空欄の場合は夢主になります。
第五十話 いざ発表
お名前をどうぞ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第五十話 いざ発表
そして迎えた樺太公演。
客は満員。
熱気も十分。
皆それぞれ練習を積んできた成果を見せるときだった。
この数日間は、正直金塊のためというよりは本気で芸を磨いて過ごした気がする。
順調にチカパシくんの大独楽回し、少女団のダンスと演目が終わっていく。
私の番は鯉登さんの前。
フミエ先生渾身の妖艶な舞を見せつけて男連中の気を引く(予定)。
結果的に尾形さんと別行動で良かったな、と思った。
そうでなかったら尾形さんの前でこんな舞を見せたら、きっとまたバカにされるだろうから。
衣装を身にまとって舞台袖に待機する。
緊張して深呼吸していると、杉元さんや鯉登さんが応援してくれた。
私の姿がとても綺麗だから、きっとこれならアシリパさんにも届くはず、と杉元さんが笑った。
ああ、あったかい笑顔だな……私もこんな風に人を励ませる人になりたいとしばし見惚れた。
音楽が変わり、私の番が来る。
息を大きく吸って舞台へと一歩足を踏み出した。
爪の先、頭の先、足の先、肘や膝の角度、視線、髪の毛の一本一本に至るまでを意識して、舞を踊る。
日本の伝統的な舞踊のようなものから始まり、ワルツだったりジャズだったり、様々な曲に合わせて表現を変えていく。フミエ先生が海外で他の劇団を鑑賞して盗んできた技術を詰め込んだ渾身の舞だ。
フラメンコのように最後はタンッと足を舞台で鳴らしてポーズを決めて終わる。
最後に一礼して、観客の様子はどうだろうかと思って顔を上げて見てみると、自惚れなしに男女問わず皆私に釘付けだった。
正直、私の顔や体どうこうじゃなくて、フミエ先生が只者ではないのだと思う。
舞台袖に下がると、フミエ先生がよくやった、と褒めてくれた。
スパルタだったけど、頑張った甲斐があった……!と思わず目頭が熱くなる。
順調だったのはここまでで、何故か演目中に「キエッ」と猿叫が聞こえてきたので驚いて舞台袖から様子を見ると、鯉登さんが何かを追いかけている。
それは1枚の紙のようで、ひらりひらりとステージ上を移動する。
目を凝らすと分かったが、あれは鯉登さんがとっても大事にしている鶴見中尉のブロマイドだ。
そして鯉登さんは我も忘れて様々な演目に飛び入り参加すると、すごい勢いでバランス力を見せつけては写真を追いかける。
最期にシュタッと地面に着地したときはスタンディングオベーションが起きた。
そんな観客席の熱狂を他所に、舞台袖に下がった鯉登さんは怒り心頭といった様子だ。
「おのれ杉元め……。」
そう呟きながら鯉登さんは、何やら舞台用の備品たちをごそごそと弄っていた。
そして二枚写真があることに気付くと鯉登さんは動揺し始めた。
あまりの驚きっぷりにさすがに声をかけた。
「どうされました?」
「いや……なぜ鶴見中尉が2枚も……。」
月島さんがそれを見ていたのか、犯人は自分だと白状した。
どうやら杉元さんを煽るために仕掛けたのだそう。
私はなーんだ、と笑うも、鯉登さんはまずい……と顔をしかめた。
なんと、鯉登さんは仕返しに杉元さんの手品で使う刀身を鯉登さんの軍刀と入れ替えたのだそう。
ああ、それで先ほど備品をいじっていたのね。
などと悠長に納得している場合ではない。
「まずいですよ、なんとかして教えないと!」
慌てて舞台の方へ行く。
どうやらもうざっくりと杉元さんは腕を斬っていた杉元さんは、今自分が手にしている刀が本物だということに動揺している。
舞台袖から観客に見えない角度で杉元さんにレプリカの刀身がこちらにあることを伝えるために見せると、覚悟を決めたのか、今度は自分の足を思いっきり斬って見せる。
「うわぁぁ痛い……。」
見てられなくて思わず顔を逸らす。
すぐ後ろでやっと罪悪感に苛まれたらしい鯉登さんがすまん……と呟いた。
ついにハラキリが始まってしまう。
どうしよう、私、杉元さんのハラキリなんて見たくない。
「……もしハラワタを傷つけちゃったら、苦しまないように私が撃ち殺してみせます。」
「夢主さん、ちょっと落ち着いてください。」
狼狽した私は、銃を構えて杉元さんの頭に狙いを定める。
月島さんがギョッとした様子で私の両肩に手を置いたが、その時だった。
ロシア人がぞろぞろと舞台にやってきて、銃を杉元さんに向けた。
杉元さんが持っていたのが真剣で良かった。
ロシア人の銃を持つ手ごと杉元さんは切り落とす。
それを皮切りに私も取り巻きを数人撃ち抜いて、舞台裏にまで来ていた人たちは谷垣さん、鯉登さん、月島さんが完全にボコボコにした。
座長が混乱の中で遺体を撤収させ、全員で挨拶をして公演を無理矢理に終えた。
そしてカーテンコール終了後、捕らえたロシア人たちへ銃で脅しながら、月島さんと私でどういうつもりだと尋問をする。
ロシア人たちはどうやら山田座長が狙いだったそうな。
何故かというと、座長は長いこと日露戦争前からロシアを回って巡業し、日本へ機密事項を密告するというスパイだったとのこと。
フミエ先生が、あんたは三流スパイだよ……と言いながら拳銃を取り出し、何のためらいもなくロシア人たちを始末する。
くー……渋くてカッコイイ!と感動していると、そのすぐ横で心まで少女になってしまったのだろう、谷垣さんが動揺を隠せずにいた。
曲馬団とのお別れの際、パルチザンを追っていると告げると、座長は情報をくれた。
樺太で最大と言われるアレクサンドロスカヤ監獄という場所だろうな。
きっとキロランケさんたちはそこへ向かっているに違いないとのことで、行先は決まった。
問題の新聞はというと……
【不痔身のスギモト】と誤字で2行ほど載っていて、杉元さんが悔しがって転がっていた。
「ふふふ、お尻は大切にしませんとね。」
「んもー夢主ちゃんってば。」
「こっちの方がインパクトありますし、きっとアシリパさんも見てますよ。」
そう笑って杉元さんを励ますと、ちょっと心の中がチクリとした。
……尾形さんも、見てくれてたり、しますかねぇ?
【あとがき:シライシのうんこ見てる】
そして迎えた樺太公演。
客は満員。
熱気も十分。
皆それぞれ練習を積んできた成果を見せるときだった。
この数日間は、正直金塊のためというよりは本気で芸を磨いて過ごした気がする。
順調にチカパシくんの大独楽回し、少女団のダンスと演目が終わっていく。
私の番は鯉登さんの前。
フミエ先生渾身の妖艶な舞を見せつけて男連中の気を引く(予定)。
結果的に尾形さんと別行動で良かったな、と思った。
そうでなかったら尾形さんの前でこんな舞を見せたら、きっとまたバカにされるだろうから。
衣装を身にまとって舞台袖に待機する。
緊張して深呼吸していると、杉元さんや鯉登さんが応援してくれた。
私の姿がとても綺麗だから、きっとこれならアシリパさんにも届くはず、と杉元さんが笑った。
ああ、あったかい笑顔だな……私もこんな風に人を励ませる人になりたいとしばし見惚れた。
音楽が変わり、私の番が来る。
息を大きく吸って舞台へと一歩足を踏み出した。
爪の先、頭の先、足の先、肘や膝の角度、視線、髪の毛の一本一本に至るまでを意識して、舞を踊る。
日本の伝統的な舞踊のようなものから始まり、ワルツだったりジャズだったり、様々な曲に合わせて表現を変えていく。フミエ先生が海外で他の劇団を鑑賞して盗んできた技術を詰め込んだ渾身の舞だ。
フラメンコのように最後はタンッと足を舞台で鳴らしてポーズを決めて終わる。
最後に一礼して、観客の様子はどうだろうかと思って顔を上げて見てみると、自惚れなしに男女問わず皆私に釘付けだった。
正直、私の顔や体どうこうじゃなくて、フミエ先生が只者ではないのだと思う。
舞台袖に下がると、フミエ先生がよくやった、と褒めてくれた。
スパルタだったけど、頑張った甲斐があった……!と思わず目頭が熱くなる。
順調だったのはここまでで、何故か演目中に「キエッ」と猿叫が聞こえてきたので驚いて舞台袖から様子を見ると、鯉登さんが何かを追いかけている。
それは1枚の紙のようで、ひらりひらりとステージ上を移動する。
目を凝らすと分かったが、あれは鯉登さんがとっても大事にしている鶴見中尉のブロマイドだ。
そして鯉登さんは我も忘れて様々な演目に飛び入り参加すると、すごい勢いでバランス力を見せつけては写真を追いかける。
最期にシュタッと地面に着地したときはスタンディングオベーションが起きた。
そんな観客席の熱狂を他所に、舞台袖に下がった鯉登さんは怒り心頭といった様子だ。
「おのれ杉元め……。」
そう呟きながら鯉登さんは、何やら舞台用の備品たちをごそごそと弄っていた。
そして二枚写真があることに気付くと鯉登さんは動揺し始めた。
あまりの驚きっぷりにさすがに声をかけた。
「どうされました?」
「いや……なぜ鶴見中尉が2枚も……。」
月島さんがそれを見ていたのか、犯人は自分だと白状した。
どうやら杉元さんを煽るために仕掛けたのだそう。
私はなーんだ、と笑うも、鯉登さんはまずい……と顔をしかめた。
なんと、鯉登さんは仕返しに杉元さんの手品で使う刀身を鯉登さんの軍刀と入れ替えたのだそう。
ああ、それで先ほど備品をいじっていたのね。
などと悠長に納得している場合ではない。
「まずいですよ、なんとかして教えないと!」
慌てて舞台の方へ行く。
どうやらもうざっくりと杉元さんは腕を斬っていた杉元さんは、今自分が手にしている刀が本物だということに動揺している。
舞台袖から観客に見えない角度で杉元さんにレプリカの刀身がこちらにあることを伝えるために見せると、覚悟を決めたのか、今度は自分の足を思いっきり斬って見せる。
「うわぁぁ痛い……。」
見てられなくて思わず顔を逸らす。
すぐ後ろでやっと罪悪感に苛まれたらしい鯉登さんがすまん……と呟いた。
ついにハラキリが始まってしまう。
どうしよう、私、杉元さんのハラキリなんて見たくない。
「……もしハラワタを傷つけちゃったら、苦しまないように私が撃ち殺してみせます。」
「夢主さん、ちょっと落ち着いてください。」
狼狽した私は、銃を構えて杉元さんの頭に狙いを定める。
月島さんがギョッとした様子で私の両肩に手を置いたが、その時だった。
ロシア人がぞろぞろと舞台にやってきて、銃を杉元さんに向けた。
杉元さんが持っていたのが真剣で良かった。
ロシア人の銃を持つ手ごと杉元さんは切り落とす。
それを皮切りに私も取り巻きを数人撃ち抜いて、舞台裏にまで来ていた人たちは谷垣さん、鯉登さん、月島さんが完全にボコボコにした。
座長が混乱の中で遺体を撤収させ、全員で挨拶をして公演を無理矢理に終えた。
そしてカーテンコール終了後、捕らえたロシア人たちへ銃で脅しながら、月島さんと私でどういうつもりだと尋問をする。
ロシア人たちはどうやら山田座長が狙いだったそうな。
何故かというと、座長は長いこと日露戦争前からロシアを回って巡業し、日本へ機密事項を密告するというスパイだったとのこと。
フミエ先生が、あんたは三流スパイだよ……と言いながら拳銃を取り出し、何のためらいもなくロシア人たちを始末する。
くー……渋くてカッコイイ!と感動していると、そのすぐ横で心まで少女になってしまったのだろう、谷垣さんが動揺を隠せずにいた。
曲馬団とのお別れの際、パルチザンを追っていると告げると、座長は情報をくれた。
樺太で最大と言われるアレクサンドロスカヤ監獄という場所だろうな。
きっとキロランケさんたちはそこへ向かっているに違いないとのことで、行先は決まった。
問題の新聞はというと……
【不痔身のスギモト】と誤字で2行ほど載っていて、杉元さんが悔しがって転がっていた。
「ふふふ、お尻は大切にしませんとね。」
「んもー夢主ちゃんってば。」
「こっちの方がインパクトありますし、きっとアシリパさんも見てますよ。」
そう笑って杉元さんを励ますと、ちょっと心の中がチクリとした。
……尾形さんも、見てくれてたり、しますかねぇ?
【あとがき:シライシのうんこ見てる】