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尾形
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ストーカー/尾形
突然だが、夢主は尾形のストーカーである。
といっても周囲公認(?)で、一方的に夢主が尾形に惚れて追い回しているだけである。
やや変態じみた行動をすることもあるが、度が過ぎるときは周囲の人間がドン引きしながらも夢主を止めてなんとか尾形の貞操は守られている状態であった。
「はぁ、尾形大好き。今日もかっこいい。」
大学の食堂で息を吐くように尾形を好きだとこぼす夢主。
視線の先には一人で黙々とご飯を食べる尾形の姿があった。
食べるのを邪魔されるのが嫌いな尾形のことを想って、夢主は尾形が食べ終わってから突撃することにしている。
うっとりとした表情で尾形にスマホのカメラを向け、シャッター音を消すこともなくパシャパシャパシャと連写する。
周囲はその光景に見慣れているのか、「またか…」と言ったリアクションで生暖かく見守っている。
元々人付き合いが得意ではない上に夢主による粘着があるため、尾形の周りには不自然なほど空席があった。
食べ終わった尾形を確認すると、夢主はすかさず隣に滑り込む。
「尾形~、食べ終わった?ねえねえ、午後の授業終わったらさぁ、遊びに行かない?」
尾形にぐいぐいとアピールする夢主。
尾形は死んだ表情で目線を夢主には合わせない。
そして夢主を手で制止しながら短く答えた。
「今日バイト。」
夢主はその言葉を聞いて目を丸くした。
自分のスマホのスケジュール帳に記した尾形の予定表には今日は休みとなっている。
「え!?嘘、だってシフトになかったよ。」
当然のように夢主は尾形のシフトを把握しているが、もうこのことにツッコミを入れる気力も尾形にはなかった。
「……。急遽入った。」
尾形は面倒臭そうに答える。
すると夢主はしゅん、としてしまった。
「そっか……残念。」
「……。」
チラ、と尾形が夢主に視線をやる。
いつもはうんざりするほど元気で厚かましい夢主が元気がないと、なぜだか途端に心配になるのだ。
「じゃ、バイト見に行くねぇ♡」
すぐに切り替えてストーカー行動を宣言する夢主。
尾形はうんざりした表情を浮かべた。
元気なら元気で面倒くさいのだ。
「来るな。迷惑だから。」
「大丈夫、ちゃんとお客さんとして行くよぉ。そのあとは外で待ってるだけだからぁ♡」
尾形がどんなに辛辣な言葉を吐こうとも、夢主は持ち前のポジティブさで尾形への粘着をやめなかった。
自分の寮の近くにあるコンビニのバイトに行った尾形は、いつも通り黙々と働いた。
いつもと違ったのは、なかなか夢主が現れなかったことだった。
いつもならば尾形がバイトに入って間もなくから店内をうろつき、客がいなければウキウキした表情で話しかけてくるのだ。
尾形は夢主の粘着にうんざりしていたが、店長や他のバイトたちにも認知された夢主は持ち前の明るさであっという間に周囲と打ち解けた。
その結果彼らは夢主の行動をとがめることはなく、むしろバイト先では夢主は尾形の彼女という扱いだった。
それなのに今日は全然姿を現さない。
放課後の遊びに誘うくらいだから授業の終わりは自分と同じかそれより早いくらいのはずだ。
尾形は気になって仕方がなかった。
バイト中もつい店の外をチラチラと見てしまった。
尾形は夢主と背格好の似ている女性客が来るたび、バッと顔を向けてしまい気味悪がられた。
大学の寮に近いこともあって、客には顔見知りが多い。
彼らは皆夢主の存在がないことに驚き、尾形に話しかけてきた。
「あれ、今日夢主ちゃんいないの?」
「珍しいね、いつもお店ウロウロしてるのに。」
口々にそんな風に言われると、尾形の不安が大きくなった。
数時間のシフトが終わるころには相当険しい顔をしていたらしく、店長に早く帰るようにと言われてしまった。
退勤して着替えているとスマホが鳴った。
夢主からの電話だった。
いつもは出てすぐ切ったり留守電に切り替えたりするのだが、夢主のことが気になっていたため思わず今日はとっさに電話に出てしまった。
「夢主!」
「あ、尾形さんですか?夢主様の友人の家永です。」
電話口に出た女性は、夢主の友人だった。
なぜ夢主の電話を使っているのか、と疑問が沸いたが、冷静を装い「なんの用だ」と返す。
家永の口からは驚きの言葉が出てきた。
「夢主さんが事故に遭われて今〇〇病院にいます。」
そう聞いた瞬間、尾形は即座に電話を切ってコンビニから飛び出した。
病院の場所を目指して走る。
頭がいっぱいになって何も考えられなかった。
あれだけ毎日顔を合わせていたのに、いきなり自分の前からいなくなる可能性を少しでも考えたら、気が狂ってしまいそうだった。
必死に走り続けて病院にたどり着くと、受付の前の長椅子に夢主がいた。
尾形を見つけた夢主はきょとんとした表情を浮かべた。
「あれ?尾形だぁ!どうしたのそんなに焦って。」
「あら、早かったですわね。」
夢主の隣には家永もいた。
元気そうな夢主を見た瞬間、尾形は膝から崩れ落ちた。
「はぁっ、おま、……っなんで、事故って……ぜぇ、どうしたんだ。」
ぜいぜいと肩で息をしつつ尾形は夢主に問いかける。
夢主は照れたように笑う。
「いやぁ、尾形のバイト先行こうと思って大学出たらさぁ、ちょっと車とぶつかっちゃってぇ。スピード出てない車だったから、私は尻もちついたくらいでケガはほとんどないんだけど、いろいろ事故処理してたら時間かかっちゃったぁ。ぶっちゃけ元気だけど保険使えるみたいだから通院しようかなって思ってぇ。」
「……は?」
尾形が呆然としながら話を聞き、家永に視線をやると家永は意味深な笑みを浮かべて見せた。
「夢主様がしきりに尾形さんのことを気にされていたので、診察の間に夢主様の電話を借りて尾形さんに連絡したんですよ。急に電話が切れてそのあとは繋がらないから何事かと思いましたわ。」
わざとらしい言葉にいつもならブチ切れるところだったが、尾形は怒りよりも安堵が大きすぎて何も言葉が出なかった。
夢主は床に膝をついて呆然としている尾形に近づくと、目の前でしゃがんだ。
その足取りや表情から夢主が本当に無事だと理解できて、尾形は心から安堵した。
「わざわざ来てくれたんだね、ありがとう。大丈夫?」
「……た。」
夢主は尾形の言葉が聞き取れなったのか、「え?」と耳を傾けて顔を近づけた。
「?」
「負けた。付き合う。付き合ってくれ。」
そういって尾形は夢主を抱き寄せた。
しゃがんでいた夢主は不安定な姿勢からそのまま胸に倒れ込む。
後ろで見ていた家永が「まぁ」と声を上げていたが構わなかった。
「これからも好きに付きまとえ。俺の目の届くところにいろ。」
夢主は珍しく言葉が出ないようで、顔を耳まで真っ赤にしながら小さく「うん」と答えた。
おわり。
【あとがき:尾形のストーカー(純愛)】
突然だが、夢主は尾形のストーカーである。
といっても周囲公認(?)で、一方的に夢主が尾形に惚れて追い回しているだけである。
やや変態じみた行動をすることもあるが、度が過ぎるときは周囲の人間がドン引きしながらも夢主を止めてなんとか尾形の貞操は守られている状態であった。
「はぁ、尾形大好き。今日もかっこいい。」
大学の食堂で息を吐くように尾形を好きだとこぼす夢主。
視線の先には一人で黙々とご飯を食べる尾形の姿があった。
食べるのを邪魔されるのが嫌いな尾形のことを想って、夢主は尾形が食べ終わってから突撃することにしている。
うっとりとした表情で尾形にスマホのカメラを向け、シャッター音を消すこともなくパシャパシャパシャと連写する。
周囲はその光景に見慣れているのか、「またか…」と言ったリアクションで生暖かく見守っている。
元々人付き合いが得意ではない上に夢主による粘着があるため、尾形の周りには不自然なほど空席があった。
食べ終わった尾形を確認すると、夢主はすかさず隣に滑り込む。
「尾形~、食べ終わった?ねえねえ、午後の授業終わったらさぁ、遊びに行かない?」
尾形にぐいぐいとアピールする夢主。
尾形は死んだ表情で目線を夢主には合わせない。
そして夢主を手で制止しながら短く答えた。
「今日バイト。」
夢主はその言葉を聞いて目を丸くした。
自分のスマホのスケジュール帳に記した尾形の予定表には今日は休みとなっている。
「え!?嘘、だってシフトになかったよ。」
当然のように夢主は尾形のシフトを把握しているが、もうこのことにツッコミを入れる気力も尾形にはなかった。
「……。急遽入った。」
尾形は面倒臭そうに答える。
すると夢主はしゅん、としてしまった。
「そっか……残念。」
「……。」
チラ、と尾形が夢主に視線をやる。
いつもはうんざりするほど元気で厚かましい夢主が元気がないと、なぜだか途端に心配になるのだ。
「じゃ、バイト見に行くねぇ♡」
すぐに切り替えてストーカー行動を宣言する夢主。
尾形はうんざりした表情を浮かべた。
元気なら元気で面倒くさいのだ。
「来るな。迷惑だから。」
「大丈夫、ちゃんとお客さんとして行くよぉ。そのあとは外で待ってるだけだからぁ♡」
尾形がどんなに辛辣な言葉を吐こうとも、夢主は持ち前のポジティブさで尾形への粘着をやめなかった。
自分の寮の近くにあるコンビニのバイトに行った尾形は、いつも通り黙々と働いた。
いつもと違ったのは、なかなか夢主が現れなかったことだった。
いつもならば尾形がバイトに入って間もなくから店内をうろつき、客がいなければウキウキした表情で話しかけてくるのだ。
尾形は夢主の粘着にうんざりしていたが、店長や他のバイトたちにも認知された夢主は持ち前の明るさであっという間に周囲と打ち解けた。
その結果彼らは夢主の行動をとがめることはなく、むしろバイト先では夢主は尾形の彼女という扱いだった。
それなのに今日は全然姿を現さない。
放課後の遊びに誘うくらいだから授業の終わりは自分と同じかそれより早いくらいのはずだ。
尾形は気になって仕方がなかった。
バイト中もつい店の外をチラチラと見てしまった。
尾形は夢主と背格好の似ている女性客が来るたび、バッと顔を向けてしまい気味悪がられた。
大学の寮に近いこともあって、客には顔見知りが多い。
彼らは皆夢主の存在がないことに驚き、尾形に話しかけてきた。
「あれ、今日夢主ちゃんいないの?」
「珍しいね、いつもお店ウロウロしてるのに。」
口々にそんな風に言われると、尾形の不安が大きくなった。
数時間のシフトが終わるころには相当険しい顔をしていたらしく、店長に早く帰るようにと言われてしまった。
退勤して着替えているとスマホが鳴った。
夢主からの電話だった。
いつもは出てすぐ切ったり留守電に切り替えたりするのだが、夢主のことが気になっていたため思わず今日はとっさに電話に出てしまった。
「夢主!」
「あ、尾形さんですか?夢主様の友人の家永です。」
電話口に出た女性は、夢主の友人だった。
なぜ夢主の電話を使っているのか、と疑問が沸いたが、冷静を装い「なんの用だ」と返す。
家永の口からは驚きの言葉が出てきた。
「夢主さんが事故に遭われて今〇〇病院にいます。」
そう聞いた瞬間、尾形は即座に電話を切ってコンビニから飛び出した。
病院の場所を目指して走る。
頭がいっぱいになって何も考えられなかった。
あれだけ毎日顔を合わせていたのに、いきなり自分の前からいなくなる可能性を少しでも考えたら、気が狂ってしまいそうだった。
必死に走り続けて病院にたどり着くと、受付の前の長椅子に夢主がいた。
尾形を見つけた夢主はきょとんとした表情を浮かべた。
「あれ?尾形だぁ!どうしたのそんなに焦って。」
「あら、早かったですわね。」
夢主の隣には家永もいた。
元気そうな夢主を見た瞬間、尾形は膝から崩れ落ちた。
「はぁっ、おま、……っなんで、事故って……ぜぇ、どうしたんだ。」
ぜいぜいと肩で息をしつつ尾形は夢主に問いかける。
夢主は照れたように笑う。
「いやぁ、尾形のバイト先行こうと思って大学出たらさぁ、ちょっと車とぶつかっちゃってぇ。スピード出てない車だったから、私は尻もちついたくらいでケガはほとんどないんだけど、いろいろ事故処理してたら時間かかっちゃったぁ。ぶっちゃけ元気だけど保険使えるみたいだから通院しようかなって思ってぇ。」
「……は?」
尾形が呆然としながら話を聞き、家永に視線をやると家永は意味深な笑みを浮かべて見せた。
「夢主様がしきりに尾形さんのことを気にされていたので、診察の間に夢主様の電話を借りて尾形さんに連絡したんですよ。急に電話が切れてそのあとは繋がらないから何事かと思いましたわ。」
わざとらしい言葉にいつもならブチ切れるところだったが、尾形は怒りよりも安堵が大きすぎて何も言葉が出なかった。
夢主は床に膝をついて呆然としている尾形に近づくと、目の前でしゃがんだ。
その足取りや表情から夢主が本当に無事だと理解できて、尾形は心から安堵した。
「わざわざ来てくれたんだね、ありがとう。大丈夫?」
「……た。」
夢主は尾形の言葉が聞き取れなったのか、「え?」と耳を傾けて顔を近づけた。
「?」
「負けた。付き合う。付き合ってくれ。」
そういって尾形は夢主を抱き寄せた。
しゃがんでいた夢主は不安定な姿勢からそのまま胸に倒れ込む。
後ろで見ていた家永が「まぁ」と声を上げていたが構わなかった。
「これからも好きに付きまとえ。俺の目の届くところにいろ。」
夢主は珍しく言葉が出ないようで、顔を耳まで真っ赤にしながら小さく「うん」と答えた。
おわり。
【あとがき:尾形のストーカー(純愛)】