝することは少なくなったと思う。
今日はなんだか勇作さんの声もハッキリと聞こえる。
それでもやや眠い状態で目をこすり、視線を勇作さんの方へ向けると私はぎょっとした。
「どうしましたか、夢主さん。」
驚いた様子で私の顔を覗き込んだ勇作さんに、私は上半身を起こすと失礼だろうが構わず彼の顔を指さした。
「勇作さんの、お顔が見える……!」
正しくは「目元が見える」なのだが、私は動揺していた。
目元が見えなくても高貴なオーラが漂う勇作さんだったが、目元が見えるようになった今は更なる気品を感じた。
圧倒的な美のオーラに目を細めていると、勇作さんが驚いたように自分の顔をぺたぺたと触っている。
しばらくそうしていた彼だったが、ふと自分の掌を見て固まった。
「どうかしたの?」
何かあったのかとベッドから出ようとしたら、彼に肩を掴まれた。
――え。掴まれた?
私はそのまま動けなくなった。
実体のない勇作さんは、私の家のものはもちろん、私自身にも触れることはなかった。
「夢主さん!私、身体があります……!」
勇作さんは興奮しながら私の肩を抱き寄せて自分にぎゅうと押し付けた。
軍服の装飾がほっぺたに当たる感覚、今までほのかにしか感じなかった勇作さんの香り、そして温かさ。
常々彼は、実体が欲しいと言っていた。
私のように働きたいし、何かお手伝いをしたいと。
私は彼の腰に腕を回し、そのままぎゅうと抱きしめ返した。
「よかった、よかったねえ。」
「はい、夢主さんのおかげです!」
「え?私?」
一旦離れてきょとん、とした顔をしているだろう私に勇作さんは説明をつづけた。
「今までの私は例えるなら空っぽの魂だけの状態だったようです。私の主観的な話になりますが、夢主さんと一緒に暮らすうちに魂が満たされて、実体が手に入りました。」
そういうものなの?
スピリチュアルな世界に何一つ興味のない私はポカンとすることしかできなかった。
そんな私と対照的に勇作さんはやや興奮気味に続ける。
「これで、私は今後も夢主さんのお傍でお役に立ち、貴女をお守りすることができます!」
「え、えへへ。そんなそんな……。」
私はイケメンの頼もしい言葉にニヤニヤしてしまった。
なんだか少女漫画のヒロインになったかのようだ。
最も、こんな色気のないリアクションではヒロイン失格だろうが。
勇作さんは気持ちの悪い笑みをこぼす私に臆することなく言葉をつづけた。
「それに、この時代ですから、もう父上の言いつけなど関係ありませんしね。」
そう朗らかに笑った勇作さんの手が、私の肩に触れ、力強く押した。
私はベッドにぼすんと押し倒されたところで、ようやく不穏な空気に気が付いた。
「ぇ、それってどういう意味……?」
「今はもう、私は童貞を捨てても良い立場ということです。」
「!?」
おしまい。
【あとがき:実体が手に入って一番にヤることヤる品行方正とは……。】