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第五十七話 お絵描きロシア人
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第五十七話 お絵描きロシア人
病院から脱走してから、私たちは近くの村を転々としたり野宿を繰り返してロシアから出て南下していた。
尾形さんに今後どうするかと問いかけると、なんと土方さんたちとの合流を目指すという。
正気か?と思ったが、私たち2人組でいるよりも土方派・鶴見派・杉元派の3つの勢力のどこかにいる方が確かに金塊を探すうえで有利だからだろうか。
今日は小さな町についたので、宿をとった。
尾形さんを宿に残し、私が情報収集や買い出しやらを請け負う。
まだ尾形さんの眼は包帯を外せない。
時折様子をみるために消毒程度のことはしているが、完治にはまだまだかかりそうだ。
命が危なかった一時を思えば、今は大分良くなってはいるのだが。
「それじゃあ尾形さん、いってきますから、お利口に留守番しててくださいね。」
「俺はガキか。」
窓際で座り込んで外を眺める尾形さんに声をかける。
「ガキというか、ペットみたいな?」
「ペットってなんだ。」
「ええと、飼い猫ってことです。」
「……。」
尾形さんは無言で私を睨む。
私は口笛を吹いて視線を逸らした。
私を裏切ったことについてはいまだ聞き出せていないが、もう、どうでもよくなってしまった。
都合の良い女と思われているなら、それで結構。
月島さんが鶴見中尉をかぶりつきで観たいのと同様、私も尾形さんを見ていたいんだ。
尾形さんの生き様を見届けたい。尾形さんを殺すのも、生かすのも私でありたい。そのためならば、私はどんなことがあったって生き延びてやる。
未来なんか帰れなくたって良い、とすら思っていた。
「じゃあいってきます。」
そう言って、でかけようとすると、尾形さんが呼び止めた。
「夢主。ロシア人に気をつけろ。」
「はい?」
「……いや、お前と別行動しているときに、ロシア人と殺し合った。」
「トドメ、ささなかったんですか?」
思わず聞いてしまった。
だって、尾形さんが心配するってことは、そのロシア人がまだ生きてるってことだ。
トドメを刺さないで生かすなんて珍しい。
「……さしたはずだが。あれだけ才能のある狙撃手は、生きてる気がする。」
「ふぅん。特徴、教えてください。」
そう言って、尾形さんは目が青くて、頭巾をかぶっていて、銃はアレだのこれだのとやけに詳しく説明してくれた。
現代のように写真があるわけではないが、事細かに説明してくれたので、なんとなくイメージだけはつかめた。
町の中であちこち買い物をし、食料品や衣料品を買い集めた。
そろそろ軍服でうろついていると危ないかもしれないと、町娘のような普通の着物もゲットした。
着付けに自信はないけれど、変装になるといいな。
お金はほとんど以前に鶴見中尉からいただいたものだ。
なんだかんだ私に対して鶴見中尉は過保護だ。
次会ったらまた敵同士なのかなー…それはそれで寂しいなあ…なんて甘いことを考えながら、建物の角を曲がる。
そのとき、ボスッと音を立てて人にぶつかってしまった。
両手いっぱいに品物を持っていた私は、そのままよろけて数歩下がった。
「す、すみません……!お怪我は……」
私が声をかけようとすると、目の前には頭巾をかぶった外国人。
一瞬で尾形さんの言っていたロシア人と一致してしまった。
ロシア語で話しかけようとしたが、そのロシア人は、私を見るなり銃を手に取る。
咄嗟に物陰にかくれようとすると、ロシア人は私の腕を掴んだ。
そして銃を下ろしてから私の服を指さす。
「軍服で判別してるのね……っていうか、言葉が話せないの?」
ウンウン、とロシア人は頷く。
名前を地面に書いてもらって、「ヴァシリ」という名前が彼にあることが分かった。
それからしばらく、その建物の角でヴァシリさんと筆談で話すことに。
月島さんがある程度教えてくれたとはいえ、リスニングはともかく書くのは苦労をした。
ヴァシリさんは言葉が離せないが、絵が上手で、地面にあれこれ書いては状況を教えてくれた。
なるほど、このヴァシリさんは尾形さんと一度やり合っていて、その際に顎を吹き飛ばされたらしい。
尾形さんも殺したつもりだったと言っていたから、恐らく首を撃ち抜けたと思ったが、運良く顎に軌道がズレていたようだ。
尾形さんを今度こそ殺そうというスナイパーの本能みたいなものを感じた。
さて、どうしたものか。と私は考える。
このまま正直に尾形さんの居場所を言うわけにはいかないし、かといって私が無傷で自由になれるとも思えない。
「尾形さんを仕留めたいなら、良い方法があります。尾形さんのお知り合いを教えてあげますね。」
その後、私が伝えたのは杉元さんたちの特徴だった。
月島さん、鯉登さん、アシリパさん、白石さんの特徴も教えてあげる。
ヴァシリさんは彼らを追うだろう。
彼らは私たちを追いながら金塊を探すわけだから、ヴァシリさんが足止めにならないかな、なんて楽観的に考えたのだった。
我ながら悪魔的発想。
ヴァシリさんはしきりに私に感謝し、最後はぎゅううと抱きしめられた。
私は「尾形さんの居場所は知らないけど、応援してるよ。」と、八方美人を発揮してその場をあとにした。
かなり道草を食ってしまったので、急いで宿に向かう。
「ただいま戻りました。」
「遅かったじゃねえか。」
尾形さんが少し不機嫌だ。
私が浮気でもしたと思っているのだろうか、なんてね。
購入したものたちを片付けながら、私は尾形さんに話しかける。
「例のロシア人、ヴァシリさんって言うんですね。」
「!」
ガタ、と尾形さんが扉に腕をぶつける。
ふふ、と笑いながら先ほどの出来事を尾形さんに報告した。
一通り話を聞いた尾形さんが呆れた様子で私を見る。
そして一言、呟いた。
「したたかな女だ。」
その表情はどこか満足そうだった。
【あとがき:ヴァシリルートも作りたい!!けど多分ヴァシリは尾形の方が好き。】
病院から脱走してから、私たちは近くの村を転々としたり野宿を繰り返してロシアから出て南下していた。
尾形さんに今後どうするかと問いかけると、なんと土方さんたちとの合流を目指すという。
正気か?と思ったが、私たち2人組でいるよりも土方派・鶴見派・杉元派の3つの勢力のどこかにいる方が確かに金塊を探すうえで有利だからだろうか。
今日は小さな町についたので、宿をとった。
尾形さんを宿に残し、私が情報収集や買い出しやらを請け負う。
まだ尾形さんの眼は包帯を外せない。
時折様子をみるために消毒程度のことはしているが、完治にはまだまだかかりそうだ。
命が危なかった一時を思えば、今は大分良くなってはいるのだが。
「それじゃあ尾形さん、いってきますから、お利口に留守番しててくださいね。」
「俺はガキか。」
窓際で座り込んで外を眺める尾形さんに声をかける。
「ガキというか、ペットみたいな?」
「ペットってなんだ。」
「ええと、飼い猫ってことです。」
「……。」
尾形さんは無言で私を睨む。
私は口笛を吹いて視線を逸らした。
私を裏切ったことについてはいまだ聞き出せていないが、もう、どうでもよくなってしまった。
都合の良い女と思われているなら、それで結構。
月島さんが鶴見中尉をかぶりつきで観たいのと同様、私も尾形さんを見ていたいんだ。
尾形さんの生き様を見届けたい。尾形さんを殺すのも、生かすのも私でありたい。そのためならば、私はどんなことがあったって生き延びてやる。
未来なんか帰れなくたって良い、とすら思っていた。
「じゃあいってきます。」
そう言って、でかけようとすると、尾形さんが呼び止めた。
「夢主。ロシア人に気をつけろ。」
「はい?」
「……いや、お前と別行動しているときに、ロシア人と殺し合った。」
「トドメ、ささなかったんですか?」
思わず聞いてしまった。
だって、尾形さんが心配するってことは、そのロシア人がまだ生きてるってことだ。
トドメを刺さないで生かすなんて珍しい。
「……さしたはずだが。あれだけ才能のある狙撃手は、生きてる気がする。」
「ふぅん。特徴、教えてください。」
そう言って、尾形さんは目が青くて、頭巾をかぶっていて、銃はアレだのこれだのとやけに詳しく説明してくれた。
現代のように写真があるわけではないが、事細かに説明してくれたので、なんとなくイメージだけはつかめた。
町の中であちこち買い物をし、食料品や衣料品を買い集めた。
そろそろ軍服でうろついていると危ないかもしれないと、町娘のような普通の着物もゲットした。
着付けに自信はないけれど、変装になるといいな。
お金はほとんど以前に鶴見中尉からいただいたものだ。
なんだかんだ私に対して鶴見中尉は過保護だ。
次会ったらまた敵同士なのかなー…それはそれで寂しいなあ…なんて甘いことを考えながら、建物の角を曲がる。
そのとき、ボスッと音を立てて人にぶつかってしまった。
両手いっぱいに品物を持っていた私は、そのままよろけて数歩下がった。
「す、すみません……!お怪我は……」
私が声をかけようとすると、目の前には頭巾をかぶった外国人。
一瞬で尾形さんの言っていたロシア人と一致してしまった。
ロシア語で話しかけようとしたが、そのロシア人は、私を見るなり銃を手に取る。
咄嗟に物陰にかくれようとすると、ロシア人は私の腕を掴んだ。
そして銃を下ろしてから私の服を指さす。
「軍服で判別してるのね……っていうか、言葉が話せないの?」
ウンウン、とロシア人は頷く。
名前を地面に書いてもらって、「ヴァシリ」という名前が彼にあることが分かった。
それからしばらく、その建物の角でヴァシリさんと筆談で話すことに。
月島さんがある程度教えてくれたとはいえ、リスニングはともかく書くのは苦労をした。
ヴァシリさんは言葉が離せないが、絵が上手で、地面にあれこれ書いては状況を教えてくれた。
なるほど、このヴァシリさんは尾形さんと一度やり合っていて、その際に顎を吹き飛ばされたらしい。
尾形さんも殺したつもりだったと言っていたから、恐らく首を撃ち抜けたと思ったが、運良く顎に軌道がズレていたようだ。
尾形さんを今度こそ殺そうというスナイパーの本能みたいなものを感じた。
さて、どうしたものか。と私は考える。
このまま正直に尾形さんの居場所を言うわけにはいかないし、かといって私が無傷で自由になれるとも思えない。
「尾形さんを仕留めたいなら、良い方法があります。尾形さんのお知り合いを教えてあげますね。」
その後、私が伝えたのは杉元さんたちの特徴だった。
月島さん、鯉登さん、アシリパさん、白石さんの特徴も教えてあげる。
ヴァシリさんは彼らを追うだろう。
彼らは私たちを追いながら金塊を探すわけだから、ヴァシリさんが足止めにならないかな、なんて楽観的に考えたのだった。
我ながら悪魔的発想。
ヴァシリさんはしきりに私に感謝し、最後はぎゅううと抱きしめられた。
私は「尾形さんの居場所は知らないけど、応援してるよ。」と、八方美人を発揮してその場をあとにした。
かなり道草を食ってしまったので、急いで宿に向かう。
「ただいま戻りました。」
「遅かったじゃねえか。」
尾形さんが少し不機嫌だ。
私が浮気でもしたと思っているのだろうか、なんてね。
購入したものたちを片付けながら、私は尾形さんに話しかける。
「例のロシア人、ヴァシリさんって言うんですね。」
「!」
ガタ、と尾形さんが扉に腕をぶつける。
ふふ、と笑いながら先ほどの出来事を尾形さんに報告した。
一通り話を聞いた尾形さんが呆れた様子で私を見る。
そして一言、呟いた。
「したたかな女だ。」
その表情はどこか満足そうだった。
【あとがき:ヴァシリルートも作りたい!!けど多分ヴァシリは尾形の方が好き。】