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第六十七話 尾形独白
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第六十七話 尾形独白
俺は、夢主にどうしてほしかったのだろうか。
船に乗り込んだときの会話で、あいつに心の内を理解してもらえたと思った。
いや、バレた……という感覚が近いだろうか。
どうせ訳も分からず親鳥を追う雛のように、俺のあとをついてくるだけの女だとどこかで見くびっていたのだろう。
空っぽの偽物の俺が第七師団長になって、勇作やアシリパのようなきれいな人間でなくとも認められて祝福されると見返したい。
これが小さなことだと笑われていたら、俺はきっと夢主を見捨ててでも実行していた。
それが、あいつは祝福ならとっくにされていると何度も真剣に訴えてきた。
夢主だけではなく、母や父、勇作からもだとあいつは強く言い張った。
そんなわけがないだろう、俺はいつも一人だった。
父は母を愛していたならなぜ葬式にも来なかったんだ。
勇作はなぜ綺麗なままでいようとしたんだ。
夢主に対してそう言い張ったところで何にもならないことはわかっていたから、言いたいだけ言えば良いと夢主をそのままにしておいた。
俺を見放して、俺から離れて土方でも杉元でも好きなところに付けばいいとさえ思っていたが、夢主はそれでも俺から離れなかった。
俺が一度アシリパを攫うときに夢主を突き放したことが原因のようで、俺があのとき夢主を信頼していれば俺の心の内もバレなかったんじゃないか?と考えたこともあったが、きっと俺がどうあがいたところで夢主には全部お見通しなんだろう。
結果は変わらなかったと頭ではわかっている。
はじめの頃勇作と夢主が重なっていたが、今となってはアシリパと勇作がしっかりと重なる。
その証拠に、アシリパを撃とうとすると勇作の亡霊が邪魔をすることにやっと気付いた。
金塊はあくまで俺がほかの人間を見返すための手段の1つに過ぎない。
だからわざわざ金塊にしがみつく必要はなかったが、チャンスには違いないし、なによりアシリパのような人間を見過ごすわけにはいかなかった。
だって俺は勇作を殺したんだぞ。
勇作と同じようにアシリパも死ぬか、俺らのようにアシリパも堕ちる以外には認められない。
ああそうだ、その前に、杉元を始末しないといけない。
あいつがアシリパをそうやって偶像にしているから、アシリパが清いままでいようとする。
そうだ、そうに違いない。
ふと考えることがある。
夢主がこの世界に来たことには何か意味があるのだろうか。
俺を祝福するため?いや、夢主は俺を祝福すると言っていたが、だったらその時点で役目を終えていてもおかしくない。
俺が何か過ちでも犯そうとしているっていうのか。
俺を止めて、あいつの未来に何か変化があるのか。
夢主は俺と出会って何の得があったというのか。
夢主は俺が何をしようと笑ったり呆れたりするだけで、見放したりは絶対にしなかった。
きっと、これからも俺についてくるだろう。
でももしも急に夢主が未来に帰ってしまったりしたら、お互いにどうなるのかと気になる。
俺は夢主に何かあったとき、あいつを救えるのだろうか。
最近では、お互いにお互いを必要としていると隠すことをしなくなった。
祝福とは違う意味のような気がするが、夢主が俺を必要とし、俺も夢主を必要としていることを感じていた。
いつの間にか一緒に居ることが当たり前になって、別行動をしていても夢主の身を無意識に案じているところがあった。
世間でいう色恋だと言われればあながち間違いでもない感情だ。
でもただの愛情だの恋情だのではない。
認めたくないが、信頼や尊敬の念も俺はきっと抱いている。
正直にこれらの気持ちを態度に出すのは気が引けたので、夢主には何も伝えていないが、俺が何も言わなくても勝手にあいつは俺の顔色から解釈してくるから言葉がいらない。
まあ、いつか、気分が良い時にでもあいつを褒めてやろう。
この泥沼の金塊戦争でも、あいつのしたたたかさは相当だったから、対人面では心配がなかった。
それでも金塊を狙う連中から手を出されたり、誘拐されたり、殺される可能性だってあったから目が離せない。
金塊に興味のないあいつは、敵の多くから警戒されてないとはいえ、俺のせいで巻き添えをくらうかもしれない。
他にも今までのあいつの言動や周囲の様子などごちゃごちゃととりとめもない考えが頭の中から沸き上がる。
ああ……いろんな気持ちにケリをつけることができないまま、俺はここまで来てしまったな、と列車に飛び乗ってから独り言を胸の内でつぶやく。
どうせ地獄行きの人生、どう転んでもかまわない。
だが俺が夢主を巻き込んだ以上、夢主を悲しませないようにはしないといかん……などとガラにもないことを考えていた。
さて、少し頭を整理しよう。
俺の目標は簡単だ。
まずは鶴見中尉を取り込んで、中央政府に口利きでもしてもらおうか。
最終的には俺が父であった師団長の立場につく。
その道中、勇作のような綺麗な人間を始末する。ただそれだけだ。
まずはじめに鶴見中尉に交渉でもしますかね、と前髪をキュッと撫で上げる。
第七師団と土方・杉元たちがぶつかり合い荒れ狂う列車の様子を鑑賞しつつ、列車の天井へと俺は登った。
【あとがき:尾形百之助という男は可哀想だから好きです。】
俺は、夢主にどうしてほしかったのだろうか。
船に乗り込んだときの会話で、あいつに心の内を理解してもらえたと思った。
いや、バレた……という感覚が近いだろうか。
どうせ訳も分からず親鳥を追う雛のように、俺のあとをついてくるだけの女だとどこかで見くびっていたのだろう。
空っぽの偽物の俺が第七師団長になって、勇作やアシリパのようなきれいな人間でなくとも認められて祝福されると見返したい。
これが小さなことだと笑われていたら、俺はきっと夢主を見捨ててでも実行していた。
それが、あいつは祝福ならとっくにされていると何度も真剣に訴えてきた。
夢主だけではなく、母や父、勇作からもだとあいつは強く言い張った。
そんなわけがないだろう、俺はいつも一人だった。
父は母を愛していたならなぜ葬式にも来なかったんだ。
勇作はなぜ綺麗なままでいようとしたんだ。
夢主に対してそう言い張ったところで何にもならないことはわかっていたから、言いたいだけ言えば良いと夢主をそのままにしておいた。
俺を見放して、俺から離れて土方でも杉元でも好きなところに付けばいいとさえ思っていたが、夢主はそれでも俺から離れなかった。
俺が一度アシリパを攫うときに夢主を突き放したことが原因のようで、俺があのとき夢主を信頼していれば俺の心の内もバレなかったんじゃないか?と考えたこともあったが、きっと俺がどうあがいたところで夢主には全部お見通しなんだろう。
結果は変わらなかったと頭ではわかっている。
はじめの頃勇作と夢主が重なっていたが、今となってはアシリパと勇作がしっかりと重なる。
その証拠に、アシリパを撃とうとすると勇作の亡霊が邪魔をすることにやっと気付いた。
金塊はあくまで俺がほかの人間を見返すための手段の1つに過ぎない。
だからわざわざ金塊にしがみつく必要はなかったが、チャンスには違いないし、なによりアシリパのような人間を見過ごすわけにはいかなかった。
だって俺は勇作を殺したんだぞ。
勇作と同じようにアシリパも死ぬか、俺らのようにアシリパも堕ちる以外には認められない。
ああそうだ、その前に、杉元を始末しないといけない。
あいつがアシリパをそうやって偶像にしているから、アシリパが清いままでいようとする。
そうだ、そうに違いない。
ふと考えることがある。
夢主がこの世界に来たことには何か意味があるのだろうか。
俺を祝福するため?いや、夢主は俺を祝福すると言っていたが、だったらその時点で役目を終えていてもおかしくない。
俺が何か過ちでも犯そうとしているっていうのか。
俺を止めて、あいつの未来に何か変化があるのか。
夢主は俺と出会って何の得があったというのか。
夢主は俺が何をしようと笑ったり呆れたりするだけで、見放したりは絶対にしなかった。
きっと、これからも俺についてくるだろう。
でももしも急に夢主が未来に帰ってしまったりしたら、お互いにどうなるのかと気になる。
俺は夢主に何かあったとき、あいつを救えるのだろうか。
最近では、お互いにお互いを必要としていると隠すことをしなくなった。
祝福とは違う意味のような気がするが、夢主が俺を必要とし、俺も夢主を必要としていることを感じていた。
いつの間にか一緒に居ることが当たり前になって、別行動をしていても夢主の身を無意識に案じているところがあった。
世間でいう色恋だと言われればあながち間違いでもない感情だ。
でもただの愛情だの恋情だのではない。
認めたくないが、信頼や尊敬の念も俺はきっと抱いている。
正直にこれらの気持ちを態度に出すのは気が引けたので、夢主には何も伝えていないが、俺が何も言わなくても勝手にあいつは俺の顔色から解釈してくるから言葉がいらない。
まあ、いつか、気分が良い時にでもあいつを褒めてやろう。
この泥沼の金塊戦争でも、あいつのしたたたかさは相当だったから、対人面では心配がなかった。
それでも金塊を狙う連中から手を出されたり、誘拐されたり、殺される可能性だってあったから目が離せない。
金塊に興味のないあいつは、敵の多くから警戒されてないとはいえ、俺のせいで巻き添えをくらうかもしれない。
他にも今までのあいつの言動や周囲の様子などごちゃごちゃととりとめもない考えが頭の中から沸き上がる。
ああ……いろんな気持ちにケリをつけることができないまま、俺はここまで来てしまったな、と列車に飛び乗ってから独り言を胸の内でつぶやく。
どうせ地獄行きの人生、どう転んでもかまわない。
だが俺が夢主を巻き込んだ以上、夢主を悲しませないようにはしないといかん……などとガラにもないことを考えていた。
さて、少し頭を整理しよう。
俺の目標は簡単だ。
まずは鶴見中尉を取り込んで、中央政府に口利きでもしてもらおうか。
最終的には俺が父であった師団長の立場につく。
その道中、勇作のような綺麗な人間を始末する。ただそれだけだ。
まずはじめに鶴見中尉に交渉でもしますかね、と前髪をキュッと撫で上げる。
第七師団と土方・杉元たちがぶつかり合い荒れ狂う列車の様子を鑑賞しつつ、列車の天井へと俺は登った。
【あとがき:尾形百之助という男は可哀想だから好きです。】