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第二十七話 大所帯になりました
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第二十七話 大所帯になりました
「牛山さん……!」
「夢主、どうだ俺はかっこよかっただろう。」
「凄かったです!」
牛山さんが杉元さんと白石さんを助けたところに駆け寄る。
得意気に笑う牛山さんに、何度も頭を下げてお礼を言った。
良かった、杉元さんたちが生きていて。
ふと視線をずらすとアイヌの姿をした男性がいた。
のっぺらぼうの話をしたときに、土方さんがアイヌになりすましている人がいると言っていたことを思い出してつい警戒してしまう。
しかし、その男性の隣にいる少女に見覚えがあったことに気が付いて、思わず声を上げた。
「えっと、確か……アシリパさん?でしたよね?」
「む。この女、以前に会ったぞ。兵隊の女だ。杉元が言っていた新しい時代の女か?なんでチンポ先生と一緒にいる?」
カサカサのはんぺんを持ったアシリパさんがサラリととんでもないことを言ったので私はギョッとして牛山さんを見る。
「小さい子になんてこと……」
じろり、と牛山さんへ視線をやると、牛山さんは焦った様子で言い訳を始めた。
「いや違うんだ、男はチンポの大きさだけじゃないっていう話をだな……!」
「違わないです!最低!」
しどろもどろになった牛山さんに最低!と叫ぶと牛山さんは力なく崩れ落ちた。
なんだか牛山さんのこの姿、前にも見たことある気がするな。
お団子の賭け?で負けた時の姿と同じだ。
柔道では膝などつく様子を見せない屈強な牛山さんだけれど、私の言動では簡単に膝をついてうなだれている。
強いのか弱いのかイマイチ掴めない人だ。
私たちがぎゃあぎゃあ騒いでいると、一息ついたらしい杉元さんたちが声をかけてきた。
二人共私と同じで煤まみれだ。
「やあ夢主ちゃん、また会ったね。」
「杉元さん……ご無事で良かったです。」
ぺこ、と頭を下げて顔を上げると、目の前いっぱいに白石さんがいて、思わずビクッと体をこわばらせてしまった。
「はじめまして。白石由竹といいます付き合ったら一途です。」
「……はあ。」
この人剥製屋の中で私と尾形さんの二人で脅したこと覚えてないのかな?
いや、杉元さんにスパイだとバレるのを恐れているからかもしれない。
それとも、何もかも分かったうえで事情をすべてすっ飛ばしてナンパしてるのか?
とりあえず曖昧に笑っておいたが、手を強く握りしめられて困ってしまった。
「なんで牛山とか夢主ちゃんとかがこんなところに……?」
杉元さんは白石さんの挙動を見慣れているのか全く動じない。
白石さんを無視するかのように杉元さんに不思議そうに問いかけられて、答えるのに戸惑ってしまった。
何から話せば良いのかしら。
尾形さんが代わりに口を開いた。
「連れがふらっといなくなってな、探していたらお前らがトロッコに乗るのが見つけたんだ。」
「連れ?」
杉元さんがそう聞き返しているとき、私と白石さんの間に銃身がザッと出てきた。
そして私たちに距離を取らせるようにそのまま銃を左右に振って私たちを捌けさせる。
思わず私と白石さんは後ずさった。
「ちょっと、尾形さん。」
私と白石さんの間に姿を現して距離を取らせることに成功したことで少し満足そうにしつつ、尾形さんは前髪を撫で上げながら言った。
「しょうがねえ、そいつら連れてついてこい。」
先ほどの剥製屋の屋敷に尾形さん、私、牛山さん、杉元さん、白石さん、アシリパさん、そしてアイヌの姿をした男性で入る。
「牛山さん、土方さんは呼びましたか?」
「ああ、もうすぐ来るだろう。」
そんなやりとりをしている間に尾形さんは鶴見中尉が刺青人皮の偽物を作ったことについて語る。
恐らく偽物は6枚。
剥製屋の江渡貝さんが炭鉱で亡くなっているのを尾形さんは見ていたそうだ。
いつの間に?私は逃げるのに必死で全く気づかなかった。
月島さんが生きていれば、この偽物が流通することも想定しなければならない。
私は刺青人皮の偽物が流通するのは嫌だけど、月島さんには生きていてほしいと思う。矛盾しているけれど。
尾形さんに言ったら殺されそうだから内緒だけど。
遅れて土方さんが、猫と忘れ物の刺青人皮を抱えて入ってきた。
「この忘れ物がどっちなのか……判別する方法を探さねば。」
「土方さん……!」
土方さんが来れば一安心だ。
話がまとまりやすくなるだろうと安堵した。
土方さんは私を見ると片方の眉を上げた。
「おお夢主、可哀想に。煤だらけではないか。尾形が守ってくれなかったのかね?」
チラリと尾形さんを見やる土方さん。
尾形さんは無表情だが、恐らく内心ではかなりムッとしていることだろう。
私は慌てて首を横に振った。
「いいえ、尾形さんが守ってくださったから、私はこうして生きているのです。」
今日は本当に助けられたので、きちんとフォローした。
尾形さんはフンスとドヤ顔をかましている。
土方さんは私たちの様子をおやおやと意味深に笑ってそのまま何も言わなかった。
そして土方さんたちと杉元さんたちで手を組むかどうか、という話し合いになる。
話し合いというほど穏やかでもなく、殺気に満ちたピリッとした空気が立ち込めた。
ん?アシリパさんの父がのっぺらぼう……?
話の中で今確かにそう言いかけたのを、土方さんが不自然に遮った。
この時、私は尾形さんが恐ろしく冷たい眼差しでアシリパさんを見ているのに気づいてしまったが、なんだか見てはいけないものだったような気がして、つい何も見ていないフリをした。
いまだに尾形さんの旅の目的がわからない。
これまで何回も聞いてみたものの、「お前にはわからない。」と冷たくあしらわれてきた。
鶴見中尉を裏切ったのも、月島さんが言っていたように本部への貢ぎ物なのだろうか。
深入りしない方が良いと直感が告げる。
もしも知ってしまったら旅から追い出されてしまいそうだった。
今の私には元の世界に戻ることよりも、尾形さんに見捨てられることの方が怖かった。
ピリピリした空気の中、遅れて永倉さんも入ってくる。
ということは、家永さんも揃ったはずだ。
このタイミングで全員が集結した。
さあ杉元さんたちは仲間になってくれるだろうか。
返事を待ち私はごくりと生唾を飲み込む。
その時、この場の緊張感に似合わない音が響き渡った。
ぐるぐるぐるやコロコロコロ……
「あの……アシリパさん。」
「私のおなかだ。」
そっか、おなかか……。
「わたくしが何か作りましょうか。」
家永さんが手を上げた。
私も慌てて挙手した。
「私もお手伝いします。」
この場は一旦お開きになった。
良かった、結構気まずかったのよね。
その間に皆には食事ができるように机や椅子を準備してもらう。
この屋敷の台所を借りて家永さんと二人で料理した。
この屋敷には江渡貝という剥製屋しかいなかったはずなのに、なぜか大所帯分の食器が揃っていた。
部屋に鍋を運ぶと驚いた。
「なんで横一列なんですか?」
わざわざ机をまっすぐに並べてあり驚く。
不自然すぎる。
「夢主はここだ。」
尾形さんの隣を指さされる。
……これ見たことあるな。
尾形さんに思わず聞いてしまう。
「これって、キリストのやつですか……?」
「ハハ、何を言っているのかさっぱりだ。」
くそう、はぐらかされた。
でも絶対そう。
尾形さんの位置、裏切り者の場所にいるんだもの。
わざとなのかな?なんだか不吉でしょうがない。
仕方ないなあ、付き合ってやるかと、かの有名な構図になるように私も立ち位置を直してあげた。
ノリが良い面子が揃っているようで、皆何も言わずにこの長い机で食事をしていた。
みんな……本当に最後の晩餐になっても知らないよ。
杉元さんが話の途中でこちらに視線をやる
「あんたらその顔ぶれで良く手が組めてるな。特にそこの鶴見中尉の手下だった男。夢主ちゃんまで巻き込んで……。一度寝返ったやつはまた寝返るぜ。」
「わ、私は別に……。」
「杉元ォ……。」
違うんです自分でついて行ってるんです、と言おうとしたのに、尾形さんがおもむろに遮る。
「お前には殺されかけたが俺は根に持つ性格じゃねえ……でも今のは傷ついたよ。」
いやぁ……尾形さん、全く傷ついてはいないなこれ。
むしろ楽しんで煽っている。
私は呆れて二人の仲裁に入った。
「んもう、喧嘩しないでくださいよ。」
皆で、さてこれからどうしようかと話し合う。
偽物が出回ったのなら、偽札犯で有名な熊岸長庵をあたろうと話がまとまった。
「まずは偽物が鶴見中尉のもとに届いてしまっているかどうか、確認しないとですね。」
「そうだな。では二手に分かれて動こう。杉元たちと牛山は炭鉱で月島軍曹が生きているか探してくれ。残りはここの屋敷の中を捜索だ。」
よーし頑張るぞ。
月島さん、無事でいてほしいけどな。
【あとがき:モツ煮食べるとお酒欲しくなりませんか?】
「牛山さん……!」
「夢主、どうだ俺はかっこよかっただろう。」
「凄かったです!」
牛山さんが杉元さんと白石さんを助けたところに駆け寄る。
得意気に笑う牛山さんに、何度も頭を下げてお礼を言った。
良かった、杉元さんたちが生きていて。
ふと視線をずらすとアイヌの姿をした男性がいた。
のっぺらぼうの話をしたときに、土方さんがアイヌになりすましている人がいると言っていたことを思い出してつい警戒してしまう。
しかし、その男性の隣にいる少女に見覚えがあったことに気が付いて、思わず声を上げた。
「えっと、確か……アシリパさん?でしたよね?」
「む。この女、以前に会ったぞ。兵隊の女だ。杉元が言っていた新しい時代の女か?なんでチンポ先生と一緒にいる?」
カサカサのはんぺんを持ったアシリパさんがサラリととんでもないことを言ったので私はギョッとして牛山さんを見る。
「小さい子になんてこと……」
じろり、と牛山さんへ視線をやると、牛山さんは焦った様子で言い訳を始めた。
「いや違うんだ、男はチンポの大きさだけじゃないっていう話をだな……!」
「違わないです!最低!」
しどろもどろになった牛山さんに最低!と叫ぶと牛山さんは力なく崩れ落ちた。
なんだか牛山さんのこの姿、前にも見たことある気がするな。
お団子の賭け?で負けた時の姿と同じだ。
柔道では膝などつく様子を見せない屈強な牛山さんだけれど、私の言動では簡単に膝をついてうなだれている。
強いのか弱いのかイマイチ掴めない人だ。
私たちがぎゃあぎゃあ騒いでいると、一息ついたらしい杉元さんたちが声をかけてきた。
二人共私と同じで煤まみれだ。
「やあ夢主ちゃん、また会ったね。」
「杉元さん……ご無事で良かったです。」
ぺこ、と頭を下げて顔を上げると、目の前いっぱいに白石さんがいて、思わずビクッと体をこわばらせてしまった。
「はじめまして。白石由竹といいます付き合ったら一途です。」
「……はあ。」
この人剥製屋の中で私と尾形さんの二人で脅したこと覚えてないのかな?
いや、杉元さんにスパイだとバレるのを恐れているからかもしれない。
それとも、何もかも分かったうえで事情をすべてすっ飛ばしてナンパしてるのか?
とりあえず曖昧に笑っておいたが、手を強く握りしめられて困ってしまった。
「なんで牛山とか夢主ちゃんとかがこんなところに……?」
杉元さんは白石さんの挙動を見慣れているのか全く動じない。
白石さんを無視するかのように杉元さんに不思議そうに問いかけられて、答えるのに戸惑ってしまった。
何から話せば良いのかしら。
尾形さんが代わりに口を開いた。
「連れがふらっといなくなってな、探していたらお前らがトロッコに乗るのが見つけたんだ。」
「連れ?」
杉元さんがそう聞き返しているとき、私と白石さんの間に銃身がザッと出てきた。
そして私たちに距離を取らせるようにそのまま銃を左右に振って私たちを捌けさせる。
思わず私と白石さんは後ずさった。
「ちょっと、尾形さん。」
私と白石さんの間に姿を現して距離を取らせることに成功したことで少し満足そうにしつつ、尾形さんは前髪を撫で上げながら言った。
「しょうがねえ、そいつら連れてついてこい。」
先ほどの剥製屋の屋敷に尾形さん、私、牛山さん、杉元さん、白石さん、アシリパさん、そしてアイヌの姿をした男性で入る。
「牛山さん、土方さんは呼びましたか?」
「ああ、もうすぐ来るだろう。」
そんなやりとりをしている間に尾形さんは鶴見中尉が刺青人皮の偽物を作ったことについて語る。
恐らく偽物は6枚。
剥製屋の江渡貝さんが炭鉱で亡くなっているのを尾形さんは見ていたそうだ。
いつの間に?私は逃げるのに必死で全く気づかなかった。
月島さんが生きていれば、この偽物が流通することも想定しなければならない。
私は刺青人皮の偽物が流通するのは嫌だけど、月島さんには生きていてほしいと思う。矛盾しているけれど。
尾形さんに言ったら殺されそうだから内緒だけど。
遅れて土方さんが、猫と忘れ物の刺青人皮を抱えて入ってきた。
「この忘れ物がどっちなのか……判別する方法を探さねば。」
「土方さん……!」
土方さんが来れば一安心だ。
話がまとまりやすくなるだろうと安堵した。
土方さんは私を見ると片方の眉を上げた。
「おお夢主、可哀想に。煤だらけではないか。尾形が守ってくれなかったのかね?」
チラリと尾形さんを見やる土方さん。
尾形さんは無表情だが、恐らく内心ではかなりムッとしていることだろう。
私は慌てて首を横に振った。
「いいえ、尾形さんが守ってくださったから、私はこうして生きているのです。」
今日は本当に助けられたので、きちんとフォローした。
尾形さんはフンスとドヤ顔をかましている。
土方さんは私たちの様子をおやおやと意味深に笑ってそのまま何も言わなかった。
そして土方さんたちと杉元さんたちで手を組むかどうか、という話し合いになる。
話し合いというほど穏やかでもなく、殺気に満ちたピリッとした空気が立ち込めた。
ん?アシリパさんの父がのっぺらぼう……?
話の中で今確かにそう言いかけたのを、土方さんが不自然に遮った。
この時、私は尾形さんが恐ろしく冷たい眼差しでアシリパさんを見ているのに気づいてしまったが、なんだか見てはいけないものだったような気がして、つい何も見ていないフリをした。
いまだに尾形さんの旅の目的がわからない。
これまで何回も聞いてみたものの、「お前にはわからない。」と冷たくあしらわれてきた。
鶴見中尉を裏切ったのも、月島さんが言っていたように本部への貢ぎ物なのだろうか。
深入りしない方が良いと直感が告げる。
もしも知ってしまったら旅から追い出されてしまいそうだった。
今の私には元の世界に戻ることよりも、尾形さんに見捨てられることの方が怖かった。
ピリピリした空気の中、遅れて永倉さんも入ってくる。
ということは、家永さんも揃ったはずだ。
このタイミングで全員が集結した。
さあ杉元さんたちは仲間になってくれるだろうか。
返事を待ち私はごくりと生唾を飲み込む。
その時、この場の緊張感に似合わない音が響き渡った。
ぐるぐるぐるやコロコロコロ……
「あの……アシリパさん。」
「私のおなかだ。」
そっか、おなかか……。
「わたくしが何か作りましょうか。」
家永さんが手を上げた。
私も慌てて挙手した。
「私もお手伝いします。」
この場は一旦お開きになった。
良かった、結構気まずかったのよね。
その間に皆には食事ができるように机や椅子を準備してもらう。
この屋敷の台所を借りて家永さんと二人で料理した。
この屋敷には江渡貝という剥製屋しかいなかったはずなのに、なぜか大所帯分の食器が揃っていた。
部屋に鍋を運ぶと驚いた。
「なんで横一列なんですか?」
わざわざ机をまっすぐに並べてあり驚く。
不自然すぎる。
「夢主はここだ。」
尾形さんの隣を指さされる。
……これ見たことあるな。
尾形さんに思わず聞いてしまう。
「これって、キリストのやつですか……?」
「ハハ、何を言っているのかさっぱりだ。」
くそう、はぐらかされた。
でも絶対そう。
尾形さんの位置、裏切り者の場所にいるんだもの。
わざとなのかな?なんだか不吉でしょうがない。
仕方ないなあ、付き合ってやるかと、かの有名な構図になるように私も立ち位置を直してあげた。
ノリが良い面子が揃っているようで、皆何も言わずにこの長い机で食事をしていた。
みんな……本当に最後の晩餐になっても知らないよ。
杉元さんが話の途中でこちらに視線をやる
「あんたらその顔ぶれで良く手が組めてるな。特にそこの鶴見中尉の手下だった男。夢主ちゃんまで巻き込んで……。一度寝返ったやつはまた寝返るぜ。」
「わ、私は別に……。」
「杉元ォ……。」
違うんです自分でついて行ってるんです、と言おうとしたのに、尾形さんがおもむろに遮る。
「お前には殺されかけたが俺は根に持つ性格じゃねえ……でも今のは傷ついたよ。」
いやぁ……尾形さん、全く傷ついてはいないなこれ。
むしろ楽しんで煽っている。
私は呆れて二人の仲裁に入った。
「んもう、喧嘩しないでくださいよ。」
皆で、さてこれからどうしようかと話し合う。
偽物が出回ったのなら、偽札犯で有名な熊岸長庵をあたろうと話がまとまった。
「まずは偽物が鶴見中尉のもとに届いてしまっているかどうか、確認しないとですね。」
「そうだな。では二手に分かれて動こう。杉元たちと牛山は炭鉱で月島軍曹が生きているか探してくれ。残りはここの屋敷の中を捜索だ。」
よーし頑張るぞ。
月島さん、無事でいてほしいけどな。
【あとがき:モツ煮食べるとお酒欲しくなりませんか?】