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第四十九話 劇団
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第四十九話 劇団
ある晴れた日のこと。
町中で聞き込みをしていると、急に「待てーーー!!」と聞き覚えのある声が響く。
「杉元さん!?」
私が驚いていると一人の少年が私の横を猛スピードで走り抜けた。
その後ろを杉元さんと鯉登さんと月島さんが追いかけていた。
そして杉元さんが叫ぶ。
「夢主ちゃん!置き引きだ!岩息の刺青人皮が盗まれた!」
ええええ!?
と声を上げる暇もなく、私も走って追いかけることに。
途中挟み撃ちにしようと皆でバラバラに追う。
鯉登さんが屋根に上がったのが見えたので、私も近くの塀を伝って上から追う。
屋根に上がったことで視界が開けて、最初に見た少年の背中が目視できた。
少年も屋根から屋根へと飛んでいる。
なんという身体能力。
どうやら少年の背中の荷物に括りつけられている背嚢が杉元さんのものらしい。
うーん、銃で撃てば一発なんだろうけど刺青人皮に傷はつけたくないしなぁ。
とりあえず鯉登さんと同じペースで追いかける。
若干リーチの違いがあるので鯉登さんよりワンテンポ遅れたが、ほぼ追い付けるあたり、訓練を怠らなくて良かったと安心する。
少年はこんなにもしつこく追いかけてくる私たちに少し引いているようだった。
いやいや、そんな顔されましても、訓練した私たちからすればあの子は何者なんだという気分なのだが。
そして少年の姿を追うと、テントがたくさん張ってある広場に出た。
「あれは……?」
「サーカスだ……。」
ぜいぜいと肩で息をしつつも近くへ飛び降りる。
そして鯉登さんは一発拳銃を真上に射撃して杉元さんたちにも場所を知らせる。
少年は追い付かれないと自信があったのだろう、目を丸くしていた。
聞き込みをしていた谷垣さんたちも含めて全員が合流したところで、偉い人なのだろうか、座長だという小太りのおじさんと少年に土下座で謝罪を受けた。
が、謝罪の途中で急に座長が日本刀で少年の顔を斬りつけた。
すかさず杉元さんが子供になにやってんだ!と座長に殴りかかる。
私も慌てて少年の傷を診ようとすると、少年の顔は斬れていなかった。
「あら……?」
少年はにっこり笑った。
はっと気づいて振り返ると、鼻からだらだらと血を流した座長も手品だと笑っていた。
もちろん座長のその鼻血は手品じゃない。
話を戻すと、先ほどの少年は長吉と言う名の、軽業師だそうな。
座長たちは曲馬団という現代で言うサーカスのような曲芸師たちの集まりのようで、全国を旅してショーをしているとのこと。
これだ!と杉元さんが急に声を上げたのでビクッと震えた。
どうやら杉元さんはアシリパさんを追いかけるのに効率が悪いと思い悩んでいたようで、このような大きなイベントに出れば注目されて出会いやすくなるだろうとのこと。
そんなに上手くいくものかしら、とも思ったが、スマホやらニュースやらのない時代なので、情報を流すための手段としてはやる価値はあるだろう。
座長は手品の種を教えることを渋ったが、金塊にしか興味がないし一生墓までもっていくと杉元さんが押しに押す。
あともう一押し、というときに長吉くんを警察に差し出そうかと脅すと、座長はそれは困ると狼狽えた。
長吉くんは妙に冷静で、私と鯉登さんを交互に見ると、指をさしながら私たちも公演に出るなら杉元さんにハラキリショーをやらせても良いのではないかと提案する。
「え?私たちもですか?」
「「ええ??」」
驚く私の背後で月島さんと谷垣さんが一緒に驚いていたが、貴方たちじゃないと思うの。
長吉くんは改めて私と鯉登さんをしっかりともう一度指名して、この世界向いていると思うと笑った。
ああ、アクロバティックな動きして追いかけましたものね、と鯉登さんと顔を見合わせて納得した。
曲馬団のテントの中にお邪魔して、どんな演目があるのかと一通り見せてもらう。
やはり曲持という色んなものを手や足などで持ち上げて披露する芸は、華がある。
長吉くんがやって見せているのをじっと見ていた鯉登さんが、おもむろに脚で支えられた不安定な桶の上に足をかけた。
そして難なく逆立ちをして見せると、座長が驚きのあまり声をあげた。
私たちも驚いて見上げていると、鯉登さんは次々に色々な技を見せつけてきた。
一体何者なんですか!?と驚愕している座長だが、杉元さんたちは驚きを通り越して引いている。
杉元さんと谷垣さんが見よう見まねで、月島さんを地面に寝かせると桶を月島さんの足の上に乗せる。
月島さんはなんで俺が下なんだと狼狽えていたが、誰も返事をしない。
「夢主、どうにかしてくr……いやお前じゃないだろッ!」
私に助けを求めていた月島さんだったが、その途中で谷垣さんがおもむろに桶に足をかけた。
そして案の定ベシャと鈍い音と共に月島さんの上に桶ごと落ちた谷垣さんは杉元さんとチカパシくんに転がされた。
「……月島さん、大丈夫です?」
手を差し伸べると月島さんは私の手を黙って取り、いつもの仏頂面を歪ませて起き上がると、顔面を押さえた。
「なんで俺が……。」
「災難でしたね。」
曖昧に微笑んで、慰めてあげる。
薄情にも私は、こういうときって大体月島さんみたいな真面目な人とか、谷垣さんみたいにイジリやすい人が被害者になるパターンよね、と内心では思っていた。
次はサイカホールという、円形の壁を自転車で走る曲芸を見せられる。
海外公演に行った時に見たものを積極的に取り入れているそうな。
「おおっ……かっこいい。」
私が呟くと、皆次々に自転車に乗り始めた。
単純な人たちだ、と少々呆れてしまう。
しかし、自転車に乗ったことがないのか、鯉登さん以外は生まれたての小鹿のようになっていた。
「私乗れますよ、ほら。」
転んだ杉元さんの自転車を起き上がらせて、乗り始めると歓声があがる。
「えーっ夢主ちゃん乗れるのー!?」
杉元さんが驚いてくれたので、フフン、と得意げに笑っていると、その横を鯉登さんがアクロバティックな乗り方をして凄いスピードで通り過ぎて行った。
「ぐぬぬ……私だってあのくらい……!」
ムキになって挑戦しようとしていると、月島さんに肩を掴まれ止められる。
「夢主さんに何かあると鶴見中尉に叱られますので。」
「えぇー……。」
とても不満そうにして見せるも、月島さんはそれ以上何も言わずに無言の圧力で私を曲芸から遠ざけた。
酷い、私だって鯉登さんに訓練つけてもらったりしたから、多少はできるもん。
子供のようにむくれていると、座長が杉元さんにはハラキリの、鯉登さんは曲芸の、そしてあまりものの私たちには演目のわきで踊る「少女団」に入れと指示を出す。
「座長!私少女って歳じゃありません!」
「夢主、それを言うなら俺たちも少女どころかおじさんだ。」
バッと挙手して抗議するも、谷垣さんが冷静にツッコミを入れた。
なんだかんだ皆言いたいことはあっただろうが、各々練習をすることに。
少女団の振付担当の山田フミエ先生は、とってもスパルタ。
特に谷垣さんがダンスの才能が皆無なようで、いっつも下ネタ混じりに怒られている。
谷垣さんは本気で傷ついたような、思い悩んでいるような表情を浮かべていた。
月島さんはダンスも卒なくこなしているが、無表情に先生を見つめすぎたのか、時折私に色仕掛けか!?と胸倉をつかまれていた。
谷垣さんと対照的に、月島さんは終始はいかいいえで答える感情のないロボットのように返答していた。
私はというと……
「コォラ夢主ー!お前ここで色気を出すんじゃないよ!」
「エッ出してませんけど!?」
「嘘をつくんじゃないよ、その顔、その声、その腰、その胸と脚ー!若い頃のアタシだってもうちょっと色気を抑えたもんだよ!!!!」
何の話してんの。
狼狽えながらも助けてくれる人はいないかと目配せするも、むしろその声に引き寄せられて練習中の杉元さんや鯉登さんが寄ってきてしまって、余計にフミエ先生を怒らせていた。
こんな感じのやり取りが練習中何度もだ。
困った。色気と言われましても……どちらかといえば色気ないはず、尾形さんにも花街の子たちにもよく言われたし。
休憩のタイミングで、フミエ先生に相談しに行こうかな、衣装とかで何とかならないかな……と思って歩く。
その途中で谷垣さんが物陰で引くほど号泣していたが、見ないフリをした。
谷垣さん、完全に目的忘れて少女団のためにいるよね?
そして練習中の鯉登さんの近くを通ると、なんと軽々と一本竹の上に乗ってバランスを見せつけている。
おお~すごいすごい。
そこで観客に投げキッスと指示をされていた。
まあ、鯉登さん見た目も華あるから……本人は鶴見中尉にしか興味なさそうだけど……縁談とかあるのかな?なんてぼんやりと見上げていると、鯉登さんが私に気付いた。
「ハッ……夢主」
そしてもちろんこちらに投げキッス。
「ヒエッ!?観客じゃないです!じろじろ見ててすみませんでしたーッ!」
さすがに心臓に悪かったので一目散に退散した。
そしてそのままフミエ先生のところまで走った。
フミエ先生は私を隣に座らせるとタバコを銜えて、足を組んだ。
「ふぅ~~夢主、お前さん、よくこの男共の中にいて襲われてないね。それとも、もう手遅れかい?」
「エッ!?いやいや、それはないです。皆さん目的があって旅してますので……そういうことはありえません。」
この人下ネタ以外口にしないのか、とちょっと引いた。
が、変に詮索してこない居心地の良さもあった。
これ、あれだ、どこかで体験したことあると思ったけど、スナックのママみたいなんだ。
フミエ先生はふぅ~~とタバコの煙を吐きながら、こちらを横目でじっと見ていた。
首を傾げると、フミエ先生はこう言い放った。
「……夢主、ピンで踊りな。」
「え?」
聞き取れなかったわけではない、頭が追い付かなかったのだ。
「え、なんで、少女団は……」
フミエ先生曰く、少女団では目立ちすぎてしまうからだとのこと。
それならいっそ鯉登さんと組ませて軽業をやらせたいが、女には女の土俵があるそうで。
「女にしかない魅惑の踊りで観客を沸かしな。技術はアタシが叩き込むよ。」
なんだか変な方向に話が進んでしまいました。
【あとがき:ヒロイン、紅一点枠を谷垣から奪い返せるか……!?】
ある晴れた日のこと。
町中で聞き込みをしていると、急に「待てーーー!!」と聞き覚えのある声が響く。
「杉元さん!?」
私が驚いていると一人の少年が私の横を猛スピードで走り抜けた。
その後ろを杉元さんと鯉登さんと月島さんが追いかけていた。
そして杉元さんが叫ぶ。
「夢主ちゃん!置き引きだ!岩息の刺青人皮が盗まれた!」
ええええ!?
と声を上げる暇もなく、私も走って追いかけることに。
途中挟み撃ちにしようと皆でバラバラに追う。
鯉登さんが屋根に上がったのが見えたので、私も近くの塀を伝って上から追う。
屋根に上がったことで視界が開けて、最初に見た少年の背中が目視できた。
少年も屋根から屋根へと飛んでいる。
なんという身体能力。
どうやら少年の背中の荷物に括りつけられている背嚢が杉元さんのものらしい。
うーん、銃で撃てば一発なんだろうけど刺青人皮に傷はつけたくないしなぁ。
とりあえず鯉登さんと同じペースで追いかける。
若干リーチの違いがあるので鯉登さんよりワンテンポ遅れたが、ほぼ追い付けるあたり、訓練を怠らなくて良かったと安心する。
少年はこんなにもしつこく追いかけてくる私たちに少し引いているようだった。
いやいや、そんな顔されましても、訓練した私たちからすればあの子は何者なんだという気分なのだが。
そして少年の姿を追うと、テントがたくさん張ってある広場に出た。
「あれは……?」
「サーカスだ……。」
ぜいぜいと肩で息をしつつも近くへ飛び降りる。
そして鯉登さんは一発拳銃を真上に射撃して杉元さんたちにも場所を知らせる。
少年は追い付かれないと自信があったのだろう、目を丸くしていた。
聞き込みをしていた谷垣さんたちも含めて全員が合流したところで、偉い人なのだろうか、座長だという小太りのおじさんと少年に土下座で謝罪を受けた。
が、謝罪の途中で急に座長が日本刀で少年の顔を斬りつけた。
すかさず杉元さんが子供になにやってんだ!と座長に殴りかかる。
私も慌てて少年の傷を診ようとすると、少年の顔は斬れていなかった。
「あら……?」
少年はにっこり笑った。
はっと気づいて振り返ると、鼻からだらだらと血を流した座長も手品だと笑っていた。
もちろん座長のその鼻血は手品じゃない。
話を戻すと、先ほどの少年は長吉と言う名の、軽業師だそうな。
座長たちは曲馬団という現代で言うサーカスのような曲芸師たちの集まりのようで、全国を旅してショーをしているとのこと。
これだ!と杉元さんが急に声を上げたのでビクッと震えた。
どうやら杉元さんはアシリパさんを追いかけるのに効率が悪いと思い悩んでいたようで、このような大きなイベントに出れば注目されて出会いやすくなるだろうとのこと。
そんなに上手くいくものかしら、とも思ったが、スマホやらニュースやらのない時代なので、情報を流すための手段としてはやる価値はあるだろう。
座長は手品の種を教えることを渋ったが、金塊にしか興味がないし一生墓までもっていくと杉元さんが押しに押す。
あともう一押し、というときに長吉くんを警察に差し出そうかと脅すと、座長はそれは困ると狼狽えた。
長吉くんは妙に冷静で、私と鯉登さんを交互に見ると、指をさしながら私たちも公演に出るなら杉元さんにハラキリショーをやらせても良いのではないかと提案する。
「え?私たちもですか?」
「「ええ??」」
驚く私の背後で月島さんと谷垣さんが一緒に驚いていたが、貴方たちじゃないと思うの。
長吉くんは改めて私と鯉登さんをしっかりともう一度指名して、この世界向いていると思うと笑った。
ああ、アクロバティックな動きして追いかけましたものね、と鯉登さんと顔を見合わせて納得した。
曲馬団のテントの中にお邪魔して、どんな演目があるのかと一通り見せてもらう。
やはり曲持という色んなものを手や足などで持ち上げて披露する芸は、華がある。
長吉くんがやって見せているのをじっと見ていた鯉登さんが、おもむろに脚で支えられた不安定な桶の上に足をかけた。
そして難なく逆立ちをして見せると、座長が驚きのあまり声をあげた。
私たちも驚いて見上げていると、鯉登さんは次々に色々な技を見せつけてきた。
一体何者なんですか!?と驚愕している座長だが、杉元さんたちは驚きを通り越して引いている。
杉元さんと谷垣さんが見よう見まねで、月島さんを地面に寝かせると桶を月島さんの足の上に乗せる。
月島さんはなんで俺が下なんだと狼狽えていたが、誰も返事をしない。
「夢主、どうにかしてくr……いやお前じゃないだろッ!」
私に助けを求めていた月島さんだったが、その途中で谷垣さんがおもむろに桶に足をかけた。
そして案の定ベシャと鈍い音と共に月島さんの上に桶ごと落ちた谷垣さんは杉元さんとチカパシくんに転がされた。
「……月島さん、大丈夫です?」
手を差し伸べると月島さんは私の手を黙って取り、いつもの仏頂面を歪ませて起き上がると、顔面を押さえた。
「なんで俺が……。」
「災難でしたね。」
曖昧に微笑んで、慰めてあげる。
薄情にも私は、こういうときって大体月島さんみたいな真面目な人とか、谷垣さんみたいにイジリやすい人が被害者になるパターンよね、と内心では思っていた。
次はサイカホールという、円形の壁を自転車で走る曲芸を見せられる。
海外公演に行った時に見たものを積極的に取り入れているそうな。
「おおっ……かっこいい。」
私が呟くと、皆次々に自転車に乗り始めた。
単純な人たちだ、と少々呆れてしまう。
しかし、自転車に乗ったことがないのか、鯉登さん以外は生まれたての小鹿のようになっていた。
「私乗れますよ、ほら。」
転んだ杉元さんの自転車を起き上がらせて、乗り始めると歓声があがる。
「えーっ夢主ちゃん乗れるのー!?」
杉元さんが驚いてくれたので、フフン、と得意げに笑っていると、その横を鯉登さんがアクロバティックな乗り方をして凄いスピードで通り過ぎて行った。
「ぐぬぬ……私だってあのくらい……!」
ムキになって挑戦しようとしていると、月島さんに肩を掴まれ止められる。
「夢主さんに何かあると鶴見中尉に叱られますので。」
「えぇー……。」
とても不満そうにして見せるも、月島さんはそれ以上何も言わずに無言の圧力で私を曲芸から遠ざけた。
酷い、私だって鯉登さんに訓練つけてもらったりしたから、多少はできるもん。
子供のようにむくれていると、座長が杉元さんにはハラキリの、鯉登さんは曲芸の、そしてあまりものの私たちには演目のわきで踊る「少女団」に入れと指示を出す。
「座長!私少女って歳じゃありません!」
「夢主、それを言うなら俺たちも少女どころかおじさんだ。」
バッと挙手して抗議するも、谷垣さんが冷静にツッコミを入れた。
なんだかんだ皆言いたいことはあっただろうが、各々練習をすることに。
少女団の振付担当の山田フミエ先生は、とってもスパルタ。
特に谷垣さんがダンスの才能が皆無なようで、いっつも下ネタ混じりに怒られている。
谷垣さんは本気で傷ついたような、思い悩んでいるような表情を浮かべていた。
月島さんはダンスも卒なくこなしているが、無表情に先生を見つめすぎたのか、時折私に色仕掛けか!?と胸倉をつかまれていた。
谷垣さんと対照的に、月島さんは終始はいかいいえで答える感情のないロボットのように返答していた。
私はというと……
「コォラ夢主ー!お前ここで色気を出すんじゃないよ!」
「エッ出してませんけど!?」
「嘘をつくんじゃないよ、その顔、その声、その腰、その胸と脚ー!若い頃のアタシだってもうちょっと色気を抑えたもんだよ!!!!」
何の話してんの。
狼狽えながらも助けてくれる人はいないかと目配せするも、むしろその声に引き寄せられて練習中の杉元さんや鯉登さんが寄ってきてしまって、余計にフミエ先生を怒らせていた。
こんな感じのやり取りが練習中何度もだ。
困った。色気と言われましても……どちらかといえば色気ないはず、尾形さんにも花街の子たちにもよく言われたし。
休憩のタイミングで、フミエ先生に相談しに行こうかな、衣装とかで何とかならないかな……と思って歩く。
その途中で谷垣さんが物陰で引くほど号泣していたが、見ないフリをした。
谷垣さん、完全に目的忘れて少女団のためにいるよね?
そして練習中の鯉登さんの近くを通ると、なんと軽々と一本竹の上に乗ってバランスを見せつけている。
おお~すごいすごい。
そこで観客に投げキッスと指示をされていた。
まあ、鯉登さん見た目も華あるから……本人は鶴見中尉にしか興味なさそうだけど……縁談とかあるのかな?なんてぼんやりと見上げていると、鯉登さんが私に気付いた。
「ハッ……夢主」
そしてもちろんこちらに投げキッス。
「ヒエッ!?観客じゃないです!じろじろ見ててすみませんでしたーッ!」
さすがに心臓に悪かったので一目散に退散した。
そしてそのままフミエ先生のところまで走った。
フミエ先生は私を隣に座らせるとタバコを銜えて、足を組んだ。
「ふぅ~~夢主、お前さん、よくこの男共の中にいて襲われてないね。それとも、もう手遅れかい?」
「エッ!?いやいや、それはないです。皆さん目的があって旅してますので……そういうことはありえません。」
この人下ネタ以外口にしないのか、とちょっと引いた。
が、変に詮索してこない居心地の良さもあった。
これ、あれだ、どこかで体験したことあると思ったけど、スナックのママみたいなんだ。
フミエ先生はふぅ~~とタバコの煙を吐きながら、こちらを横目でじっと見ていた。
首を傾げると、フミエ先生はこう言い放った。
「……夢主、ピンで踊りな。」
「え?」
聞き取れなかったわけではない、頭が追い付かなかったのだ。
「え、なんで、少女団は……」
フミエ先生曰く、少女団では目立ちすぎてしまうからだとのこと。
それならいっそ鯉登さんと組ませて軽業をやらせたいが、女には女の土俵があるそうで。
「女にしかない魅惑の踊りで観客を沸かしな。技術はアタシが叩き込むよ。」
なんだか変な方向に話が進んでしまいました。
【あとがき:ヒロイン、紅一点枠を谷垣から奪い返せるか……!?】