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上等兵シリーズ
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上等兵ズ/尾形・宇佐美
「……っプハー」
建物の影で一人の女性が煙草の煙を深く吸い込み吐き出す。
女性は身なりこそ清楚で美しいが、地面に足を開いてかがんでおり、いわゆるヤンキー座りで煙草を喫んでいた。
ため息交じりに白く濁った煙の息を吐きだした彼女はしばらくその感覚に酔う。
「はー……やってらんねーなぁ。」
一人呟いた彼女は、実はこの建物の中で働く女性社員だった。
ポケット灰皿に煙草の灰をトントンと落としていると、建物の1Fの窓がガラりと開いた。
そこは男子トイレがある位置で、ちょうど夢主がいる真上に当たる場所だった。
「まーたさぼりですかな、夢主主任。」
一人の男性が、窓に頬杖をついて夢主を見下ろす。
夢主はそちらを見ずに、煙草を銜えたまま冷めた口調で答えた。
「うるへー、仕事のこと考えてンだから仕事中ですわよ、尾形主任。」
尾形主任、と呼ばれた男はツーブロックにしたトップの髪をオールバックにしていて、その頭を撫でつけて笑った。
「ハッ、そりゃあ大層な仕事っぷりですな。」
尾形の嫌味に夢主はケッと笑い飛ばす。
かなり態度の悪い彼女であるが、驚くことにこの会社の中ではマドンナ的な存在で通っている。
仕事ができて優秀で愛想も良く人当たりの良い彼女は男女ともに人気であった。
しかし、それを良いことにやりたい放題やる人間がいることも事実であり、度々トラブルに巻き込まれている彼女はこうして頻繁に荒んでいるのだった。
一応人前では猫を被っている彼女はこの尾形主任と、もう一人同期の宇佐美主任とは大学からの付き合いであることも相まって素を見せていた。
「なーんで喫煙室あるのにそっち行かないわけ?」
尾形の横から宇佐美が顔を出し、明るい口調で話しかける。
夢主は髪をかき上げると恨みを込めた眼差しで宇佐美を睨む。
「最近喫煙所であの門倉ってオッサンに絡まれるんです~。宇佐美主任が何か口添えしてくださったんでしょうねぇ?」
「え?何あの人本気で夢主狙いに行ってンの?ウケる~~。」
宇佐美は窓から身を乗り出してケタケタと笑っている。
心底愉快そうに笑う宇佐美に、夢主はチッと舌打ちをした。
煙草の火を携帯灰皿でもみ消すと、夢主はのび~と背筋を伸ばして立ち上がった。
そしておもむろに2人に人差し指を向けて指さした。
「二人共。今日の夜、いつものとこね。」
そう言われて一瞬目を丸くした尾形と宇佐美だったが、すぐにニタァと厭らしい笑みを浮かべた。
「へーそんなに参ってるんだ。」
「仕方ねぇなァ。」
二人は頼られたことが嬉しかったようで、これでもかと夢主を煽ったが、夢主はフンと鼻を鳴らしてオフィスへ戻って行った。
その夜、「いつものとこ」と夢主が指定した店に3人は集まった。
そこは大学時代から通っている馴染みの居酒屋で、3人は口々に会社の愚痴や同僚の話などをしていた。
「はー、夢主も大変だねぇ。仕事だけじゃなくって変態に追われるなんてさ。」
ほろ酔いの宇佐美が上機嫌で夢主に酒を注ぎながら、やや憐れみを含ませて言う。
「一発ぶん殴ったらいい。」
尾形は無表情で酒をあおるが、その頬や喉など肌が見える範囲がほんのりと赤く染まっていてそれなりに酔いが回っている状態が窺える。
宇佐美が尾形の肩をドン、と叩いて笑った。
「いいねー!百之助のくせに良いこと言うじゃん!」
夢主はそんな2人を無視するかのように注がれた酒をグビッと音を立てて飲む。
ゴン、と机にグラスを置いて、いよいよ目が据わった状態の彼女は二人に自分の分の会計を投げつけて言い放つ。
「尾形ァ宇佐美ィ……もうちょい付き合って。」
ベロベロに酔う夢主を見るのは久しくて、尾形と宇佐美は思わず顔を見合わせた。
滅多に夢主が泥酔することはなく、むしろ最後まで酔わないことの方が多かった。
こりゃあ相当キテるわ、と二人で無言のうちに意思疎通をしていた。
そうして店を出た3人は、夢主が強引に入っていったゲームセンターに行った。
夢主が銃で戦うシューティングゲームをやりたいと言えば、尾形と対戦してボコボコにされた夢主。
「うがぁ、なんで!」
「フン。」
得意げにふんぞり返る尾形に、観戦していた宇佐美がツッコミを入れる。
「フン!じゃないよ、夢主に勝たせてやれよォ、も~しょうがないやつだな。」
次に夢主がパンチングマシーンをやりたいと言えば、宇佐美と対戦して圧倒的なまでにスコアに差がついて敗北した夢主。
「うー勝てない!」
「ヘヘン、まだまだだね。」
同じく得意げな様子を見せる宇佐美に、尾形が冷めた表情でつぶやいた。
「お前も同じじゃねえか。」
「……ぐす、勝てないぃぃ。」
「「!!!」」
大人気なくゲームに手を抜けなかった男たちは、ただでさえ泥酔した状態であったことも相まって半べそ状態の夢主のご機嫌を取ろうと、慌ててクレーンゲームでほしいものいくらでも取る!と提案した。
夢主がぐずりながら子供のようにあれがほしいこれがほしいと言いつけたことで、尾形と宇佐美は慣れないクレーンゲームに悪戦苦闘することになった。
夢主はゲームセンターの角にあったベンチに一人腰掛けて、買ってもらったミネラルウォーターを飲んでいた。
そして一つ、二つとほしいものが手に入るたびにニコニコと笑顔を取り戻していった。
しかし途中で二人がゲームに夢中になっている間に、ひとりで眠りこけてしまった夢主。
気が付けば両脇には知らない男たちがいた。
「……?」
「あ、起きた?」「おはよー。」と口々に声をかけた男たち。
両脇以外にも夢主を囲むように数人が立ちふさがっている。
夢主がきょとん、としている間に男たちはナンパらしき内容のことを次々と口にする。
ああ、なるほど、と夢主が理解した頃には手をとられて肩を抱かれている。
不快な対応に酔いもさめていい加減ブチギレそうになっていると、大きな景品を手にした尾形と宇佐美が突如現れ、夢主を囲っていた数人を間髪入れずに蹴り飛ばす。
2人は恐ろしい形相を浮かべたままであったが、おもむろに景品を夢主に手渡すと、そのまま振り返り様に流れるような動作で周囲にいる男たちの胸倉をつかんで投げ飛ばし始めた。
そんな様子を見慣れているのか、あらあら~とのほほんとした様子で見つめる夢主。
あまりの恐怖に地面にひれ伏したナンパ男の一人が夢主に聞いた。
「なにあれ、彼氏……?」
うーん、と夢主が首を傾げていると、あらかた周囲の男たちをぶちのめした二人が最後の一人に手をかけて言った。
「「こいつは俺(僕)のだから。」」
おしまい。
【あとがき:上等兵ズ好き。またこの子たちのお話の続き書きたいなぁと思ってたら続いたので、シリーズ扱いにしました。】
「……っプハー」
建物の影で一人の女性が煙草の煙を深く吸い込み吐き出す。
女性は身なりこそ清楚で美しいが、地面に足を開いてかがんでおり、いわゆるヤンキー座りで煙草を喫んでいた。
ため息交じりに白く濁った煙の息を吐きだした彼女はしばらくその感覚に酔う。
「はー……やってらんねーなぁ。」
一人呟いた彼女は、実はこの建物の中で働く女性社員だった。
ポケット灰皿に煙草の灰をトントンと落としていると、建物の1Fの窓がガラりと開いた。
そこは男子トイレがある位置で、ちょうど夢主がいる真上に当たる場所だった。
「まーたさぼりですかな、夢主主任。」
一人の男性が、窓に頬杖をついて夢主を見下ろす。
夢主はそちらを見ずに、煙草を銜えたまま冷めた口調で答えた。
「うるへー、仕事のこと考えてンだから仕事中ですわよ、尾形主任。」
尾形主任、と呼ばれた男はツーブロックにしたトップの髪をオールバックにしていて、その頭を撫でつけて笑った。
「ハッ、そりゃあ大層な仕事っぷりですな。」
尾形の嫌味に夢主はケッと笑い飛ばす。
かなり態度の悪い彼女であるが、驚くことにこの会社の中ではマドンナ的な存在で通っている。
仕事ができて優秀で愛想も良く人当たりの良い彼女は男女ともに人気であった。
しかし、それを良いことにやりたい放題やる人間がいることも事実であり、度々トラブルに巻き込まれている彼女はこうして頻繁に荒んでいるのだった。
一応人前では猫を被っている彼女はこの尾形主任と、もう一人同期の宇佐美主任とは大学からの付き合いであることも相まって素を見せていた。
「なーんで喫煙室あるのにそっち行かないわけ?」
尾形の横から宇佐美が顔を出し、明るい口調で話しかける。
夢主は髪をかき上げると恨みを込めた眼差しで宇佐美を睨む。
「最近喫煙所であの門倉ってオッサンに絡まれるんです~。宇佐美主任が何か口添えしてくださったんでしょうねぇ?」
「え?何あの人本気で夢主狙いに行ってンの?ウケる~~。」
宇佐美は窓から身を乗り出してケタケタと笑っている。
心底愉快そうに笑う宇佐美に、夢主はチッと舌打ちをした。
煙草の火を携帯灰皿でもみ消すと、夢主はのび~と背筋を伸ばして立ち上がった。
そしておもむろに2人に人差し指を向けて指さした。
「二人共。今日の夜、いつものとこね。」
そう言われて一瞬目を丸くした尾形と宇佐美だったが、すぐにニタァと厭らしい笑みを浮かべた。
「へーそんなに参ってるんだ。」
「仕方ねぇなァ。」
二人は頼られたことが嬉しかったようで、これでもかと夢主を煽ったが、夢主はフンと鼻を鳴らしてオフィスへ戻って行った。
その夜、「いつものとこ」と夢主が指定した店に3人は集まった。
そこは大学時代から通っている馴染みの居酒屋で、3人は口々に会社の愚痴や同僚の話などをしていた。
「はー、夢主も大変だねぇ。仕事だけじゃなくって変態に追われるなんてさ。」
ほろ酔いの宇佐美が上機嫌で夢主に酒を注ぎながら、やや憐れみを含ませて言う。
「一発ぶん殴ったらいい。」
尾形は無表情で酒をあおるが、その頬や喉など肌が見える範囲がほんのりと赤く染まっていてそれなりに酔いが回っている状態が窺える。
宇佐美が尾形の肩をドン、と叩いて笑った。
「いいねー!百之助のくせに良いこと言うじゃん!」
夢主はそんな2人を無視するかのように注がれた酒をグビッと音を立てて飲む。
ゴン、と机にグラスを置いて、いよいよ目が据わった状態の彼女は二人に自分の分の会計を投げつけて言い放つ。
「尾形ァ宇佐美ィ……もうちょい付き合って。」
ベロベロに酔う夢主を見るのは久しくて、尾形と宇佐美は思わず顔を見合わせた。
滅多に夢主が泥酔することはなく、むしろ最後まで酔わないことの方が多かった。
こりゃあ相当キテるわ、と二人で無言のうちに意思疎通をしていた。
そうして店を出た3人は、夢主が強引に入っていったゲームセンターに行った。
夢主が銃で戦うシューティングゲームをやりたいと言えば、尾形と対戦してボコボコにされた夢主。
「うがぁ、なんで!」
「フン。」
得意げにふんぞり返る尾形に、観戦していた宇佐美がツッコミを入れる。
「フン!じゃないよ、夢主に勝たせてやれよォ、も~しょうがないやつだな。」
次に夢主がパンチングマシーンをやりたいと言えば、宇佐美と対戦して圧倒的なまでにスコアに差がついて敗北した夢主。
「うー勝てない!」
「ヘヘン、まだまだだね。」
同じく得意げな様子を見せる宇佐美に、尾形が冷めた表情でつぶやいた。
「お前も同じじゃねえか。」
「……ぐす、勝てないぃぃ。」
「「!!!」」
大人気なくゲームに手を抜けなかった男たちは、ただでさえ泥酔した状態であったことも相まって半べそ状態の夢主のご機嫌を取ろうと、慌ててクレーンゲームでほしいものいくらでも取る!と提案した。
夢主がぐずりながら子供のようにあれがほしいこれがほしいと言いつけたことで、尾形と宇佐美は慣れないクレーンゲームに悪戦苦闘することになった。
夢主はゲームセンターの角にあったベンチに一人腰掛けて、買ってもらったミネラルウォーターを飲んでいた。
そして一つ、二つとほしいものが手に入るたびにニコニコと笑顔を取り戻していった。
しかし途中で二人がゲームに夢中になっている間に、ひとりで眠りこけてしまった夢主。
気が付けば両脇には知らない男たちがいた。
「……?」
「あ、起きた?」「おはよー。」と口々に声をかけた男たち。
両脇以外にも夢主を囲むように数人が立ちふさがっている。
夢主がきょとん、としている間に男たちはナンパらしき内容のことを次々と口にする。
ああ、なるほど、と夢主が理解した頃には手をとられて肩を抱かれている。
不快な対応に酔いもさめていい加減ブチギレそうになっていると、大きな景品を手にした尾形と宇佐美が突如現れ、夢主を囲っていた数人を間髪入れずに蹴り飛ばす。
2人は恐ろしい形相を浮かべたままであったが、おもむろに景品を夢主に手渡すと、そのまま振り返り様に流れるような動作で周囲にいる男たちの胸倉をつかんで投げ飛ばし始めた。
そんな様子を見慣れているのか、あらあら~とのほほんとした様子で見つめる夢主。
あまりの恐怖に地面にひれ伏したナンパ男の一人が夢主に聞いた。
「なにあれ、彼氏……?」
うーん、と夢主が首を傾げていると、あらかた周囲の男たちをぶちのめした二人が最後の一人に手をかけて言った。
「「こいつは俺(僕)のだから。」」
おしまい。
【あとがき:上等兵ズ好き。またこの子たちのお話の続き書きたいなぁと思ってたら続いたので、シリーズ扱いにしました。】