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スパイシリーズ/尾形
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相棒/尾形
ここは殺し屋のアジト。
表向きは不動産屋であったり法律事務所であったりと頻繁に看板を変えて、一般客が入ってきたとしても流せるくらいの体裁を保っている。
しかし裏では数百人もの精鋭をそろえて社会的な抹殺や探偵業のようなものを含めて様々な依頼を受け付けており、治安の悪いこの地では重宝されていた。
その殺し屋の中でも有名だったのが、「尾形」と「夢主」の2人だった。
尾形は超遠距離射撃を得意とする凄腕のスナイパーであったが、その性格の悪さから今まで組んだ人からもれなく全員NGをくらうほどの問題児であった。
また、尾形自身も気難しい性格であるらしく、尾形からもNGを出すことが多かった。
そのため組織内では扱いにくい人として有名であった。
夢主は美人でセクシーな見た目から政治家や大物業界人たちを堕としスキャンダルの証拠を掴ませるといった美人局のような役割の他、幼いころから習い続けた数多の武術のスキルがあり、近接武器の扱いにも長けているなど暗殺に特化したマルチタスクな才能を買われて戦闘要員として雇われていた。
彼女と組んだ殺し屋たちは彼女のその才能と美貌に、固定のバディにしてほしいと誰もが口をそろえるのだが、夢主自身が刺激が足りないとの理由で同じ人と組むことは滅多になかった。
尾形の腕は確かであるがスナイパーという性質上単独で動きつづけるにも限界があった。
そこで「上」からの命令で、今回は初めて尾形と夢主が組まされることとなった。
初対面時から、尾形は相変わらずのクールさ、そして嫌味っぽさを発揮する。
夢主がにっこりと微笑みながら握手を求めたときだった。
「はじめまして。尾形さんのことは物凄く優秀って聞いてるわ。よろしくね。」
社交辞令と分かり切った台詞であったが、初対面で彼女の柔らかい声色に落ちる男性も少なくはない。
しかし尾形はチラ、と夢主を見やっただけで、握手を返すことなくすぐに背を向けた。
「足引っ張るなよ。怖かったら隠れててもいいんだぜ?」
ニヤリと笑いながら夢主を置いて歩き出した尾形。
大抵の殺し屋たちはこの時点で少しばかり心が折れるものだったが、夢主は違った。
「あら、こそこそ隠れるのは貴方の得意分野なんでしょ?スナイパーさん?」
コッコッ、とヒールを鳴らして近づくと、尾形の肩に優しく腕を絡めながらわざわざ耳元まで口を近づけて囁くように言い放つ。
尾形が夢主の顔を見ると、夢主の唇は緩やかに弧を描いており、その余裕っぷりが窺えた。
「チッ」
尾形が舌打ちをして無視を決め込んだが、夢主は追い打ちをかける。
「しっかり隠れててね♡」
語尾にハートマークをつけて言った後、尾形が夢主を振り払うのを見越していたかのように、夢主はひらりと躱して歩いて行った。
尾形は内心で見た目が良くても性格が最悪であると夢主を評価した。
さっそく今回の仕事場にやってきた二人。
優秀な殺し屋というのは綿密な作戦を練る。
夢主と尾形も例外なく下っ端の情報を元に今回の仕事の段取りを決めていった。
今まで組んだ他の誰よりも話が早く、効率的に計画が決まっていく。
その話のテンポの良さに、夢主も尾形も内心で驚いていた。
あとはタイミングを見て突入、と話がまとまった時、再度尾形が嫌味を発する。
「精々俺に脳天撃ち抜かれねーように気をつけろよ。」
前髪を撫で上げながら得意げに言った尾形だったが、夢主はうーん、と悩まし気な声を上げて首を傾げた。
「貴方に撃たれたら労災とか降りるのかしらね?当たれば、だけど。」
嫌味を嫌味で返された尾形だったが、不思議と今まで組んだ人とは違い不快感はなかった。
とはいえ、もちろん苛立ちも感じている。
言い返す気力を削がれた尾形は(このクソアマ、顔が良くなかったらとっくに殺ってるんだがな……)と、複雑な気持ちで夢主を睨みつけた。
それに対して夢主は何を勘違いしたのか、尾形の熱烈な視線を受けてウィンクを返した。
尾形が舌打ちをするのと同時に、ちょうど作戦開始のタイミングとなったため夢主は手を振って戦地へと突入していった。
今回の仕事は想定よりも敵の数が多かった。
それは下見をして情報を流した下っ端の仕事の精度が低かったことが原因だった。
尾形は周囲の無能さにブツブツと文句を言っていたが、夢主はむしろやりがいがあるとすら思っているのか、鼻歌を歌う余裕もあった。
尾形と夢主は初めて組んだとは思えないようなチームワークの良さを発揮した。
夢主が動きやすい最適な動線を作るかのように尾形は敵を排除するし、尾形から死角になる敵は夢主が優先的に片づけていく。
夢主と尾形は小型のイヤホンを装着し無線でやりとりできるようにしているが、言葉がほとんどいらないほどスムーズに仕事が進み、互いに感動すら覚えていた。
尾形も夢主の評価を変えざるを得ないと納得しかけたとき、戦場に似合わない緊張感のない色っぽい口調で夢主が無線越しに尾形に話しかけた。
「あ~ん、ごめんなさーい。数匹逃がしちゃったわ♡」
尾形はその声にイラつきながら、建物の屋上を走り回りながらバタバタと銃を持ち替え、ポジションを変え、慌ただしく敵を片付けていく。
尾形には分かっていた。
さきほどから見ている夢主の動きから考えると、あえて尾形の方へと獲物を追い込んでいると。
「てめえ、わざとこっちに面倒なやつ向けただろ!」
銃と共にせわしなく動き回り焦りすら感じる尾形の様子をイヤホン越しに聞きながら、夢主は地上に残る最後の一人の首をへし折った。
そしてボディスーツの胸元から煙草を取り出すと、爆撃で燃えた備品から火を受けて煙をふかした。
「か弱き乙女にあんなパワータイプを処理させようなんて、どうかしてるわよ~♡」
死体の山の上に腰かけて足を組んだ彼女は、にっこり笑いながら尾形が残党を処分するのを見守った。
そんなこんなで仕事を終えた尾形と夢主は、アジトに戻って報告をした。
仕事の速さもさることながら正確さも十分で、二人は「上」から上出来だと評価を受けた。
「上」は二人を今後一緒にタッグを組んで動くようにと命じた。
その場では二人は無感情にイエスと答えたが、「上」が姿を消してから二人は顔を見合わせた。
最初に笑い出したのは夢主だった。
「ふふっ、これからもよろしくね、尾形さん♡」
尾形は嫌そうに眉間に皺を寄せた。
本心では仕事のしやすさや相性の良さから夢主のことを受け入れかけていたものの、今の態度でやっぱりこの女は嫌だ
!と内心で毒づいた。
「はっ、すぐにタッグ解消してやる。」
強気な発言をした尾形に対し、夢主は動じることなく、えぇ~?とわざとらしく小首をかしげた。
にっこりと目を細めて笑いかけながら強引に尾形と肩を組んだ夢主。
思わず身を固くした尾形に対して、夢主は初対面時と同様に唇を耳元に近づけて低く囁いた。
「私たち、いいパートナーになりそうね。」
おわり。
【あとがき:たじたじの尾形がどうしても書きたかったの……!】
ここは殺し屋のアジト。
表向きは不動産屋であったり法律事務所であったりと頻繁に看板を変えて、一般客が入ってきたとしても流せるくらいの体裁を保っている。
しかし裏では数百人もの精鋭をそろえて社会的な抹殺や探偵業のようなものを含めて様々な依頼を受け付けており、治安の悪いこの地では重宝されていた。
その殺し屋の中でも有名だったのが、「尾形」と「夢主」の2人だった。
尾形は超遠距離射撃を得意とする凄腕のスナイパーであったが、その性格の悪さから今まで組んだ人からもれなく全員NGをくらうほどの問題児であった。
また、尾形自身も気難しい性格であるらしく、尾形からもNGを出すことが多かった。
そのため組織内では扱いにくい人として有名であった。
夢主は美人でセクシーな見た目から政治家や大物業界人たちを堕としスキャンダルの証拠を掴ませるといった美人局のような役割の他、幼いころから習い続けた数多の武術のスキルがあり、近接武器の扱いにも長けているなど暗殺に特化したマルチタスクな才能を買われて戦闘要員として雇われていた。
彼女と組んだ殺し屋たちは彼女のその才能と美貌に、固定のバディにしてほしいと誰もが口をそろえるのだが、夢主自身が刺激が足りないとの理由で同じ人と組むことは滅多になかった。
尾形の腕は確かであるがスナイパーという性質上単独で動きつづけるにも限界があった。
そこで「上」からの命令で、今回は初めて尾形と夢主が組まされることとなった。
初対面時から、尾形は相変わらずのクールさ、そして嫌味っぽさを発揮する。
夢主がにっこりと微笑みながら握手を求めたときだった。
「はじめまして。尾形さんのことは物凄く優秀って聞いてるわ。よろしくね。」
社交辞令と分かり切った台詞であったが、初対面で彼女の柔らかい声色に落ちる男性も少なくはない。
しかし尾形はチラ、と夢主を見やっただけで、握手を返すことなくすぐに背を向けた。
「足引っ張るなよ。怖かったら隠れててもいいんだぜ?」
ニヤリと笑いながら夢主を置いて歩き出した尾形。
大抵の殺し屋たちはこの時点で少しばかり心が折れるものだったが、夢主は違った。
「あら、こそこそ隠れるのは貴方の得意分野なんでしょ?スナイパーさん?」
コッコッ、とヒールを鳴らして近づくと、尾形の肩に優しく腕を絡めながらわざわざ耳元まで口を近づけて囁くように言い放つ。
尾形が夢主の顔を見ると、夢主の唇は緩やかに弧を描いており、その余裕っぷりが窺えた。
「チッ」
尾形が舌打ちをして無視を決め込んだが、夢主は追い打ちをかける。
「しっかり隠れててね♡」
語尾にハートマークをつけて言った後、尾形が夢主を振り払うのを見越していたかのように、夢主はひらりと躱して歩いて行った。
尾形は内心で見た目が良くても性格が最悪であると夢主を評価した。
さっそく今回の仕事場にやってきた二人。
優秀な殺し屋というのは綿密な作戦を練る。
夢主と尾形も例外なく下っ端の情報を元に今回の仕事の段取りを決めていった。
今まで組んだ他の誰よりも話が早く、効率的に計画が決まっていく。
その話のテンポの良さに、夢主も尾形も内心で驚いていた。
あとはタイミングを見て突入、と話がまとまった時、再度尾形が嫌味を発する。
「精々俺に脳天撃ち抜かれねーように気をつけろよ。」
前髪を撫で上げながら得意げに言った尾形だったが、夢主はうーん、と悩まし気な声を上げて首を傾げた。
「貴方に撃たれたら労災とか降りるのかしらね?当たれば、だけど。」
嫌味を嫌味で返された尾形だったが、不思議と今まで組んだ人とは違い不快感はなかった。
とはいえ、もちろん苛立ちも感じている。
言い返す気力を削がれた尾形は(このクソアマ、顔が良くなかったらとっくに殺ってるんだがな……)と、複雑な気持ちで夢主を睨みつけた。
それに対して夢主は何を勘違いしたのか、尾形の熱烈な視線を受けてウィンクを返した。
尾形が舌打ちをするのと同時に、ちょうど作戦開始のタイミングとなったため夢主は手を振って戦地へと突入していった。
今回の仕事は想定よりも敵の数が多かった。
それは下見をして情報を流した下っ端の仕事の精度が低かったことが原因だった。
尾形は周囲の無能さにブツブツと文句を言っていたが、夢主はむしろやりがいがあるとすら思っているのか、鼻歌を歌う余裕もあった。
尾形と夢主は初めて組んだとは思えないようなチームワークの良さを発揮した。
夢主が動きやすい最適な動線を作るかのように尾形は敵を排除するし、尾形から死角になる敵は夢主が優先的に片づけていく。
夢主と尾形は小型のイヤホンを装着し無線でやりとりできるようにしているが、言葉がほとんどいらないほどスムーズに仕事が進み、互いに感動すら覚えていた。
尾形も夢主の評価を変えざるを得ないと納得しかけたとき、戦場に似合わない緊張感のない色っぽい口調で夢主が無線越しに尾形に話しかけた。
「あ~ん、ごめんなさーい。数匹逃がしちゃったわ♡」
尾形はその声にイラつきながら、建物の屋上を走り回りながらバタバタと銃を持ち替え、ポジションを変え、慌ただしく敵を片付けていく。
尾形には分かっていた。
さきほどから見ている夢主の動きから考えると、あえて尾形の方へと獲物を追い込んでいると。
「てめえ、わざとこっちに面倒なやつ向けただろ!」
銃と共にせわしなく動き回り焦りすら感じる尾形の様子をイヤホン越しに聞きながら、夢主は地上に残る最後の一人の首をへし折った。
そしてボディスーツの胸元から煙草を取り出すと、爆撃で燃えた備品から火を受けて煙をふかした。
「か弱き乙女にあんなパワータイプを処理させようなんて、どうかしてるわよ~♡」
死体の山の上に腰かけて足を組んだ彼女は、にっこり笑いながら尾形が残党を処分するのを見守った。
そんなこんなで仕事を終えた尾形と夢主は、アジトに戻って報告をした。
仕事の速さもさることながら正確さも十分で、二人は「上」から上出来だと評価を受けた。
「上」は二人を今後一緒にタッグを組んで動くようにと命じた。
その場では二人は無感情にイエスと答えたが、「上」が姿を消してから二人は顔を見合わせた。
最初に笑い出したのは夢主だった。
「ふふっ、これからもよろしくね、尾形さん♡」
尾形は嫌そうに眉間に皺を寄せた。
本心では仕事のしやすさや相性の良さから夢主のことを受け入れかけていたものの、今の態度でやっぱりこの女は嫌だ
!と内心で毒づいた。
「はっ、すぐにタッグ解消してやる。」
強気な発言をした尾形に対し、夢主は動じることなく、えぇ~?とわざとらしく小首をかしげた。
にっこりと目を細めて笑いかけながら強引に尾形と肩を組んだ夢主。
思わず身を固くした尾形に対して、夢主は初対面時と同様に唇を耳元に近づけて低く囁いた。
「私たち、いいパートナーになりそうね。」
おわり。
【あとがき:たじたじの尾形がどうしても書きたかったの……!】