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杉元
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宅配便と赤面ちゃん/杉元
ピンポーン
家のチャイムが鳴る。
一人暮らしをしている私は、もちろんある程度は自分の足で買い物に出かけるのだが、大型の物や遠方まで行かなければ手に入らないものはもっぱら通販を利用している。
夏の暑さも相まって、薬局で買えるようなものですらネット通販を利用してしまっている。
私の部屋が三階であることもあって、ちょっとした階段の上り下りさえも億劫に感じるほどの最近の暑さは厳しい。
今日は休日。まったりと過ごしつつ、荷物が届く予定なのでそれを楽しみにしていた。
荷物も楽しみだがそれよりも私が楽しみにしているのは、ここ最近でうちの地区を担当になったであろう宅配業者の担当者が……
「こんにちはーカムイ運輸でーす。」
うー!イケメン!
大手宅配業者のカムイ運輸の制服から覗く逞しい腕。
黒髪を帽子で押さえつけていて、顔にはなんだか複数の大きな傷があるお兄さん。
でも傷が気にならないくらいに笑顔が爽やかだ。
この猛暑の中でも体力仕事をしている彼は、筋肉質でカッコいい。
汗をかいていてもどこか爽やかで不快な印象はない。
私は健康的でハツラツとしたこの担当さんがお気に入りだった。
私はこの担当のお兄さんを見たいがために、通販を利用している……ま、まぁ?ポイントとかもたまりますし?
担当のお兄さんの名前は杉元さん。
この前仕事が長引いて受け取れなくて不在通知をもらったときに、担当欄に「杉元」とサインがあったので苗字をゲットした。
いや、違うのよ!?本当に残業でわざと不在だったわけではないの!
ストーカーみたいに個人情報を無理矢理かき集めたわけではなくて、その、不可抗力ってやつ。
申し訳なく思いながら再配達をお願いしたときも、杉元さんは嫌な顔一つせずにむしろ「残業お疲れさまです!」なんて声をかけてくれた。
ドキドキしているけれど、杉元さんにバレないようにしなくては。
接点はこの宅配だけだし、きっとこんなにカッコイイなら家族や恋人がいるだろう。
私にとってはちょっと生活に潤いを与えてくれる「推し」みたいなもので、これ以上詮索するつもりはない。
緊張しがちで赤面しやすい私は引っ込み思案なタイプなので、遠くから見つめるくらいがちょうどイイ。
私は受け取りサインをしながら、不自然にならないように杉元さんの顔を見る。
うぉーイケメンだぁ。
「ぁ、ありがとうございます。」
「こちらこそ!」
元気よく返事をくれることが嬉しい。
にやけそうになるのをぐっとこらえた。
きっと仕事に追われているのだろう、杉元さんが「では!」と立ち去ろうとするのを、私は「あっ
、あの!」と勇気を出して呼び止めた。
心臓がドクンドクンと鳴り響くのを感じる。
不思議そうに杉元さんが振り返る。
私は慌ててバタバタとキッチンへ向かい、冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを持ってきて、ずいっと杉元さんの目の前に差し出した。
「えっ」
「あ、っ暑い中、いつもありがとうございます!」
少し声が裏返ってしまったが彼に精一杯の感謝の言葉を述べ、、半ば押し付けるようにペットボトルを押し付けた。
杉元さんは驚いた様子でこちらを見る。
「いいんですか?」
私はもう勇気を出し切ってしまっていて、多分茹で蛸のように赤くなっているであろう顔をどうすることもできずに、ただコクコクと頷くことしかできなかった。
「ありがとうございます!夢主さんも熱中症には気を付けてね!」
そう言って杉元さんは帰っていった。
私はしばらくぽーっと玄関の扉を見つめて立ち尽くす。
頭の中で彼の声が響く。
夢主……さん……夢主さん!?
名前!いや苗字じゃなくて名前!!
キャーッ!っと奇声を発しながら荷物を放り投げた私は部屋の中に戻って、バフッと勢い良くベッドに倒れこむ。
布団に顔を押し付けてもだえた。
息継ぎをするために顔を上げるとベッドの脇にある窓から外の通りが視界に入り、カムイ運輸のトラックを見つける。
杉元さんは次の配送先への準備なのだろうか、荷台の荷物を整理していた。
小脇には、大切そうに私の渡したペットボトルを持っている。
三階の部屋だし見ていてもばれないだろう、と思って観察していた。
しかし、つい目が離せなくなって引き続き窓から様子を窺っていると、ひと段落ついたのか杉元さんがふと背中を伸ばしこちらを見上げた。
あっ、と思ったときにはすでに目が合ってしまっていた。
やばい、見てるのバレてしまった。
ど、どうしよう、とワタワタと暴れる私。
しかし、杉元さんはこちらに気付くとニカッと眩しいほどに笑顔を向けて、更に私があげたスポーツドリンクのペットボトルをひらひらと振って見せた。
そしてお礼を言うようにペコリと帽子を外してお辞儀をしてくれた。
ジェスチャーだけでも十分に伝わった。
私は相変わらず挙動不審になりながら、謝罪をするようにぺこぺこと頭を下げた。
杉元さんはそんな私に笑いながら手を振ると、トラックに乗り込んでいった。
ああああやってしまった。
なんで勇気出しちゃったんだろう!?
好意があるのがバレバレではないか。
推しとは適切な距離が必要なのに。
嬉しさと恥ずかしさと後悔とでぐちゃぐちゃになる。
問題なのは、杉元さんに会いたいがために結構なペースで買い物をしてしまっていて、これからも顔を合わせるだろうということだ。
これからどうしよう、きまずい。
それに、もしかしたら変な女に好かれたって気持ち悪がられて担当変更とかになっちゃうかもしれない。
しかし予想に反してそれからも杉元さんは以前と変わらぬ様子で私のもとへ荷物を届けてくれた。
それどころか、ほんの数分の間でも世間話とかちょっとした愚痴なんかも零してくれるような間柄になった。
彼の意外な一面も見ることができて本当に嬉しかった。
相変わらず好きだという気持ちが先行してしまって、たまに挙動不審になることのある私だったが、それでも彼は気にせず笑ってくれた。
呼び方もいつの間にか「夢主ちゃん」となっていて、私も自然と「杉元さん」と呼べるようになっていた。
短い間にもいろんなことを話した。
基本的には杉元さんがいろんな話題を振って私に質問をしてくれる。
私は家族とは離れて暮らしていることや恋人がいないこと、仕事の繁忙期とか閑散期とか、最近近所にできた可愛らしいカフェが気になっていることなどを答えた。
何気ない会話でも宅配以外の繋がりができたみたいで嬉しかった。
ある金曜日の夜、仕事が終わって帰宅して片付けをしながらまったりと過ごしていると、チャイムが鳴った。
あら?今日は特に荷物が届く予定はないんだけど……と思って玄関に出ると、なんと杉元さんがいた。
いつもと違って、杉元さんは私服だった。
カジュアルでシンプルだけど彼の体格で着こなすとカッコよく見える。
仕事終わりに着替えたのだろうか。
「あれっ杉元さん?」
「ご、ごめんね急に来て。その……夢主ちゃんがあそこのカフェが気になるって言っていたから。」
杉元さんが気まずそうにもじもじしている。
もしかして、先日話したカフェに一緒に行こうってこと!?
「え、いいんですか?」
「俺も実は気になってたんだよね、あそこのカフェ。俺一人じゃ入りづらいし、一緒に行かない?」
照れながら誘ってくれた杉元さんが可愛くて、嬉しくて、私は飛び上がりそうになるのを必死でこらえる。
「行きます!」
即答して、ササッと身支度を整えて飛び出す。
杉元さんは部屋に上がっていいと言ったのに、律儀に玄関の前で待っていてくれた。
二人で目的のカフェに向かう。
新しくできたということもあって、少し待ったけれど店には何とか入れた。
夜はお洒落なバーとしてアルコールも提供しているらしい。
テーブルごとにちょっとしたインテリアで区切りがされていて、半個室みたいな状態だった。
小物も可愛らしいものがあって、落ち着いた雰囲気に私は大満足だった。
杉元さんは可愛らしいクマちゃんの顔になっているパンケーキとコーヒー、私はシフォンケーキと紅茶を注文した。
どちらもフルーツやチョコレートソースなどでお洒落に盛り付けられていて、二人で写真を撮りまくった。
そして写真を見せ合いながら、お互いの写真を交換するために自然な流れで連絡先の交換をした。
何なら二人でお互いのスイーツを交換してシェアもした。
普段は配達の合間にちょこちょことお話する程度であったが、今回はゆっくりとお互いについて話すことができた。
最初は仕事のことだったり友人関係の話をしていたのだが、気付けばかなりプライベートな話題になっていた。
杉元さんも恋人がいないこと、スポーツドリンクをもらう前からずっと私が気になっていたこと。
今回、カフェが気になっていたことは本当だけど、実はずっと私に告白がしたかったらしい。
「俺、女の人をどうやって口説いたらいいのか分からないんだ。」
そう言ってコーヒーを一口飲んではため息を吐く杉元さん。
ちょっと待って、目の前にいるのにそんなのずるいよ。
「……わ、私だって、口説き方なんてわからないです。」
顔が熱くなってくるのを感じる。きっと今私は真っ赤に顔を赤らめていることだろう。
杉元さんはそんな私を見て、フッと笑った。
「可愛いよ夢主ちゃん。」
「へぇっ!?」
急に真面目なトーンでそういわれて私は驚きのあまりビクッと肩を揺らす。
危ない、紅茶を零すところだった。
「ほら。そうやってすぐ赤くなるの超可愛いよ。だからさ、あの日飲み物くれたのってきっとすごい勇気を出してくれたんだと思って嬉しかったんだよね。」
杉元さんが私の顔をみていたずらっ子のように笑う。
今までの営業スマイルよりも少し癖のあるその笑顔にも、私は惹かれてしまった。
「……杉元さんが素敵すぎるのがいけないんです。」
ずるい、そんな気持ちでポツリとこぼすと、今度は杉元さんが赤面した。
杉元さんはテーブル上に置いていた私の手を取ると、真っ直ぐにこちらを見つめた。
私の視線は杉元さんの手元からその向こうの杉元さんに強制的に移される。
「俺と付き合ってくれる?夢主ちゃんのこと一生幸せにするよ。」
その声はいつになく真剣で、どこか緊張している様子もうかがえた。
真っ直ぐに目を向けられたことで目が逸らせなくなってしまって、一瞬固まった私だったが、急激にカァァッと顔が熱くなる。
何も言い返せず、ただ首をコクコクと頷いた。
すると杉元さんは真剣な顔から一変、パアッと効果音が鳴りそうなほど顔を明るくして「やった!」と叫ぶ。
私はただただ嬉しさと恥ずかしさで頭がいっぱいで、そのあとどうやって家に帰ったのかあんまり覚えていない。
それからいつも通りの日常が戻ってきた。
変わったことといえば、うちの宅配の担当者が変わったこと。
あと、杉元さんが私の家に転がり込んだことだった。
一緒に生活しているからいつかは見慣れるだろうと思ったけれど、相変わらず杉元さんの笑顔はまぶしい。
意外と表情が豊かな杉元さんは変顔をすることがあった。
それでも私が彼の顔に慣れることは一向になくて、赤面するたびに杉元さんにからかわれている。
杉元さんに対して、顔が良すぎることを自覚してほしい!なんて逆切れをすることもあった。
あの日、なんで普段引っ込み思案な私が勇気が出せたのかはいまだにわからないが、彼に受け止めてもらえて本当に良かった。
これからも少しずつ勇気を出して、彼と一緒に人生を歩めたらなと思う。
おわり。
【あとがき:美形ってなんか見ちゃいますよね。】
ピンポーン
家のチャイムが鳴る。
一人暮らしをしている私は、もちろんある程度は自分の足で買い物に出かけるのだが、大型の物や遠方まで行かなければ手に入らないものはもっぱら通販を利用している。
夏の暑さも相まって、薬局で買えるようなものですらネット通販を利用してしまっている。
私の部屋が三階であることもあって、ちょっとした階段の上り下りさえも億劫に感じるほどの最近の暑さは厳しい。
今日は休日。まったりと過ごしつつ、荷物が届く予定なのでそれを楽しみにしていた。
荷物も楽しみだがそれよりも私が楽しみにしているのは、ここ最近でうちの地区を担当になったであろう宅配業者の担当者が……
「こんにちはーカムイ運輸でーす。」
うー!イケメン!
大手宅配業者のカムイ運輸の制服から覗く逞しい腕。
黒髪を帽子で押さえつけていて、顔にはなんだか複数の大きな傷があるお兄さん。
でも傷が気にならないくらいに笑顔が爽やかだ。
この猛暑の中でも体力仕事をしている彼は、筋肉質でカッコいい。
汗をかいていてもどこか爽やかで不快な印象はない。
私は健康的でハツラツとしたこの担当さんがお気に入りだった。
私はこの担当のお兄さんを見たいがために、通販を利用している……ま、まぁ?ポイントとかもたまりますし?
担当のお兄さんの名前は杉元さん。
この前仕事が長引いて受け取れなくて不在通知をもらったときに、担当欄に「杉元」とサインがあったので苗字をゲットした。
いや、違うのよ!?本当に残業でわざと不在だったわけではないの!
ストーカーみたいに個人情報を無理矢理かき集めたわけではなくて、その、不可抗力ってやつ。
申し訳なく思いながら再配達をお願いしたときも、杉元さんは嫌な顔一つせずにむしろ「残業お疲れさまです!」なんて声をかけてくれた。
ドキドキしているけれど、杉元さんにバレないようにしなくては。
接点はこの宅配だけだし、きっとこんなにカッコイイなら家族や恋人がいるだろう。
私にとってはちょっと生活に潤いを与えてくれる「推し」みたいなもので、これ以上詮索するつもりはない。
緊張しがちで赤面しやすい私は引っ込み思案なタイプなので、遠くから見つめるくらいがちょうどイイ。
私は受け取りサインをしながら、不自然にならないように杉元さんの顔を見る。
うぉーイケメンだぁ。
「ぁ、ありがとうございます。」
「こちらこそ!」
元気よく返事をくれることが嬉しい。
にやけそうになるのをぐっとこらえた。
きっと仕事に追われているのだろう、杉元さんが「では!」と立ち去ろうとするのを、私は「あっ
、あの!」と勇気を出して呼び止めた。
心臓がドクンドクンと鳴り響くのを感じる。
不思議そうに杉元さんが振り返る。
私は慌ててバタバタとキッチンへ向かい、冷蔵庫から冷えたスポーツドリンクを持ってきて、ずいっと杉元さんの目の前に差し出した。
「えっ」
「あ、っ暑い中、いつもありがとうございます!」
少し声が裏返ってしまったが彼に精一杯の感謝の言葉を述べ、、半ば押し付けるようにペットボトルを押し付けた。
杉元さんは驚いた様子でこちらを見る。
「いいんですか?」
私はもう勇気を出し切ってしまっていて、多分茹で蛸のように赤くなっているであろう顔をどうすることもできずに、ただコクコクと頷くことしかできなかった。
「ありがとうございます!夢主さんも熱中症には気を付けてね!」
そう言って杉元さんは帰っていった。
私はしばらくぽーっと玄関の扉を見つめて立ち尽くす。
頭の中で彼の声が響く。
夢主……さん……夢主さん!?
名前!いや苗字じゃなくて名前!!
キャーッ!っと奇声を発しながら荷物を放り投げた私は部屋の中に戻って、バフッと勢い良くベッドに倒れこむ。
布団に顔を押し付けてもだえた。
息継ぎをするために顔を上げるとベッドの脇にある窓から外の通りが視界に入り、カムイ運輸のトラックを見つける。
杉元さんは次の配送先への準備なのだろうか、荷台の荷物を整理していた。
小脇には、大切そうに私の渡したペットボトルを持っている。
三階の部屋だし見ていてもばれないだろう、と思って観察していた。
しかし、つい目が離せなくなって引き続き窓から様子を窺っていると、ひと段落ついたのか杉元さんがふと背中を伸ばしこちらを見上げた。
あっ、と思ったときにはすでに目が合ってしまっていた。
やばい、見てるのバレてしまった。
ど、どうしよう、とワタワタと暴れる私。
しかし、杉元さんはこちらに気付くとニカッと眩しいほどに笑顔を向けて、更に私があげたスポーツドリンクのペットボトルをひらひらと振って見せた。
そしてお礼を言うようにペコリと帽子を外してお辞儀をしてくれた。
ジェスチャーだけでも十分に伝わった。
私は相変わらず挙動不審になりながら、謝罪をするようにぺこぺこと頭を下げた。
杉元さんはそんな私に笑いながら手を振ると、トラックに乗り込んでいった。
ああああやってしまった。
なんで勇気出しちゃったんだろう!?
好意があるのがバレバレではないか。
推しとは適切な距離が必要なのに。
嬉しさと恥ずかしさと後悔とでぐちゃぐちゃになる。
問題なのは、杉元さんに会いたいがために結構なペースで買い物をしてしまっていて、これからも顔を合わせるだろうということだ。
これからどうしよう、きまずい。
それに、もしかしたら変な女に好かれたって気持ち悪がられて担当変更とかになっちゃうかもしれない。
しかし予想に反してそれからも杉元さんは以前と変わらぬ様子で私のもとへ荷物を届けてくれた。
それどころか、ほんの数分の間でも世間話とかちょっとした愚痴なんかも零してくれるような間柄になった。
彼の意外な一面も見ることができて本当に嬉しかった。
相変わらず好きだという気持ちが先行してしまって、たまに挙動不審になることのある私だったが、それでも彼は気にせず笑ってくれた。
呼び方もいつの間にか「夢主ちゃん」となっていて、私も自然と「杉元さん」と呼べるようになっていた。
短い間にもいろんなことを話した。
基本的には杉元さんがいろんな話題を振って私に質問をしてくれる。
私は家族とは離れて暮らしていることや恋人がいないこと、仕事の繁忙期とか閑散期とか、最近近所にできた可愛らしいカフェが気になっていることなどを答えた。
何気ない会話でも宅配以外の繋がりができたみたいで嬉しかった。
ある金曜日の夜、仕事が終わって帰宅して片付けをしながらまったりと過ごしていると、チャイムが鳴った。
あら?今日は特に荷物が届く予定はないんだけど……と思って玄関に出ると、なんと杉元さんがいた。
いつもと違って、杉元さんは私服だった。
カジュアルでシンプルだけど彼の体格で着こなすとカッコよく見える。
仕事終わりに着替えたのだろうか。
「あれっ杉元さん?」
「ご、ごめんね急に来て。その……夢主ちゃんがあそこのカフェが気になるって言っていたから。」
杉元さんが気まずそうにもじもじしている。
もしかして、先日話したカフェに一緒に行こうってこと!?
「え、いいんですか?」
「俺も実は気になってたんだよね、あそこのカフェ。俺一人じゃ入りづらいし、一緒に行かない?」
照れながら誘ってくれた杉元さんが可愛くて、嬉しくて、私は飛び上がりそうになるのを必死でこらえる。
「行きます!」
即答して、ササッと身支度を整えて飛び出す。
杉元さんは部屋に上がっていいと言ったのに、律儀に玄関の前で待っていてくれた。
二人で目的のカフェに向かう。
新しくできたということもあって、少し待ったけれど店には何とか入れた。
夜はお洒落なバーとしてアルコールも提供しているらしい。
テーブルごとにちょっとしたインテリアで区切りがされていて、半個室みたいな状態だった。
小物も可愛らしいものがあって、落ち着いた雰囲気に私は大満足だった。
杉元さんは可愛らしいクマちゃんの顔になっているパンケーキとコーヒー、私はシフォンケーキと紅茶を注文した。
どちらもフルーツやチョコレートソースなどでお洒落に盛り付けられていて、二人で写真を撮りまくった。
そして写真を見せ合いながら、お互いの写真を交換するために自然な流れで連絡先の交換をした。
何なら二人でお互いのスイーツを交換してシェアもした。
普段は配達の合間にちょこちょことお話する程度であったが、今回はゆっくりとお互いについて話すことができた。
最初は仕事のことだったり友人関係の話をしていたのだが、気付けばかなりプライベートな話題になっていた。
杉元さんも恋人がいないこと、スポーツドリンクをもらう前からずっと私が気になっていたこと。
今回、カフェが気になっていたことは本当だけど、実はずっと私に告白がしたかったらしい。
「俺、女の人をどうやって口説いたらいいのか分からないんだ。」
そう言ってコーヒーを一口飲んではため息を吐く杉元さん。
ちょっと待って、目の前にいるのにそんなのずるいよ。
「……わ、私だって、口説き方なんてわからないです。」
顔が熱くなってくるのを感じる。きっと今私は真っ赤に顔を赤らめていることだろう。
杉元さんはそんな私を見て、フッと笑った。
「可愛いよ夢主ちゃん。」
「へぇっ!?」
急に真面目なトーンでそういわれて私は驚きのあまりビクッと肩を揺らす。
危ない、紅茶を零すところだった。
「ほら。そうやってすぐ赤くなるの超可愛いよ。だからさ、あの日飲み物くれたのってきっとすごい勇気を出してくれたんだと思って嬉しかったんだよね。」
杉元さんが私の顔をみていたずらっ子のように笑う。
今までの営業スマイルよりも少し癖のあるその笑顔にも、私は惹かれてしまった。
「……杉元さんが素敵すぎるのがいけないんです。」
ずるい、そんな気持ちでポツリとこぼすと、今度は杉元さんが赤面した。
杉元さんはテーブル上に置いていた私の手を取ると、真っ直ぐにこちらを見つめた。
私の視線は杉元さんの手元からその向こうの杉元さんに強制的に移される。
「俺と付き合ってくれる?夢主ちゃんのこと一生幸せにするよ。」
その声はいつになく真剣で、どこか緊張している様子もうかがえた。
真っ直ぐに目を向けられたことで目が逸らせなくなってしまって、一瞬固まった私だったが、急激にカァァッと顔が熱くなる。
何も言い返せず、ただ首をコクコクと頷いた。
すると杉元さんは真剣な顔から一変、パアッと効果音が鳴りそうなほど顔を明るくして「やった!」と叫ぶ。
私はただただ嬉しさと恥ずかしさで頭がいっぱいで、そのあとどうやって家に帰ったのかあんまり覚えていない。
それからいつも通りの日常が戻ってきた。
変わったことといえば、うちの宅配の担当者が変わったこと。
あと、杉元さんが私の家に転がり込んだことだった。
一緒に生活しているからいつかは見慣れるだろうと思ったけれど、相変わらず杉元さんの笑顔はまぶしい。
意外と表情が豊かな杉元さんは変顔をすることがあった。
それでも私が彼の顔に慣れることは一向になくて、赤面するたびに杉元さんにからかわれている。
杉元さんに対して、顔が良すぎることを自覚してほしい!なんて逆切れをすることもあった。
あの日、なんで普段引っ込み思案な私が勇気が出せたのかはいまだにわからないが、彼に受け止めてもらえて本当に良かった。
これからも少しずつ勇気を出して、彼と一緒に人生を歩めたらなと思う。
おわり。
【あとがき:美形ってなんか見ちゃいますよね。】