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月島
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ギャルと軍曹/月島
カラッと晴れたある朝のこと。
おはようございまーすと爽やかな挨拶が響く校庭。
その中に不釣り合いなほどに厳しい声が響いた。
「コラー!そこの不良娘止まれ!」
不良娘、と呼ばれた少女はわざとらしく首を傾げた。
「んんー?誰のことー?」
「お前しかいないだろう、夢主、なんだその服装は。」
少女は明らかにほかの生徒とは違った服装をしていた。
短いスカートからすらりと伸びた長い足を見せつけ、胸元はシャツを大きくあけてセクシーに仕上げている。
学校指定の制服を着崩すだけでは飽き足らず、髪の毛も染めてパーマをかけて、派手なアクセサリーをいくつも付けていた。
長いネイルも施し、化粧もケバくなるほどではないが、盛りに盛って最大限に可愛く見えるように努力をし、肌はつやつやに仕上げた。
そして少女は呼び止められた男性のもとに駆け寄る。
「おっはよ☆月島軍曹!」
「誰が軍曹だ。お前は何度言ったらその服装をやめるんだ。」
「だってぇ、軍曹に指導されたいんだもん!」
「内申書に響くだろう。」
「ふふん、私が成績優秀なの知ってるでしょ、学力でカバーできちゃうんだよなぁ。」
「それでもルールは守らなきゃだめだろう。将来自分が困るんだぞ。」
「えー?将来なんか、先生が結婚してくれればそれでいいのに。」
軍曹、と呼ばれた男性の名は月島。
この高校の教員だ。
教科は英語。生活指導を担当し、柔道部の顧問もやっている。
余談だが、ここ、私立カムイ高校の校長は「鶴見」という名の男で、抜群のカリスマ性で生徒教員共に好かれ(恐れられ)ている。
そして会長は「土方歳三」という歴史上の人物と同姓同名の老いを感じさせない若々しい男だ。
この二人が2トップとなって高校を支配していた。
実は古くからこの2人と縁のあった月島は、何かと目立つ会長と校長の間を取り持ったり雑用をこなすのが役目であって、気苦労が絶えない。
そのため月島は常に仏頂面だが心労が顔に出ていた。
柔道部と生活指導の厳しさが有名で、ついたあだ名が「軍曹」だった。
しかしそれは陰口のように使われたあだ名で、夢主以外は本人に言うものは誰もいない。
話を戻すと、夢主と呼ばれた女子生徒は月島に好意を抱いているようで、わざと派手な格好をしてきては月島に怒られるのが日課のようだ。
一応少女も注意をされれば戻せる範囲で戻して大人しくなる。
そして、また、次の日には月島に忠告されに来るのだ。
入学当初の夢主は服装もきちんとしていて、むしろ清楚系な美人だった。
いつからあのような恰好をするようになってしまったのだろうか。
男子生徒や学校の近くを歩くサラリーマンなど、誰かしらの男性が常に夢主を目で追っているのを月島は知っている。
それにより、夢主という月島の悩みの種が増えてしまったのだった。
「はぁ……。」
「なんだ辛気臭いな。」
仕事終わりに職員室の自分の机でため息をつくと、隣にいた男が月島に文句を言う。
その男は尾形といって、物理の教師だ。
尾形は普段は物静かだが、嫌味ったらしい言葉をよく吐くので月島は苦手だった。
つかみどころがない雰囲気を纏い、神出鬼没にどこにでもいるという噂もある。
顔が良いと有名で、本人も自覚しているのか女子生徒にも次々と手を出しているらしく、いつか捕まれば良いと月島は諦めていた。
「まーた夢主かぁ?俺がツバつけてやろうか、少し大人しくなるだろ。」
尾形はツバ、といいながら中指を立てる。
あまりに下品な物言いに月島が怒る。
「なんてことを言うんですか。生徒をもっと大事に考えてください。」
「へーへー。なあ、夢主ってエロいよな。あいつ太ももとか胸も出してて、そんじょそこらの高校生よりずっと女の顔してるしよォ。ありゃモテるぞぉ。」
「やめてください。」
月島の肩を乱暴に抱きよせる尾形。
そしてニタニタと笑いながら小声で月島を煽る。
「一度抱いてみたいと思ってんだろ?『月島軍曹』さんよォ?」
バシッと乱暴に尾形を跳ねのけて、月島は荷物をまとめる。
「お帰りか?ああ、それとも夢主とアフターか?」
むかつく男だ。
月島は睨みつける。
「いい加減にしてください、俺はあの子の将来を思って悩んでいるんです。」
そう言い放つと尾形はへえ、と意外そうに片方の眉を上げた。
「不良のような恰好に憧れる年頃なのはわかります。でも、社会のルールを守る大切さを教えたいのです。実際、彼女は勉強はできるのに、ルールを破るだけで未来の選択肢が狭まってしまう。俺は、あの子が将来幸せな大人になれるように指導したいんです。」
「ははぁ。俺はてっきり、月島軍曹がギャルが好きだからあんな格好をしたと思ってたんだがなぁ。」
尾形がはて、と小さく首を傾げる。
月島は意味がわからず素っ頓狂な声を上げた。
尾形はオールバックに流した前髪を撫でつける。
「は?」
「いや、去年の今頃だったかな。月島がギャルのエロ本持ってたってそんとき遊んでた女が言ってたんだよなぁ。噂になってたらしいぞ、知らなかったのか?」
ふざけているのかと思ったが、尾形の表情は真面目だった。
記憶を思い返すも心当たりがない。
黙り込んだ月島に、尾形が「あ。」と思い付いた様子で言う。
「もしかして、生活指導で没収した本とかか?」
「!」
それだ!と目を見開く。
確かに、去年ごろから夢主は服装を崩し髪を染め始めた。
明らかに噂が回った頃だった。
なんてことだ、夢主の家庭環境や思春期の悩みなどではないかと試行錯誤していたのに、原因がまさか自分にあるなんて。
呆然とする月島に、尾形はニタリと笑った。
「じゃ、解決だな。」
「え、待ってください、誤解が解けてないので……。」
「俺にまかせとけって。」
そういうと尾形は立ち上がり、「お先~」と言い捨てて帰ってしまった。
意味が分からなかった月島だったが、次の日の朝も学校の門の前に立つ。
尾形は頼りがいがないので原因が自分にあるなら誤解を解かねばと悩みつつ、いつものように生活指導をする。
そして一人、朝一番の登校をしてきた生徒がきた。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう……はぁッ!?」
悩み事を考えながらだったのでぼんやりと挨拶をしながら目線をやり、その生徒の顔を見た瞬間に月島は飛び上がった。
「ちょっと、失礼じゃないですか、月島軍曹。」
なんと、そこにいたのは夢主だった。
制服をきちんと着て、メイクは薄化粧に見える程度、派手だった髪を黒く染めてストレートになっていた。
清楚な姿になった夢主はとても大人っぽく見えた。
夢主は少し恥ずかしそうにはにかむ。
「おまえ……どうしたんだ?」
「ちゃんとルール守ってきたのに、それはどうなんですか軍曹。」
動揺する月島に、夢主は不満そうにぷぅと頬を膨らませた。
「なんで急に……。」
「先生鈍すぎ、私は先生の好みに合わせてるだけなんですよ。」
むすっとしたまま夢主は答える。
しかしすぐに表情を変えた。
潤んだ瞳で月島を見つめ、呆然とした月島の手を握って上目遣いに言う。
「月島軍曹好き。結婚して。」
いや中身はギャルのままか、と月島は内心ツッコミをいれた。
「だめだ。」
「ええ……私こんなに頑張ってるのに。先生が本気で好きだからギャルになったり勉強頑張ったり、色んな人に告白されてもぜーんぶ断ってるのに。」
月島の手を握ったまま、しょぼんと表情を暗くする夢主。
言葉は軽かったが本気だったようで、目には涙まで浮かんでいる。
「結婚したいの。好きなの。」
ついにはぐすぐすとべそをかく夢主。
見ていられなくなった月島は黙って夢主の手を振り払ったが、振り払った手でそのまま頭にぽん、と手を乗せた。
夢主がきょとんとした表情で月島を見上げる。
月島は夢主から顔を逸らして呟く。
「あー……卒業したらな。」
「!」
夢主が一瞬で表情をパァッと明るくさせる。
対して月島はいつもの仏頂面だったが、耳まで真っ赤だった。
早朝の、まだ誰もいないはずの門の前でのやりとりだったはずだったが、その日のうちに月島と夢主が両想いだという噂が校内を巡った。
月島は頭を抱えたが、夢主の今までの行動を知っていた全教員全生徒は今更何を……と諦めた目で見ていたとさ。
めでたしめでたし。
おまけ
月島「なんで急に清楚に戻ったんだ?」
夢主「尾形先生からメッセージきてさ、無理してギャルやらなくていいって軍曹の本当の好み教えてくれた。見て、ブラウザの履歴もくれたよ。」
月島「は!?」
夢主「尾形先生、パソコンも機械もなんでも得意だからハッキングしたんじゃない?でね、履歴に私そっくりの清楚系女子がいたから清楚系に格好戻して押せばいけるって言ってた。」
月島「……頭痛がしてきた。」
夢主「尾形先生様様だね。」
おわり。
カラッと晴れたある朝のこと。
おはようございまーすと爽やかな挨拶が響く校庭。
その中に不釣り合いなほどに厳しい声が響いた。
「コラー!そこの不良娘止まれ!」
不良娘、と呼ばれた少女はわざとらしく首を傾げた。
「んんー?誰のことー?」
「お前しかいないだろう、夢主、なんだその服装は。」
少女は明らかにほかの生徒とは違った服装をしていた。
短いスカートからすらりと伸びた長い足を見せつけ、胸元はシャツを大きくあけてセクシーに仕上げている。
学校指定の制服を着崩すだけでは飽き足らず、髪の毛も染めてパーマをかけて、派手なアクセサリーをいくつも付けていた。
長いネイルも施し、化粧もケバくなるほどではないが、盛りに盛って最大限に可愛く見えるように努力をし、肌はつやつやに仕上げた。
そして少女は呼び止められた男性のもとに駆け寄る。
「おっはよ☆月島軍曹!」
「誰が軍曹だ。お前は何度言ったらその服装をやめるんだ。」
「だってぇ、軍曹に指導されたいんだもん!」
「内申書に響くだろう。」
「ふふん、私が成績優秀なの知ってるでしょ、学力でカバーできちゃうんだよなぁ。」
「それでもルールは守らなきゃだめだろう。将来自分が困るんだぞ。」
「えー?将来なんか、先生が結婚してくれればそれでいいのに。」
軍曹、と呼ばれた男性の名は月島。
この高校の教員だ。
教科は英語。生活指導を担当し、柔道部の顧問もやっている。
余談だが、ここ、私立カムイ高校の校長は「鶴見」という名の男で、抜群のカリスマ性で生徒教員共に好かれ(恐れられ)ている。
そして会長は「土方歳三」という歴史上の人物と同姓同名の老いを感じさせない若々しい男だ。
この二人が2トップとなって高校を支配していた。
実は古くからこの2人と縁のあった月島は、何かと目立つ会長と校長の間を取り持ったり雑用をこなすのが役目であって、気苦労が絶えない。
そのため月島は常に仏頂面だが心労が顔に出ていた。
柔道部と生活指導の厳しさが有名で、ついたあだ名が「軍曹」だった。
しかしそれは陰口のように使われたあだ名で、夢主以外は本人に言うものは誰もいない。
話を戻すと、夢主と呼ばれた女子生徒は月島に好意を抱いているようで、わざと派手な格好をしてきては月島に怒られるのが日課のようだ。
一応少女も注意をされれば戻せる範囲で戻して大人しくなる。
そして、また、次の日には月島に忠告されに来るのだ。
入学当初の夢主は服装もきちんとしていて、むしろ清楚系な美人だった。
いつからあのような恰好をするようになってしまったのだろうか。
男子生徒や学校の近くを歩くサラリーマンなど、誰かしらの男性が常に夢主を目で追っているのを月島は知っている。
それにより、夢主という月島の悩みの種が増えてしまったのだった。
「はぁ……。」
「なんだ辛気臭いな。」
仕事終わりに職員室の自分の机でため息をつくと、隣にいた男が月島に文句を言う。
その男は尾形といって、物理の教師だ。
尾形は普段は物静かだが、嫌味ったらしい言葉をよく吐くので月島は苦手だった。
つかみどころがない雰囲気を纏い、神出鬼没にどこにでもいるという噂もある。
顔が良いと有名で、本人も自覚しているのか女子生徒にも次々と手を出しているらしく、いつか捕まれば良いと月島は諦めていた。
「まーた夢主かぁ?俺がツバつけてやろうか、少し大人しくなるだろ。」
尾形はツバ、といいながら中指を立てる。
あまりに下品な物言いに月島が怒る。
「なんてことを言うんですか。生徒をもっと大事に考えてください。」
「へーへー。なあ、夢主ってエロいよな。あいつ太ももとか胸も出してて、そんじょそこらの高校生よりずっと女の顔してるしよォ。ありゃモテるぞぉ。」
「やめてください。」
月島の肩を乱暴に抱きよせる尾形。
そしてニタニタと笑いながら小声で月島を煽る。
「一度抱いてみたいと思ってんだろ?『月島軍曹』さんよォ?」
バシッと乱暴に尾形を跳ねのけて、月島は荷物をまとめる。
「お帰りか?ああ、それとも夢主とアフターか?」
むかつく男だ。
月島は睨みつける。
「いい加減にしてください、俺はあの子の将来を思って悩んでいるんです。」
そう言い放つと尾形はへえ、と意外そうに片方の眉を上げた。
「不良のような恰好に憧れる年頃なのはわかります。でも、社会のルールを守る大切さを教えたいのです。実際、彼女は勉強はできるのに、ルールを破るだけで未来の選択肢が狭まってしまう。俺は、あの子が将来幸せな大人になれるように指導したいんです。」
「ははぁ。俺はてっきり、月島軍曹がギャルが好きだからあんな格好をしたと思ってたんだがなぁ。」
尾形がはて、と小さく首を傾げる。
月島は意味がわからず素っ頓狂な声を上げた。
尾形はオールバックに流した前髪を撫でつける。
「は?」
「いや、去年の今頃だったかな。月島がギャルのエロ本持ってたってそんとき遊んでた女が言ってたんだよなぁ。噂になってたらしいぞ、知らなかったのか?」
ふざけているのかと思ったが、尾形の表情は真面目だった。
記憶を思い返すも心当たりがない。
黙り込んだ月島に、尾形が「あ。」と思い付いた様子で言う。
「もしかして、生活指導で没収した本とかか?」
「!」
それだ!と目を見開く。
確かに、去年ごろから夢主は服装を崩し髪を染め始めた。
明らかに噂が回った頃だった。
なんてことだ、夢主の家庭環境や思春期の悩みなどではないかと試行錯誤していたのに、原因がまさか自分にあるなんて。
呆然とする月島に、尾形はニタリと笑った。
「じゃ、解決だな。」
「え、待ってください、誤解が解けてないので……。」
「俺にまかせとけって。」
そういうと尾形は立ち上がり、「お先~」と言い捨てて帰ってしまった。
意味が分からなかった月島だったが、次の日の朝も学校の門の前に立つ。
尾形は頼りがいがないので原因が自分にあるなら誤解を解かねばと悩みつつ、いつものように生活指導をする。
そして一人、朝一番の登校をしてきた生徒がきた。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう……はぁッ!?」
悩み事を考えながらだったのでぼんやりと挨拶をしながら目線をやり、その生徒の顔を見た瞬間に月島は飛び上がった。
「ちょっと、失礼じゃないですか、月島軍曹。」
なんと、そこにいたのは夢主だった。
制服をきちんと着て、メイクは薄化粧に見える程度、派手だった髪を黒く染めてストレートになっていた。
清楚な姿になった夢主はとても大人っぽく見えた。
夢主は少し恥ずかしそうにはにかむ。
「おまえ……どうしたんだ?」
「ちゃんとルール守ってきたのに、それはどうなんですか軍曹。」
動揺する月島に、夢主は不満そうにぷぅと頬を膨らませた。
「なんで急に……。」
「先生鈍すぎ、私は先生の好みに合わせてるだけなんですよ。」
むすっとしたまま夢主は答える。
しかしすぐに表情を変えた。
潤んだ瞳で月島を見つめ、呆然とした月島の手を握って上目遣いに言う。
「月島軍曹好き。結婚して。」
いや中身はギャルのままか、と月島は内心ツッコミをいれた。
「だめだ。」
「ええ……私こんなに頑張ってるのに。先生が本気で好きだからギャルになったり勉強頑張ったり、色んな人に告白されてもぜーんぶ断ってるのに。」
月島の手を握ったまま、しょぼんと表情を暗くする夢主。
言葉は軽かったが本気だったようで、目には涙まで浮かんでいる。
「結婚したいの。好きなの。」
ついにはぐすぐすとべそをかく夢主。
見ていられなくなった月島は黙って夢主の手を振り払ったが、振り払った手でそのまま頭にぽん、と手を乗せた。
夢主がきょとんとした表情で月島を見上げる。
月島は夢主から顔を逸らして呟く。
「あー……卒業したらな。」
「!」
夢主が一瞬で表情をパァッと明るくさせる。
対して月島はいつもの仏頂面だったが、耳まで真っ赤だった。
早朝の、まだ誰もいないはずの門の前でのやりとりだったはずだったが、その日のうちに月島と夢主が両想いだという噂が校内を巡った。
月島は頭を抱えたが、夢主の今までの行動を知っていた全教員全生徒は今更何を……と諦めた目で見ていたとさ。
めでたしめでたし。
おまけ
月島「なんで急に清楚に戻ったんだ?」
夢主「尾形先生からメッセージきてさ、無理してギャルやらなくていいって軍曹の本当の好み教えてくれた。見て、ブラウザの履歴もくれたよ。」
月島「は!?」
夢主「尾形先生、パソコンも機械もなんでも得意だからハッキングしたんじゃない?でね、履歴に私そっくりの清楚系女子がいたから清楚系に格好戻して押せばいけるって言ってた。」
月島「……頭痛がしてきた。」
夢主「尾形先生様様だね。」
おわり。