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第六十五話 乱戦
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第六十五話 乱戦
さて、私の見える位置からわかる戦況というと、遅れてやってきた第七師団と土方陣営・杉元陣営・ロシア陣営が乱戦になっている。
南の港からは恐らく鯉登さんのお父様であろう戦艦部隊もやってきているようだ。
あちらこちらから銃声や怒号が響き渡っている。
戦争の恐ろしさを改めて実感した。
双眼鏡から見える限り、かなりどの陣営も苦戦しているようだ。
火力の違いから、もしかしたら第七師団の方が若干優勢かもしれないな。
見たところ、第七師団の兵力はこんなもんじゃない。まだまだ追加の人員補充・武器補充がされるだろう。
私もできることなら杉元さんたちを守りたいところだが、煙幕も凄いし狙いが定めにくい。
この戦況だと、尾形さんもヴァシリさんを撃つにはまだ早いだろう。
いや、静かに一撃必殺でやり合う狙撃手同士の戦いの場合はどうだろうか、私の知らないところで勝負がついていないことを願う。
もうすぐ朝だ。
日差しが出てくるころにはどうやら北口の方へと杉元さんたちが移動しようとしている様子。
結局尾形さんのいる北口の方で動きがありそうな予感だ。
私は急いで木々を飛び移って移動する。
これだけ私がのんびり双眼鏡を覗いていても一発も撃ってこない。
それならきっとヴァシリさんは私ではなく尾形さん側に位置取っているはずだ。
アクロバティックに飛び移ろいながら、たまたま五稜郭の周りをうろついていた馬に乗った兵士を見つけると、私は木々の上で一度踏みとどまる。
馬を傷つけないように慎重に撃って、馬を手に入れた私は一気に北側へと進んでいった。
どうやら杉元さんがたちが脱出したおかげで、少し静かになったようだ。
駆逐艦を大砲が攻撃したときなんかは地響きまでしたくらいなのに、今は銃声がわずかに聞こえる程度だ。
双眼鏡を見ると遠くでアシリパさんが…あれは谷垣さん?に連れられて脱出している姿が見えた。
その手前には尾形さんが草葉の陰で兵士を撃ち落として馬を手に入れたところだった。
私は尾形さんが生きていたことに安堵し、一気にほっとしつつも嬉しくなる。
「尾形さん!ご無事で……!」
私が追い付くと、尾形さんは馬に乗りながら「よお」と気の抜けた挨拶をしてきた。
彼なりのコミュニケーションのつもりだろうが、どうリアクションをしていいかわからない。
「ヴァシリさんは?いや、お怪我は……!?」
並走しながら問いかけると、尾形さんは左足のすねを見せてきた。
包帯でぐるぐる巻きになっているが、うっすらと血が滲んでいる。
「ちょっと!撃たれてるじゃないですか!」
私がぎょっとして叫ぶと、尾形さんは前髪を撫でつけながら笑った。
「俺の一発が当たってないなら足一本で済むはずがねえだろ。」
得意げな表情で笑った尾形さんがまるで少年のようだった。
それもそうか、と頷きながら馬を走らせていると、前方には列車が見えてくる。
「あれって……。」
「函館行だな。」
ちょっと二人で顔を見合わせる。
杉元さんたちも馬でこのまま第七師団から逃げ続けるのは難しいだろう。
「きっと杉元さんたちは列車に乗り込みますよね……。」
「……この時間にそんな列車があったか?いや、鶴見中尉ならやりかねん。」
尾形さんが何やらブツブツと呟いている。
風の音で独り言までは聞き取れなかった。
そうこうしているうちに、列車の方からは銃声が鳴り響き始めた。
どういうことかはじめは分からなかったが、恐らく杉元さんたちと第七師団が出会ったのだろうと予想ができた。
とにかく前方の列車と杉元さんたちに追いつくべく、馬を列車に並走させる。
馬も常に全速力で走り続けるのは難しいので、ここが限界かと私は後方車両に乗り込んだが、尾形さんの馬はまだ余力があったようで前方車両へと進んでいった。
「俺は前から行く!死ぬんじゃねえぞ!」
そう言い残して尾形さんは前方へと走っていった。
私は列車の手すりにつかまってコクコクと頷き、戦況をうかがうためにしばし身を潜めた。
【あとがき:暴走列車地獄行編】
さて、私の見える位置からわかる戦況というと、遅れてやってきた第七師団と土方陣営・杉元陣営・ロシア陣営が乱戦になっている。
南の港からは恐らく鯉登さんのお父様であろう戦艦部隊もやってきているようだ。
あちらこちらから銃声や怒号が響き渡っている。
戦争の恐ろしさを改めて実感した。
双眼鏡から見える限り、かなりどの陣営も苦戦しているようだ。
火力の違いから、もしかしたら第七師団の方が若干優勢かもしれないな。
見たところ、第七師団の兵力はこんなもんじゃない。まだまだ追加の人員補充・武器補充がされるだろう。
私もできることなら杉元さんたちを守りたいところだが、煙幕も凄いし狙いが定めにくい。
この戦況だと、尾形さんもヴァシリさんを撃つにはまだ早いだろう。
いや、静かに一撃必殺でやり合う狙撃手同士の戦いの場合はどうだろうか、私の知らないところで勝負がついていないことを願う。
もうすぐ朝だ。
日差しが出てくるころにはどうやら北口の方へと杉元さんたちが移動しようとしている様子。
結局尾形さんのいる北口の方で動きがありそうな予感だ。
私は急いで木々を飛び移って移動する。
これだけ私がのんびり双眼鏡を覗いていても一発も撃ってこない。
それならきっとヴァシリさんは私ではなく尾形さん側に位置取っているはずだ。
アクロバティックに飛び移ろいながら、たまたま五稜郭の周りをうろついていた馬に乗った兵士を見つけると、私は木々の上で一度踏みとどまる。
馬を傷つけないように慎重に撃って、馬を手に入れた私は一気に北側へと進んでいった。
どうやら杉元さんがたちが脱出したおかげで、少し静かになったようだ。
駆逐艦を大砲が攻撃したときなんかは地響きまでしたくらいなのに、今は銃声がわずかに聞こえる程度だ。
双眼鏡を見ると遠くでアシリパさんが…あれは谷垣さん?に連れられて脱出している姿が見えた。
その手前には尾形さんが草葉の陰で兵士を撃ち落として馬を手に入れたところだった。
私は尾形さんが生きていたことに安堵し、一気にほっとしつつも嬉しくなる。
「尾形さん!ご無事で……!」
私が追い付くと、尾形さんは馬に乗りながら「よお」と気の抜けた挨拶をしてきた。
彼なりのコミュニケーションのつもりだろうが、どうリアクションをしていいかわからない。
「ヴァシリさんは?いや、お怪我は……!?」
並走しながら問いかけると、尾形さんは左足のすねを見せてきた。
包帯でぐるぐる巻きになっているが、うっすらと血が滲んでいる。
「ちょっと!撃たれてるじゃないですか!」
私がぎょっとして叫ぶと、尾形さんは前髪を撫でつけながら笑った。
「俺の一発が当たってないなら足一本で済むはずがねえだろ。」
得意げな表情で笑った尾形さんがまるで少年のようだった。
それもそうか、と頷きながら馬を走らせていると、前方には列車が見えてくる。
「あれって……。」
「函館行だな。」
ちょっと二人で顔を見合わせる。
杉元さんたちも馬でこのまま第七師団から逃げ続けるのは難しいだろう。
「きっと杉元さんたちは列車に乗り込みますよね……。」
「……この時間にそんな列車があったか?いや、鶴見中尉ならやりかねん。」
尾形さんが何やらブツブツと呟いている。
風の音で独り言までは聞き取れなかった。
そうこうしているうちに、列車の方からは銃声が鳴り響き始めた。
どういうことかはじめは分からなかったが、恐らく杉元さんたちと第七師団が出会ったのだろうと予想ができた。
とにかく前方の列車と杉元さんたちに追いつくべく、馬を列車に並走させる。
馬も常に全速力で走り続けるのは難しいので、ここが限界かと私は後方車両に乗り込んだが、尾形さんの馬はまだ余力があったようで前方車両へと進んでいった。
「俺は前から行く!死ぬんじゃねえぞ!」
そう言い残して尾形さんは前方へと走っていった。
私は列車の手すりにつかまってコクコクと頷き、戦況をうかがうためにしばし身を潜めた。
【あとがき:暴走列車地獄行編】