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第三十七話 伝説の姉畑
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第三十七話 伝説の姉畑
結局、二日間は動きがなかった。
このまま最終日もだめかもしれない……と考えながら小熊のオリに入れられた谷垣さんをぼんやりと見つめる。
この二日間私たちは何もしていない。
否、何もしていないフリをしていた。
どうせ尾形さんのことだから皆殺しまでとはいかずとも、逃げることは絶対にするだろうと踏んで、私は武器の手入れを怠らなかった。
そして私たちが逃げてから時間稼ぎをできるように、見張りをしているところの近くからいくつか藁でできた袋やゴザのようなものを集めていた。
「まったく、お前はしたたかだなァ。」
「褒めてくださってます?」
尾形さんがニタニタと笑う。
せっせと抜け出す準備をしている私をあざ笑うが、尾形さんも同様に準備をしていることを私は知っている。
なんだかんだ褒めてくれているんだろうと、前向きに捉えることにした。
そして最終日の早朝、私たちは抜け出した。
尾形さんはこの二日間いつも外套のフードを深く被って顔を隠し、しかも私をいつも小屋の奥に追いやっていたため、遠目で見たら私たちが抜け出したのはわからないだろう。
この二日間食事を運んでくださったり、寒くないかと毛布をくれたりと優しい人もいたので、少し心苦しい。
私は兵舎から逃げ出した日のことを重ねてしまい、寂しく感じていた。
小熊の檻へ近づき、こっそりと声をかける。
「谷垣さん、こっちへ。」
「夢主……!?」
私がオリを開けて谷垣さんを引っ張り出す。
驚いた様子の谷垣さんだったが、私と尾形さんが抜け出したという状況をすぐに理解してくれた。
杉元さんたちを信じて待つつもりだったらしい谷垣さんだったが、尾形さんが「直接制裁しても良かったのだぞ」と言い放つと何も言わなかった。
三人で草原を走って、杉元さんたちを探し回る。
道中、外套を置いてきてしまった尾形さんが心配になった。
「尾形さん寒くないですか?」
「なんだァ?あっためてくれるのか?」
「ばっ……違いますよ。」
危ない、思わずバカって言いそうになった。
そのやりとりを見ていた谷垣さんが、こっそりフフフと笑ったのを私は知っている。
あーあ何も言ってないのに、なんか皆私たちを夫婦かカップルだと思っている様子。
尾形さんと私ってお似合い?
嬉しいけれど、公言する前にバレバレなのは複雑だなぁ。
そもそもキスされただけで、何も約束事はしてないはずなんだけどなぁ。
いや、愛すって言っちゃったからアレがそうなのかな……うーん。
悩んでいると銃声が聞こえてきて急に現実に引き戻された。
「あっちの方……!」
聞こえてきた方を指さして、三人でそちらへ向かう。
恐らく杉元さんが姉畑を見つけたのだろう。
しかし、この銃声を聞いてアイヌの人たちも追ってきてしまうことだろう。
どうしたものかと焦りつつ考えていると、急に前を走っていた尾形さんが止まった。
ボスッと背中に顔面をぶつけて「むうっ!」と叫び声が出た。
「うう、どうしたんですか……え?」
そう言いかけて私も唖然とした。
谷垣さんも言葉をなくしていた。
大草原の真っ只中で、姉畑と思われる男がヒグマに思いっきり自分のブツを突き刺した瞬間を見てしまったのだ。
いつの間にか追い付いてきていたアイヌの人たちもそれを見て呆然としている。
杉元さんがそれを止めようと走るが、姉畑はそのまま息絶えていた。
腹上死ってやつ……?
ドン引きしていると杉元さんがアシリパさんの毒矢を拾ってヒグマに刺し、自分は沼地に身を隠した。
その数秒後、ヒグマはバタリと倒れこんだ。
やった……勝った。
それに、犯行現場をアイヌの人たちも見たわけだから、谷垣さんへの誤解は解けたんだ。
一気に力が抜けた。
皆でヒグマと姉畑の亡骸に駆け寄る。
姉畑を憐れむ杉元さんに、アシリパさんが怒る。
確かに動物を愛していたならば、なんでそのあとに殺すんだろう。
最初からウコチャヌプコロする前に考えれば良かったのだ。
それをしないのは何故だと杉元さんに問い詰めるアシリパさん。
杉元さんが明らかに何か言いたげにしていたが言葉を飲み込んでいる。
私が不思議そうに見ていると、真横で尾形さんが言い放つ。
「男ってのは出すもの出すとそうなんのよ。」
「賢者タイムってやつか……。」
「は?」
「いーえ、なんでもございません。」
思わず現世でよく言われているアレか……と呟くと尾形さんには聞こえていたようで、聞き返されてしまう。
危ない危ない、未来の言葉を使うメリットはないものね。
【あとがき:原作に出てくるぶっとんだ変態は大体すぐ死ぬ説。】
結局、二日間は動きがなかった。
このまま最終日もだめかもしれない……と考えながら小熊のオリに入れられた谷垣さんをぼんやりと見つめる。
この二日間私たちは何もしていない。
否、何もしていないフリをしていた。
どうせ尾形さんのことだから皆殺しまでとはいかずとも、逃げることは絶対にするだろうと踏んで、私は武器の手入れを怠らなかった。
そして私たちが逃げてから時間稼ぎをできるように、見張りをしているところの近くからいくつか藁でできた袋やゴザのようなものを集めていた。
「まったく、お前はしたたかだなァ。」
「褒めてくださってます?」
尾形さんがニタニタと笑う。
せっせと抜け出す準備をしている私をあざ笑うが、尾形さんも同様に準備をしていることを私は知っている。
なんだかんだ褒めてくれているんだろうと、前向きに捉えることにした。
そして最終日の早朝、私たちは抜け出した。
尾形さんはこの二日間いつも外套のフードを深く被って顔を隠し、しかも私をいつも小屋の奥に追いやっていたため、遠目で見たら私たちが抜け出したのはわからないだろう。
この二日間食事を運んでくださったり、寒くないかと毛布をくれたりと優しい人もいたので、少し心苦しい。
私は兵舎から逃げ出した日のことを重ねてしまい、寂しく感じていた。
小熊の檻へ近づき、こっそりと声をかける。
「谷垣さん、こっちへ。」
「夢主……!?」
私がオリを開けて谷垣さんを引っ張り出す。
驚いた様子の谷垣さんだったが、私と尾形さんが抜け出したという状況をすぐに理解してくれた。
杉元さんたちを信じて待つつもりだったらしい谷垣さんだったが、尾形さんが「直接制裁しても良かったのだぞ」と言い放つと何も言わなかった。
三人で草原を走って、杉元さんたちを探し回る。
道中、外套を置いてきてしまった尾形さんが心配になった。
「尾形さん寒くないですか?」
「なんだァ?あっためてくれるのか?」
「ばっ……違いますよ。」
危ない、思わずバカって言いそうになった。
そのやりとりを見ていた谷垣さんが、こっそりフフフと笑ったのを私は知っている。
あーあ何も言ってないのに、なんか皆私たちを夫婦かカップルだと思っている様子。
尾形さんと私ってお似合い?
嬉しいけれど、公言する前にバレバレなのは複雑だなぁ。
そもそもキスされただけで、何も約束事はしてないはずなんだけどなぁ。
いや、愛すって言っちゃったからアレがそうなのかな……うーん。
悩んでいると銃声が聞こえてきて急に現実に引き戻された。
「あっちの方……!」
聞こえてきた方を指さして、三人でそちらへ向かう。
恐らく杉元さんが姉畑を見つけたのだろう。
しかし、この銃声を聞いてアイヌの人たちも追ってきてしまうことだろう。
どうしたものかと焦りつつ考えていると、急に前を走っていた尾形さんが止まった。
ボスッと背中に顔面をぶつけて「むうっ!」と叫び声が出た。
「うう、どうしたんですか……え?」
そう言いかけて私も唖然とした。
谷垣さんも言葉をなくしていた。
大草原の真っ只中で、姉畑と思われる男がヒグマに思いっきり自分のブツを突き刺した瞬間を見てしまったのだ。
いつの間にか追い付いてきていたアイヌの人たちもそれを見て呆然としている。
杉元さんがそれを止めようと走るが、姉畑はそのまま息絶えていた。
腹上死ってやつ……?
ドン引きしていると杉元さんがアシリパさんの毒矢を拾ってヒグマに刺し、自分は沼地に身を隠した。
その数秒後、ヒグマはバタリと倒れこんだ。
やった……勝った。
それに、犯行現場をアイヌの人たちも見たわけだから、谷垣さんへの誤解は解けたんだ。
一気に力が抜けた。
皆でヒグマと姉畑の亡骸に駆け寄る。
姉畑を憐れむ杉元さんに、アシリパさんが怒る。
確かに動物を愛していたならば、なんでそのあとに殺すんだろう。
最初からウコチャヌプコロする前に考えれば良かったのだ。
それをしないのは何故だと杉元さんに問い詰めるアシリパさん。
杉元さんが明らかに何か言いたげにしていたが言葉を飲み込んでいる。
私が不思議そうに見ていると、真横で尾形さんが言い放つ。
「男ってのは出すもの出すとそうなんのよ。」
「賢者タイムってやつか……。」
「は?」
「いーえ、なんでもございません。」
思わず現世でよく言われているアレか……と呟くと尾形さんには聞こえていたようで、聞き返されてしまう。
危ない危ない、未来の言葉を使うメリットはないものね。
【あとがき:原作に出てくるぶっとんだ変態は大体すぐ死ぬ説。】