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第四話 尾形視点
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初めは厄介な女を拾ったもんだと思った。
まあ、今も厄介であることには変わりはないが。
森で彷徨っていた女は珍妙な格好をして叫んでいた。
なんだ売女か?と思ったが、どうやら泣き声が混じってきた様子。
遠くから足でも撃ってやろうかと一度は銃を構えたが、一般人だった場合面倒なことになる。
鶴見中尉からの造反を目論んでいる俺としては目立つのは御免だった。
かといって、これで俺が無視したところで今日俺が任務で出ていて、この道から帰ることを中尉を含め何人かは知っている。
この女絡みでなにか問題が起きた場合、自分に何かしらの責任が発生するのは避けたい。
短いやり取りだったが女がこちらを出し抜こうとしている様子はなかったので、そのまま担いでいくことにした。
妙な鞄がたまに背中に当たる。中身が気になったので軍の人間に取り上げられる前に俺がうまいこと隠すか、と喚く女の尻を叩きながら考えていた。
最悪鶴見中尉に女が殺されればそれはそれで良いとすら思っていたが、悪運の強いやつだ、こちら側の人間になるとはな。
女の部屋が一階の割と入りやすい部屋になったことを確認し、無理矢理侵入すると女は寝巻に着替える途中だったにもかかわらず俺を招き入れた。
はしたない女だ、やはり売女か?などと内心馬鹿にするも、同時に妾の子の俺が言えたわけじゃねえと内心で自暴自棄に笑う。
女の手荷物を確認すると、見慣れないものがいくつか出てきた。
機械……だろうか、使い道が想像もつかないものがちらほらと。
逆に、ハンカチや手帳など特に珍しくもないものもある。
結果、女の正体を掴もうとした俺は余計面倒なことに足を踏み入れることになった。
未来人だと?ふざけるな。
まともな神経をしているとは思えないが、この女の言動の噛み合わなさからするとそこまで嘘でもなさそうだ。
まあ、胡散臭さで言えば、アイヌの金塊の話もどっこいどっこいだろう。
――女に賭けるか。
俺の目的に沿うような女ならば、役に立つはずだ。
ふと、女を助けてみようという気になった。
気の迷いかもしれないが、賭けようと思った。
そうして未来人の荷物をいくつか隠した俺は、しばらく女の動向を観察することにした。
驚いたことに女はこのむさくるしい連中と上手くやっているようだった。
事情を知らない連中は、記憶喪失の女が健気に働いている、と見えるらしくさぞかし同情を誘ったのだろう、女を甘やかしていた。
しかし女はしたたかだった。
そんなやつらの相手を卒なくこなすばかりか、月島軍曹、鯉登少尉まで簡単に落としてみせた。
今やこの第七師団で夢主を嫌うものはいない。
鶴見中尉も、士気を上げるためだと言いながら、なんだかんだ夢主を可愛がっている様子。
あの中尉のことだから、本心からなのか、はたまた利用しているのか……中尉に限って今更女ごときに溺れることはない。おそらく後者だろう。
しかし一方的に中尉だけが女を利用しているわけではない、女も鶴見中尉という権力のある男のもとにいることである程度の安全を保障してもらっている。
しかも、最近は学までつけてきた。
言葉遣いがこの時代の女に近くなってきている。言動が急に慎ましく感じたから驚いた。
ははあなるほど、鶴見中尉や鯉登少佐とやりあうために、育ちの良い女を演出しているのか?
勤勉だと褒めるものもいたが、俺は末恐ろしくなった。
何がお前をそこまでさせるのか、と問い詰めたくなるのをこらえた。
理由を聞いたら、余計に足を踏み入れることになりそうだったからだ。
そんな夢主を遠巻きに監視していたつもりだったが、よく声をかけられる。
そんなに俺は分かりやすいか未来人とでも嫌味を言ってやろうかと思ったが、女は俺に恩があると思っているのか顔を合わせれば耳障りの良い言葉を並べる。
俺はまともに返事もしなかったが、俺だけが女が未来人だと知っている。
その優越感だけで少しは気が収まった。
そして最近気づいたことがある。
夢主はよく男共に囲まれるが、夢主から声をかける人間は少数だった。
鶴見中尉、鯉登少尉、月島軍曹、そして俺。ほかには稀に谷垣一等卒とも少し話をするようだ。
見る目のある女だなと感心した。
地位や権力というだけなら、派閥のあるこの軍隊では他にも候補はある。
全員に共通しているのは「ただものではない」というところ。
皆方向は違えど芯の通った何か野望や野心のような一癖ある意志の強い人間だった。
こいつは恐らくは俺の役に立つ女だ。
読みは当たっているような気がする。
さて、どうしてくれようか……。
【あとがき:むしろ普通にタイプだったりする。】
まあ、今も厄介であることには変わりはないが。
森で彷徨っていた女は珍妙な格好をして叫んでいた。
なんだ売女か?と思ったが、どうやら泣き声が混じってきた様子。
遠くから足でも撃ってやろうかと一度は銃を構えたが、一般人だった場合面倒なことになる。
鶴見中尉からの造反を目論んでいる俺としては目立つのは御免だった。
かといって、これで俺が無視したところで今日俺が任務で出ていて、この道から帰ることを中尉を含め何人かは知っている。
この女絡みでなにか問題が起きた場合、自分に何かしらの責任が発生するのは避けたい。
短いやり取りだったが女がこちらを出し抜こうとしている様子はなかったので、そのまま担いでいくことにした。
妙な鞄がたまに背中に当たる。中身が気になったので軍の人間に取り上げられる前に俺がうまいこと隠すか、と喚く女の尻を叩きながら考えていた。
最悪鶴見中尉に女が殺されればそれはそれで良いとすら思っていたが、悪運の強いやつだ、こちら側の人間になるとはな。
女の部屋が一階の割と入りやすい部屋になったことを確認し、無理矢理侵入すると女は寝巻に着替える途中だったにもかかわらず俺を招き入れた。
はしたない女だ、やはり売女か?などと内心馬鹿にするも、同時に妾の子の俺が言えたわけじゃねえと内心で自暴自棄に笑う。
女の手荷物を確認すると、見慣れないものがいくつか出てきた。
機械……だろうか、使い道が想像もつかないものがちらほらと。
逆に、ハンカチや手帳など特に珍しくもないものもある。
結果、女の正体を掴もうとした俺は余計面倒なことに足を踏み入れることになった。
未来人だと?ふざけるな。
まともな神経をしているとは思えないが、この女の言動の噛み合わなさからするとそこまで嘘でもなさそうだ。
まあ、胡散臭さで言えば、アイヌの金塊の話もどっこいどっこいだろう。
――女に賭けるか。
俺の目的に沿うような女ならば、役に立つはずだ。
ふと、女を助けてみようという気になった。
気の迷いかもしれないが、賭けようと思った。
そうして未来人の荷物をいくつか隠した俺は、しばらく女の動向を観察することにした。
驚いたことに女はこのむさくるしい連中と上手くやっているようだった。
事情を知らない連中は、記憶喪失の女が健気に働いている、と見えるらしくさぞかし同情を誘ったのだろう、女を甘やかしていた。
しかし女はしたたかだった。
そんなやつらの相手を卒なくこなすばかりか、月島軍曹、鯉登少尉まで簡単に落としてみせた。
今やこの第七師団で夢主を嫌うものはいない。
鶴見中尉も、士気を上げるためだと言いながら、なんだかんだ夢主を可愛がっている様子。
あの中尉のことだから、本心からなのか、はたまた利用しているのか……中尉に限って今更女ごときに溺れることはない。おそらく後者だろう。
しかし一方的に中尉だけが女を利用しているわけではない、女も鶴見中尉という権力のある男のもとにいることである程度の安全を保障してもらっている。
しかも、最近は学までつけてきた。
言葉遣いがこの時代の女に近くなってきている。言動が急に慎ましく感じたから驚いた。
ははあなるほど、鶴見中尉や鯉登少佐とやりあうために、育ちの良い女を演出しているのか?
勤勉だと褒めるものもいたが、俺は末恐ろしくなった。
何がお前をそこまでさせるのか、と問い詰めたくなるのをこらえた。
理由を聞いたら、余計に足を踏み入れることになりそうだったからだ。
そんな夢主を遠巻きに監視していたつもりだったが、よく声をかけられる。
そんなに俺は分かりやすいか未来人とでも嫌味を言ってやろうかと思ったが、女は俺に恩があると思っているのか顔を合わせれば耳障りの良い言葉を並べる。
俺はまともに返事もしなかったが、俺だけが女が未来人だと知っている。
その優越感だけで少しは気が収まった。
そして最近気づいたことがある。
夢主はよく男共に囲まれるが、夢主から声をかける人間は少数だった。
鶴見中尉、鯉登少尉、月島軍曹、そして俺。ほかには稀に谷垣一等卒とも少し話をするようだ。
見る目のある女だなと感心した。
地位や権力というだけなら、派閥のあるこの軍隊では他にも候補はある。
全員に共通しているのは「ただものではない」というところ。
皆方向は違えど芯の通った何か野望や野心のような一癖ある意志の強い人間だった。
こいつは恐らくは俺の役に立つ女だ。
読みは当たっているような気がする。
さて、どうしてくれようか……。
【あとがき:むしろ普通にタイプだったりする。】