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第五十四話 再会と絶望
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第五十四話 再会と絶望
国境目指して北上を続けていたある日、物凄い轟音が鳴り響いた。
爆発音もしたため、双眼鏡を覗く。
「あそこは……亜港監獄?」
確か、革命派のロシア人がたくさん収監されている場所だ。
急いでそちらへ向かう。
キロランケさんのお手製の爆薬のかけらを見つける。
誰かの脱獄を手伝った人がいるとすれば、やはり脱獄王の白石さんも一緒のはずだ。
「……キロランケさんたちの仕業ですね、アシリパさんに近いかもしれませんよ!」
杉元さんはリュウを使って匂いをたどる。
しかしリュウの進もうとしている道は、流氷の上だ。
まさかとは思ったものの、いや、私ならそうする。
この時期この時間帯はニヴブの猟師たちでいっぱいだからだ。
追手から逃げるには好都合だ。
先ほどからずっと、胸騒ぎがする。
網走監獄のときと同じだ。
でもやっと尾形さんに追いつけるのだ、進むしかない。
気を引き締めて足を踏み出した。
そこからある程度は犬ぞりで進んだが、それでもボコボコの流氷原は進むのは厳しい。
月島さんたちが犬ぞりから荷物を下ろしている中、杉元さんはリュウが反応しているならアシリパさんたちは近い、とリュウだけ連れて流氷の上を歩き始めてしまった。
「杉元さん……!」
本来なら止めなくてはいけないのだが、私も冷静ではいられなかった。
せっかくのチャンスを掴まなければ、と杉元さんに続いて私も走り出す。
「夢主さん!?」「夢主!」
それに気づいた月島さんと鯉登さんの声が後ろからしたが、私は振り返ることなく杉元さんを追いかけた。
雪は段々と強くなってくる。
この間の燈台のあたりよりはまだマシではあるが、段々と視界が悪くなってきていた。
私が後ろをついてきているのに気づいた杉元さんが聞く。
「夢主ちゃん、……尾形を殺しても問題ない?」
「いやですよ杉元さん、私を裏切った理由を聞くのが私の役目。そして理由によっては私が殺すんです。刺し違えてでも。」
「……やっぱり夢主ちゃんは新しい時代の女なんだね。」
私が質問に穏やかに微笑みながら答えると、杉元さんは俺はアシリパさんが大事だから……あとは任せるよと笑い返してくれた。
ちょっと先へ進んだところで、流氷の1つが変な動きをしているのを目にする。
「誰かいます。」
目を凝らすも見えづらい。
もう少し近づくと声が聞こえた。
「白石さんだ……!」
私が叫ぶと杉元さんは走り出し、流氷の上から滑り落ちそうになっている白石さんを間一髪で助ける。
杉元ー!と叫びながら涙と鼻水塗れの白石さんが杉元さんに飛びついている。
「白石さん、ご無事で何よりです。」
「夢主ちゃんもー!?まさか俺を追ってきてくれたのー!?」
「……。」
「えっ?何か言ってー?」
杉元さんは再会の喜びもそこそこにアシリパさんは!?と白石さんの両肩を掴みを揺さぶる。
白石さんはこの先にアシリパさんと尾形さんとキロランケさんがいると答える。
白石さん曰く、尾形さんは杉元さんが死んでいるのを近くで確認した、と言っているそう。
「……撃ったのは尾形さんです。」
「隣にいたアシリパさんの父親も。キロランケと結託してな。」
まじかよ、と顔を引きつらせた白石さんだったが、すぐに気持ちを切り替え先へと歩き出した。
しばらくすると、遠くで銃声がした。
谷垣さんの単発銃や、恐らくは月島さんや鯉登さんのものを思われる銃や男の人の叫び声。
そして爆発音。
皆もキロランケさんたちに近づけているのだろう。
吹雪になった視界の悪さを利用して、アシリパさんのもとへと急ぐ。
視界が悪い中でも、私には見えた。
2つの人影と銃身と――尾形さん!
私が声をかけるよりも先に杉元さんが叫ぶ。
「尾形ァァ!!!!」
声に驚いたのか、アシリパさんが構えていた矢が飛ぶ。
その先にいるのは当然尾形さん。
次の瞬間、私の目の前で尾形さんの右目が矢で射抜かれた。
途端に音が消え、時が止まったかのような幻覚を覚える。
同時に自分の顔からサァァと血の気が引くのを感じた。
ニヤリ、と笑みを浮かべたままゆっくりと尾形さんが倒れていく。
視界の端で、足から力が抜けたのか座り込むアシリパさんが映る。
あぁ、そういえばアシリパさんの矢には確か……毒が。
私は目の前で起きた惨劇に呆然とし、右目から血があふれ出した尾形さんを見つめ、動けなかった。
杉元さんだけが行動を起こした。
尾形さんの頭を掴んで押し倒し、矢を引き抜く。
無理矢理血肉を抜いて、毒が回る前に吸い出す。
ブシュッブシュッと生々しい音が響く。
死なせない、この流れで死なせてアシリパさんを人殺しにはしない!と杉元さんは必死に叫ぶ。
手当しなければ。助けなければ。
それを頭では理解しているのに、全く動くことができなかった。
尾形さんの顔をぐるぐる巻きにしたところで、杉元さんは流氷に流されかけたアシリパさんを助けだし抱きしめ再会を喜ぶ。
私はというと、尾形さんのすぐ横に座りこみ、真っ赤に染まった尾形さんの顔を呆然と見ることしかできなかった。
【あとがき:めっちゃ痛そう(´・ω・`)】
国境目指して北上を続けていたある日、物凄い轟音が鳴り響いた。
爆発音もしたため、双眼鏡を覗く。
「あそこは……亜港監獄?」
確か、革命派のロシア人がたくさん収監されている場所だ。
急いでそちらへ向かう。
キロランケさんのお手製の爆薬のかけらを見つける。
誰かの脱獄を手伝った人がいるとすれば、やはり脱獄王の白石さんも一緒のはずだ。
「……キロランケさんたちの仕業ですね、アシリパさんに近いかもしれませんよ!」
杉元さんはリュウを使って匂いをたどる。
しかしリュウの進もうとしている道は、流氷の上だ。
まさかとは思ったものの、いや、私ならそうする。
この時期この時間帯はニヴブの猟師たちでいっぱいだからだ。
追手から逃げるには好都合だ。
先ほどからずっと、胸騒ぎがする。
網走監獄のときと同じだ。
でもやっと尾形さんに追いつけるのだ、進むしかない。
気を引き締めて足を踏み出した。
そこからある程度は犬ぞりで進んだが、それでもボコボコの流氷原は進むのは厳しい。
月島さんたちが犬ぞりから荷物を下ろしている中、杉元さんはリュウが反応しているならアシリパさんたちは近い、とリュウだけ連れて流氷の上を歩き始めてしまった。
「杉元さん……!」
本来なら止めなくてはいけないのだが、私も冷静ではいられなかった。
せっかくのチャンスを掴まなければ、と杉元さんに続いて私も走り出す。
「夢主さん!?」「夢主!」
それに気づいた月島さんと鯉登さんの声が後ろからしたが、私は振り返ることなく杉元さんを追いかけた。
雪は段々と強くなってくる。
この間の燈台のあたりよりはまだマシではあるが、段々と視界が悪くなってきていた。
私が後ろをついてきているのに気づいた杉元さんが聞く。
「夢主ちゃん、……尾形を殺しても問題ない?」
「いやですよ杉元さん、私を裏切った理由を聞くのが私の役目。そして理由によっては私が殺すんです。刺し違えてでも。」
「……やっぱり夢主ちゃんは新しい時代の女なんだね。」
私が質問に穏やかに微笑みながら答えると、杉元さんは俺はアシリパさんが大事だから……あとは任せるよと笑い返してくれた。
ちょっと先へ進んだところで、流氷の1つが変な動きをしているのを目にする。
「誰かいます。」
目を凝らすも見えづらい。
もう少し近づくと声が聞こえた。
「白石さんだ……!」
私が叫ぶと杉元さんは走り出し、流氷の上から滑り落ちそうになっている白石さんを間一髪で助ける。
杉元ー!と叫びながら涙と鼻水塗れの白石さんが杉元さんに飛びついている。
「白石さん、ご無事で何よりです。」
「夢主ちゃんもー!?まさか俺を追ってきてくれたのー!?」
「……。」
「えっ?何か言ってー?」
杉元さんは再会の喜びもそこそこにアシリパさんは!?と白石さんの両肩を掴みを揺さぶる。
白石さんはこの先にアシリパさんと尾形さんとキロランケさんがいると答える。
白石さん曰く、尾形さんは杉元さんが死んでいるのを近くで確認した、と言っているそう。
「……撃ったのは尾形さんです。」
「隣にいたアシリパさんの父親も。キロランケと結託してな。」
まじかよ、と顔を引きつらせた白石さんだったが、すぐに気持ちを切り替え先へと歩き出した。
しばらくすると、遠くで銃声がした。
谷垣さんの単発銃や、恐らくは月島さんや鯉登さんのものを思われる銃や男の人の叫び声。
そして爆発音。
皆もキロランケさんたちに近づけているのだろう。
吹雪になった視界の悪さを利用して、アシリパさんのもとへと急ぐ。
視界が悪い中でも、私には見えた。
2つの人影と銃身と――尾形さん!
私が声をかけるよりも先に杉元さんが叫ぶ。
「尾形ァァ!!!!」
声に驚いたのか、アシリパさんが構えていた矢が飛ぶ。
その先にいるのは当然尾形さん。
次の瞬間、私の目の前で尾形さんの右目が矢で射抜かれた。
途端に音が消え、時が止まったかのような幻覚を覚える。
同時に自分の顔からサァァと血の気が引くのを感じた。
ニヤリ、と笑みを浮かべたままゆっくりと尾形さんが倒れていく。
視界の端で、足から力が抜けたのか座り込むアシリパさんが映る。
あぁ、そういえばアシリパさんの矢には確か……毒が。
私は目の前で起きた惨劇に呆然とし、右目から血があふれ出した尾形さんを見つめ、動けなかった。
杉元さんだけが行動を起こした。
尾形さんの頭を掴んで押し倒し、矢を引き抜く。
無理矢理血肉を抜いて、毒が回る前に吸い出す。
ブシュッブシュッと生々しい音が響く。
死なせない、この流れで死なせてアシリパさんを人殺しにはしない!と杉元さんは必死に叫ぶ。
手当しなければ。助けなければ。
それを頭では理解しているのに、全く動くことができなかった。
尾形さんの顔をぐるぐる巻きにしたところで、杉元さんは流氷に流されかけたアシリパさんを助けだし抱きしめ再会を喜ぶ。
私はというと、尾形さんのすぐ横に座りこみ、真っ赤に染まった尾形さんの顔を呆然と見ることしかできなかった。
【あとがき:めっちゃ痛そう(´・ω・`)】