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鯉登
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現世ではライバル/鯉登・月島
陽が落ちるのが早くなってきた秋口に、高校の下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く。
チャイムは夕焼けの中、様々な部活動の音に紛れて消えていった。
現世ではライバル/鯉登・月島
陽が落ちるのが早くなってきた秋口に、高校の下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く。
チャイムは夕焼けの中、様々な部活動の音に紛れて消えていった。
「夢主~!」「夢主さん。」
教室では二人の男性の声が響いた。
遠くから聞こえる一際大きな声と、近くから聞こえる落ち着いたトーンの声。
2つの声に夢主と呼ばれた女子生徒は、ぱっと振り返って笑う。
「今日もタイミング一緒だね。鯉登くん、月島くん。」
くすくすと笑っている夢主の向こうで、「む。」と険しい顔で振り返った月島と、夢主により近いところにいる月島に対して「キェー!」と声をあげた鯉登がにらみ合った。
3人は同じクラスであったが、先日の席替えで夢主と大きく席が離れてしまった鯉登は、それ以来持ち前のよく通る声でいち早く夢主を呼ぶのだった。
対して席が少しだけ近づいた月島は、その特権を存分に使って夢主の傍に隙あらば近寄り話かけるのであった。
鯉登が月島にずいずいと近づきしばらく睨み合った2人は、夢主にはあまり聞こえないように小さな声で言い争う。
「たまには部下に譲ってくれませんかね?」
「何を言う。ここでは同い年だ。それを言うなら上官の言うことを聞け。」
「嫌です。部下の未来を潰す気ですか。」
そう、この二人には前世の記憶があり、明治時代の日本軍では鯉登が月島の上司として厳しい世界を共に戦いぬいた仲であった。
前世では鯉登は自由奔放であったことから、月島は苦労しがちであった。
そして案の定今世でも月島は鯉登の我儘に手を焼いている。
ちなみに、夢主は前世の記憶など持ち合わせていない普通の女子生徒だ。
ではなぜ、この普通の女子生徒が二人にこんなにも強烈に好かれているかというと……。
「2人とも、仲が良いんだねぇ。」
夢主の持ち前の柔らかいオーラが原因であった。
時は入学初日に遡る。
前世の記憶を持ちながら鯉登と月島は全く接点を持たずに育った。
入学式前に同じクラスに見覚えのある人間がいることに気が付き、彼らは再会を喜んだ。
そして授業の初回でよくある、一人ずつ自己紹介を行うタイミングで、二人は同時に一人の女子生徒に興味を持ってしまった。
それが夢主であって、優しそうな印象に主張しすぎない程度のメイク、清楚でありながらも可憐な年頃の少女らしい少女であった。
その柔らかい笑顔と優しい声にクラスの一部の男子が目をつけるのは当然のことであった。
夢主は話しやすく優しそうな雰囲気からすぐに女子生徒たちに囲まれ友達を作っていたので、二人がいきなりアタックをかけることはなかった。
しかし、男子生徒のグループ内で鯉登と月島は可愛いと思う子を挙げるという下世話な話に巻き込まれ、そこで二人同時に「夢主……。」と言ったところでバッと顔を見合わせて、そこから微妙にライバル関係が芽生えてしまったのだった。
クラスのほとんどの生徒は、二人が夢主を好いていることにすぐに気が付き、本気でないものはすぐに手を引いた。
本気であったものも、頑張って夢主と話す機会をうかがうが、二人の猛攻撃には敵わず敗退していったのだった。
他にもモテる女子はいたものの、早々に他校の彼氏がいたり上級生と付き合ってしまって、このクラスでは今鯉登・月島たちの恋愛しか話題として生きていなかった。
また、女子生徒の中には見た目が華やかな鯉登にアタックするものも出てきていたが、鯉登が一貫して夢主にしか興味を示さなかったことで白けてしまったようだった。
基本的にこのクラスは仲が良い。
夢主がどちらと付き合うのかといった派閥をあえて作って、定期的に秘密裏に討論大会を催すほどの密な付き合いが起きていた。
夢主はやや天然というか、鈍いところがあるらしく、二人の男子がここまで自分に絡むことについてなんとも思っていないようだった。
それどころか彼女は基本的に誰にでも分け隔てなく接するため、彼らにも平等に接しようとする。
皮肉なことにそれが返って彼らの闘争心を刺激してしまっているようだった。
夢主の友人たちもあまりの夢主の鈍さに呆れ、この件については静観を決め込んでいた。
そんなこんなで日課のように、二人がどっちが一緒に帰るかで夢主を露骨に取り合っている間、教室の後ろの扉から夢主は呼ばれて出て行ってしまった。
夢主はいつもなら他クラスの生徒と話したとしても、帰るときには必ず鯉登と月島のもとには戻ってきて挨拶をするか、そのまま二人と途中まで一緒に下校していた。
しかし、今日はいつもと違った。
鯉登と月島が珍しく教室から出て行った夢主が長らく戻ってこないことに気が付き荷物も教室に残ったままであることから、一時休戦して探しに行こうと廊下へ出ると、廊下には放課後とは思えないほどの人だかりができていた。
そのひとだかりの中心には隣のクラスの「杉元」という男子と、夢主がいた。
杉元は、顔に特徴的な傷があるがそれを感じさせないほど爽やかな好青年で、鯉登・月島とは違い明治時代の記憶はなかった。
鮮明に過去の様々なことを覚えている鯉登・月島が杉元を見つけて旧友のように以前話しかけたときは、「どちら様…?」と怪訝そうな顔をされてしまいそれ以来二人は杉元には話しかけなかったのだ。
そのことが災いして、鯉登と月島に感知されることなく、杉元は夢主に惚れてから毎日少しずつアプローチをかけていたのだった。
二人が人だかりの中心部に到達したときには、まさに真っ赤な顔をした杉元が夢主へ告白をした瞬間だった。
鯉登も月島も絶句し、あまりの光景にヒュッとどちらかの喉が鳴る音が響いた。
ギャラリーも静まり返るほど間があって、困惑しながらも頬を染めた夢主が嬉しそうに顔を綻ばせて小さくこくん、と頷いた瞬間、鯉登と月島は膝から崩れ落ちた。
そして対照的に杉元は飛び上がって喜び、夢主を抱きしめていた。
周囲もワーッ!と盛り上がっては歓声や拍手が鳴り響いた。
そんな中、二人の攻防を知っているクラスメイトたちは、優しく二人を抱え起こし、夢主抜きでクラス会という名の慰め会を急遽開きましたとさ。
おしまい。
【あとがき:この二人は何回生まれ変わっても仲良しでいてほしい。。】
【あとがき:この二人は何回生まれ変わっても仲良しでいてほしい。。】
陽が落ちるのが早くなってきた秋口に、高校の下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く。
チャイムは夕焼けの中、様々な部活動の音に紛れて消えていった。
現世ではライバル/鯉登・月島
陽が落ちるのが早くなってきた秋口に、高校の下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く。
チャイムは夕焼けの中、様々な部活動の音に紛れて消えていった。
「夢主~!」「夢主さん。」
教室では二人の男性の声が響いた。
遠くから聞こえる一際大きな声と、近くから聞こえる落ち着いたトーンの声。
2つの声に夢主と呼ばれた女子生徒は、ぱっと振り返って笑う。
「今日もタイミング一緒だね。鯉登くん、月島くん。」
くすくすと笑っている夢主の向こうで、「む。」と険しい顔で振り返った月島と、夢主により近いところにいる月島に対して「キェー!」と声をあげた鯉登がにらみ合った。
3人は同じクラスであったが、先日の席替えで夢主と大きく席が離れてしまった鯉登は、それ以来持ち前のよく通る声でいち早く夢主を呼ぶのだった。
対して席が少しだけ近づいた月島は、その特権を存分に使って夢主の傍に隙あらば近寄り話かけるのであった。
鯉登が月島にずいずいと近づきしばらく睨み合った2人は、夢主にはあまり聞こえないように小さな声で言い争う。
「たまには部下に譲ってくれませんかね?」
「何を言う。ここでは同い年だ。それを言うなら上官の言うことを聞け。」
「嫌です。部下の未来を潰す気ですか。」
そう、この二人には前世の記憶があり、明治時代の日本軍では鯉登が月島の上司として厳しい世界を共に戦いぬいた仲であった。
前世では鯉登は自由奔放であったことから、月島は苦労しがちであった。
そして案の定今世でも月島は鯉登の我儘に手を焼いている。
ちなみに、夢主は前世の記憶など持ち合わせていない普通の女子生徒だ。
ではなぜ、この普通の女子生徒が二人にこんなにも強烈に好かれているかというと……。
「2人とも、仲が良いんだねぇ。」
夢主の持ち前の柔らかいオーラが原因であった。
時は入学初日に遡る。
前世の記憶を持ちながら鯉登と月島は全く接点を持たずに育った。
入学式前に同じクラスに見覚えのある人間がいることに気が付き、彼らは再会を喜んだ。
そして授業の初回でよくある、一人ずつ自己紹介を行うタイミングで、二人は同時に一人の女子生徒に興味を持ってしまった。
それが夢主であって、優しそうな印象に主張しすぎない程度のメイク、清楚でありながらも可憐な年頃の少女らしい少女であった。
その柔らかい笑顔と優しい声にクラスの一部の男子が目をつけるのは当然のことであった。
夢主は話しやすく優しそうな雰囲気からすぐに女子生徒たちに囲まれ友達を作っていたので、二人がいきなりアタックをかけることはなかった。
しかし、男子生徒のグループ内で鯉登と月島は可愛いと思う子を挙げるという下世話な話に巻き込まれ、そこで二人同時に「夢主……。」と言ったところでバッと顔を見合わせて、そこから微妙にライバル関係が芽生えてしまったのだった。
クラスのほとんどの生徒は、二人が夢主を好いていることにすぐに気が付き、本気でないものはすぐに手を引いた。
本気であったものも、頑張って夢主と話す機会をうかがうが、二人の猛攻撃には敵わず敗退していったのだった。
他にもモテる女子はいたものの、早々に他校の彼氏がいたり上級生と付き合ってしまって、このクラスでは今鯉登・月島たちの恋愛しか話題として生きていなかった。
また、女子生徒の中には見た目が華やかな鯉登にアタックするものも出てきていたが、鯉登が一貫して夢主にしか興味を示さなかったことで白けてしまったようだった。
基本的にこのクラスは仲が良い。
夢主がどちらと付き合うのかといった派閥をあえて作って、定期的に秘密裏に討論大会を催すほどの密な付き合いが起きていた。
夢主はやや天然というか、鈍いところがあるらしく、二人の男子がここまで自分に絡むことについてなんとも思っていないようだった。
それどころか彼女は基本的に誰にでも分け隔てなく接するため、彼らにも平等に接しようとする。
皮肉なことにそれが返って彼らの闘争心を刺激してしまっているようだった。
夢主の友人たちもあまりの夢主の鈍さに呆れ、この件については静観を決め込んでいた。
そんなこんなで日課のように、二人がどっちが一緒に帰るかで夢主を露骨に取り合っている間、教室の後ろの扉から夢主は呼ばれて出て行ってしまった。
夢主はいつもなら他クラスの生徒と話したとしても、帰るときには必ず鯉登と月島のもとには戻ってきて挨拶をするか、そのまま二人と途中まで一緒に下校していた。
しかし、今日はいつもと違った。
鯉登と月島が珍しく教室から出て行った夢主が長らく戻ってこないことに気が付き荷物も教室に残ったままであることから、一時休戦して探しに行こうと廊下へ出ると、廊下には放課後とは思えないほどの人だかりができていた。
そのひとだかりの中心には隣のクラスの「杉元」という男子と、夢主がいた。
杉元は、顔に特徴的な傷があるがそれを感じさせないほど爽やかな好青年で、鯉登・月島とは違い明治時代の記憶はなかった。
鮮明に過去の様々なことを覚えている鯉登・月島が杉元を見つけて旧友のように以前話しかけたときは、「どちら様…?」と怪訝そうな顔をされてしまいそれ以来二人は杉元には話しかけなかったのだ。
そのことが災いして、鯉登と月島に感知されることなく、杉元は夢主に惚れてから毎日少しずつアプローチをかけていたのだった。
二人が人だかりの中心部に到達したときには、まさに真っ赤な顔をした杉元が夢主へ告白をした瞬間だった。
鯉登も月島も絶句し、あまりの光景にヒュッとどちらかの喉が鳴る音が響いた。
ギャラリーも静まり返るほど間があって、困惑しながらも頬を染めた夢主が嬉しそうに顔を綻ばせて小さくこくん、と頷いた瞬間、鯉登と月島は膝から崩れ落ちた。
そして対照的に杉元は飛び上がって喜び、夢主を抱きしめていた。
周囲もワーッ!と盛り上がっては歓声や拍手が鳴り響いた。
そんな中、二人の攻防を知っているクラスメイトたちは、優しく二人を抱え起こし、夢主抜きでクラス会という名の慰め会を急遽開きましたとさ。
おしまい。
【あとがき:この二人は何回生まれ変わっても仲良しでいてほしい。。】
【あとがき:この二人は何回生まれ変わっても仲良しでいてほしい。。】