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第二十一話 日泥
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第二十一話 日泥
誤解が解けてからは、尾形さんはもう必要以上に花街に入り浸ることはなかった。
尾形さん曰く、「主要なところはほとんど行ったし情報は入った」ということだったが、私をだましていた手口がバレたから面白くなくてやらないのでは?と思ってしまう。
散々振り回されたので、尾形さんと一緒にいるうちに私まで性格が歪んでしまったと内心で悪態ついた。
でも、おかげで野宿はほとんどしないで済んだので良しとする。
問題は、あれ以来尾形さんが私を抱き枕扱いすることだ。
なんというか、距離感がつかめない。
花街に入り浸っている間は精神的に物凄く遠くにいるように感じていたが、今度は急に物理的に密着し始めて訳が分からない。
尾形さんの中では何かが消化できているようだが、私は逆に悩みが増えた。
不幸中の幸いというのか、抱き着くだけなので、手は出されていない。
ただ一応これでも女だし、恥ずかしいしやめていただきたい。
でも尾形さんは私が抗議する前にとっくに眠りについていて、諦めていつも抱き枕にされていた。
寝るときは温かくて良いのだが、起きたときが心臓に悪い。
一応私は尾形さんに背中を向けて後ろから抱き枕にされる形でいつも寝入るが、寝ている間に寝返りを打ったらしく起きると目の前に尾形さんの顔があって心臓が口から出そうになるほど驚いたことが何度もあった。
尾形さんの顔を至近距離で見ると、そういえば遊女が皆口をそろえて尾形さんのことを顔が良いと言っていたなぁ、とぼんやりと思い返す。
悔しいけれど、確かに整ってはいる……とここ最近の寝起きはいつもまじまじと見ていた。
悶々としながらも情報を集め、小樽から東へずっといったところの河港の街、茨戸というところに来た。
尾形さんは街につくなり、髪と髭を整えたいと理髪店に入っていく。
花街と違って人が多くない街だ。あまりよそ者がいると目立つので、私も大人しく店に入った。
「ちょっと待ってくださいいよ、尾形さん……!」
「俺だって身だしなみくらい整える。熱烈な視線を誰かさんから毎朝浴びてるようだし整えないとな。」
「えっ起きてたんですか……!?」
「あのぅ、痴話喧嘩は外でやってもらってもいいですか?」
朝から尾形さんの顔をまじまじと見ていたことはバレていたようだ。
驚いていると、無駄話をしすぎていたので理髪店の店主に怒られてしまった。
「すみません……どこかで待たせてもらってもいいですか?」
「ああ、奥の部屋あいてるよ。上がって待ってな。」
「ありがとうございます。」
店主が奥の部屋を開けてくれたのであがる。
小さな待合室みたいなお部屋だった。お客さん用だろうか。
洋風のアンティークなイスに座ると、私は医学書を開く。
尾形さんを待つ間、本を読んでいようと思ったのだが、ほかにもお客さんが来た様子。
声から察するに、老人男性が二人のようだ。
後から来たお客さんたちはこの街の人ではないらしく、店主はここの状況を教えてくれた。
ここらの賭場を牛耳っている「日泥」一味と元日泥の子分だった「馬吉」という対立についてだ。
元々はよくある後継者問題の小さな小競り合いだったが、そこに宿場町の警察署長が入ってきたからもめ事が大きくなって殺し合いにまで発展しているそうだ。
警察も警察で、日泥一味が賄賂を渡しているようで直接はしょっ引けないからまた厄介だということ。
理髪店の店主は後から来た客たちに馬吉に売りこめば良いと言った。
そして二人の老人が帰ったあとに、尾形さんにも同じ問いかけをした。
「どちらに売り込む気か」と。
今まで黙っていた尾形さんの声が聞こえてきた。
「署長は馬吉にこの宿場町の賭場のナワバリを奪い取らせて賄賂をいただこうって話か?」
「それがな、狙いはそれだけじゃなさそうなんだよ。署長は日泥一味がもっている何かが欲しいんだとか……。」
「ははあ。」
心なしか尾形さんの声が明るい。
なるほど、掴んでいた情報はこれか。
「終わりましたぁー?」
今までのことを何も聞いてないふりをして扉を開ける。
しかしタイミング悪く来客があった。
しかも、噂の署長だ。
「腕の立つお侍さんってのはどこにいる?」
「これはこれは署長さん……!その二人ならしばらく前に出ていきましたよ。」
なにやら店主の様子がおかしい。
無駄にぺこぺこしている。
大方賭場で借金でもしたんだろう。
署長は偉そうに尾形さんをチンピラ呼ばわりすると馬吉のところに行けと命令する。
日泥に混ざったらただではおかないとまで言っているが、尾形さん相手にそういう物言いはやめた方が良いと思う。
うん、そうね、やっぱりよくないな。
尾形さんがにこにこしている……これは危険だ。
「そこの嬢ちゃんは床屋で何をしてるんだい?」
「えーっと?」
署長がこちらへ来ようとする前に、尾形さんがにっこり笑ってハサミで署長のケツアゴにそって綺麗に斬った。
「ういいッ!」
「あーあ……やっちゃった……。」
【あとがき:尾形さんの胡散臭い笑顔いいですよね^^】
誤解が解けてからは、尾形さんはもう必要以上に花街に入り浸ることはなかった。
尾形さん曰く、「主要なところはほとんど行ったし情報は入った」ということだったが、私をだましていた手口がバレたから面白くなくてやらないのでは?と思ってしまう。
散々振り回されたので、尾形さんと一緒にいるうちに私まで性格が歪んでしまったと内心で悪態ついた。
でも、おかげで野宿はほとんどしないで済んだので良しとする。
問題は、あれ以来尾形さんが私を抱き枕扱いすることだ。
なんというか、距離感がつかめない。
花街に入り浸っている間は精神的に物凄く遠くにいるように感じていたが、今度は急に物理的に密着し始めて訳が分からない。
尾形さんの中では何かが消化できているようだが、私は逆に悩みが増えた。
不幸中の幸いというのか、抱き着くだけなので、手は出されていない。
ただ一応これでも女だし、恥ずかしいしやめていただきたい。
でも尾形さんは私が抗議する前にとっくに眠りについていて、諦めていつも抱き枕にされていた。
寝るときは温かくて良いのだが、起きたときが心臓に悪い。
一応私は尾形さんに背中を向けて後ろから抱き枕にされる形でいつも寝入るが、寝ている間に寝返りを打ったらしく起きると目の前に尾形さんの顔があって心臓が口から出そうになるほど驚いたことが何度もあった。
尾形さんの顔を至近距離で見ると、そういえば遊女が皆口をそろえて尾形さんのことを顔が良いと言っていたなぁ、とぼんやりと思い返す。
悔しいけれど、確かに整ってはいる……とここ最近の寝起きはいつもまじまじと見ていた。
悶々としながらも情報を集め、小樽から東へずっといったところの河港の街、茨戸というところに来た。
尾形さんは街につくなり、髪と髭を整えたいと理髪店に入っていく。
花街と違って人が多くない街だ。あまりよそ者がいると目立つので、私も大人しく店に入った。
「ちょっと待ってくださいいよ、尾形さん……!」
「俺だって身だしなみくらい整える。熱烈な視線を誰かさんから毎朝浴びてるようだし整えないとな。」
「えっ起きてたんですか……!?」
「あのぅ、痴話喧嘩は外でやってもらってもいいですか?」
朝から尾形さんの顔をまじまじと見ていたことはバレていたようだ。
驚いていると、無駄話をしすぎていたので理髪店の店主に怒られてしまった。
「すみません……どこかで待たせてもらってもいいですか?」
「ああ、奥の部屋あいてるよ。上がって待ってな。」
「ありがとうございます。」
店主が奥の部屋を開けてくれたのであがる。
小さな待合室みたいなお部屋だった。お客さん用だろうか。
洋風のアンティークなイスに座ると、私は医学書を開く。
尾形さんを待つ間、本を読んでいようと思ったのだが、ほかにもお客さんが来た様子。
声から察するに、老人男性が二人のようだ。
後から来たお客さんたちはこの街の人ではないらしく、店主はここの状況を教えてくれた。
ここらの賭場を牛耳っている「日泥」一味と元日泥の子分だった「馬吉」という対立についてだ。
元々はよくある後継者問題の小さな小競り合いだったが、そこに宿場町の警察署長が入ってきたからもめ事が大きくなって殺し合いにまで発展しているそうだ。
警察も警察で、日泥一味が賄賂を渡しているようで直接はしょっ引けないからまた厄介だということ。
理髪店の店主は後から来た客たちに馬吉に売りこめば良いと言った。
そして二人の老人が帰ったあとに、尾形さんにも同じ問いかけをした。
「どちらに売り込む気か」と。
今まで黙っていた尾形さんの声が聞こえてきた。
「署長は馬吉にこの宿場町の賭場のナワバリを奪い取らせて賄賂をいただこうって話か?」
「それがな、狙いはそれだけじゃなさそうなんだよ。署長は日泥一味がもっている何かが欲しいんだとか……。」
「ははあ。」
心なしか尾形さんの声が明るい。
なるほど、掴んでいた情報はこれか。
「終わりましたぁー?」
今までのことを何も聞いてないふりをして扉を開ける。
しかしタイミング悪く来客があった。
しかも、噂の署長だ。
「腕の立つお侍さんってのはどこにいる?」
「これはこれは署長さん……!その二人ならしばらく前に出ていきましたよ。」
なにやら店主の様子がおかしい。
無駄にぺこぺこしている。
大方賭場で借金でもしたんだろう。
署長は偉そうに尾形さんをチンピラ呼ばわりすると馬吉のところに行けと命令する。
日泥に混ざったらただではおかないとまで言っているが、尾形さん相手にそういう物言いはやめた方が良いと思う。
うん、そうね、やっぱりよくないな。
尾形さんがにこにこしている……これは危険だ。
「そこの嬢ちゃんは床屋で何をしてるんだい?」
「えーっと?」
署長がこちらへ来ようとする前に、尾形さんがにっこり笑ってハサミで署長のケツアゴにそって綺麗に斬った。
「ういいッ!」
「あーあ……やっちゃった……。」
【あとがき:尾形さんの胡散臭い笑顔いいですよね^^】