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谷垣
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谷垣の妹/谷垣とインカラマッ
こんにちは、私は谷垣夢主といいます。
私の両親は幼い頃事故で亡くなっています。
でも独りぼっちではありません。
私には、年の離れた兄がいます。
兄の名前は谷垣源次郎といい、真面目で私をとっても可愛がってくれる良い兄です。
事故で両親が亡くなったとき、兄は高校生でした。
葬儀のあと遠い親戚が私たちをどういう風に引き取るかどうかと話し合っているとき、兄は自分が働きに出るからどうか兄妹を離れ離れにしないでほしいと懇願したそうだ。
私はまだ幼くて、死というものを理解できずにただただ両親がいなくなったことにパニックで、兄がそんな決断をしていたことは知らず後から教えてもらいました。
高校を辞めた兄はいくつもバイトを掛け持ちして働きながら私のために家事をしてくれました。
私も小学校に上がってからは少しずつ家事を受け持つようになり、家の負担が減ると兄は更に様々な仕事を探していました。
苦労して私を育ててくれて感謝はしていますが、兄は真面目で冗談の通じないタイプの性格です。
時々変な仕事(身体を売るとかなんとか…)を見つけてきてしまうので、幼いながらに私がしっかりしなければ……!と思って過ごしていました。
でも私が義務教育を終え、高校へは進学しないで兄のように働くと言った時は大喧嘩をしました。
兄は根気強く、お金のかからない公立高校ならば進学するだけの貯金はある、と私を説得してくれました。
兄のおかげで私は高校生になったわけですが、私がアルバイトを始めても変わらず兄は働きづめで趣味や友人など、ましてや恋人については兄の口から聞いたことがありませんでした。
私は兄に十分良くしてもらいました。
これからは兄は私のためではなく、自分のため、自分の幸せのためだけに生きてほしいと思っています。
バイトが終わって帰宅するまでの道のり。
どうしたものか、と兄の今後の幸せについてうーんと唸りながら繁華街を歩く。
夜が更けてもこの繁華街はまぶしく、闇と光のコントラストが綺麗だ。
ふと、声を掛けられる。
「お嬢さん、ちょっと良いかしら。」
よくあるキャッチやナンパではなく、落ち着いた大人の女性の声だった。
プロのそういったお店の人かと思って警戒しながら視線を向けると、そこには「占い」の文字が目に入ってきた。
小さな机に占いと札がかかっていて、そこにはタロットやまじないの道具のようなものが並べられている。
その机には切れ長の目をして狐のような印象の、民族衣装のようなものを着た女性が座っていてこちらへ声をかけていた。
「はい?私ですか?」
「ええ、貴女……身近にムチムチボディのスケベな男性がいませんか?」
「なっ……。」
思わず声を失った。
およそ見ず知らずの他人から声をかけられる言葉とは思えず、固まる私にキツネ目の女性は御免なさい、と困ったように微笑む。
「なんて表現したら良いのかわからなくて……。とにかく男らしくて、ムチムチしている感じの方です。」
もう頭の中に浮かぶのは一人しかいない。
「……多分、それは兄です。」
「そうですか。良かった。」
そう女性は笑うと、立ち上がり私に何かを差し出した。
「これは……?いや、私お金ないです!」
受け取る前にハッと気が付いて慌てて押し売りや怪しいセールスならお断りだ!と首を横に振る。
しかし、女性は代金はいらないと微笑む。
どういうことか、と思いつつも受け取ると、それは日本のものとは違う形をしたキーホルダーのようなものだった。
女性は私が問いかける前に説明する。
「それは、お守りです。その男性にお渡しください。そして肌身離さず持っていてください。きっと今まで苦労されてきたのでしょう?」
「なんで……。」
占いというのは、一部心理学のようなものを駆使していると思っていた。
悩みを聞き出し、家族構成や友人関係を聞くことである程度的を絞った返答をしているものだと思っていたが、何の情報もなくいきなり兄のことを言われた私は動揺を隠せなかった。
「千里眼といいますか、……その人の未来や身近な人が今どんな状態なのかが見えるのです。」
「じゃあ、お兄ちゃんは……兄は、何か危ないことに巻き込まれるのですか!?」
「いいえ。私に見えたのは、貴方のお兄さんが独りぼっちで生きていく姿です。現在本人はそれで良いと納得しているようですが、幸運をつかめればいくらでも違う未来が待っていますよ。貴女も、お兄さん思いの良い妹ですね。」
「……ありがとう、ございます。」
見ず知らずの他人に同情を寄せられて感動して涙ぐんでしまった。
女性は私にも小さなおまじないをしてくれました。
呪文のようなものを呟きながら頭をトントンと優しく叩いて、私にも幸運が舞い降りますようにと祈祷してくれたようだ。
「……あの、お代払います。」
少ないけれど、バイト代なら持っている。
悪徳セールスではないと信じて、そう伝えると女性は首を振った。
「今はいりません。ぜひ、気が向いたら貴女のお兄さんと一緒に来てください。いつもはそこの館で占いやまじないをやっています。」
女性は名刺のようなカードを一枚私にくれた。
そこにはここの近くの占いしている場所の住所と、「インカラマッ」と書いてあった。芸名だろうか?
「インカラマッさん、本当にありがとうございます。絶対兄にお渡しして、いつか連れてきますね。」
私は何度もぺこぺこと頭を下げて、帰宅した。
インカラマッさんと話していた分いつもより少し遅くなってしまったが、兄が心配したのか家のまえでウロウロとしていた。
「お兄ちゃん!」
「夢主…!良かった、事故にでも遭ったのかと思った……。」
兄は私を見つけると走ってきて抱きしめる。
悪いことをしてしまった、と罪悪感が湧く。
「ごめんなさい。」
「もう大丈夫だ、早く家に入ろう。」
アパートに入ると、とっくにご飯ができていた。
兄の家事のスキルはなかなか高く、その辺の専業主婦よりも安売り情報や生活の知恵が多い。
それだけ苦労してきてるんだなぁ、としみじみと考えてしまった。
兄と一緒に食卓を囲みながら、先ほどあったことを兄に伝える。
兄もセールスか何かではないかと最初こそ心配していたが、無料でお守りをもらったことや兄のことを言い当てたことで不思議そうにしていた。
「これ、持ってたら幸せが舞い込むってさ。ずっと肌身離さず持っているようにだって。」
「そうか……。うん、わかった持って居よう。」
「ありがとう、なんかちょっと私も嬉しいよ。」
そんなやり取りから数週間後、私と兄のバイトの休日がたまたま被った日、ふたりで食事にでも行こうとなった。
兄はお守りをずっと持っているようだったが、私も兄もそのことについて話題には全くならず私自身も忘れていた。
繁華街の方へと歩いていると、質の悪い勧誘2人組が私たちに声をかける。
「兄ちゃんいい身体してるね!どう?稼げる仕事教えるよ~」
「お嬢ちゃんは恋人?じゃないよね、若いもん。カッコイイ男の人いっぱいいるところ教えてあげよっか~?」
口々にあからさまな言葉を投げかけてくる2人に私たちも最初は無視をしていたのだが、とてもしつこい。
兄は柔道経験もあり更に肉体労働をしてきたこともあり、こんなヒョロヒョロな男共など簡単にぶっ飛ばせる。
しかし警察を呼ばれたら困るし、なにより私がいることで兄も私を傷つけずにどうやって切り抜けようかと困っている様子だった。
すると、路地から女性の声が響いた。
「あら~?あなた方、悪いものに憑りつかれていますね?」
私はその声の主を知っている。
ハッとしてそちらを振り返ると、インカラマッさんがゆらり、と路地から出てきた。
インカラマッさんの目つきは鋭い。
「ハァ?なんだこいつ?」
「うるせえ引っ込んでろ!」
セールス2人組は口汚く罵るが、インカラマッさんは怯むことなくむしろ言葉を被せるようにして様々浴びせる。
「こちらの貴方は、お母さんが病に苦しんでいますね?どうやら原因は貴方が家に持ち帰ってくる悪い気にあてられているようです。貴方の肩は真っ黒な靄がのしかかっています。肩や頭が痛くなることがあるでしょう?今まであなたがしてきたことを恨んだ人からの怨念です。」
「エッ……。」
「そちらの貴方、足が真っ黒に見えます。恐らく病が進行しているようですので、早めに療養なさることをお勧めします。その際病院の外にお寺などにも行った方が良さそうですね。貴方が始末した人が足を引っ張っていますよ。」
「そんな……。」
2人組は恐らく全てが図星だったのだろう、悲鳴を上げながら逃げ出していった。
「インカラマッさん……!」
私が声をあげると、インカラマッさんはニコリと微笑んだ。
「こんばんは、またお会いできましたね。」
「お兄ちゃん、この人が前にお兄ちゃんのためにお守りくれた占い師のインカラマッさんだよ。」
呆気にとられている兄の袖を引っ張ってインカラマッさんを紹介すると、兄は我に返ったのかインカラマッさんに頭を下げた。
「危ないところを助けてくれてありがとう……その、これ、お守りも。」
「いいのです、私は善人を救いたいだけなのですから。」
照れ臭そうに笑いながら一生懸命に言葉を探す兄と、それを穏やかに見守るインカラマッさん。
私は二人のやり取りを見ていて、ブワッとある気持ちが沸き上がるのを感じた。
これは……期待?
あわよくば、2人がいつまでもこうやって笑い合っていてほしい。
「あの、っ、良かったら、これからも……!」
そう、声をかけたのが1年前のこと。
今日は2人の結婚式。
神前式を行うそうだ。
私はこの1年間、とても穏やかに幸せに兄が暮らすのを見てきた。
この時をずっと望んでいたのだと思う。
こんなにも幸せなことはなくて、何気ない瞬間に何度も泣いてしまったが、その度に2人は優しく私へ笑いかけてくれた。
綺麗な姿のインカラマッさんと、少し緊張した様子の兄。
私はいつまでもこの幸せが続くことを切に願う。
【おまけ】
夢主「私にも、お兄ちゃんたちみたいな幸せな結婚できるかなぁ。」
インカラマッ「夢主さんにも、素敵な男性と巡り合えるおまじないをかけてありますよ。」
谷垣「……それは、泣いてしまうな。」
夢主「もう、すでに泣いちゃってるじゃん笑」
おわり。
【あとがき:谷垣みたいなお兄ちゃんほしい。】
こんにちは、私は谷垣夢主といいます。
私の両親は幼い頃事故で亡くなっています。
でも独りぼっちではありません。
私には、年の離れた兄がいます。
兄の名前は谷垣源次郎といい、真面目で私をとっても可愛がってくれる良い兄です。
事故で両親が亡くなったとき、兄は高校生でした。
葬儀のあと遠い親戚が私たちをどういう風に引き取るかどうかと話し合っているとき、兄は自分が働きに出るからどうか兄妹を離れ離れにしないでほしいと懇願したそうだ。
私はまだ幼くて、死というものを理解できずにただただ両親がいなくなったことにパニックで、兄がそんな決断をしていたことは知らず後から教えてもらいました。
高校を辞めた兄はいくつもバイトを掛け持ちして働きながら私のために家事をしてくれました。
私も小学校に上がってからは少しずつ家事を受け持つようになり、家の負担が減ると兄は更に様々な仕事を探していました。
苦労して私を育ててくれて感謝はしていますが、兄は真面目で冗談の通じないタイプの性格です。
時々変な仕事(身体を売るとかなんとか…)を見つけてきてしまうので、幼いながらに私がしっかりしなければ……!と思って過ごしていました。
でも私が義務教育を終え、高校へは進学しないで兄のように働くと言った時は大喧嘩をしました。
兄は根気強く、お金のかからない公立高校ならば進学するだけの貯金はある、と私を説得してくれました。
兄のおかげで私は高校生になったわけですが、私がアルバイトを始めても変わらず兄は働きづめで趣味や友人など、ましてや恋人については兄の口から聞いたことがありませんでした。
私は兄に十分良くしてもらいました。
これからは兄は私のためではなく、自分のため、自分の幸せのためだけに生きてほしいと思っています。
バイトが終わって帰宅するまでの道のり。
どうしたものか、と兄の今後の幸せについてうーんと唸りながら繁華街を歩く。
夜が更けてもこの繁華街はまぶしく、闇と光のコントラストが綺麗だ。
ふと、声を掛けられる。
「お嬢さん、ちょっと良いかしら。」
よくあるキャッチやナンパではなく、落ち着いた大人の女性の声だった。
プロのそういったお店の人かと思って警戒しながら視線を向けると、そこには「占い」の文字が目に入ってきた。
小さな机に占いと札がかかっていて、そこにはタロットやまじないの道具のようなものが並べられている。
その机には切れ長の目をして狐のような印象の、民族衣装のようなものを着た女性が座っていてこちらへ声をかけていた。
「はい?私ですか?」
「ええ、貴女……身近にムチムチボディのスケベな男性がいませんか?」
「なっ……。」
思わず声を失った。
およそ見ず知らずの他人から声をかけられる言葉とは思えず、固まる私にキツネ目の女性は御免なさい、と困ったように微笑む。
「なんて表現したら良いのかわからなくて……。とにかく男らしくて、ムチムチしている感じの方です。」
もう頭の中に浮かぶのは一人しかいない。
「……多分、それは兄です。」
「そうですか。良かった。」
そう女性は笑うと、立ち上がり私に何かを差し出した。
「これは……?いや、私お金ないです!」
受け取る前にハッと気が付いて慌てて押し売りや怪しいセールスならお断りだ!と首を横に振る。
しかし、女性は代金はいらないと微笑む。
どういうことか、と思いつつも受け取ると、それは日本のものとは違う形をしたキーホルダーのようなものだった。
女性は私が問いかける前に説明する。
「それは、お守りです。その男性にお渡しください。そして肌身離さず持っていてください。きっと今まで苦労されてきたのでしょう?」
「なんで……。」
占いというのは、一部心理学のようなものを駆使していると思っていた。
悩みを聞き出し、家族構成や友人関係を聞くことである程度的を絞った返答をしているものだと思っていたが、何の情報もなくいきなり兄のことを言われた私は動揺を隠せなかった。
「千里眼といいますか、……その人の未来や身近な人が今どんな状態なのかが見えるのです。」
「じゃあ、お兄ちゃんは……兄は、何か危ないことに巻き込まれるのですか!?」
「いいえ。私に見えたのは、貴方のお兄さんが独りぼっちで生きていく姿です。現在本人はそれで良いと納得しているようですが、幸運をつかめればいくらでも違う未来が待っていますよ。貴女も、お兄さん思いの良い妹ですね。」
「……ありがとう、ございます。」
見ず知らずの他人に同情を寄せられて感動して涙ぐんでしまった。
女性は私にも小さなおまじないをしてくれました。
呪文のようなものを呟きながら頭をトントンと優しく叩いて、私にも幸運が舞い降りますようにと祈祷してくれたようだ。
「……あの、お代払います。」
少ないけれど、バイト代なら持っている。
悪徳セールスではないと信じて、そう伝えると女性は首を振った。
「今はいりません。ぜひ、気が向いたら貴女のお兄さんと一緒に来てください。いつもはそこの館で占いやまじないをやっています。」
女性は名刺のようなカードを一枚私にくれた。
そこにはここの近くの占いしている場所の住所と、「インカラマッ」と書いてあった。芸名だろうか?
「インカラマッさん、本当にありがとうございます。絶対兄にお渡しして、いつか連れてきますね。」
私は何度もぺこぺこと頭を下げて、帰宅した。
インカラマッさんと話していた分いつもより少し遅くなってしまったが、兄が心配したのか家のまえでウロウロとしていた。
「お兄ちゃん!」
「夢主…!良かった、事故にでも遭ったのかと思った……。」
兄は私を見つけると走ってきて抱きしめる。
悪いことをしてしまった、と罪悪感が湧く。
「ごめんなさい。」
「もう大丈夫だ、早く家に入ろう。」
アパートに入ると、とっくにご飯ができていた。
兄の家事のスキルはなかなか高く、その辺の専業主婦よりも安売り情報や生活の知恵が多い。
それだけ苦労してきてるんだなぁ、としみじみと考えてしまった。
兄と一緒に食卓を囲みながら、先ほどあったことを兄に伝える。
兄もセールスか何かではないかと最初こそ心配していたが、無料でお守りをもらったことや兄のことを言い当てたことで不思議そうにしていた。
「これ、持ってたら幸せが舞い込むってさ。ずっと肌身離さず持っているようにだって。」
「そうか……。うん、わかった持って居よう。」
「ありがとう、なんかちょっと私も嬉しいよ。」
そんなやり取りから数週間後、私と兄のバイトの休日がたまたま被った日、ふたりで食事にでも行こうとなった。
兄はお守りをずっと持っているようだったが、私も兄もそのことについて話題には全くならず私自身も忘れていた。
繁華街の方へと歩いていると、質の悪い勧誘2人組が私たちに声をかける。
「兄ちゃんいい身体してるね!どう?稼げる仕事教えるよ~」
「お嬢ちゃんは恋人?じゃないよね、若いもん。カッコイイ男の人いっぱいいるところ教えてあげよっか~?」
口々にあからさまな言葉を投げかけてくる2人に私たちも最初は無視をしていたのだが、とてもしつこい。
兄は柔道経験もあり更に肉体労働をしてきたこともあり、こんなヒョロヒョロな男共など簡単にぶっ飛ばせる。
しかし警察を呼ばれたら困るし、なにより私がいることで兄も私を傷つけずにどうやって切り抜けようかと困っている様子だった。
すると、路地から女性の声が響いた。
「あら~?あなた方、悪いものに憑りつかれていますね?」
私はその声の主を知っている。
ハッとしてそちらを振り返ると、インカラマッさんがゆらり、と路地から出てきた。
インカラマッさんの目つきは鋭い。
「ハァ?なんだこいつ?」
「うるせえ引っ込んでろ!」
セールス2人組は口汚く罵るが、インカラマッさんは怯むことなくむしろ言葉を被せるようにして様々浴びせる。
「こちらの貴方は、お母さんが病に苦しんでいますね?どうやら原因は貴方が家に持ち帰ってくる悪い気にあてられているようです。貴方の肩は真っ黒な靄がのしかかっています。肩や頭が痛くなることがあるでしょう?今まであなたがしてきたことを恨んだ人からの怨念です。」
「エッ……。」
「そちらの貴方、足が真っ黒に見えます。恐らく病が進行しているようですので、早めに療養なさることをお勧めします。その際病院の外にお寺などにも行った方が良さそうですね。貴方が始末した人が足を引っ張っていますよ。」
「そんな……。」
2人組は恐らく全てが図星だったのだろう、悲鳴を上げながら逃げ出していった。
「インカラマッさん……!」
私が声をあげると、インカラマッさんはニコリと微笑んだ。
「こんばんは、またお会いできましたね。」
「お兄ちゃん、この人が前にお兄ちゃんのためにお守りくれた占い師のインカラマッさんだよ。」
呆気にとられている兄の袖を引っ張ってインカラマッさんを紹介すると、兄は我に返ったのかインカラマッさんに頭を下げた。
「危ないところを助けてくれてありがとう……その、これ、お守りも。」
「いいのです、私は善人を救いたいだけなのですから。」
照れ臭そうに笑いながら一生懸命に言葉を探す兄と、それを穏やかに見守るインカラマッさん。
私は二人のやり取りを見ていて、ブワッとある気持ちが沸き上がるのを感じた。
これは……期待?
あわよくば、2人がいつまでもこうやって笑い合っていてほしい。
「あの、っ、良かったら、これからも……!」
そう、声をかけたのが1年前のこと。
今日は2人の結婚式。
神前式を行うそうだ。
私はこの1年間、とても穏やかに幸せに兄が暮らすのを見てきた。
この時をずっと望んでいたのだと思う。
こんなにも幸せなことはなくて、何気ない瞬間に何度も泣いてしまったが、その度に2人は優しく私へ笑いかけてくれた。
綺麗な姿のインカラマッさんと、少し緊張した様子の兄。
私はいつまでもこの幸せが続くことを切に願う。
【おまけ】
夢主「私にも、お兄ちゃんたちみたいな幸せな結婚できるかなぁ。」
インカラマッ「夢主さんにも、素敵な男性と巡り合えるおまじないをかけてありますよ。」
谷垣「……それは、泣いてしまうな。」
夢主「もう、すでに泣いちゃってるじゃん笑」
おわり。
【あとがき:谷垣みたいなお兄ちゃんほしい。】