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尾形
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napori/尾形
夢の中でだけ会える人がいる。
そんな風に言ったら頭のおかしい人だと思われるだろう。
でも、小さいころから、そうなの。
そこはどこまで行っても緑と夜空が広がる場所で、音も何もない場所だった。
でも、暖かくて幸福感に満ち溢れた空間。
毎日ってわけではないけど、ここに来れるときは眠りについてすぐ感じる。
ふわっとした浮遊感のあと、この場所に来たことを確信するのだ。
「こんばんは。今日も会えましたね。」
「よお。」
夢の中で気が付くとその人が先にいた。
その男の人は緑の中で寝転がっていたが、私に気付くと体を起こした。
私たちは小さい頃にこの場所で出会っている。
でも、お互いの名前や住んでいる場所を教えていない。
なんとなく、知ってしまったらもう二度とここには来れないような気がして。
身体を起こしたその人の横に座る。
特に何をするわけでもなく、二人で夜空を見上げて過ごし、ゆったりとした時間が流れていく。
思い出したかのようにぽつりぽつりと近況を話していたが、沈黙の方が多い。
そんな中、時折視線が合う。
現実で男の人と見つめ合ってしまったらとてつもなく恥ずかしいのだろうが、不思議なことになぜかここでは、この人とは見つめ合える。
見つめ合うだけではない、隣に座った私たちは指を絡め合う。
小さい頃から、こうやってきた。
互いの存在を確かめるように。
こうやっているとお互いに、なんだか少しほっとするのだ。
指だけで、気持ちが通う。私たちは指先のほうが口よりもおしゃべりなようだ。
決して恋仲というわけではない。
だって告白もしていないし、普段は本当に何気ない会話しかしていないから。
時間を忘れて過ごしていると、次第に暖かい光に包まれて現実に引き戻される。
こうやって過ごした次の日は、とてつもない幸福感となんだか少し寂しい気持ちに包まれる。
もういい歳をした大人なのに、小さい頃の幸せでもう戻らない切ない思い出に浸るようなことを私はやめられない。
そもそもやめ方も分からないのだけれど。
その日は、少し様子が違った。
彼はどこか不安げで悩ましい表情をしていた。
ところで、この場所の不思議なところなのだが、現実にあるものを想像すると私自身が詳細なイメージができるようなものは取り出せるようになっている。
例えば最近読んだ本、美味しかったお菓子、お気に入りのワンピースとか。
味や匂いまで再現できるのだから、つくづく不思議な場所だ。
どちらかといえば私の方が物を見せることが多い。
しかし、今日は彼が珍しく珈琲の入ったカップを1つだけ持っていた。
ふうん、何かあったのね。
そう思いながらも彼が話し始めるまでは私は黙って横にいることにした。
見たこともないような数々の星が浮かぶ夜空を見上げ、いつものように過ごす。
時々彼の飲む珈琲の香りが鼻をくすぐる。
つられて私も何か飲みたくなって、今日は私の大好きなハイボールを想像する。
ふわっと現れたキンキンに冷えたグラスを手に取ると、横目で見ていた彼が眉をひそめた。
あえて、フフンと笑いながらハイボールを1口。
夢の中なのに、いや、夢の中だからだろうか、私の好みの美味しいハイボールの味。
不思議な場所で、名前も知らない大好きな人と心から安心して過ごす時間、そして美味しいお酒。
幸せで、嬉しくなって、思わず笑みがこぼれた。
それを見ていた彼が地面に珈琲を置いて、悩まし気な様子で目頭を押さえた。
あれ?だめだったかな、と思っていると小さくため息をついた彼が前髪を撫で上げた。
その癖は、よく彼が何かを話し出したり動き出すときにする癖だった。
だから私もハイボールのグラスを置いて、彼の動きを待った。
いつものように、彼はじっと私を見つめる。
だけど、いつもと違って、いつも以上に真剣な表情に思わずドキッとしてしまった。
そして視線を絡めて、指を絡めて、いつものような戯れが始まる。
子供の頃から繰り返しやってきたこの会話に、違う意味が含まれたことに私は気付いた。
思わず彼を見つめると、彼は少し不安そうに微笑んだ。
私はたまらなくなって、指を絡めたまま、そっと彼に口づけをした。
「好きだよ。」
そう私が呟くと、彼は何も答えずにキスをした。
おわり。
【あとがき:Vau〇dyさんのエモ曲を文章にしてみました。ご存知でしょうか?】
夢の中でだけ会える人がいる。
そんな風に言ったら頭のおかしい人だと思われるだろう。
でも、小さいころから、そうなの。
そこはどこまで行っても緑と夜空が広がる場所で、音も何もない場所だった。
でも、暖かくて幸福感に満ち溢れた空間。
毎日ってわけではないけど、ここに来れるときは眠りについてすぐ感じる。
ふわっとした浮遊感のあと、この場所に来たことを確信するのだ。
「こんばんは。今日も会えましたね。」
「よお。」
夢の中で気が付くとその人が先にいた。
その男の人は緑の中で寝転がっていたが、私に気付くと体を起こした。
私たちは小さい頃にこの場所で出会っている。
でも、お互いの名前や住んでいる場所を教えていない。
なんとなく、知ってしまったらもう二度とここには来れないような気がして。
身体を起こしたその人の横に座る。
特に何をするわけでもなく、二人で夜空を見上げて過ごし、ゆったりとした時間が流れていく。
思い出したかのようにぽつりぽつりと近況を話していたが、沈黙の方が多い。
そんな中、時折視線が合う。
現実で男の人と見つめ合ってしまったらとてつもなく恥ずかしいのだろうが、不思議なことになぜかここでは、この人とは見つめ合える。
見つめ合うだけではない、隣に座った私たちは指を絡め合う。
小さい頃から、こうやってきた。
互いの存在を確かめるように。
こうやっているとお互いに、なんだか少しほっとするのだ。
指だけで、気持ちが通う。私たちは指先のほうが口よりもおしゃべりなようだ。
決して恋仲というわけではない。
だって告白もしていないし、普段は本当に何気ない会話しかしていないから。
時間を忘れて過ごしていると、次第に暖かい光に包まれて現実に引き戻される。
こうやって過ごした次の日は、とてつもない幸福感となんだか少し寂しい気持ちに包まれる。
もういい歳をした大人なのに、小さい頃の幸せでもう戻らない切ない思い出に浸るようなことを私はやめられない。
そもそもやめ方も分からないのだけれど。
その日は、少し様子が違った。
彼はどこか不安げで悩ましい表情をしていた。
ところで、この場所の不思議なところなのだが、現実にあるものを想像すると私自身が詳細なイメージができるようなものは取り出せるようになっている。
例えば最近読んだ本、美味しかったお菓子、お気に入りのワンピースとか。
味や匂いまで再現できるのだから、つくづく不思議な場所だ。
どちらかといえば私の方が物を見せることが多い。
しかし、今日は彼が珍しく珈琲の入ったカップを1つだけ持っていた。
ふうん、何かあったのね。
そう思いながらも彼が話し始めるまでは私は黙って横にいることにした。
見たこともないような数々の星が浮かぶ夜空を見上げ、いつものように過ごす。
時々彼の飲む珈琲の香りが鼻をくすぐる。
つられて私も何か飲みたくなって、今日は私の大好きなハイボールを想像する。
ふわっと現れたキンキンに冷えたグラスを手に取ると、横目で見ていた彼が眉をひそめた。
あえて、フフンと笑いながらハイボールを1口。
夢の中なのに、いや、夢の中だからだろうか、私の好みの美味しいハイボールの味。
不思議な場所で、名前も知らない大好きな人と心から安心して過ごす時間、そして美味しいお酒。
幸せで、嬉しくなって、思わず笑みがこぼれた。
それを見ていた彼が地面に珈琲を置いて、悩まし気な様子で目頭を押さえた。
あれ?だめだったかな、と思っていると小さくため息をついた彼が前髪を撫で上げた。
その癖は、よく彼が何かを話し出したり動き出すときにする癖だった。
だから私もハイボールのグラスを置いて、彼の動きを待った。
いつものように、彼はじっと私を見つめる。
だけど、いつもと違って、いつも以上に真剣な表情に思わずドキッとしてしまった。
そして視線を絡めて、指を絡めて、いつものような戯れが始まる。
子供の頃から繰り返しやってきたこの会話に、違う意味が含まれたことに私は気付いた。
思わず彼を見つめると、彼は少し不安そうに微笑んだ。
私はたまらなくなって、指を絡めたまま、そっと彼に口づけをした。
「好きだよ。」
そう私が呟くと、彼は何も答えずにキスをした。
おわり。
【あとがき:Vau〇dyさんのエモ曲を文章にしてみました。ご存知でしょうか?】