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第二話 私の日々と鯉登少尉
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第二話 私の日々と鯉登少尉
次の日からは大変だった。
鶴見中尉の計らいなのか、なぜか和服ではなくメイド服(といっても現代のようなフリルを主体にした派手なものではなく、どちらかというとシスターの方がイメージに近いような落ち着いたもの)だったり、女人禁制だったせいか兵隊の中には私を変態扱いするやつがいたり、鶴見中尉からお茶に誘われて周囲に愛人扱いされたり、鯉登少尉という海軍のお偉いさんの息子に気に入られて何かと連れまわされたり、尾形さんは相変わらず何を考えているのかわからないが視界の端に入ってきては意味深な笑みを浮かべていたり。
生活については時代のギャップがありすぎたので、記憶喪失を隠れ蓑にこの時代の生活をイチから覚えることにした。
月島さんに仕事を教えてもらい、兵舎の中の掃除や洗濯、料理の手伝い、食事の配膳、買い出しなど、雑用という雑用をこなす日々だった。
初めのうちは、それはそれはもう辛かった。
明治時代に温水などないし、掃除や洗濯はすべてが手動。
料理も食材から調味料まで現代日本とは全然違うから驚いた。
泣き言を言っている暇もなくて、あっと言う間に一日が終わるのだ。
昔の人って偉大だな、なんて考えながら洗濯物を干し終えて、一息つく。
あかぎれができてヒリヒリと痛む手を摩っていると、横からいつになっても聞き取れない薩摩弁が早口で聞こえてきた。
「あら、鯉登さ……鯉登少尉。お戻りだったのですね。」
「名前だけで良か。」
彼はそう言って私の隣にストンと座る。
私はどちらかというとそこまで育ちが良いわけではなく、普通の一般家庭で育っただけだった。
この時代に来たからにはこの時代に多少合わせなければと思い、鶴見中尉に記憶が戻った時のためにという名目のもと、本を借りたり勉強したりして時代に合った話し方を意識して真似している。
しかし生粋のエリートたち(鶴見中尉や鯉登さんなど)を相手に話すときはボロが出ないか心配で仕方がない。
社会人をやっていたとはいえ、これがこの世界の常識に通用するかというとまた別の問題で、とてもハラハラしていた。
お茶でもいれましょう、と立ち上がると、鯉登さんが私の手を掴んで隣に座らせる。
私はされるがままに地面に戻され、正座した。
「……あの、鯉登さん?」
なにやら緊張した様子だ。
私は困ってしまって彼の顔を控えめに見上げることしかできなかった。
「良かったや、使いたもんせ。」
薩摩弁だったがゆっくりだったおかげで少し聞き取れた。
どうやらなにかくれるようだ。
鯉登さんの手には小さな包みがあった。
「それは……?」
彼は言葉を話すのを忘れてしまったのだろうか。
私の問いに答えるのに、言葉を使わずおもむろに包みを開けて、中に入っていたクリーム状のものを指先にちょっとだけ取った。
「両手を出せ。」
「え、あ、はい。」
手のひらを上向きにすると、鯉登さんの思っていたのとは逆だったらしく、両手を掴まれて手のひらを下に向けさせられる。
指先に乗ったクリーム状のものを、鯉登さんは優しく私の手に塗っていく。
「これは……?」
「軟膏だ。あかぎれに効く。」
「あ、ありがとうございます。あの、自分で……」
「いいから。」
自分でやると言っていても、鯉登さんは丁寧に塗り込んでくれた。
鯉登さんは私よりも体温が高く、手の皮が厚い、やはり訓練とかしているのだろうか、男らしい力強さのある手だった。
マッサージをされているような気持ちになって、思わず表情が緩む。
「……気持ちいい。」
ぽそり、と呟くと鯉登さんはぎょっとした表情でこちらを見て、すぐに顔を真っ赤にして手を離した。
え、なにかまずいことを言ったかな。
「おなごがそげんなしたなかことをゆな!」
耳まで赤くした顔でそう言うと、どこかへ行ってしまった鯉登さん。
怒っている様子ではなかったが、どちらかというと……照れていたような?
残された包みをもとに戻して、これは頂いて良いのだろうかと少し考えてから、預かることにした。
月島さんなら、鯉登さんとよく一緒にいるから薩摩弁も少しはわかるかもしれない。
その後、月島さんに会ったときに鯉登さんが言ってた意味を聞こうと思って、薩摩弁を真似て「そげんしたなかことゆな?ってどういう意味ですか」と言ってみたら、月島さんにすごい引いた顔で何言ったんですか貴女……と言われた。解せぬ。
【あとがきという名の翻訳:女子がそんな下品なことを言うな。】
次の日からは大変だった。
鶴見中尉の計らいなのか、なぜか和服ではなくメイド服(といっても現代のようなフリルを主体にした派手なものではなく、どちらかというとシスターの方がイメージに近いような落ち着いたもの)だったり、女人禁制だったせいか兵隊の中には私を変態扱いするやつがいたり、鶴見中尉からお茶に誘われて周囲に愛人扱いされたり、鯉登少尉という海軍のお偉いさんの息子に気に入られて何かと連れまわされたり、尾形さんは相変わらず何を考えているのかわからないが視界の端に入ってきては意味深な笑みを浮かべていたり。
生活については時代のギャップがありすぎたので、記憶喪失を隠れ蓑にこの時代の生活をイチから覚えることにした。
月島さんに仕事を教えてもらい、兵舎の中の掃除や洗濯、料理の手伝い、食事の配膳、買い出しなど、雑用という雑用をこなす日々だった。
初めのうちは、それはそれはもう辛かった。
明治時代に温水などないし、掃除や洗濯はすべてが手動。
料理も食材から調味料まで現代日本とは全然違うから驚いた。
泣き言を言っている暇もなくて、あっと言う間に一日が終わるのだ。
昔の人って偉大だな、なんて考えながら洗濯物を干し終えて、一息つく。
あかぎれができてヒリヒリと痛む手を摩っていると、横からいつになっても聞き取れない薩摩弁が早口で聞こえてきた。
「あら、鯉登さ……鯉登少尉。お戻りだったのですね。」
「名前だけで良か。」
彼はそう言って私の隣にストンと座る。
私はどちらかというとそこまで育ちが良いわけではなく、普通の一般家庭で育っただけだった。
この時代に来たからにはこの時代に多少合わせなければと思い、鶴見中尉に記憶が戻った時のためにという名目のもと、本を借りたり勉強したりして時代に合った話し方を意識して真似している。
しかし生粋のエリートたち(鶴見中尉や鯉登さんなど)を相手に話すときはボロが出ないか心配で仕方がない。
社会人をやっていたとはいえ、これがこの世界の常識に通用するかというとまた別の問題で、とてもハラハラしていた。
お茶でもいれましょう、と立ち上がると、鯉登さんが私の手を掴んで隣に座らせる。
私はされるがままに地面に戻され、正座した。
「……あの、鯉登さん?」
なにやら緊張した様子だ。
私は困ってしまって彼の顔を控えめに見上げることしかできなかった。
「良かったや、使いたもんせ。」
薩摩弁だったがゆっくりだったおかげで少し聞き取れた。
どうやらなにかくれるようだ。
鯉登さんの手には小さな包みがあった。
「それは……?」
彼は言葉を話すのを忘れてしまったのだろうか。
私の問いに答えるのに、言葉を使わずおもむろに包みを開けて、中に入っていたクリーム状のものを指先にちょっとだけ取った。
「両手を出せ。」
「え、あ、はい。」
手のひらを上向きにすると、鯉登さんの思っていたのとは逆だったらしく、両手を掴まれて手のひらを下に向けさせられる。
指先に乗ったクリーム状のものを、鯉登さんは優しく私の手に塗っていく。
「これは……?」
「軟膏だ。あかぎれに効く。」
「あ、ありがとうございます。あの、自分で……」
「いいから。」
自分でやると言っていても、鯉登さんは丁寧に塗り込んでくれた。
鯉登さんは私よりも体温が高く、手の皮が厚い、やはり訓練とかしているのだろうか、男らしい力強さのある手だった。
マッサージをされているような気持ちになって、思わず表情が緩む。
「……気持ちいい。」
ぽそり、と呟くと鯉登さんはぎょっとした表情でこちらを見て、すぐに顔を真っ赤にして手を離した。
え、なにかまずいことを言ったかな。
「おなごがそげんなしたなかことをゆな!」
耳まで赤くした顔でそう言うと、どこかへ行ってしまった鯉登さん。
怒っている様子ではなかったが、どちらかというと……照れていたような?
残された包みをもとに戻して、これは頂いて良いのだろうかと少し考えてから、預かることにした。
月島さんなら、鯉登さんとよく一緒にいるから薩摩弁も少しはわかるかもしれない。
その後、月島さんに会ったときに鯉登さんが言ってた意味を聞こうと思って、薩摩弁を真似て「そげんしたなかことゆな?ってどういう意味ですか」と言ってみたら、月島さんにすごい引いた顔で何言ったんですか貴女……と言われた。解せぬ。
【あとがきという名の翻訳:女子がそんな下品なことを言うな。】