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尾形
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ふぉぜ尾/尾形
「ふぉぜ」とは、とある作品の人気キャラクターを動物モチーフにしたぬいぐるみであった。
猫、犬、熊など多数の動物とキャラクターが掛け合わされている。
ある日全国各地で、このふぉぜたちに命が宿るという珍事が起きた。
はじめは混乱に混乱を招いたものの、基本的には犬猫など既存のペットと変わらない扱いで良いこと、むしろ犬猫よりもかなり言葉が通じるため意志疎通や躾がしやすいこと、他にも人間に都合の良いことばかりが見つかり、共存できると分かった途端に騒動は落ち着いた。
ぬいぐるみから生命が宿るには条件があるようで、すべてのふぉぜに命が宿ったわけではない。
人間たちはこの可愛らしいキャラクターが自分のペットになると期待してふぉぜを買い漁っていた。
命が宿ったふぉぜたちは人間によってSNS上に拡散され、今ではアイドル市場のような人気のカテゴリの一つとなっている。
夢主の家にも、このシリーズのぬいぐるみがあった。
「ふぉぜ尾」と呼ばれる小さい猫モチーフのぬいぐるみを、夢主はいつも大切にしていた。
人によっては洋服を作ってあげたり小物を持たせたりとアレンジをする者もいる。
夢主はこのふぉぜ尾に手を加えることこそしなかったが、とてもとても大切に取り扱っていた。
ある時、ついに夢主のふぉぜ尾に命が宿った。
気がつくとベッドの上でもぞもぞとふぉぜ尾が動いていた。
まるで目の開かない子猫のようである。
「ふぉ、ふぉぜ尾が……!動いてる!」
ふぉぜ尾は夢主に「ミッ!」と元気よく鳴いた。
言葉こそ話せないようだが、挨拶しているとすぐにわかった。
嬉しさのあまり、夢主はふぉぜ尾に頬ずりをした。
「本当に可愛い!ずっと大切にするからね、うちで幸せになろうね!」
ぎゅうっと抱きしめてやると、ふぉぜ尾は嬉しそうに笑っていた。
夢主が喜びからルンルンと歌ったり踊ったりしていると、夢主の部屋のベランダに面している窓がガタガタと揺れた。
驚いて視線をやると、窓の下の方には夢主のふぉぜ尾にそっくりなふぉぜがいた。
一瞬自分のふぉぜ尾が脱走したのかと焦った夢主だったが、夢主のふぉぜ尾は足元で不思議そうに窓の向こうの自分とそっくりな子を見つめている。
おっかなびっくりと近づいていき、フンフンと窓越しに匂いを嗅いでいる姿がまた愛おしい。
一瞬ぼんやりとしてしまったが、ゆっくりと窓を開けて、ベランダにいたふぉぜ尾を拾い上げた。
夢主のふぉぜ尾よりも、心なしか険しい表情をしている。
「どこから来たんだろう。」
ベランダに出て辺りを見渡すが、ふぉぜは野生には存在しない。
誰かに投げ込まれたりしたのだろうか。
夢主のふぉぜ尾も心配そうにその子を見つめていた。
夢主がどうしようかと考え込んでいると、ベランダ越しに隣の部屋から声が聞こえてきた。
「どこ行った?」「ふぉぜ?」「おーい。」とすべて同じ男性の声だった。
夢主はすかさずベランダから声をかけた。
「あの!こちらに来てましたよ!」
しかし、隣の部屋の窓は閉まっているようで、声が届かない。
夢主は一度部屋に戻った。
自分のふぉぜ尾は肩に乗せ、両手で包み込むように隣のふぉぜ尾を乗せて玄関から外へ出る。
隣の部屋の扉には「尾形」とあった。
インターホンを鳴らすと、バタバタと足音の後にやや苛立ったような声で「はい?」と男性の声がした。
探し物をしているときのタイミングの悪さに苛立っているのだろうか。
夢主は必死にインターホンのモニターに両手を掲げ、手のひらの上のふぉぜ尾が見えるようにした。
「隣の者です!この子、うちのベランダに来てました!」
その言葉を聞いたと同時ぐらいにバンッと玄関の扉が勢い良く開いた。
驚いて一歩後ずさった夢主だったが、隣から出てきた尾形という男は夢主の手のひらのふぉぜ尾を見ると、はぁぁぁ~とため息をついてしゃがみ込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか……?」
「ミ?」
夢主と同じセリフを言っているように、肩のふぉぜ尾が繰り返した。
尾形は心なしかふぉぜ尾と同じような髪型、同じような傷のある男性だった。
コスプレかとも思ったが、妙に自然なその姿に夢主は飼い主とペットが似てくるという話を思い出していた。
尾形は夢主からふぉぜ尾と受け取ると、夢主に向き直り礼を言う。
「ありがとうございます。さっき洗濯物を取り込んだ後、コイツがいないのに気が付いて……洗濯物と一緒に畳んじまったかと思って家中の戸棚をひっくり返してました。」
「ぶみぅ」
尾形の手に戻ったふぉぜ尾は、不満そうに鳴いた。
その言葉を聞いて尾形が驚いた様子で言った。
「あ?ベランダに出てたら締め出された?お前が悪いじゃねえか。」
「ミ゛!?うにゃうがうがう!」
二人が喧嘩を始めたので慌てて夢主はなだめに入った。
夢主の肩にいるふぉぜ尾も怖がって小さく鳴いた。
「ま、まあまあ、落ち着いて。見つかってよかったですね。」
「ぴぃ」
尾形は夢主の肩にいるふぉぜ尾と夢主の顔を交互に見て、ふいに笑った。
「そっちも、良いコンビみたいだな。」
「ありがとうございます。さっき、動けるようになったばかりなんです。」
「ミ♪」
夢主は尾形の急な笑顔に面食らってしまったが、慌ててお礼を言う。
肩ではふぉぜ尾が得意げに胸を張っている。
それを聞いた尾形は驚いたような表情を浮かべた。
そしてポケットからおもむろにスマホを取り出すと、こちらに番号を見せながら提案する。
「それはおめでたいですね。そうだ、良かったら今度、一緒にふぉぜ尾談義しませんか?もちろん、お互いのふぉぜたちも一緒に。」
「本当ですか!ぜひお願いします!」
その場はそこでお開きになった。
このあと、お互いのふぉぜ尾たちを通じ仲良くなった二人は結婚して一緒に住むことになるのだが、それはまた別のお話。
おしまい。
【あとがき:ふぉぜ尾がゲシュタルト崩壊しました……。】
「ふぉぜ」とは、とある作品の人気キャラクターを動物モチーフにしたぬいぐるみであった。
猫、犬、熊など多数の動物とキャラクターが掛け合わされている。
ある日全国各地で、このふぉぜたちに命が宿るという珍事が起きた。
はじめは混乱に混乱を招いたものの、基本的には犬猫など既存のペットと変わらない扱いで良いこと、むしろ犬猫よりもかなり言葉が通じるため意志疎通や躾がしやすいこと、他にも人間に都合の良いことばかりが見つかり、共存できると分かった途端に騒動は落ち着いた。
ぬいぐるみから生命が宿るには条件があるようで、すべてのふぉぜに命が宿ったわけではない。
人間たちはこの可愛らしいキャラクターが自分のペットになると期待してふぉぜを買い漁っていた。
命が宿ったふぉぜたちは人間によってSNS上に拡散され、今ではアイドル市場のような人気のカテゴリの一つとなっている。
夢主の家にも、このシリーズのぬいぐるみがあった。
「ふぉぜ尾」と呼ばれる小さい猫モチーフのぬいぐるみを、夢主はいつも大切にしていた。
人によっては洋服を作ってあげたり小物を持たせたりとアレンジをする者もいる。
夢主はこのふぉぜ尾に手を加えることこそしなかったが、とてもとても大切に取り扱っていた。
ある時、ついに夢主のふぉぜ尾に命が宿った。
気がつくとベッドの上でもぞもぞとふぉぜ尾が動いていた。
まるで目の開かない子猫のようである。
「ふぉ、ふぉぜ尾が……!動いてる!」
ふぉぜ尾は夢主に「ミッ!」と元気よく鳴いた。
言葉こそ話せないようだが、挨拶しているとすぐにわかった。
嬉しさのあまり、夢主はふぉぜ尾に頬ずりをした。
「本当に可愛い!ずっと大切にするからね、うちで幸せになろうね!」
ぎゅうっと抱きしめてやると、ふぉぜ尾は嬉しそうに笑っていた。
夢主が喜びからルンルンと歌ったり踊ったりしていると、夢主の部屋のベランダに面している窓がガタガタと揺れた。
驚いて視線をやると、窓の下の方には夢主のふぉぜ尾にそっくりなふぉぜがいた。
一瞬自分のふぉぜ尾が脱走したのかと焦った夢主だったが、夢主のふぉぜ尾は足元で不思議そうに窓の向こうの自分とそっくりな子を見つめている。
おっかなびっくりと近づいていき、フンフンと窓越しに匂いを嗅いでいる姿がまた愛おしい。
一瞬ぼんやりとしてしまったが、ゆっくりと窓を開けて、ベランダにいたふぉぜ尾を拾い上げた。
夢主のふぉぜ尾よりも、心なしか険しい表情をしている。
「どこから来たんだろう。」
ベランダに出て辺りを見渡すが、ふぉぜは野生には存在しない。
誰かに投げ込まれたりしたのだろうか。
夢主のふぉぜ尾も心配そうにその子を見つめていた。
夢主がどうしようかと考え込んでいると、ベランダ越しに隣の部屋から声が聞こえてきた。
「どこ行った?」「ふぉぜ?」「おーい。」とすべて同じ男性の声だった。
夢主はすかさずベランダから声をかけた。
「あの!こちらに来てましたよ!」
しかし、隣の部屋の窓は閉まっているようで、声が届かない。
夢主は一度部屋に戻った。
自分のふぉぜ尾は肩に乗せ、両手で包み込むように隣のふぉぜ尾を乗せて玄関から外へ出る。
隣の部屋の扉には「尾形」とあった。
インターホンを鳴らすと、バタバタと足音の後にやや苛立ったような声で「はい?」と男性の声がした。
探し物をしているときのタイミングの悪さに苛立っているのだろうか。
夢主は必死にインターホンのモニターに両手を掲げ、手のひらの上のふぉぜ尾が見えるようにした。
「隣の者です!この子、うちのベランダに来てました!」
その言葉を聞いたと同時ぐらいにバンッと玄関の扉が勢い良く開いた。
驚いて一歩後ずさった夢主だったが、隣から出てきた尾形という男は夢主の手のひらのふぉぜ尾を見ると、はぁぁぁ~とため息をついてしゃがみ込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか……?」
「ミ?」
夢主と同じセリフを言っているように、肩のふぉぜ尾が繰り返した。
尾形は心なしかふぉぜ尾と同じような髪型、同じような傷のある男性だった。
コスプレかとも思ったが、妙に自然なその姿に夢主は飼い主とペットが似てくるという話を思い出していた。
尾形は夢主からふぉぜ尾と受け取ると、夢主に向き直り礼を言う。
「ありがとうございます。さっき洗濯物を取り込んだ後、コイツがいないのに気が付いて……洗濯物と一緒に畳んじまったかと思って家中の戸棚をひっくり返してました。」
「ぶみぅ」
尾形の手に戻ったふぉぜ尾は、不満そうに鳴いた。
その言葉を聞いて尾形が驚いた様子で言った。
「あ?ベランダに出てたら締め出された?お前が悪いじゃねえか。」
「ミ゛!?うにゃうがうがう!」
二人が喧嘩を始めたので慌てて夢主はなだめに入った。
夢主の肩にいるふぉぜ尾も怖がって小さく鳴いた。
「ま、まあまあ、落ち着いて。見つかってよかったですね。」
「ぴぃ」
尾形は夢主の肩にいるふぉぜ尾と夢主の顔を交互に見て、ふいに笑った。
「そっちも、良いコンビみたいだな。」
「ありがとうございます。さっき、動けるようになったばかりなんです。」
「ミ♪」
夢主は尾形の急な笑顔に面食らってしまったが、慌ててお礼を言う。
肩ではふぉぜ尾が得意げに胸を張っている。
それを聞いた尾形は驚いたような表情を浮かべた。
そしてポケットからおもむろにスマホを取り出すと、こちらに番号を見せながら提案する。
「それはおめでたいですね。そうだ、良かったら今度、一緒にふぉぜ尾談義しませんか?もちろん、お互いのふぉぜたちも一緒に。」
「本当ですか!ぜひお願いします!」
その場はそこでお開きになった。
このあと、お互いのふぉぜ尾たちを通じ仲良くなった二人は結婚して一緒に住むことになるのだが、それはまた別のお話。
おしまい。
【あとがき:ふぉぜ尾がゲシュタルト崩壊しました……。】