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第六十三話 ビール
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第六十三話 ビール
町娘の格好がまたもやこんなところで役に立つとは。
聞き込みを続けた結果、犯人が札幌ビール工場に現れるのではないかという情報を握った。
この数日で私の密偵力もかなり上がった気がする。
土方さんたちに会うのはまだしも、杉元さんはこちらを強く敵視しているだろうし絶対に見つからないようにしなければならなかった。
主に尾形さんのせいなんだけど。
「高所というと、あれとあれくらいですかね?」
現場に着いた私が尾形さんに聞くと、尾形さんは黙ってうなずいた。
「あっちの死角は私がこっちからカバーできますので、尾形さんが左で私が右の建物に潜伏しましょう。」
「……あぁ。」
尾形さんは相変わらず口数が少ない。
それでも以前より私を頼ってくれている感じはある。
一応戦力として見ていてくれてるのだろう。
「尾形さん、アシリパさんをいじめたら怒りますからね。」
「わかってるわかってる。」
飄々とした態度で建物に入っていった尾形さん。
私も気を引き締めて狙撃しないと、相手はきっと大人数になる。
まあ、第七師団ほど人数はいないだろうけど……?
いや、今のがフラグになりそうでイヤだな。
なんて思いながら双眼鏡をのぞいていた時、物陰に宇佐美さんを発見した。
宇佐美さんがいるってことは、第七師団も遅かれ早かれこちらに来るのか!?と青ざめる。
さっそくフラグ回収をしてしまい怯える。
尾形さんに伝える手段がないことをもどかしく思うが、尾形さんは遠くで警戒している様子。
とにかく尾形さんの死角は守らなくては、と気を抜かずに構えなおす。
何やら尾形さんが狙いを定めているようで、今にも撃ちそうだが尾形さんが狙うその相手が誰だかわからない。
アシリパさんではないことを切に願う。
何があったのか分からないが、この前のやぐらの上の時のように尾形さんが急に驚いた様子で身じろいだ。
私も驚いたが、その瞬間に一発銃弾が尾形さんの方へ掠めた。
尾形さんが身じろいでいなかったら、銃弾が直撃していたことだろう。
その銃弾は私の死角にある屋根の方向から来たようで、私が場所を移動して威嚇射撃をすると即座に一発こちらに撃ち込まれる。
ああ、これ多分尾形さんの言っていたヴァシリさんだな。
確かに良い狙撃手だ。
場所がバレた以上お互いに移動しなければ、と素早く身をひるがえして尾形さんの方へ向かう。
何故か銃を持っていない尾形さんと合流する。
「銃は?」
「撃たれて撃針がやられた。」
「なるほど……宇佐美さんの銃があっちに落ちているのを双眼鏡でみましたが、使えますでしょうか。」
それを奪いに行こうとなるが、尾形さんに先に建物に入れと言われてしまった。
なんで、と食い下がろうとするも、あのやり手の狙撃手に2人も的を与えるのは良くないとのこと。
逆に錯乱させられるのでは?と提案したが、尾形さんは頑なに首を横に振り続けた。
なんて頑固なの。
「心配だから必ず中で合流させてくださいね。」
一瞬だけなら別行動でも良いと譲歩してみる。
「ああ。大丈夫だ、お前も気を抜くなよ。また鶴見中尉に奪われるのは面倒だ。」
あーそんなこともあったな、と思わず遠い目をしてしまった。
いや、あれも元はといえば尾形さんが裏切るから!と言い返そうとするも、その時にはさっさと尾形さんは移動してしまっていた。
私も言われたとおりに建物の中に移動した。
「心配だなぁ。」
工場の中をこそこそと動き回る。
尾形さんは優れた狙撃手だけど、接近戦には弱い。
いや弱いというか、周りが強すぎるのよね。
建物の中となると不意に敵との遭遇もあるだろうし、大丈夫だろうか。
あっちこっちで銃撃やら戦闘の音が聞こえる。
合流するために、私はおおよその位置を把握しながら尾形さんを探そうとする。
道中で見つけた血痕をたどり、少し胸騒ぎがしたものの息をひそめて少しずつ階段を上がったところ、ある部屋の中でボロボロの尾形さんと遭遇した。
「ぇ、尾形さん!?なんでこの一瞬にそんなことに……。」
「宇佐美を仕留めた。」
「え、あの宇佐美さんを?」
尾形さんに肩を貸すが、ひとまず身を隠せる場所に向かいたい。
ここは乱闘であちらこちらで爆発や火災や浸水が起きているようだったので避難をしなくては。
工場内のビール樽も爆撃で破壊されたのかかなり強くお酒の匂いもした。
疲労感からフラフラと歩いているにも関わらず尾形さんは上機嫌だった。
「宇佐美のおかげで、俺は狙撃手として完成した。」
「それは何より。……左撃ちもこれで大丈夫そうですね。義眼、高かったんですから失くさないでくださいよ。」
「夢主~つれねえなぁ。もっと褒めてくれよ。」
上機嫌なのは狙撃に成功したからというだけじゃなくて、もしかしたら充満するお酒の匂いでやられているんじゃないか?と耳を疑った。
ただ顔を見る余裕も無駄口も叩く余裕もなかったため、私はひたすら逃げ道を確保しなんとか足を進める。
尾形さんは酔っ払っていても、「あのロシア人がいるはずだ」と警戒を緩めなかった。
ふと外を見ると火災が発生しているため、消防組が大量に入っている。
これは使えるかもしれない、と尾形さんに指をさして窓から消防団の姿を見せる。
尾形さんは納得したように笑った。
「したたかな女だな。」
消防団を監視して、群れから外れて単独行動した2人を物陰で気絶させる。
素早く服を奪い取り変装し、再び群れに戻り歩く。
小声で尾形さんに問う。
「そろそろ、行きますか。」
「合図を出す、3、2、1、……よし。」
合図に合わせて、二人で列から飛び出し付近の長屋に突っ込んだ。
狙撃手は的が二人いたせいで迷ったのか、銃弾は二人の間を掠めていった。
「本当にヴァシリさんですねこれは。」
やっぱり2人いたほうが錯乱させられたじゃないか、と思いつつも凄腕のスナイパーに狙われて身震いをした。
しかし尾形さんは楽しげに笑っていた。
「茨戸の土方の真似しようぜ。」
そう言って、民家を突っ切る尾形さん。
なんだか少年時代に子供だけで大人には秘密の悪いことをしているようなくすぐったい気持ちになった。
猫のように狭い道や建物の間を縫って歩き、尾形さんの後を追う。
道中聞き耳をたてるとどうやら土方さん陣営や第七師団の抗争が続いているようだ。
ということは、恐らく暗号解読のカギとなるアシリパさんを奪い合っていることだろう。
「土方さんたちのところには杉元さんが尾形さんを殺そうと必死なので戻れないですし、鶴見中尉と一緒にいては尾形さんがきっと処分されちゃいますね。」
うーん、尾形さんって人はやっぱりチームプレイが向いていない。と頭を悩ませる。
尾形さんはブツブツと呟いている私の横で小さく笑う。
「中央に差し出す価値もねえな……。」
「……。」
へえ、と思ったが、わざわざ突っ込むほど野暮でもなかったので聞こえないフリをした。
やはり鶴見中尉を飛び越えてより強いポジションに着こうとしているのだろう。
私はやはりこの時代の価値観ではないので、それがどこまで無謀なことなのかよくわからなかった。
話がそれたが、暗号解読の鍵を握っている各陣営の近くにいなくてはいけない。
さすがにもう別行動はしたくなかったので、私は尾形さんの近くにべったりだった。
彼らに狙われない程度の距離を保ってまた2人旅をするとなんとなく決まった。
【あとがき:んもー!原作もこの辺がかなり佳境なのに尾形が単独行動しているせいで、全然ヒロインが確信に迫れない悲しい…(´・ω・`)】
町娘の格好がまたもやこんなところで役に立つとは。
聞き込みを続けた結果、犯人が札幌ビール工場に現れるのではないかという情報を握った。
この数日で私の密偵力もかなり上がった気がする。
土方さんたちに会うのはまだしも、杉元さんはこちらを強く敵視しているだろうし絶対に見つからないようにしなければならなかった。
主に尾形さんのせいなんだけど。
「高所というと、あれとあれくらいですかね?」
現場に着いた私が尾形さんに聞くと、尾形さんは黙ってうなずいた。
「あっちの死角は私がこっちからカバーできますので、尾形さんが左で私が右の建物に潜伏しましょう。」
「……あぁ。」
尾形さんは相変わらず口数が少ない。
それでも以前より私を頼ってくれている感じはある。
一応戦力として見ていてくれてるのだろう。
「尾形さん、アシリパさんをいじめたら怒りますからね。」
「わかってるわかってる。」
飄々とした態度で建物に入っていった尾形さん。
私も気を引き締めて狙撃しないと、相手はきっと大人数になる。
まあ、第七師団ほど人数はいないだろうけど……?
いや、今のがフラグになりそうでイヤだな。
なんて思いながら双眼鏡をのぞいていた時、物陰に宇佐美さんを発見した。
宇佐美さんがいるってことは、第七師団も遅かれ早かれこちらに来るのか!?と青ざめる。
さっそくフラグ回収をしてしまい怯える。
尾形さんに伝える手段がないことをもどかしく思うが、尾形さんは遠くで警戒している様子。
とにかく尾形さんの死角は守らなくては、と気を抜かずに構えなおす。
何やら尾形さんが狙いを定めているようで、今にも撃ちそうだが尾形さんが狙うその相手が誰だかわからない。
アシリパさんではないことを切に願う。
何があったのか分からないが、この前のやぐらの上の時のように尾形さんが急に驚いた様子で身じろいだ。
私も驚いたが、その瞬間に一発銃弾が尾形さんの方へ掠めた。
尾形さんが身じろいでいなかったら、銃弾が直撃していたことだろう。
その銃弾は私の死角にある屋根の方向から来たようで、私が場所を移動して威嚇射撃をすると即座に一発こちらに撃ち込まれる。
ああ、これ多分尾形さんの言っていたヴァシリさんだな。
確かに良い狙撃手だ。
場所がバレた以上お互いに移動しなければ、と素早く身をひるがえして尾形さんの方へ向かう。
何故か銃を持っていない尾形さんと合流する。
「銃は?」
「撃たれて撃針がやられた。」
「なるほど……宇佐美さんの銃があっちに落ちているのを双眼鏡でみましたが、使えますでしょうか。」
それを奪いに行こうとなるが、尾形さんに先に建物に入れと言われてしまった。
なんで、と食い下がろうとするも、あのやり手の狙撃手に2人も的を与えるのは良くないとのこと。
逆に錯乱させられるのでは?と提案したが、尾形さんは頑なに首を横に振り続けた。
なんて頑固なの。
「心配だから必ず中で合流させてくださいね。」
一瞬だけなら別行動でも良いと譲歩してみる。
「ああ。大丈夫だ、お前も気を抜くなよ。また鶴見中尉に奪われるのは面倒だ。」
あーそんなこともあったな、と思わず遠い目をしてしまった。
いや、あれも元はといえば尾形さんが裏切るから!と言い返そうとするも、その時にはさっさと尾形さんは移動してしまっていた。
私も言われたとおりに建物の中に移動した。
「心配だなぁ。」
工場の中をこそこそと動き回る。
尾形さんは優れた狙撃手だけど、接近戦には弱い。
いや弱いというか、周りが強すぎるのよね。
建物の中となると不意に敵との遭遇もあるだろうし、大丈夫だろうか。
あっちこっちで銃撃やら戦闘の音が聞こえる。
合流するために、私はおおよその位置を把握しながら尾形さんを探そうとする。
道中で見つけた血痕をたどり、少し胸騒ぎがしたものの息をひそめて少しずつ階段を上がったところ、ある部屋の中でボロボロの尾形さんと遭遇した。
「ぇ、尾形さん!?なんでこの一瞬にそんなことに……。」
「宇佐美を仕留めた。」
「え、あの宇佐美さんを?」
尾形さんに肩を貸すが、ひとまず身を隠せる場所に向かいたい。
ここは乱闘であちらこちらで爆発や火災や浸水が起きているようだったので避難をしなくては。
工場内のビール樽も爆撃で破壊されたのかかなり強くお酒の匂いもした。
疲労感からフラフラと歩いているにも関わらず尾形さんは上機嫌だった。
「宇佐美のおかげで、俺は狙撃手として完成した。」
「それは何より。……左撃ちもこれで大丈夫そうですね。義眼、高かったんですから失くさないでくださいよ。」
「夢主~つれねえなぁ。もっと褒めてくれよ。」
上機嫌なのは狙撃に成功したからというだけじゃなくて、もしかしたら充満するお酒の匂いでやられているんじゃないか?と耳を疑った。
ただ顔を見る余裕も無駄口も叩く余裕もなかったため、私はひたすら逃げ道を確保しなんとか足を進める。
尾形さんは酔っ払っていても、「あのロシア人がいるはずだ」と警戒を緩めなかった。
ふと外を見ると火災が発生しているため、消防組が大量に入っている。
これは使えるかもしれない、と尾形さんに指をさして窓から消防団の姿を見せる。
尾形さんは納得したように笑った。
「したたかな女だな。」
消防団を監視して、群れから外れて単独行動した2人を物陰で気絶させる。
素早く服を奪い取り変装し、再び群れに戻り歩く。
小声で尾形さんに問う。
「そろそろ、行きますか。」
「合図を出す、3、2、1、……よし。」
合図に合わせて、二人で列から飛び出し付近の長屋に突っ込んだ。
狙撃手は的が二人いたせいで迷ったのか、銃弾は二人の間を掠めていった。
「本当にヴァシリさんですねこれは。」
やっぱり2人いたほうが錯乱させられたじゃないか、と思いつつも凄腕のスナイパーに狙われて身震いをした。
しかし尾形さんは楽しげに笑っていた。
「茨戸の土方の真似しようぜ。」
そう言って、民家を突っ切る尾形さん。
なんだか少年時代に子供だけで大人には秘密の悪いことをしているようなくすぐったい気持ちになった。
猫のように狭い道や建物の間を縫って歩き、尾形さんの後を追う。
道中聞き耳をたてるとどうやら土方さん陣営や第七師団の抗争が続いているようだ。
ということは、恐らく暗号解読のカギとなるアシリパさんを奪い合っていることだろう。
「土方さんたちのところには杉元さんが尾形さんを殺そうと必死なので戻れないですし、鶴見中尉と一緒にいては尾形さんがきっと処分されちゃいますね。」
うーん、尾形さんって人はやっぱりチームプレイが向いていない。と頭を悩ませる。
尾形さんはブツブツと呟いている私の横で小さく笑う。
「中央に差し出す価値もねえな……。」
「……。」
へえ、と思ったが、わざわざ突っ込むほど野暮でもなかったので聞こえないフリをした。
やはり鶴見中尉を飛び越えてより強いポジションに着こうとしているのだろう。
私はやはりこの時代の価値観ではないので、それがどこまで無謀なことなのかよくわからなかった。
話がそれたが、暗号解読の鍵を握っている各陣営の近くにいなくてはいけない。
さすがにもう別行動はしたくなかったので、私は尾形さんの近くにべったりだった。
彼らに狙われない程度の距離を保ってまた2人旅をするとなんとなく決まった。
【あとがき:んもー!原作もこの辺がかなり佳境なのに尾形が単独行動しているせいで、全然ヒロインが確信に迫れない悲しい…(´・ω・`)】