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第二十四話 パルチザン
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第二十四話 パルチザン
いつもは情報収集であちこちに散っていて揃わない生活だったが、たまたま全員が居間に集まっていた日のこと。
私が皆にお茶を出していると、尾形さんが突然口を開いた。
「ここには刺青人皮はいくつあるんだ?」
おかゆを家永さんに食べさせている牛山さんが答える。
「こっちにある刺青の暗号は、この俺牛山辰馬と、ここにいる家永、土方歳三、油紙に写した複製の暗号が2人分、そして尾形が茨戸で手に入れた1枚……合計6人分だ。」
その答えに尾形さんはやや暗い視線を土方さんへ向ける。
「変人とジジイとチンピラ集めて、蝦夷共和国の夢をもう一度か?一発は不意打ちでぶん殴れるかもしれんが、政府相手に戦い続けられる見通しはあるのかい?」
「尾形さん。」
少し失礼な物言いに私がたしなめるも、尾形さんはすぐ後ろで新聞を読んでいる土方さんに続けた。
「一矢報いるだけが目的じゃあアンタについていく人間が可哀想じゃないか?」
まったくもう、この人が饒舌なときは銃の説明をするときと悪口を言うときだけじゃないのかとすら思えてきた。
何も言えずただ呆れていると、特に答えない土方さんを見ずに尾形さんはこう聞いた。
「のっぺらぼうはアイヌなんだろ?」
そこから少し空気が変わる。
鶴見中尉が掴んでいた、のっぺらぼうが殺したアイヌたちの持ち物は、アイヌが死者を送るときの独特の手法の通り傷をつけられていたようだ。
これ、私が尾形さんに教えた情報なんですけど……まあいいか。
そしてようやく土方さんが口を開いた。
「おそらくのっぺらぼうはアイヌになりすました極東ロシアのパルチザンだ。」
「なに、それ?」
牛山さんが聞き慣れない単語を不思議そうに繰り返す。
「パルチザンというのは、内戦や革命時にゲリラ的な非正規の軍事活動をする民兵組織です。」
一応第七師団にいた頃に学び理解していた内容を牛山さんに説明してあげた。
牛山さんは「へぇ、夢主は物知りだな」と呟いたが、その後はロシアの勢力図を簡単に説明している土方さんをただ驚いた様子で見ていた。
土方さんの話をまとめると、つまりこの金塊騒動は極東ロシアの独立戦争に使おうとしていたアイヌの金塊を持ち出すのに、のっぺらぼうが失敗して起きた騒動のようだ。
「……ジイさんあんた、これっぽっちものっぺらぼうを信用していなかったんだな。ということは監獄の外にいるのっぺらぼうの仲間も……」
牛山さんと土方さんの表情は険しい。
「アイヌに成りすましたパルチザンの可能性が高い。」
私は表向きは「ふーん?」とぼんやりとした表情で聞いていたけれど、きっといつか活きる情報だろう。
覚えておかなくては、と内心気を引き締めていた。
皆が揃ったついでなので良い機会だと思い、「ちょっと質問いいですか」と手を上げた。
全員の視線が集まる。
「皆さんはこれで全員ですか?」
「どういう意味だ、夢主。」
土方さんがチラ、とこちらに視線を向ける。
「刺青を写した複製が2人分って言っていたじゃないですか。あれって誰と誰を写したんですか?」
ああ。と土方さんはニッと不敵に笑う。
年月を重ねてきた風格がありながら、表情は不思議と若々しさを感じるものだった。
「あれは杉元と一緒にいる白石由竹という男から得たものだ。」
「え、杉元さんと……!?」
思わず声をあげてしまった。
尾形さんが軽く私を睨んでいる。
「知り合いかね?まあ、不死身の杉元は有名だからな。」
「鶴見中尉が一度捕らえまして……勧誘に失敗しておりました。」
誤魔化せただろうか。
嘘はついてない。
ちらりと尾形さんを見やったが、もうこちらを見ていなかった。
「なるほど。では役に立つかな?」と土方さんは白石由竹の手配書を私と尾形さんにくれた。
そして、この男に「土方歳三の名を言えば言うことを聞くはずだ」とニッコリと笑って続けた。
なんとまあ恐ろしい人だこと。
土方さんて、鶴見中尉や尾形さんとはまた違った迫力のある人だな。
そんなこんなで情報共有をした私たちは、その日は解散。
特に用事もなさそうだったので、家事をある程度こなした後は、土方さんと永倉さんに頼んで剣術を見てもらうことになった。
やはり二人は覇気が違う。
対峙しているだけで圧倒される気迫がある。
これが熟練の剣士か……私にはまだまだ到達できない世界だ。
訓練がひと段落ついたところで三人で縁側に並んで座り休憩する。
「夢主は、なぜ剣術を?銃もあるし、女子ならば薙刀の方が扱いやすいと思うのだが。」
「そうだな、刀身が長ければその分距離も稼げるしな。」
永倉さんが問いかけてきて、土方さんもそれに同意する。
私は少し考えてから、言いにくかったけれども正直に答えた。
この人たちに嘘は通用しないだろうと思ったのだ。
「……長距離は尾形さんが必ず仕留めてくださりますから。私が近距離戦術を身に着ければいつかお役に立てるかと思いまして……。」
「ほう。」「……。」
ニヤ、と笑った土方さんと何も言わずにお茶を飲む永倉さん。
沈黙が流れてただただ気まずい。
そのまま見つめられてもどうしたら良いのかわからない。頼むから話題を変えてほしい。
「じゃあ、尾形を守れるくらいに強くならねばならないな。」
「は、はい。」
永倉さんが休憩終わり、と言って気合の入った様子で私を呼ぶ。
慌ててまた剣を構える私に土方さんは鋭い視線を送っていたが、私は気づいていないふりをした。
だって殺気混じりなんだもん……怖い!
【あとがき:ハーレムにイケオジ枠で土方歳三参戦!】
いつもは情報収集であちこちに散っていて揃わない生活だったが、たまたま全員が居間に集まっていた日のこと。
私が皆にお茶を出していると、尾形さんが突然口を開いた。
「ここには刺青人皮はいくつあるんだ?」
おかゆを家永さんに食べさせている牛山さんが答える。
「こっちにある刺青の暗号は、この俺牛山辰馬と、ここにいる家永、土方歳三、油紙に写した複製の暗号が2人分、そして尾形が茨戸で手に入れた1枚……合計6人分だ。」
その答えに尾形さんはやや暗い視線を土方さんへ向ける。
「変人とジジイとチンピラ集めて、蝦夷共和国の夢をもう一度か?一発は不意打ちでぶん殴れるかもしれんが、政府相手に戦い続けられる見通しはあるのかい?」
「尾形さん。」
少し失礼な物言いに私がたしなめるも、尾形さんはすぐ後ろで新聞を読んでいる土方さんに続けた。
「一矢報いるだけが目的じゃあアンタについていく人間が可哀想じゃないか?」
まったくもう、この人が饒舌なときは銃の説明をするときと悪口を言うときだけじゃないのかとすら思えてきた。
何も言えずただ呆れていると、特に答えない土方さんを見ずに尾形さんはこう聞いた。
「のっぺらぼうはアイヌなんだろ?」
そこから少し空気が変わる。
鶴見中尉が掴んでいた、のっぺらぼうが殺したアイヌたちの持ち物は、アイヌが死者を送るときの独特の手法の通り傷をつけられていたようだ。
これ、私が尾形さんに教えた情報なんですけど……まあいいか。
そしてようやく土方さんが口を開いた。
「おそらくのっぺらぼうはアイヌになりすました極東ロシアのパルチザンだ。」
「なに、それ?」
牛山さんが聞き慣れない単語を不思議そうに繰り返す。
「パルチザンというのは、内戦や革命時にゲリラ的な非正規の軍事活動をする民兵組織です。」
一応第七師団にいた頃に学び理解していた内容を牛山さんに説明してあげた。
牛山さんは「へぇ、夢主は物知りだな」と呟いたが、その後はロシアの勢力図を簡単に説明している土方さんをただ驚いた様子で見ていた。
土方さんの話をまとめると、つまりこの金塊騒動は極東ロシアの独立戦争に使おうとしていたアイヌの金塊を持ち出すのに、のっぺらぼうが失敗して起きた騒動のようだ。
「……ジイさんあんた、これっぽっちものっぺらぼうを信用していなかったんだな。ということは監獄の外にいるのっぺらぼうの仲間も……」
牛山さんと土方さんの表情は険しい。
「アイヌに成りすましたパルチザンの可能性が高い。」
私は表向きは「ふーん?」とぼんやりとした表情で聞いていたけれど、きっといつか活きる情報だろう。
覚えておかなくては、と内心気を引き締めていた。
皆が揃ったついでなので良い機会だと思い、「ちょっと質問いいですか」と手を上げた。
全員の視線が集まる。
「皆さんはこれで全員ですか?」
「どういう意味だ、夢主。」
土方さんがチラ、とこちらに視線を向ける。
「刺青を写した複製が2人分って言っていたじゃないですか。あれって誰と誰を写したんですか?」
ああ。と土方さんはニッと不敵に笑う。
年月を重ねてきた風格がありながら、表情は不思議と若々しさを感じるものだった。
「あれは杉元と一緒にいる白石由竹という男から得たものだ。」
「え、杉元さんと……!?」
思わず声をあげてしまった。
尾形さんが軽く私を睨んでいる。
「知り合いかね?まあ、不死身の杉元は有名だからな。」
「鶴見中尉が一度捕らえまして……勧誘に失敗しておりました。」
誤魔化せただろうか。
嘘はついてない。
ちらりと尾形さんを見やったが、もうこちらを見ていなかった。
「なるほど。では役に立つかな?」と土方さんは白石由竹の手配書を私と尾形さんにくれた。
そして、この男に「土方歳三の名を言えば言うことを聞くはずだ」とニッコリと笑って続けた。
なんとまあ恐ろしい人だこと。
土方さんて、鶴見中尉や尾形さんとはまた違った迫力のある人だな。
そんなこんなで情報共有をした私たちは、その日は解散。
特に用事もなさそうだったので、家事をある程度こなした後は、土方さんと永倉さんに頼んで剣術を見てもらうことになった。
やはり二人は覇気が違う。
対峙しているだけで圧倒される気迫がある。
これが熟練の剣士か……私にはまだまだ到達できない世界だ。
訓練がひと段落ついたところで三人で縁側に並んで座り休憩する。
「夢主は、なぜ剣術を?銃もあるし、女子ならば薙刀の方が扱いやすいと思うのだが。」
「そうだな、刀身が長ければその分距離も稼げるしな。」
永倉さんが問いかけてきて、土方さんもそれに同意する。
私は少し考えてから、言いにくかったけれども正直に答えた。
この人たちに嘘は通用しないだろうと思ったのだ。
「……長距離は尾形さんが必ず仕留めてくださりますから。私が近距離戦術を身に着ければいつかお役に立てるかと思いまして……。」
「ほう。」「……。」
ニヤ、と笑った土方さんと何も言わずにお茶を飲む永倉さん。
沈黙が流れてただただ気まずい。
そのまま見つめられてもどうしたら良いのかわからない。頼むから話題を変えてほしい。
「じゃあ、尾形を守れるくらいに強くならねばならないな。」
「は、はい。」
永倉さんが休憩終わり、と言って気合の入った様子で私を呼ぶ。
慌ててまた剣を構える私に土方さんは鋭い視線を送っていたが、私は気づいていないふりをした。
だって殺気混じりなんだもん……怖い!
【あとがき:ハーレムにイケオジ枠で土方歳三参戦!】