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最終話 再会
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最終話 再会
自分の中であの体験をどのように消化して良いか分からない状態のまま、私はその後も現代の私の人生を過ごした。
仕事や友人などとの関わりで嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいことは相変わらず私の身の回りで今まで通りに起こるが、どこか心の奥底では感情が動かない状態がずっと続いていた。
気付けば大勢でワイワイと関わるよりも、一人で行動することの方がずっと増えた。
しかし休日は特に家で一人でいるというよりかは、様々な場所に足を運んで彼らの痕跡をつい探してしまいがちだった。
あえて人混みの都会に居座って、朝から晩まで彼らに似た人物を探そうとしてしまったこともあった。
もちろん、そんな簡単に見つかるような場所に彼らが落ちているわけではないのだけれど。
ある日、たまたま美術館へ行った。
特別興味のある展示でもなかったのだが、本当にただなんとなく、気が向いただけだった。
ふらりと入った展示場の中は、静かで、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
人が少ないこともあるだろうが、人々は皆思い思いに過ごしているようで、その空間にいるだけで不思議と久々にリラックスできたような気がした。
一つ一つの美術品をのんびりと見ていく。
ああ、この絵はあの人の服の色。この壺の柄はなんだかアイヌの衣装の模様みたい。などと私は常に彼らと結びつける癖がついてしまっていた。
ふと、一つの作品の前で足が止まった。
「え?」
静かな美術館で小さくも声が出てしまって、思わず咳ばらいをして口元を押さえた。
そんなはずはない、とドキドキしながらもう一度目を向ける。
そこには「山猫の死」という絵が1つ。
その絵は特に大々的に飾られているわけでもなく、美術館の一角で他の作品に紛れるように慎ましやかに設置されていた。
驚きのあまり息がつまる。
漫画には大企業が落札したって確かあったけど……いや、そもそも存在したの?この作品はフィクションの中の絵じゃなかったの?と頭が混乱し、私は穏やかに眠るその猫の前で目が離せなくなってしまった。
周りを見る余裕もなくなって、動揺のあまりフラッと一歩後ろに下がると、トンッと他の人にぶつかり更によろめいてしまった。
私がぶつかったその人は私の肩を支えてくれて何とか倒れずには済んだ。
ハッと気が付いて慌てて頭を下げた。
「す、すみません。」
息がつまってしまっていたせいで掠れた声になったが、なんとか謝罪して相手の顔へ視線を移すと、また喉がヒュッと鳴った。
「ん゛!?……!?」
目を白黒とさせながら声も出せない様子の私をあざ笑うかのように、その人は笑みを浮かべたまま前髪を後ろへ撫でつけた。
そして喉を鳴らしてくつくつと笑いながら私の肩を再度支えると、彼は今にも叫びだしそうな私を美術館から連れ出した。
道中他の作品もあったけど何一つ目に入らないくらい私は混乱していて、彼を凝視したまま口元を押さえ、もつれる足を何とか動かして彼に引っ張られるように歩いた。
恐らく他の客や美術館のスタッフからは具合の悪い彼女を支える優しい彼氏の微笑ましいカップルに見えただろう。
外へ連れ出されてすぐ、私は我慢の限界がきて叫んだ。
「尾形さん!!」
酸素を久々に吸っても、脳が混乱していてクラクラする。
尾形さんにはあの時とは違い、両目がちゃんとある。
しかし頬には顎を縫った傷があった。
服装も軍服やボロボロの服じゃなくて、何の変哲もないデニムにTシャツ、パーカーのフードを被った彼が居た。
夢にまで見た会いたかった人に会えた。
「久しぶりだな、夢主。」
懐かしい声が私を呼んでくれることが嬉しくて思わず涙がこぼれた。
肩を支えてくれていた尾形さんがそのまま優しく私を抱き寄せた。
「なんで……っ」
「こっちの台詞だ。急にいなくなったかと思えば、俺までこっちに来ちまった。」
尾形さんは動揺する私の頭を撫でながら、少しおどけた様子で笑った。
涙があふれ出て上手く言葉が出ない。
「私、尾形さんを、救えなくて……。」
泣きじゃくりながら尾形さんにしがみつき、夢じゃないと実感したくて彼の匂いや体温に懐かしさを噛みしめる。
「……いや、とっくに救われてた。ありがとうな、夢主。」
いつものぶっきらぼうな口調なのに、言葉は優しくて、私の頭を撫でる手も優しくて。
私は泣き顔のまま尾形さんを見上げる。
「これからは離れず一緒にいてください。もう絶対に離さないでください。」
「ああ、そうだな。夢主、お前こそもう勝手にどこか行くんじゃねえぞ。」
そっと私の顎を持ちあげると、尾形さんは優しく唇を重ねた。
fin.
【あとがき:やっと完結しました。
この場を借りて、みなさまにお礼をさせてください。
実は、尾形はどうせ最期は死ぬことでしか救われないだろうと予想がついていたので、最後の展開だけは決めて書き始めていました。
妄想するのは得意ですがその妄想を形にするのが苦手なタイプで、そもそもまともに作品を完結させた経験もなく、ペースも遅く語彙力も少ないし誤字脱字もあって読みづらかったでしょうに、最後までついてきてくださってありがとうございました。
開設してから2年以上、正直何度か書くのを辞めようかと思ったこともありましたが、いつも応援のコメントや拍手に励まされていました。
感謝してもしきれません。
しばらくは金カム沼から抜け出せないと思いますので、これからも妄想が浮かぶ限り短編も時間を見つけてちょこちょこ書いてみようかなとは思っております。
二次創作自体ほとんど経験がないのに完結までたどり着けたのはひとえに皆様の応援のおかげです。
本当にありがとうございました。
いつか、またどこかでお会いできたら、その時はよろしくお願いします。仮想世界管理人より。
追伸→後日談があります。よければ最後までお付き合いください。】
自分の中であの体験をどのように消化して良いか分からない状態のまま、私はその後も現代の私の人生を過ごした。
仕事や友人などとの関わりで嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいことは相変わらず私の身の回りで今まで通りに起こるが、どこか心の奥底では感情が動かない状態がずっと続いていた。
気付けば大勢でワイワイと関わるよりも、一人で行動することの方がずっと増えた。
しかし休日は特に家で一人でいるというよりかは、様々な場所に足を運んで彼らの痕跡をつい探してしまいがちだった。
あえて人混みの都会に居座って、朝から晩まで彼らに似た人物を探そうとしてしまったこともあった。
もちろん、そんな簡単に見つかるような場所に彼らが落ちているわけではないのだけれど。
ある日、たまたま美術館へ行った。
特別興味のある展示でもなかったのだが、本当にただなんとなく、気が向いただけだった。
ふらりと入った展示場の中は、静かで、落ち着いた雰囲気が漂っていた。
人が少ないこともあるだろうが、人々は皆思い思いに過ごしているようで、その空間にいるだけで不思議と久々にリラックスできたような気がした。
一つ一つの美術品をのんびりと見ていく。
ああ、この絵はあの人の服の色。この壺の柄はなんだかアイヌの衣装の模様みたい。などと私は常に彼らと結びつける癖がついてしまっていた。
ふと、一つの作品の前で足が止まった。
「え?」
静かな美術館で小さくも声が出てしまって、思わず咳ばらいをして口元を押さえた。
そんなはずはない、とドキドキしながらもう一度目を向ける。
そこには「山猫の死」という絵が1つ。
その絵は特に大々的に飾られているわけでもなく、美術館の一角で他の作品に紛れるように慎ましやかに設置されていた。
驚きのあまり息がつまる。
漫画には大企業が落札したって確かあったけど……いや、そもそも存在したの?この作品はフィクションの中の絵じゃなかったの?と頭が混乱し、私は穏やかに眠るその猫の前で目が離せなくなってしまった。
周りを見る余裕もなくなって、動揺のあまりフラッと一歩後ろに下がると、トンッと他の人にぶつかり更によろめいてしまった。
私がぶつかったその人は私の肩を支えてくれて何とか倒れずには済んだ。
ハッと気が付いて慌てて頭を下げた。
「す、すみません。」
息がつまってしまっていたせいで掠れた声になったが、なんとか謝罪して相手の顔へ視線を移すと、また喉がヒュッと鳴った。
「ん゛!?……!?」
目を白黒とさせながら声も出せない様子の私をあざ笑うかのように、その人は笑みを浮かべたまま前髪を後ろへ撫でつけた。
そして喉を鳴らしてくつくつと笑いながら私の肩を再度支えると、彼は今にも叫びだしそうな私を美術館から連れ出した。
道中他の作品もあったけど何一つ目に入らないくらい私は混乱していて、彼を凝視したまま口元を押さえ、もつれる足を何とか動かして彼に引っ張られるように歩いた。
恐らく他の客や美術館のスタッフからは具合の悪い彼女を支える優しい彼氏の微笑ましいカップルに見えただろう。
外へ連れ出されてすぐ、私は我慢の限界がきて叫んだ。
「尾形さん!!」
酸素を久々に吸っても、脳が混乱していてクラクラする。
尾形さんにはあの時とは違い、両目がちゃんとある。
しかし頬には顎を縫った傷があった。
服装も軍服やボロボロの服じゃなくて、何の変哲もないデニムにTシャツ、パーカーのフードを被った彼が居た。
夢にまで見た会いたかった人に会えた。
「久しぶりだな、夢主。」
懐かしい声が私を呼んでくれることが嬉しくて思わず涙がこぼれた。
肩を支えてくれていた尾形さんがそのまま優しく私を抱き寄せた。
「なんで……っ」
「こっちの台詞だ。急にいなくなったかと思えば、俺までこっちに来ちまった。」
尾形さんは動揺する私の頭を撫でながら、少しおどけた様子で笑った。
涙があふれ出て上手く言葉が出ない。
「私、尾形さんを、救えなくて……。」
泣きじゃくりながら尾形さんにしがみつき、夢じゃないと実感したくて彼の匂いや体温に懐かしさを噛みしめる。
「……いや、とっくに救われてた。ありがとうな、夢主。」
いつものぶっきらぼうな口調なのに、言葉は優しくて、私の頭を撫でる手も優しくて。
私は泣き顔のまま尾形さんを見上げる。
「これからは離れず一緒にいてください。もう絶対に離さないでください。」
「ああ、そうだな。夢主、お前こそもう勝手にどこか行くんじゃねえぞ。」
そっと私の顎を持ちあげると、尾形さんは優しく唇を重ねた。
fin.
【あとがき:やっと完結しました。
この場を借りて、みなさまにお礼をさせてください。
実は、尾形はどうせ最期は死ぬことでしか救われないだろうと予想がついていたので、最後の展開だけは決めて書き始めていました。
妄想するのは得意ですがその妄想を形にするのが苦手なタイプで、そもそもまともに作品を完結させた経験もなく、ペースも遅く語彙力も少ないし誤字脱字もあって読みづらかったでしょうに、最後までついてきてくださってありがとうございました。
開設してから2年以上、正直何度か書くのを辞めようかと思ったこともありましたが、いつも応援のコメントや拍手に励まされていました。
感謝してもしきれません。
しばらくは金カム沼から抜け出せないと思いますので、これからも妄想が浮かぶ限り短編も時間を見つけてちょこちょこ書いてみようかなとは思っております。
二次創作自体ほとんど経験がないのに完結までたどり着けたのはひとえに皆様の応援のおかげです。
本当にありがとうございました。
いつか、またどこかでお会いできたら、その時はよろしくお願いします。仮想世界管理人より。
追伸→後日談があります。よければ最後までお付き合いください。】