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第六十九話 帰還
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第六十九話 帰還
「尾形さん!!!!」
私が一歩踏み出して叫ぶも、尾形さんが不自然に自らに向かって銃をつきつけている姿を止めることはできなかった。
尾形さんの弾丸が尾形さんの左目を撃ち抜き、血しぶきを上げた姿を私は真正面から見た。
嫌だ!嘘だ!そう思いながらもう一歩踏み出した時、列車の上の硬い場所だったはずの床がジャリ、と音をたてた。
急に列車の動く振動や風を感じなくなり、音も消え去り静寂に包まれた。
私は少し前のめりになって右手をまっすぐ前に突き出した姿勢のまま、思わず固まった。
「……え?」
私の右手は虚空を掴み、更に踏み出していた足は砂利を踏みしめていた。
軍の靴を履いていたはずなのに、足元はヒールのパンプスで、血に濡れていた服装も気付けば元着ていたはずのスーツになっている。
固まった姿勢のまま、視線を上下左右に動かすと、そこは懐かしさすら覚える私の通勤途中にある公園だった。
私はその夜の公園のど真ん中で右手を突き出したまま、立っていた。
混乱した頭を押さえた。
急に足に力が入らなくなり、頭を抱えたままへなへなと力なく座り込んでしまった。
尾形さんは?
確かに尾形さんが自害して……、それを止めようと私は彼の目の前にいたはず。
当たり前だけど、現代の薄暗い公園をいくら見まわしても尾形さんの姿なんてない。
現代に戻ってきてしまった、と理解した瞬間嗚咽を漏らしながら私は泣き崩れた。
「うううぅ…っ」
頭を抱えまるで土下座でもするかのように私は地面に額を擦り付けながら、こみあげる嗚咽と共に大粒の涙を流す。
列車の中では必死に涙をこらえていたけれど、もう耐えることができなかった。
何時間そうしていたのか分からない。
とにかく頭の中では尾形さんのあの自害する瞬間、これまでの北海道やロシアでの旅路、出会ってきた人々の顔が次々と思い浮かぶ。
何度も何度も噛みしめるように記憶をぐるぐると巡らせるも、どうして自分があの瞬間に戻ってしまったのか分からなかった。
絶望の中、ふと顔を上げると公園の隅っこには私の鞄が落ちていた。
尾形さんが隠してくれたんだっけ……なんてフラフラと歩いて鞄を拾い上げる。
中身も元の状態だったが、何故かスマホやイヤホンなどの文明機器がすべて壊れてしまっていた。
壊れ方も衝撃があったというか、子供がめちゃくちゃに遊んで壊れたおもちゃのような状態だった。
尾形さん、きっと使い方が分からなかったんだろうな……、となんとなく愛おしく感じてまた涙がこぼれた。
それから私は、何度も公園に出入りしたり歩き回ってどうにかしてあちらの世界に戻れないかと一生懸命にできることを試した。
もちろん向こうに戻れることはなく、ただフラフラと公園を泣きながら歩き回るヤバイ女になっていることに気付く余裕もなくて、途方にくれながら私は何年ぶりかに帰宅した。
私の自宅も全く変わってなくて、ここでやっと時間を確認したが、私が公園で何時間も泣いたり歩き回っていた時間分くらいしか進んでいなかった。
つまり、すっぽりと北海道にいた時間は消えてしまっていた。
あの日、仕事を終えて帰宅しただけの状態になっていたのだった。
【あとがき:帰ってきちゃった(´・ω・`)】
「尾形さん!!!!」
私が一歩踏み出して叫ぶも、尾形さんが不自然に自らに向かって銃をつきつけている姿を止めることはできなかった。
尾形さんの弾丸が尾形さんの左目を撃ち抜き、血しぶきを上げた姿を私は真正面から見た。
嫌だ!嘘だ!そう思いながらもう一歩踏み出した時、列車の上の硬い場所だったはずの床がジャリ、と音をたてた。
急に列車の動く振動や風を感じなくなり、音も消え去り静寂に包まれた。
私は少し前のめりになって右手をまっすぐ前に突き出した姿勢のまま、思わず固まった。
「……え?」
私の右手は虚空を掴み、更に踏み出していた足は砂利を踏みしめていた。
軍の靴を履いていたはずなのに、足元はヒールのパンプスで、血に濡れていた服装も気付けば元着ていたはずのスーツになっている。
固まった姿勢のまま、視線を上下左右に動かすと、そこは懐かしさすら覚える私の通勤途中にある公園だった。
私はその夜の公園のど真ん中で右手を突き出したまま、立っていた。
混乱した頭を押さえた。
急に足に力が入らなくなり、頭を抱えたままへなへなと力なく座り込んでしまった。
尾形さんは?
確かに尾形さんが自害して……、それを止めようと私は彼の目の前にいたはず。
当たり前だけど、現代の薄暗い公園をいくら見まわしても尾形さんの姿なんてない。
現代に戻ってきてしまった、と理解した瞬間嗚咽を漏らしながら私は泣き崩れた。
「うううぅ…っ」
頭を抱えまるで土下座でもするかのように私は地面に額を擦り付けながら、こみあげる嗚咽と共に大粒の涙を流す。
列車の中では必死に涙をこらえていたけれど、もう耐えることができなかった。
何時間そうしていたのか分からない。
とにかく頭の中では尾形さんのあの自害する瞬間、これまでの北海道やロシアでの旅路、出会ってきた人々の顔が次々と思い浮かぶ。
何度も何度も噛みしめるように記憶をぐるぐると巡らせるも、どうして自分があの瞬間に戻ってしまったのか分からなかった。
絶望の中、ふと顔を上げると公園の隅っこには私の鞄が落ちていた。
尾形さんが隠してくれたんだっけ……なんてフラフラと歩いて鞄を拾い上げる。
中身も元の状態だったが、何故かスマホやイヤホンなどの文明機器がすべて壊れてしまっていた。
壊れ方も衝撃があったというか、子供がめちゃくちゃに遊んで壊れたおもちゃのような状態だった。
尾形さん、きっと使い方が分からなかったんだろうな……、となんとなく愛おしく感じてまた涙がこぼれた。
それから私は、何度も公園に出入りしたり歩き回ってどうにかしてあちらの世界に戻れないかと一生懸命にできることを試した。
もちろん向こうに戻れることはなく、ただフラフラと公園を泣きながら歩き回るヤバイ女になっていることに気付く余裕もなくて、途方にくれながら私は何年ぶりかに帰宅した。
私の自宅も全く変わってなくて、ここでやっと時間を確認したが、私が公園で何時間も泣いたり歩き回っていた時間分くらいしか進んでいなかった。
つまり、すっぽりと北海道にいた時間は消えてしまっていた。
あの日、仕事を終えて帰宅しただけの状態になっていたのだった。
【あとがき:帰ってきちゃった(´・ω・`)】