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第三十二話 詐欺師
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第三十二話 詐欺師
気付くと辺りは静かになっていて、ほとんどを杉元さんが倒し、牛山さんは熊を放り投げてきたそうだ。
冗談かと思ったが牛山さんならやりかねない。
杉元さんはアシリパさんと合流できたようだ。
良かった、アシリパさんは無事みたい。
出来ればもう二度とアシリパさんと杉元さんは離れてほしくない。
あんな恐ろしい殺気を放つ杉元さんは見たくない。
アイヌの女の人たちが総出で囚人たちの死体を運び出す。
まとめて埋葬するようだ。
私たちも穴を掘るお手伝いをすることにした。
「ちょっと、尾形さん……やめましょうよ……。」
容赦なく死体を漁る尾形さんにドン引きして注意する。
「弾や火薬が必要なんだよ。こいつらも俺に使ってもらった方が嬉しいだろうよ。」
そう言って指先でくすねた銃弾を弄っている尾形さん。
表情が活き活きとしていて、この人は本当に銃が好きだな……と呆れた。
「えっこの人が熊岸長庵?贋作師の……?」
私が驚くと、アシリパさんが頷いた。
死ぬ瞬間まで近くにいたとのこと。
「偽札を作らされていたそうだ。……私のことも逃がそうとしてくれていたのに、助けられなかった。」
「……アシリパさんは悪くないですよ。」
「ありがとう夢主。」
小さな肩にそっと手を置くとアシリパさんは笑ってくれた。
この子は小さい体でどれだけのものを背負っているんだろうか。
強い力のある瞳に少しの間見惚れた。
埋葬が終わると、アイヌの女性が何か語り掛ける。
周りの女性の表情を読むに、今日のことは忘れよう……的な感じだろうか。
アイヌの人たちは私たちにお礼をしたいとのことで、料理でもてなしてくれるそうだ。
トゥレプ(オオバユリ)の料理だそうだ。
道中でアシリパさんから聞いた、アイヌのオオバユリにちなんだカップルの可愛らしいお話を思い出す。
どんな味がするのか楽しみだ。
私たちも料理を作るお手伝いをすることになった。
実際作っている過程を見るのも楽しい。
尾形さんは杵と臼でゆり根を突き潰す作業を微妙な表情で見ている。
「どうしたんですか、尾形さん。」
「それさっき囚人の頭を殴ってたやつだろ。」
「えー?まさかぁ?」
私が笑い飛ばすが、アイヌの女性たちは涼しい顔をしていた。
もしかして……本当に?
でもみんな気にしてないし……血とかついてないから大丈夫だよね?
料理の過程は、アシリパさんが逐一解説してくれる。
先ほど潰したものを水で濾すとでんぷんがたまるそうだ。
今回は貴重な一番粉で筒焼きや団子をくださるそう。
皆で出来上がったくずきりのような筒焼きをいただく。
ほんのり甘くておいしい。
「ヒンナヒンナ。」
私がそう言うと、アイヌの女の人たちは喜んだ。
わかる、わかるよ。外国人が自分の国の言葉を喋ってくれると嬉しいよね。
ちょっとした海外留学気分だ。
次はお団子。
あーこれはこれでいい。あんことか味噌とかほしくなる。
……ん?味噌ということは?
チラ、と杉元さんの方へ視線をやると、もう味噌を出していてアシリパさんがそれを凄い勢いでかっ攫う。
味噌をつけて食べながら「オソマおいしい」と何度も言うアシリパさん。
アイヌの女性は皆オソマ……?とザワザワとする。
「アシリパさん、うんこ食べてると思われてますよ。」
私がそう教えてあげると、アシリパさんはキラキラとした目でアイヌの女性に何やら説明して勧めている。
大方、これは食べられるオソマだとでもいったのだろう。
恐る恐るといったようすで味噌を食べた女性たちは、味噌が思いの外美味しかったのだろう、顔をほころばせた。
そして皆で何やら話てこちらに微笑んでくる。
「私がオオバユリの神様のようだって。」
「何かお話があるんですか?」
聞いてみると、ちょっと変態な登場人物の多い昔話を聞かされる。
食べ物の神様が人の姿をして現れて、脱糞したものを食わせてくる。
食べないと罵倒されるが、食べたら良い味がするそうだ。
人間に感謝されて祀られないと神になれないからだそうだが、どうもレベルの高い変態の話にしか思えない。
「登場人物全員変態かよ。」
杉元さんのツッコミはごもっともだ。
さて、おなかも膨れたところで、今日の争いで明らかになった刺青の囚人をどうするかという話になる。
長老のフリをしていた尾形さんに小指をぶん殴られた男。
この人が詐欺師の鈴川聖弘だそうだ。
鈴川の今後をどうするか話し合う。
アイヌの女性たちは皆関わりたくないということで一致した様子。
鈴川は他の囚人の情報がある!と命乞いをする。
それが本当か嘘かわからないが、遅かれ早かれ杉元さんが舌を抜くか閻魔様が抜くかの違いだと笑った。
では土方さんたちとも合流をしなくてはいけないし、そろそろ出発しようとする。
しかしアイヌの女性たちがチンポ先生(牛山さん)を気に入ってしまったようで、呼び止められる。
「子種だけおいていけないだろうか……」
そう駄々をこねる牛山さんを杉元さんとなぜか鈴川が両脇で抱えて進む。
地面に残った牛山さんを引きずった跡が、あきらかに足二本とは別にもう一本分あって私は顔を強ばらせた。
地面をえぐり取るほどの力……。
「この人数全員と子作りするつもりなの凄くないですか?」
「……。」
先を歩き出した尾形さんについて行きながら小声で話しかけると尾形さんはフン、と鼻で笑った。
俺だってデキる、という見栄だろうか。
私も仕返しにバカにしたように、やれやれ、と肩をすくめて見せた。
「弱みにつけこむのは良くないぞ、牛山。責任とれるのか?」
杉元さんが牛山さんにお説教すると、アシリパさんが割り込む。
「弱くなんかない。したたかなのは夢主だけじゃないぞ、アイヌの女だってしたたかなんだ。このコタンは必ず生き返る。」
「ちょっと、アシリパさん?一言多くなかったですか?」
聞き捨てならない台詞に驚いてツッコミを入れると、先を歩いていた尾形さんがハハッと笑った。
尾形さん……アシリパさんに何を教えたんだ……。
っていうか、私が尾形さんに何か仕掛けると速攻でやり返される流れがいつからか出来上がっている!
【あとがき:一進一退の攻防。】
気付くと辺りは静かになっていて、ほとんどを杉元さんが倒し、牛山さんは熊を放り投げてきたそうだ。
冗談かと思ったが牛山さんならやりかねない。
杉元さんはアシリパさんと合流できたようだ。
良かった、アシリパさんは無事みたい。
出来ればもう二度とアシリパさんと杉元さんは離れてほしくない。
あんな恐ろしい殺気を放つ杉元さんは見たくない。
アイヌの女の人たちが総出で囚人たちの死体を運び出す。
まとめて埋葬するようだ。
私たちも穴を掘るお手伝いをすることにした。
「ちょっと、尾形さん……やめましょうよ……。」
容赦なく死体を漁る尾形さんにドン引きして注意する。
「弾や火薬が必要なんだよ。こいつらも俺に使ってもらった方が嬉しいだろうよ。」
そう言って指先でくすねた銃弾を弄っている尾形さん。
表情が活き活きとしていて、この人は本当に銃が好きだな……と呆れた。
「えっこの人が熊岸長庵?贋作師の……?」
私が驚くと、アシリパさんが頷いた。
死ぬ瞬間まで近くにいたとのこと。
「偽札を作らされていたそうだ。……私のことも逃がそうとしてくれていたのに、助けられなかった。」
「……アシリパさんは悪くないですよ。」
「ありがとう夢主。」
小さな肩にそっと手を置くとアシリパさんは笑ってくれた。
この子は小さい体でどれだけのものを背負っているんだろうか。
強い力のある瞳に少しの間見惚れた。
埋葬が終わると、アイヌの女性が何か語り掛ける。
周りの女性の表情を読むに、今日のことは忘れよう……的な感じだろうか。
アイヌの人たちは私たちにお礼をしたいとのことで、料理でもてなしてくれるそうだ。
トゥレプ(オオバユリ)の料理だそうだ。
道中でアシリパさんから聞いた、アイヌのオオバユリにちなんだカップルの可愛らしいお話を思い出す。
どんな味がするのか楽しみだ。
私たちも料理を作るお手伝いをすることになった。
実際作っている過程を見るのも楽しい。
尾形さんは杵と臼でゆり根を突き潰す作業を微妙な表情で見ている。
「どうしたんですか、尾形さん。」
「それさっき囚人の頭を殴ってたやつだろ。」
「えー?まさかぁ?」
私が笑い飛ばすが、アイヌの女性たちは涼しい顔をしていた。
もしかして……本当に?
でもみんな気にしてないし……血とかついてないから大丈夫だよね?
料理の過程は、アシリパさんが逐一解説してくれる。
先ほど潰したものを水で濾すとでんぷんがたまるそうだ。
今回は貴重な一番粉で筒焼きや団子をくださるそう。
皆で出来上がったくずきりのような筒焼きをいただく。
ほんのり甘くておいしい。
「ヒンナヒンナ。」
私がそう言うと、アイヌの女の人たちは喜んだ。
わかる、わかるよ。外国人が自分の国の言葉を喋ってくれると嬉しいよね。
ちょっとした海外留学気分だ。
次はお団子。
あーこれはこれでいい。あんことか味噌とかほしくなる。
……ん?味噌ということは?
チラ、と杉元さんの方へ視線をやると、もう味噌を出していてアシリパさんがそれを凄い勢いでかっ攫う。
味噌をつけて食べながら「オソマおいしい」と何度も言うアシリパさん。
アイヌの女性は皆オソマ……?とザワザワとする。
「アシリパさん、うんこ食べてると思われてますよ。」
私がそう教えてあげると、アシリパさんはキラキラとした目でアイヌの女性に何やら説明して勧めている。
大方、これは食べられるオソマだとでもいったのだろう。
恐る恐るといったようすで味噌を食べた女性たちは、味噌が思いの外美味しかったのだろう、顔をほころばせた。
そして皆で何やら話てこちらに微笑んでくる。
「私がオオバユリの神様のようだって。」
「何かお話があるんですか?」
聞いてみると、ちょっと変態な登場人物の多い昔話を聞かされる。
食べ物の神様が人の姿をして現れて、脱糞したものを食わせてくる。
食べないと罵倒されるが、食べたら良い味がするそうだ。
人間に感謝されて祀られないと神になれないからだそうだが、どうもレベルの高い変態の話にしか思えない。
「登場人物全員変態かよ。」
杉元さんのツッコミはごもっともだ。
さて、おなかも膨れたところで、今日の争いで明らかになった刺青の囚人をどうするかという話になる。
長老のフリをしていた尾形さんに小指をぶん殴られた男。
この人が詐欺師の鈴川聖弘だそうだ。
鈴川の今後をどうするか話し合う。
アイヌの女性たちは皆関わりたくないということで一致した様子。
鈴川は他の囚人の情報がある!と命乞いをする。
それが本当か嘘かわからないが、遅かれ早かれ杉元さんが舌を抜くか閻魔様が抜くかの違いだと笑った。
では土方さんたちとも合流をしなくてはいけないし、そろそろ出発しようとする。
しかしアイヌの女性たちがチンポ先生(牛山さん)を気に入ってしまったようで、呼び止められる。
「子種だけおいていけないだろうか……」
そう駄々をこねる牛山さんを杉元さんとなぜか鈴川が両脇で抱えて進む。
地面に残った牛山さんを引きずった跡が、あきらかに足二本とは別にもう一本分あって私は顔を強ばらせた。
地面をえぐり取るほどの力……。
「この人数全員と子作りするつもりなの凄くないですか?」
「……。」
先を歩き出した尾形さんについて行きながら小声で話しかけると尾形さんはフン、と鼻で笑った。
俺だってデキる、という見栄だろうか。
私も仕返しにバカにしたように、やれやれ、と肩をすくめて見せた。
「弱みにつけこむのは良くないぞ、牛山。責任とれるのか?」
杉元さんが牛山さんにお説教すると、アシリパさんが割り込む。
「弱くなんかない。したたかなのは夢主だけじゃないぞ、アイヌの女だってしたたかなんだ。このコタンは必ず生き返る。」
「ちょっと、アシリパさん?一言多くなかったですか?」
聞き捨てならない台詞に驚いてツッコミを入れると、先を歩いていた尾形さんがハハッと笑った。
尾形さん……アシリパさんに何を教えたんだ……。
っていうか、私が尾形さんに何か仕掛けると速攻でやり返される流れがいつからか出来上がっている!
【あとがき:一進一退の攻防。】