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第三十八話 アイヌの祭り
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第三十八話 アイヌの祭り
杉元さんが姉畑を埋葬とする言いつつ、離れたところで刺青を剥がしている間、アイヌの人たちがヒグマを剥がす。
それを村へ持って帰り、疑いが晴れた谷垣さんへの謝罪も込めて、お祭りへ招待された。
熊を送る儀式を皆で見物する。
「凄い。とっても華やかですね。」
私がはしゃいでいると、村の女性たちがオンノオンノと言いながら私に笑顔を向けてくれる。
「どういう意味ですか?」
アシリパさんに問いかけるとめでたい、という意味らしい。
熊を送る儀式をしたあとは宴会になった。
男の人たちが寄ってたかって杉元さんを褒めちぎる。
とても強い男だと褒めたたえ、娘を嫁にいらないかとまで言っている。
「ふふ、尾形さんは人気がないですね。」
隣でチビチビと酒を飲んでいた尾形さんをくすくすと笑って見せる。
チッ、と舌打ちしただけで尾形さんは何も言わなかった。
久々に気分が良いので尾形さんの飲んでいるものと同じお酒を私も一緒にいただいた。
ふと視線をやると、アシリパさんがいろんな人の顔に手を近づけて歩いている。
何をしているのかと思えば、ヒグマを杉元さんが仕留める直前に、アシリパさんが苦手なはずの蛇を掴んで投げたのだそう。
「偉いですアシリパさん。杉元さんが助かったのはアシリパさんのおかげなんですね。」
私が褒めると、アシリパさんは嬉しそうに笑いながら近づいてきた。
そして私の顔の前に手を出した。
蛇の匂いがするのかと思ったが、よく分からない。
しばらくの間、くんくんと嗅いでいると隣で尾形さんが「犬かよ。」と呟いた。
ムッとしていると、アシリパさんがそのまま手を尾形さんの顔の前に向ける。
私のことを馬鹿にしたくせに、尾形さんもアシリパさんの手のひらをクンクンと嗅いでいた。
「尾形さんは猫みたいですね。」
むかついていたはずなのに、尾形さんが真顔で一生懸命に匂いを嗅いでいるのを見るとちょっと滑稽で、思わず笑ってしまう。
次いで、アシリパさんは誰も傷つけずに谷垣さんを逃がした尾形さんを褒める。
「谷垣源次郎は戦友だからな。」
そう言い放った尾形さんが怪しげな笑みを浮かべていたのに気づいたのは私だけだろうか。
尾形さんはその後すぐにアシリパさんの手をまた猫のようにくんくんと嗅いでいた。
「ふふ、可愛い。」
私はボソッと呟いたのに、杉元さんが聞いてしまっていたようで、私の隣に座ってくる。
酔っているのだろうか、顔が若干赤い。
「夢主ちゃん俺はァ?」
「あは、杉元さんも、素敵ですよ。」
「ほんとにぃ?」
「ほんとです。」
なんだか子供みたいだなぁと笑っていると、嬉しそうに杉元さんも笑う。
私たちが微笑みあっているのが気に入らなかったらしい尾形さんが私の肩を抱く。
「お前も可愛いぞ、夢主」
「!?」
「はあ?尾形のくせに何言ってんの~~。」
杉元さんは不満げにこちらを見ている。
杉元さんへの腹いせとはいえ、普段なら絶対人前で言わないようなことを言い出した尾形さんに驚いた私は思わず飛び上がってしまった。
そのリアクションを見て尾形さんが肩を揺らして笑い始めた。
「ちょ、ちょっとなんなんですか!」
私が焦りながら怒ると、尾形さんはニタリと笑う。
酒を煽り、軍服のシャツを開けた尾形さんの姿に、以前に二人で旅をしていて遊郭に入り浸った日々を思い出してしまう。
「第七師団の男共を落としたお前でも、したたかになれない相手がいるみてえだなァ?」
挑発的な言葉を吐いた尾形さんに、中途半端に言葉が聞こえたらしい杉元さんが絡んできた。
「え?何夢主ちゃん、第七師団の人たち皆落としたの?」
「第七師団だけじゃねえぞ。あの土方歳三や家永まで落としてやがるからな、こいつは。」
したたかになれない相手、とは尾形さんのことだろう。
相変わらず嫌味な物言いだ。
私が言い返す前に杉元さんが入ってきて厄介なことになってしまった。
第七師団の人たちとは仲良くやっていたつもりだったが、下心を操ったつもりはない。
それに、土方さんや家永さんに至っては悪ふざけだと思っている。
「……それは誤解です、杉元さん。私はそんなことしませんよ。」
ここで変なリアクションをしたら余計に面倒なことになるだろうと考えて努めて冷静に返すも、尾形さんがクツクツと喉で笑う。
そして私の首元に顔を摺り寄せ、見せつけるようにして杉元さんを挑発する。
「杉元ォ、こいつには気をつけろよ。そう簡単に落とせる相手じゃねえんでな。」
「クソ尾形夢主ちゃんから離れろォ。」
「あの杉元さん大丈夫ですから……落ち着いて。」
チッと舌打ちをした杉元さん。
杉元さんをなだめてとりあえずこの場を落ち着かせようとしたとき、更に中途半端に会話を聞いていたらしい谷垣さんが乱入してくる。
「ほぉ、尾形上等兵にも撃ち落とせないヤツがいるんだな。」
「ああ?」
低い声で威嚇しながら睨みつける尾形さん。
杉元さんも殺気立ってて嫌な空気だ。
元々険悪だったのに、谷垣さんが誤解したまま会話に入ってきてカオスになってきてしまった。
私を挟んでギャーギャーと騒ぎ立てる男連中に嫌気がさして、もういいや……と私はこの場を離れてアシリパさんのところに逃げた。
「なんだ夢主は人気者だな。」
「そんなことないですよ。彼らは私には手に負えません。」
アシリパさんが笑いかけてくれるが、少し虚しい。
何故皆私を好いてくれるのだろう。
嫌われないように一生懸命なだけなのに。
嬉しいけれど、どうしたら良いのか分からない。
アイヌの人たちがお酒に酔ったのかほとんどが寝てしまってから、谷垣さんが伝えたかったことをアシリパさんに伝える。
その内容はフチというアシリパさんのお祖母ちゃんが、二度と孫と会えなくなる夢を見たそうな。
たかだが夢だと思ってしまったが、アイヌでは夢というのはお告げのような意味合いもあるらしく、年配の人ほどよく信じているらしい。
そのため相当滅入ってしまっているらしく、なんとかできないかと谷垣さんはわざわざアシリパさんを探して村から来たそうだ。
だから谷垣さんは第七師団としてではなく、マタギとして動いていると言うのか。納得がいった。
「……フチという方は、谷垣さんのいたあの村のおばあちゃんですか?」
私が問いかけると、谷垣さんはそうだ、と頷く。
あの時アイヌの人たちまで殺してなくて良かったと心底安堵した。
一度戻るなり、手紙を書くなり方法はあると思う。
しかしアシリパさんの決意は固かった。
自分の未来のために進むとアシリパさんは強く言い切った。
やっぱりこの子、見た目よりずっと大人だし芯のある強さを持っている。
私も見習わなくてはいけない。
金塊を求める旅ではあるが、誰の手に渡ろうとこの強く美しいアイヌの子を悲しませるような結末にはしたくない。
その日はアシリパさんを抱っこするようにして寝た。
小さい子の体温は温かくてよく眠れた。
【あとがき:モテるフェロモンでも出てるのか。】
杉元さんが姉畑を埋葬とする言いつつ、離れたところで刺青を剥がしている間、アイヌの人たちがヒグマを剥がす。
それを村へ持って帰り、疑いが晴れた谷垣さんへの謝罪も込めて、お祭りへ招待された。
熊を送る儀式を皆で見物する。
「凄い。とっても華やかですね。」
私がはしゃいでいると、村の女性たちがオンノオンノと言いながら私に笑顔を向けてくれる。
「どういう意味ですか?」
アシリパさんに問いかけるとめでたい、という意味らしい。
熊を送る儀式をしたあとは宴会になった。
男の人たちが寄ってたかって杉元さんを褒めちぎる。
とても強い男だと褒めたたえ、娘を嫁にいらないかとまで言っている。
「ふふ、尾形さんは人気がないですね。」
隣でチビチビと酒を飲んでいた尾形さんをくすくすと笑って見せる。
チッ、と舌打ちしただけで尾形さんは何も言わなかった。
久々に気分が良いので尾形さんの飲んでいるものと同じお酒を私も一緒にいただいた。
ふと視線をやると、アシリパさんがいろんな人の顔に手を近づけて歩いている。
何をしているのかと思えば、ヒグマを杉元さんが仕留める直前に、アシリパさんが苦手なはずの蛇を掴んで投げたのだそう。
「偉いですアシリパさん。杉元さんが助かったのはアシリパさんのおかげなんですね。」
私が褒めると、アシリパさんは嬉しそうに笑いながら近づいてきた。
そして私の顔の前に手を出した。
蛇の匂いがするのかと思ったが、よく分からない。
しばらくの間、くんくんと嗅いでいると隣で尾形さんが「犬かよ。」と呟いた。
ムッとしていると、アシリパさんがそのまま手を尾形さんの顔の前に向ける。
私のことを馬鹿にしたくせに、尾形さんもアシリパさんの手のひらをクンクンと嗅いでいた。
「尾形さんは猫みたいですね。」
むかついていたはずなのに、尾形さんが真顔で一生懸命に匂いを嗅いでいるのを見るとちょっと滑稽で、思わず笑ってしまう。
次いで、アシリパさんは誰も傷つけずに谷垣さんを逃がした尾形さんを褒める。
「谷垣源次郎は戦友だからな。」
そう言い放った尾形さんが怪しげな笑みを浮かべていたのに気づいたのは私だけだろうか。
尾形さんはその後すぐにアシリパさんの手をまた猫のようにくんくんと嗅いでいた。
「ふふ、可愛い。」
私はボソッと呟いたのに、杉元さんが聞いてしまっていたようで、私の隣に座ってくる。
酔っているのだろうか、顔が若干赤い。
「夢主ちゃん俺はァ?」
「あは、杉元さんも、素敵ですよ。」
「ほんとにぃ?」
「ほんとです。」
なんだか子供みたいだなぁと笑っていると、嬉しそうに杉元さんも笑う。
私たちが微笑みあっているのが気に入らなかったらしい尾形さんが私の肩を抱く。
「お前も可愛いぞ、夢主」
「!?」
「はあ?尾形のくせに何言ってんの~~。」
杉元さんは不満げにこちらを見ている。
杉元さんへの腹いせとはいえ、普段なら絶対人前で言わないようなことを言い出した尾形さんに驚いた私は思わず飛び上がってしまった。
そのリアクションを見て尾形さんが肩を揺らして笑い始めた。
「ちょ、ちょっとなんなんですか!」
私が焦りながら怒ると、尾形さんはニタリと笑う。
酒を煽り、軍服のシャツを開けた尾形さんの姿に、以前に二人で旅をしていて遊郭に入り浸った日々を思い出してしまう。
「第七師団の男共を落としたお前でも、したたかになれない相手がいるみてえだなァ?」
挑発的な言葉を吐いた尾形さんに、中途半端に言葉が聞こえたらしい杉元さんが絡んできた。
「え?何夢主ちゃん、第七師団の人たち皆落としたの?」
「第七師団だけじゃねえぞ。あの土方歳三や家永まで落としてやがるからな、こいつは。」
したたかになれない相手、とは尾形さんのことだろう。
相変わらず嫌味な物言いだ。
私が言い返す前に杉元さんが入ってきて厄介なことになってしまった。
第七師団の人たちとは仲良くやっていたつもりだったが、下心を操ったつもりはない。
それに、土方さんや家永さんに至っては悪ふざけだと思っている。
「……それは誤解です、杉元さん。私はそんなことしませんよ。」
ここで変なリアクションをしたら余計に面倒なことになるだろうと考えて努めて冷静に返すも、尾形さんがクツクツと喉で笑う。
そして私の首元に顔を摺り寄せ、見せつけるようにして杉元さんを挑発する。
「杉元ォ、こいつには気をつけろよ。そう簡単に落とせる相手じゃねえんでな。」
「クソ尾形夢主ちゃんから離れろォ。」
「あの杉元さん大丈夫ですから……落ち着いて。」
チッと舌打ちをした杉元さん。
杉元さんをなだめてとりあえずこの場を落ち着かせようとしたとき、更に中途半端に会話を聞いていたらしい谷垣さんが乱入してくる。
「ほぉ、尾形上等兵にも撃ち落とせないヤツがいるんだな。」
「ああ?」
低い声で威嚇しながら睨みつける尾形さん。
杉元さんも殺気立ってて嫌な空気だ。
元々険悪だったのに、谷垣さんが誤解したまま会話に入ってきてカオスになってきてしまった。
私を挟んでギャーギャーと騒ぎ立てる男連中に嫌気がさして、もういいや……と私はこの場を離れてアシリパさんのところに逃げた。
「なんだ夢主は人気者だな。」
「そんなことないですよ。彼らは私には手に負えません。」
アシリパさんが笑いかけてくれるが、少し虚しい。
何故皆私を好いてくれるのだろう。
嫌われないように一生懸命なだけなのに。
嬉しいけれど、どうしたら良いのか分からない。
アイヌの人たちがお酒に酔ったのかほとんどが寝てしまってから、谷垣さんが伝えたかったことをアシリパさんに伝える。
その内容はフチというアシリパさんのお祖母ちゃんが、二度と孫と会えなくなる夢を見たそうな。
たかだが夢だと思ってしまったが、アイヌでは夢というのはお告げのような意味合いもあるらしく、年配の人ほどよく信じているらしい。
そのため相当滅入ってしまっているらしく、なんとかできないかと谷垣さんはわざわざアシリパさんを探して村から来たそうだ。
だから谷垣さんは第七師団としてではなく、マタギとして動いていると言うのか。納得がいった。
「……フチという方は、谷垣さんのいたあの村のおばあちゃんですか?」
私が問いかけると、谷垣さんはそうだ、と頷く。
あの時アイヌの人たちまで殺してなくて良かったと心底安堵した。
一度戻るなり、手紙を書くなり方法はあると思う。
しかしアシリパさんの決意は固かった。
自分の未来のために進むとアシリパさんは強く言い切った。
やっぱりこの子、見た目よりずっと大人だし芯のある強さを持っている。
私も見習わなくてはいけない。
金塊を求める旅ではあるが、誰の手に渡ろうとこの強く美しいアイヌの子を悲しませるような結末にはしたくない。
その日はアシリパさんを抱っこするようにして寝た。
小さい子の体温は温かくてよく眠れた。
【あとがき:モテるフェロモンでも出てるのか。】